2023年3月 松沢ちづる議員「総括質疑」と答弁要旨

松沢ちづる 総括質疑

 

1 市長の政治姿勢について

 市長は施政方針演説の結びに、マクロな目で見たときに見える地域の経済社会情勢と、ミクロな目で見たときに見える一人一人が置かれた生活状況や感情は異なる。改めてこの点を心にとどめ、職務に向き合わないといけない。常に謙虚に、市民、職員も含めて、それぞれが置かれている様々な立場について想像し、共感する努力を怠らず、心の通った温かい政策を実現し、それを説明できるよう、全力で職務にまい進すると述べられています。

 施政者としてたいへん信頼できる態度だと思います。ならば、なぜいま、年金生活者も賃金労働者も自営業者も、経済の停滞の下さらに物価高騰が追い打ちをかけて、くらしそのものが厳しくなっている現状に目を向けないのでしょうか。こんな時だからこそ、「市民負担は増やしません。共に支え合って、物価高騰を乗り切りましょう」と、市民に呼びかけられないのでしょうか。

 日本共産党は、今、市民のみなさんに「くらしの実感―余裕はありますか、不安はありませんか」と直接お聞きする訪問活動を行っています。そこで見聞きするのは、「食べることを切り詰めてきたが、もうこれ以上は無理だ」、喫茶店の店主は「コーヒー1杯450円を守っているが、これ以上コーヒー豆が手に入らなくなったら店を閉めるしかない」、「大学生の孫が一人くらしがきついといっているが、支援する余裕もない。シングルの娘はさぞかし大変だろう」こういった声ばかりです。

 

Q1 市長にお伺いします。市民生活が大変な今、新年度予算でまず配慮すべきは「市民負担を増やさない」ということではありませんか。しかし、生涯学習プラザなどの使用料が値上げ、火葬費も値上げ、保育所の給食費値上げ、小学校給食費値上げと、負担増が目白押しです。なぜ、配慮をしなかったのですか。

 

答弁要旨

物価高に対応するためには、物価上昇を上回る賃金上昇を実現することが必要であり、賃金の上昇が定着するまでの間、負担軽減に向けた取組を国や県の動向も踏まえ、機動的に実施していくことが重要であると認識しています。

ご指摘の使用料・手数料や、給食費などの負担については、受益者負担の考え方を基本としており、急激な物価高騰の影響を、サービスの受益者負担で賄うことができない場合、受益者でない市民の税負担になるという課題があることから、原価を適正に反映するため、使用料の改定を実施するものです。

こうした料金改定を含む物価高騰に直面する方々への負担を軽減するため、令和7年度においても、市民・事業者を対象とした「あま咲きコインプレミアムキャンペーンの実施」や、子育て世帯の負担軽減を図る「学校給食費の支援」といった支援について実施を予定しており、引き続き、市内経済や市民生活への影響を注視しつつ、国や県の動向も踏まえながら、市民の皆さまのニーズを踏まえた機動的な施策を随時実施してまいります。以上

 

 予算案を見れば、新年度市税収入が25.7億円増の見込みです。また、地方交付税は16.6億円増の見込みとなっており、市民負担を増やさないための財源確保は充分あったと思われます。今回の値上げ案で、保育所給食費で約400万円増、小学校給食費で5700万円、生涯学習プラザで560万円、すこやかプラザで13万円、火葬費で1064万円、合計わずか7437万円です。市民負担を増やさない配慮はできたと思います。非常に残念です。

 今後のこととして、年度途中に物価高騰対策として国から臨時地方交付金が組まれる場合、保育所と小学校の給食費の保護者負担軽減を考えるべきだと思います。

 

Q2 こども青少年局に伺います。保育所給食費の保護者負担支援を検討しますか。

 

答弁要旨

公立保育所における3歳以上児の給食費につきましては、1人当たりの主食費を月1,000円、副食費を

月4,500円と定め、これまで運用してまいりましたが、原材料価格の高騰等により食品価格が高止まりしており、食材費を含め物資調達に影響が出ております。

これまで、食材の種類や内容、使用頻度の変更など工夫を図ることで対応してまいりましたが、令和5年度に続き、今年度も食材費が保護者負担額を上回る見込みとなっており、このうち副食費については、保護者負担額を超える経費が発生しております。

なお、副食費相当額に関しては、国は公定価格において加算額(副食費免除加算)を設定しており、令和4年度までは4,500円でしたが、今年度は4,800円となっております。

本市では、これまで国が示す公定価格のとおり副食費の価格改定を行っておりませんでしたが、給食の栄養バランスを維持し、子どもたちの成長につながるよう、今後は、国の公定価格に準じた単価に改定することとし、令和7年度は公立保育所の副食費を4,800円に改めるところです。1㌘・

なお、現下の物価高騰が続く中ご令和7年度の副食費に要する経費が改定後の保護者賃担額の4,800円を超えることも考えられます。その際には、委員ご指摘の物価高騰対策委係る臨時地方交付金が組まれた場合には給食費会計の状況も見て活用も検討してまいります。

 

つづいて伺います。

 

Q3 教育委員会は、小学校給食費の保護者負担支援を検討しますか。

 

答弁要旨

物価高騰が続く中、栄養バランスのとれた学校給食を維持するため、小学校給食費につきましては、令和6年4月に改定を行い、その高騰分を公費で負担しております。

物価がさらに上昇した場合、給食費の改定が避けられなくなり、保護者のご負担が急激に増加することが懸念されるため、激変緩和措置として、国からの臨時地方交付金を活用し、高騰分の一部を公費で負担し、保護者の負担軽減を図ることと致しました。

今後の更なる支援については、物価高騰の状況や国からの交付金の有無、本市の財政状況や国における給食費無償化に関する議論の状況など、様々な要素を勘案しながら、適切な対応に努めてまいります。

以上

 

2 介護保険について

 

 国の報酬単価引き下げで、全国で訪問介護事業所の閉鎖が相次いでおり、高齢者の「要介護になっても住み慣れた地域でくらしたい」という願いが叶えられなくなってきています。この傾向は地方や農村部で顕著ですが、尼崎でもこの1年で廃業が1事業所増えました。新規参入が1事業所増えたことで事業所数は年度当初と変わりませんが、それでも前年より11事業所減少したままで、減少の流れは続いています。

 介護人材の確保も困難な状況が続いています。2月議会では、地域包括支援センターの職員不足の解決策として、資格の規制緩和や非正規職員の雇用が認められました。2014年地域支援・総合事業が始まり、要支援の方々への訪問・通所サービスの担い手として生活支援サポーターの養成が行われてきましたが、3年間で900人の実働サポーターを養成する計画は絵にかいた餅で終わり、10年たった今も、介護予防訪問サービスなどは有資格のヘルパーさんたちが、介護サービスの報酬単価の9割という理不尽な対価で担っています。現場のヘルパーさんたちからは、「ヘルパーの平均年齢は60代後半。若い人たちが募集をしても集まらない。」とお聞きしています。支える側がこのままの状況では、年をとっても安心の社会が展望できません。

 

Q4 国に対し、訪問介護の報酬単価を元に戻すことや、介護保険への国費を増やすことなど求め、高齢者の保健福祉の向上について 自治体が責任を果たせるようにすべきだと考えますが、いかがですか。 

 

答弁要旨

議員ご指摘の「訪問介護に係る基本報酬の引上げ」や「国費負担割合の増額」については、中核市市長会や全国市長会を通して、報酬改定の影響を十分に検証し、訪問介護サービスの実態に即した抜本的な見直しを行うなどの必要な措置を講じること、また、介護保険財政の持続的かつ安定的な運営のための国費負担割合の見直しを行うことを要望しており、引き続き、こうした働きかけを粘り強く行ってまいります。

以上

 

市としては、介護人材確保への支援として介護人材確保支援事業が行われています。予算規模はわずか530万円です。訪問介護事業所だけでも市内に約300カ所あるのに、初任者研修についての今年度の事業活用は52事業所のみです。

 

Q5 介護人材確保支援事業の拡充を求めますが、いかがですか。また、それ以外にも考えている支援策などあれば教えてください。

 

答弁要旨

介護人材確保支援事業については、令和2年度に実施した介護事業所へのアンケート調査において、介護人材の確保・定着に効果的な支援として、「介護人材キャリアアップ研修に対する支援」や「介護未経験者に対する研修支援」に多くの回答があったことを受け、介護職員初任者研修等の研修受講料助成の他、潜在介護福祉士が復職する際の手助けとなる、学びなおし研修等を実施しており、事業所の人材確保に、一定の効果を得ているものと認識しています。

しかしながら、今後、超高齢化の更なる進展が見込まれる中、介護人材の確保は増々重要な課題になると考えられることから、次期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の策定に向けて、改めて、介護人材実態調査を実施し、事業所の皆様のご意見を伺い、先進市の取組等も参考にする中で、新たな対応策を検討して参ります。以上

 

 

3年に1回高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画が更新されています。訪問介護事業者のみなさんの丁寧な聞き取りによる実態調査を行い、今年予定されている国勢調査とリンクさせることができれば、かなり詳細な実態が把握でき、次期計画に反映できると思います。

Q6 訪問介護事業所の実態調査を実施すべきと思いますが、いかがですか。

 

答弁要旨

先程もこ答弁申し上げましたが、次期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の策定に向けては、訪問介護事業所を含め、市内の介護事業所に対し、アンケート調査を実施し、ご意見をお伺いする中で、実態の把握に努めて参ります。以上

 

3 国民健康保険について

 国の方針で、昨年12月2日以降これまでの健康保険証は発行が止められ、マイナ保険証1本になりました。同じ所得・家族構成でも、サラリーマンの健康保険・協会けんぽの2倍にもなる高負担の国民健康保険料が、多くの滞納世帯を生んでいます。尼崎市では2023年度決算で7292世帯 国保世帯全体の12.2%になります。

 滞納世帯に対し、保険証が発行できた昨年12月1日までは短期保険証の発行とひきかえにした窓口での納付相談をされてきましたが、今はそれができません。当局は、滞納額が少額の内に傷口が小さいうちに納付相談をと対応してこられましたが、これからは納付相談の機会が減少すると思います。

 

Q7 お尋ねします。今後具体的にどのように納付相談の機会の減少を補完していくのですか。

 

答弁要旨

これまで保険料の滞納世帯に対しましては、有効期間の短い短期証を窓口で交付する中で、その更新時に来庁案内ハガキを送付することで、納付相談の機会を設けておりました。

しかしながら、昨年12月2日の短期証の廃止に伴い、そうした納付相談の機会はなくなりましたが、令和5年度から、それまでの電話及び訪問催告の実施方法の見直しに加え、ショートメッセージサービス、いわゆるSMS催告の導入など、催告業務に特化した委託事業を実施しております。

具体的な内容としましては、納付月に滞納が発生した場合は、その翌月中旬以降に督促状を発送しております。

それに合わせて、SMSによる催告も行うこととしており、それでも支払いがなかった世帯については、さらにその翌月にSMSによる催告を3回行うとともに、電話催告を最大5回併用して行っております。さらに、SMS及び電話催告に反応がない世帯に対しましては、その後、訪問催告を2回行っており、そうした取り組みにより、滞納が少額の段階で積極的に滞納者へのアプローチを行うことにより、自主納付の意識付けを行うとともに、合わせて窓口等での相談もご案内し、納付相談の機会創出に努めております

今後とも、滞納額が少額な段階でぜ様々な働きかけを行うことにより、自主的な納付を促すとともに、困窮している世帯に対しては、引き続き、相談窓口で可能な限り寄り、添った対応に努めてまいります。以上

 

 滞納の根本解決は、高すぎる保険料を引き下げることです。日本共産党は、国に対し協会けんぽと同じくらいの加入者負担にするために、国保への国庫負担をあと1.3兆円増やすことを求めています。これは全国知事会が求める増額とほぼ同じです。

Q8 国に対し、さらに強く国庫負担の増額を求めるべきだと考えますがいかがですか。

 

答弁要旨

国民健康保険制度では、保険給付に要する費用のうち、国県からの公費等で賄われるもの以外を被保険者から保険料としてご負担していただく仕組みとなっております。

この公費等のなかで、定率国庫負担につきましては、保険給付費の32%を国が負担することとなっておりますので、これまでから、全国市長会を通じて、国に対して負担割合の増加の要望を重ねてきたところです。

こうした要望活動につきましては、今後も機会を捉え、継続して行ってまいります。

以上

 

 国の方針では、滞納が1年以上続くと保険診療が受けられなくなり、特別療養資格証になり、窓口負担は10割になってしまいます。誰もが安心して医療が受けられる国民皆保険の制度が崩されることになります。こうした事態に陥らないように、滞納者への注意喚起と共に国保料を減らす努力を強く求めます。

 

4 ウォーターPPPについて

 

 代表質疑や分科会でウォーターPPPについてお尋ねをしました。当局答弁を受け、更に質問をしていきます。

ウォーターPPPは、下水道事業において施設の老朽化や職員の不足が懸念される中、民間事業者の創意工夫等を活用することにより、効率的かつ効果的なサービスの実現が期待できるとの答弁がありました。

Q9 お尋ねします。ウォーターPPPの導入理由の一つが職員不足が懸念されることだと言われますが、ポンプ場の運転や北部浄化センターの休日夜間の運転管理などを民間に委託し、下水道事業が公営企業局に移った2018年以降特に現業職が51人から現在では5人にまで減らされました。職員不足はまさに当局が行ってきた事業方針によるものではないですか。

 

答弁要旨

生産年齢人口が減少し、いわゆる「公務員離れ」の影響もあり、全国的に職員の採用が厳しい状況にある中、下水道事業では、土木職をはじめとする技術職員の不足が懸念される状況にあります。

一方、これまでに取り組んだ民間委託による職員の削減は、主に定型的な現場作業を担う技能労務職員、いわゆる現業職員を対象としており、技術職員の不足の懸念につながったものとは考えておりません。なお、民間委託の対象となった技能労務職員は、研修期間と試験を経て、高い専門性を発揮する技術職員に転職するケースも多数あり、同事業の技術力の維持・向上に貢献しているものと認識しております。以上

 

 ウォーターPPPの導入を決定済であることが2027年度以降の下水管改築の国費の交付要件になったことを踏まえ、23年度から導入検討を進めてきたと、新年度主要事業に記載されています。より割のいい国からの交付金をうけるために、市が進めてきたことだと確認します。

 続いて、民間事業者の創意工夫等を活用することで効率的かつ効果的なサービスの実現が期待できるとのことです。

 

Q10 効率的かつ効果的とは、人件費を減らすこと。つまり事業に精通する現場の人を減らし、デジタル化を進めることではないですか。

Q11 お尋ねします。技術の継承をしていく「ほかの職員」とはどこにいるのですか。現業職はすでに5人に。しかも事務職への転職や近い将来定年退職が見込まれ、若い職員の補充はされていないではありませんか。どうするのですか。

 

答弁要旨

下水道事業の将来にわたる持続可能性を確保するためには、技術職員の不足が懸念される中、事業運営に必要な技能を継承していくことが肝要であると認識しております。

そうした中、今後におきましては、新たに「ウォーターPPP」を本市でも導入し、将来の技能継承も踏まえた官民の適切なパートナーシップを構築するとともに、施設の老朽化対策などの新たなニーズにも対応できる市の体制を確保するため、市職員の着実な採用や、年齢や経験年数を踏まえた的確な人事異動など、引き続き、円滑な技能継承に資する取組に努めてまいります。

以上

 

 民間に「丸投げ」とならないように、災害時の対応も含め市職員と民間事業者の両方が

ノウハウを共有・蓄積する官民の適切なパートナーシップを構築するとのことです。分科

会の質疑では、ポンプ場の運転は民間に任せているが、まだ直営職員がいるので運転操作

技術を民間委託業者に指導しているとの説明でした。しかし、その職員が退職すると市職

員に技術の継承ができなくなることが懸念材料だと。ほかの職員につなげていくような努

力をしていきたいとのことでした。

 

 専門職員がいなくなるのは大きな問題です。現在はまだ災害時には、地域のことをよく

知っていて、下水道事業に関する経験や蓄積を持った職員が対応しています。しかし自治

体が直接関わらなくなり、対応能力が失われた下では非常時の対応がどうなるのか、きわ

めて不安です。

 ウォーターPPPはまず北部処理区でレベル3.5、北部浄化センターと西川中継ポンプ

場、高田中継ポンプ場のある処理区で、維持管理業務と改築更新を組み合わせた導入を検

討しており、武庫川処理区・東部処理区については、今後どう広げるのかを検討していく

とのことです。国土交通省の「下水道部分野におけるウォーターPPPガイドライン」によ

れば、まずレベル3.5の後「丸投げ」のコンセッション方式を選択肢として検討いただき

たいと道案内されています。尼崎市は国から誘導されるまま、コンセッション方式に進も

うとするのでしょうか。下水道事業は、根本的には市民が生きていくために欠くことので

きないものです。これを営利企業に丸ごとゆだねるシステムにしてしまっていいのか。日

本共産党議員団は反対です。