日本共産党議員団の松澤千鶴です。
私は、トレピエと北図書館の複合再編に関して、強度行動障がいを有する人の親なき後の問題をテーマに質問をします。
まず、トレピエと北図書館についてです。市は8月18日と22日にタウンミーティングを行いました。私も傍聴にいきましたが、はっきり言って市民の意見を十分聴く説明会ではなかったと感じました。
タウンミーティングの進め方は、1部で新図書館のコンセプトが強調される一方、トレピエの方向性は説明されませんでした。質問時間もありませんでした。
2部のグループトークのテーマは ○今のまちや対象施設のいいところ、改善すべきところは? ○どんなまちになってほしい⁉ ○施設が新しくなって、自分の普段の生活にどんな変化が起こると楽しい⁉ ○その他、基本的な方向性に係る市の説明を聞いた感想 というものでした。
私が傍聴したテーブルは、トレピエ利用者が一人だけで、トレピエの機能が縮小されると危惧する意見をだされましたが、進行役の市職員は特にその意見を拾ってテーブルの話題にするわけでもなく、むしろ聞き流して、他の参加者の他の声を聞こうとしていました。
私は、市の側の作為を感じました。しかしそのあとの全体発表では、10グループ中4グループからトレピエは今後どうなるのかと疑問の声が簡単に紹介されていたので、私がたまたま傍聴したグループが特別だったのかも知れませんが。
トレピエと北図書館の複合再編については、今年度予算で方向が示され、初めて開かれた市民説明会です。トレピエがこれからどうなるのか心配して参加した市民も多かったと思います。後日何人かの参加者から、「何にも説明されない。市民の声も聞こうとしない。」「余計に不安になった。あんな市民説明会は初めてだった」と苦情を聞いています。
Q1 今回のタウンミーティングの目的は何でしたか。また、どのように評価していますか。
答弁要旨
今回のタウンミーティングでは、各施設の特徴や利用状況、課題などの現況や取り組みの方向性について、参加いただいた皆様と共有したうえで、個別のハード面でのご意見やご要望だけでなく、今回の取組をきっかけとして、どのようなまちづくりを期待するのか、どのように地域の賑わいづくりや各種活動の活性化につなげていくのか、といったご意見をいただくことを目的として開催いたしました。
今回、実施したタウンミーティングの成果としては、施設の整備内容だけでなく、今後のまちの姿についてのご希望、ご期待など、多くのご意見をいただけた一方で、男女共同参画社会づくり等の拠点は現在地周辺で別途整備するという方向性について、女性・勤労婦人センターを利用して活動されている方々のご理解が十分に得られませんでした。
そうしたことから、今後は活動に必要な施設整備といったハード面だけでなく、ソフト面での工夫や連携についても検討を進め、ご理解を得られるよう丁寧に対応してまいりたいと考えております。
以上
次に強度行動障がいを有する人の親なき後の支援体制について質問します。
強度行動障がいとは、自分の体を叩いたり食べられないものを口に入れる、危険につながる飛び出しなど、本人の健康を損ねる行動や、他人を叩いたり物を壊す、大泣きが何時間も続くなど、周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度でおこるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態をいいます。
私は、44歳の強度行動障がいを有する自閉症で発語もない重度知的障がいの息子と暮らす74歳の母親から話を聞きました。息子が4歳になっても言葉が出ず療育施設に通いはじめたそうですが、夫は子の障がいを受け入れられず離婚。その後は一人で本人含め2人の子どもを育ててこられました。特別支援学校に通い、卒後は作業所へ。行動援護のサービスなども利用して現在に至っています。母親の一番の心配事は自分が死んだ後のことです。これまで保護者会や自閉症の親の会などで支え合い、グループホームの建設や支援体制の充実にがんばってきたけれど、強度行動障害があるため施設入所は先方から断られ続けているとのことです。母親は、健康に自信があったけれどこの頃洋右通が出てきて、いつまで息子と付き合えるかという思いが湧いてきた。親亡き後のことが気になってきたとはなされました。
Q2 強度行動障がいを有する人への尼崎市の支援体制について、特に南北の保健福祉センター障害福祉課の役割について、現状はどうなっていますか。
答弁要旨
強度行動障害を有する方への支援につきましては、南・北障害者支援課内にある「基幹相談支援センター」が中心となり、市からの委託相談支援事業所等で構成される「あまがさき相談支援連絡会」において、関係機関が互いに連携した切れ目のない支援を提供するためのネットワークのあり方について協議を行っております。
また、今年度の法改正で個別事例の検討を通じた地域サービス基盤の開発等の体制づくりが規定されたことを受け、同連絡会において、強度行動障害を含む個別事例検討の進め方についても、協議しているところです。
特に、南北障害者支援課では、強度行動障害を有する方が生涯福祉サービス等につながりにくいことや、サービスの安定的な継続が困難であるなどの状況を踏まえ、相談支援事業所の相談支援専門員が当事者がご家族にしっかり寄り添えるよう、相談支援専門員への助言や同行訪問等に取り組んでいるところです。以上
これで第1問を終わります。2問目からは一問一答で行います。
6月議会で我が会派の真崎議員がトレピエの果たしてきた役割などについて、網羅的に質問しました。それらに対する当局の答弁について、質問します。
トレピエの事業展開等については、男女共同参画審議会やトレピエ運営委員会での意見を踏まえる中で、今日的な視点も入れながら検討されることになると答弁がありました。
Q3 市民意見は聞かないのですか。
答弁要旨
女性・勤労婦人センターの事業展開等、今後のあり方につきましては、広くご意見をお聞きすることが重要であると認識しております。
このため、女性・勤労婦人センターに関係する2つの付属機関には、市民利用者として、また公募市民としてもご参加いただき、ご意見をいただいておりますことに加え、タウンミーティングの他にも女性関係団体や施設利用団体との意見交換会の実施、アンケート形式による意見聴取など、様々な機会を通じて市民の皆様のご意見をうかがっていく予定です。以上
Q4 今日的な視点も入れながら検討とは、具体的にどういうことですか。
答弁要旨
女性・勤労婦人センターにつきましては、施設設置から50年を迎え、法の動きや社会情勢などが大きく変化していることもあり、名称や、設置目的などを今日的な視点で見直し、今後のあり方を検討する必要があると考えております。
具体的には、第4次尼崎市男女共同参画計画の副題である「性の多様性を前提としジェンダー平等な社会をめざそう」の趣旨に沿って、性別に関わらず、いわゆる男女二元論ではなく、誰もがその個性と能力を十分に発揮できる社会の実現に、幅広い対象者に配慮した施設のあり方や事業展開等について、検討してまいりたいと考えております。以上
次に、都市公園法に規定する教養施設には該当しない理由として、トレピエの事務所は、子育てや夫婦関係の悩みなどに関する相談やカウンセリングといった、対象が限られた業務や啓発セミナー等の企画や運営管理などの業務を実施する場所であり、特定の業務を処理するための事務所であると説明されました。
私はこの答弁を聞いて、びっくりしました。ずいぶんと対象を厳格に規定しています。
また、「特定の業務を処理するための事務所」という表現に至っては、機械的で冷たさを感じました。現在トレピエが行っている業務は、当局が答弁された内容をはるかに超え、ジェンダー平等の立場から男性の人権や多文化共生まで豊かに広がっています。今後もっと求められる役割は広がるのではないでしょうか。
Q5 市は、トレピエの事務所機能を限定的に捉えすぎているので、発展的に捉えなおし検討する良い機会ではないですか。
答弁要旨
6月議会においてご答弁いたしましたが、都市公園法第2条第2項は、都市公園の効用を全うするため、公園内に設置できるものの一つとして、教養施設を規定し、その詳細を都市公園法施行令第5条第5項で、植物園、動物園、水族館、野外劇場、図書館などと限定列挙しているものです。
トレピエ(尼崎市立女性・勤労婦人センターの事務所は、子育てや夫婦関係の悩みなどに関する相談やカウンセリングといった、対象が限られた業務や啓発セミナー等の企画や運営管理などの業務を実施する場所であり、特定の業務を処理するための事務所であることから、都市公園法に規定する教養施設には該当しないものでございます。以上
次に、トレピエ事務所の施設整備などについては、事業全体の中でアドバイザリー業務委託の事業者の支援などを受けながら検討を進めるとおっしゃっています。
Q6 検討を進めるのは何について、どんなテンポで進めるのですか。
答弁要旨
現在地周辺で別途整備する男女共同参画等の拠点施設の整備内容については、男女共同参画社会づくりの取組やジェンダー平等などの今日的課題への対応を踏まえ、その活動に必要な居室を確保していくことを基本としながらソフト面での工夫や連携をあわせて検討してまいります。
具体的な施設の規模やその機能などにつきましては、付属機関である男女共同参画審議会や女性・勤労婦人センター運営委員会でのご意見のほか、タウンミーティングにおける市民・利用者のご意見、また利用者グループなどの関係団体へのヒアリングなどを踏まえ、来年度策定を予定している基本計画の中でお示ししてまります。以上
市の進め方は、今、新図書館の整備とまちづくりが主になっており、トレピエの機能については後しになっています。これでは市民は不安感や不信感を募らせるばかりです。
トレピエの今後の方向について、市民の声を聞き政策に反映させていくべきです。
Q7 タウンミーティングのやり方を改め、まずトレピエについて市民の声を聞くことからやり直すことを求めますが、いかがですか。
答弁要旨
今回のタウンミーティングは、個別のハード面だけでなく、新施設の整備などをきっかけとして、まち全体の将来像について、みなさまと一緒に考えることを主な目的として実施したものです。
新たな男女共同参画社会づくり等の拠点施設をはじめとした核施設の具体的な整備内容などについては、法規制などを踏まえる中で、こうしたタウンミーティングでの意見交換や、関係団体等へのヒアリングなどを通じて、検討を行っていくこととしており、検討が一定程度、進めば、改めてタウンミーティングを開催することやヒアリングを行うなど、引き続き丁寧に取組を進めてまいりたいと考えています。以上
次に、強度行動障がいについて質問します。
強度行動障がいを有する人への支援では、行動の激しさやその頻度が高いことから、本人や周囲の安全確保のために力で抑え込まざるを得ない場面が日常的にあります。それはしばしば虐待ととらえられることもあり、意欲ある支援者が悩み疲弊し、本人の状態がさらに悪化するなどの実情があります。
厚生労働省は、強度行動障がいを有する人の地域における支援体制の在り方、支援人材の育成・配置について検討するために、「強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会」を立ち上げ、2022年10月から2023年3月まで計8回の検討を行い、報告書が出されています。ポイントは、ある特定の事業者、支援者だけが支援するのではなく、チームで支援する体制を地域でつくっていくこと、そのための人材育成だと読み取りました。
人材育成ですが、行動援護のサービスを提供するヘルパー資格は、兵庫県が実施している強度行動障害支援者養成研修の基礎研修と実践研修を修了し、直接業務1年以上の経験とされています。
Q8 行動援護のヘルパー資格を持つ人は現在何人で、どのような職場に従事されていますか。
答弁要旨
行動援護事業所に従事するヘルパーの届出は、令和6年8月現在、市内13事業所で計149人となっております。以上
全てヘルパー事業所で、グループホームなどの職員は受講していないのですね。
基礎・実践研修いずれも受講料は6000円で、事業所負担となっています。尼崎市は介護保険では、介護人材確保支援事業として初任者研修、介護福祉士実務者研修に対し上限6万円で個人は2分の1、法人は3分の2の財政支援をしています。
Q9 強度行動障害支援者養成研修についても、市の財政支援を行うべきではないですか。
答弁要旨
行動援護などの外出支援の障害福祉サービス事業所が不足している理由としましては、人員体制の問題や報酬設定、求められる専門性の問題等、様々な要因が考えられます。今後、その要因を分析する中で、事業所・支援者を確保するための方策について、強度行動障害支援者要請研修受講への財政支援等も含め研究してまいります。以上
2022年度国が行った「強度行動障害児者の実態把握等に関する調査研究」の中で実施された、支援者が感じている支援の困難さや負担が大きい状況についての事業所ヒアリング調査によると、①人員体制が不十分、②精神的負担、③事業所の専門性が不十分、④環境設定の難しさ,⑤事務作業の負担、⑥連携の難しさ、⑦経費の負担などが課題として示されています。もちろん尼崎市だけで課題解決していけるものではなく、兵庫県や近隣市との連携の中で解決の道は拓かれていくと思います。
全国には優れた実践をされている社会福祉法人やNPO法人、それを支える自治体独自の取組があります。
Q10 市は、全国の実践を積極的に調査研究していますか。
答弁要旨
国が実施した調査研究報告等の中で、全国様々な社会福祉法人等において、強度行動障害をお持ちの方への丁寧なアセスメントから安心感のある生活環境の提供、パニック時の適切な対応など、日々の支援に工夫されている状況や、自治体においてなされているそういった取組の後方支援などの事例が紹介されております。
その中で例えば福岡市で取り組まれている、相談支援から集中支援、地域移行支援及び定着支援の流れを相談支援事業者や通所支援事業所、グループホーム、居宅介護、行動援護などの複数の事業所が連携する事業スキーム等は非常に参考になるところであり、本市でも何らか取り入れることができないか、今後、社会保障審議会等、様々な会議体でご意見を伺う中で研究してまいりたいと考えております。以上
地域支援体制については、今年度から始まった市の第7期障害福祉計画の中で、はじめて「強度行動障害を有する障害のある人の支援体制の充実」が目標の一つに掲げられ、2026年度までに支援ニーズ等の把握と支援体制の整備を検討・実施するとあります。
Q11 支援ニーズ等の把握と支援体制の整備について、進捗状況を教えてください。
答弁要旨
地域での支援体制の整備につきましては、「あまがさき相談支援連絡会」において、強度行動障害などの支援につながりにくい人に対して、関係機関が互いに連携した切れ目のない支援を提供するためのネットワークのあり方について検討を行っております。また、その入口として、相談支援事業所の相談支援専門員が寄り添い関わることで、サービス等利用計画の作成から適切な障害福祉サービスに安定的につなげていくための基幹相談支援センターによる相談支援事業所へのサポート体制についても協議を行っているところです。
これらの取り組みを通して、引き続き支援ニーズの把握や支援体制の整備に努めてまいります。以上
市の取組はまだまだ緒についたばかりです。強度行動障害支援者養成研修を係わる全ての従業者ができ受講し、さらに中核となる専門性の高い指導者養成の研修体制をつくるべきです。これは、県との協議が必要でしょう。
また、今ある報酬体系では、支援者が安心して働きつづけられる労働環境ではありません。県と共に国への要請が必要でしょう。
私は、今回強度行動障がいを有する息子をもつ一人の母親から話をお聞きし、40年余り息子が少しでもよりよく生きていけるようにとがんばってきたけれど、母親自身が自分の終活を考えるこの時期を迎えてもなお、社会に安心して息子を託せない辛さを目の当たりにしました。
Q12 市長に伺います。市長はご自身の政治姿勢として「誰ひとり取り残さない」ことをつねづね語っておられます。市長は、この息子と母親に何をしますか。何ができますか。お答えください。
市長答弁
障害福祉の分野については、私が教育長時代から、迷う特別支援学校の保護者の皆様ともおつきあいがあった関係で、コミュニケーションをする機会があり、市長になる前から障害福祉施設、生活介護事業所等を含む、生涯福祉施設に訪問する機会もあり、また、市長に就任してからも、一日かけて各障害福祉施設を回ったり、また、車座集会ではサービスを提供する事業者の皆様の問題意識を伺うなど意識して取り組んでまいりました。
課題として思っているのは、高齢介護以上に一般の税でこの措置をしなければいけない分野であるために、どうしても施策の充実について、いわゆる前進的にならざるをえないところがありまして、私自身も非常に歯がゆい思いをしながらですね、ただ、一つひとつ、声を聞きながら解決をしていかなければならない分野だと思っております。
強度行動障害の方々についても、私も施設に伺って、それぞれの状態というのを拝見させていただいたこともありますけれど、今はおそらく高齢になった方々については県内の少ない施設に最後は預けられる方が多いかというふうに認識しておりますけれども、理想はやはり地域のグループホーム等で過ごすことができるようになっていくことが大事だと思っておりまして、その点についてはまさに松沢議員のご指摘の通り、担い手の問題等さまざまな質の充実と体制の強化というのが必要だと思っておりますので、この点については障害福祉計画でも掲げられましたので、私自身も先にたって進められるように頑張って参りたいと思います。
今日は当事者の母親が傍聴に来られているかと思います。市長から誠意ある答弁をいただき、それだけでもこの先に少し光が見えたかもしれません。これで、私の質問を全て終わります。ありがとうございました。