「近所の中国人が生活保護を不正受給している」だから排除!というアナタへ
…そもそも不正がまかりとおるのはなぜ?と考えてみよう
前の記事からの続きです。
そもそも、です。
生活保護は税金が原資ですから、しっかりと担当ケースワーカーが生活や就労指導や病気を治すための支援などをしなくてはいけません。
不正は本来、あってはならないことです。なのに、不正とみられる事実がある。それは外国人に限らず日本人でも同じです。
では、なぜ「不正」がまかりとおっているのか?
それはずばり、ケースワーカーの手が回っていない状況があるから、です。「見守る人がいない」から、不正が起きるんです。
ケースワーカーが減っているのか?
実は、全国的な人数としては微増傾向にあります。
ただし、現場の負担はむしろ増加しています。
厚労省の資料によると、平成21年から令和3年にかけてケースワーカー数は約4,300人増加。
しかし、担当世帯数は依然として高水準で、都市部では1人で100世帯以上を担当することもあります。
標準配置(都市部で80世帯に1人)を大幅に超える自治体も多く、
大阪市では高齢者世帯に対して「380世帯に1人」という異常事態。
尼崎市では共産党市議の質問で、ケースワーカー1人あたり140世帯もの担当をしていることが判明しました。
なぜ現場が回らなくなっているのか?
地方分権による「標準数」の形骸化
- 2000年の地方分権改革で、ケースワーカー配置の「最低基準」がただの“目安”に格下げされ、自治体の裁量に委ねられるようになってしまいました。
その結果、財政難や人事部門の制約から、必要数を確保できない自治体が増加してしまったのです。
公務員定数の抑制と非正規化
- 地方自治体では、どこも公務員数の抑制政策により、正規職員の増員が難しく、代わりに非正規・嘱託職員で対応する自治体が増加しています。
尼崎市もその流れの真っただ中にあり、例外ではありません。
ケースワーカーも非正規雇用ばかりになってきました。
非正規職員は待遇や研修の面で課題があり、経験の蓄積や継続的支援が困難になっており、十分な専門性を持たないケースワーカーがきちんとした指導、支援が出来ない状況もあるのです。業務の肥大化と専門性の不足
ケースワーカーは生活指導、就労支援、医療調整など多岐にわたる業務を担いますが、非正規化や人事異動で専門性が蓄積されにくい構造もあったり、さらに、生活保護以外の業務(障害福祉、子育て支援など)も兼務しているケースが多く、現場は慢性的に多忙…
不正受給が問題なのではなく、「見守る人」が足りない社会になっていることが問題なんです。
生活保護はそもそも“監視”ではなく“支援”の制度。
支える人が減れば、制度の信頼性も揺らぎます。
支援を充実させることで不正受給の増加を防げるし、ちゃんと運用できる。
現場を見れば見るほど、「支援の不足こそが不正の温床」っていう逆説にたどり着くんですよね。
“支援する人”がいないからこそ、不正も孤立も増えるんです。
支援があれば、誤った利用をしている人がいても早期に修正できる。
定期的な面談があれば、詐取リスクも減る。
ケースワーカーと受給者との信頼関係があれば、受給者の自立への道も見えてくる。そう思いませんか?
国の「地方自治体に責任丸投げ」方針のせいで、地方自治体が困窮して起きている「生活保護などの不正受給」の問題を、
外国人のせいにするのは、わたしは間違っていると思います。
見張る社会じゃなくて、見守る社会のほうが、ちゃんと制度を守れる。
それって、ちょっと意外だけど、ホントのことなんです。
あなたの「怒り」の原因、ちょっと深堀りしてみませんか?
別の景色が見えてきませんか?
引用・参照 弁護士JP