日本共産党尼崎市議団 2025年度予算案に対する意見表明
日本共産党議員団を代表し、本委員会に付託されました2025年度当初予算案等について意見表明を行います。
「尼崎を次のステージに」「誰も取り残さない」をスローガンにした松本市政が2年を経過しました。松本市長が2023年11月に打ち出した 「あまがさき子ども・子育てアクションプラン」では、尼崎市の子育て世帯に対する「経済的負担」「時間的負担」「心理的負担」の3つの負担を軽減するため、今年度2024年度から2026年度の3か年にわたり、50億円の集中投資をしていくということです。
先日の施政方針において松本市長は、来年度2025年度をこれまで実施してきた様々な政策の効果を市民に実感してもらうことを強く意識した「次のステージへの幕開けの年」にしていくと表明しました。
しかし2025年度の予算案を見ると、市長の公約でもある「18歳までの子ども医療費無料制度」については一定の前進が示されましたが、保育所と小学校の給食費の保護者負担増を求める内容があり、「経済的負担の軽減」に逆行するものとなっています。
来年度予算のポイントとして、歳出で民生費が前年度から56億円増加する一方、主要一般財源の歳入は2425億円。2年連続過去最高を更新しました。個人市民税や法人税が前年度比26億円増加し、872億円。財政規律、財政運営の目標とルールを踏まえた予算編成により、実質的な収支均衡を達成するとともに、目標管理対象分の将来負担は来年度末で909億円の見込みです。
900億円を切ることも目前になっていますが、これは長年にわたる行財政改革実行のもと、市民サービスの抑制や市有財産売却などによってたどり着いたもので、多くの市民のくらし、教育、福祉がこれまで犠牲になってきました。再び財政悪化の轍を踏まないことを基本とし、市民のくらし、福祉充実のための方向に大きく舵を切っていくことが必要ではないでしょうか。
それでは、2025年度予算の個別の問題について述べてまいります。
物価高騰対策
今、行政の課題、役割の第一は「物価高騰から市民のくらし、営業を守る」ことです。しかし、来年度予算案にはそれに逆行するような、軒並み値上げの項目が並んでいます。公立保育所、小学校の給食費保護者負担の値上げ、市民体育館や生涯学習プラザ利用料、弥生ヶ丘斎場の火葬費の値上げ、などです。当局はコロナ禍で見送ってきた料金改定を行う、などと言いますが、今こそ好転してきた市財政を使って値上げを見送るべきではなかったでしょうか。
物価高騰は収まる気配がありません。構造的には物価高騰を上回る賃上げや年金制度の拡充、消費税の減税など、国が率先して取り組まなければならないものですが、地方自治体の役割として今こそ市民のくらし
営業に寄りそい、手を差し伸べるべきです。
子どもの医療費助成の拡充
松本市長の公約である、18歳までのこども医療費無料化助成制度ですが、中学生、高校生の通院医療が部分的に拡充される提案が出され一歩前進しました。
未来ある子どもの健やかな育ち、健康を守ることを個人の責任にゆだねず、社会、行政が担っていくことが世の流れです。少子化対策と共に、憲法の幸福追求権、生存権に関わることであり、引き続き完全無料化に向けて制度の拡充を強く要望いたします。
就学前教育
市立幼稚園9園のうち、竹谷、長洲、小園の3園が来年度から廃止され、6園となります。少子化による定員割れなどを理由にしていますが、これまで3年保育をしてこなかったのが大きな原因です。残された6園も定員割れが続けば廃園になるおそれがあります。
これ以上公立幼稚園を減らさず、インクルーシブ教育と園和北幼稚園と武庫幼稚園の3年保育を公的責任で行うことを強く求めます。
学校施設整備
日本共産党議員団は学校の長期休暇を利用して、市内の建設後40年以上経過した小中学校を視察調査し、施設の老朽化を目の当たりにしました。いまだに洋式化がすすまないトイレ、歩くと軋み音がする廊下、建てつけが悪く開かない扉、雨もりの影響で腐食した天井、空調設備の無い給食室や技術室など、子どもたちが学ぶ学習環境の改善は急務だと感じました。
その後、わが会派の一般質問などで、少しずつ改善されました。トイレの洋式化率を2025年度末77%、2027年度末80%を目標とするとしていますが、学校現場からの要望に積極的に対応し、教員と子どもが安心して学べる学校環境を早急に整えることを強く要望いたします。
災害時多くの市民が避難することになる学校体育館の空調設備の導入を、市としても戦略的にすすめていくことが重要です。学校体育館の空調については、来年度小田中学校、立花中学校が工事実施、常陽中学校の設計が予算計上されています。国の補助金のさらなる拡充を全国市長会等で求めていただくことを強く求めます。
小中学校の就学前新入学用品費
小学校は1万3460円、中学校は1万2600円以上、近隣他都市より少ない就学援助費の新入学用品費について、わが会派の総括質疑で当局は「2026年度新入生の入学前支給分について、近隣氏の状況などを調査した上で、小学校新入生は5万7060円に、中学校新入生は6万3千円になるよう、それぞれ増額を検討したところ」と答弁しました。
検討だけで終わらせないことを求めます。そして再来年度からと言わず、補正予算を組んででも来年度の新入生に対して増額するべきです。
中学校部活動の地域移行
国の方針を受け、尼崎市でも2029年末までに中学校の部活動を地域に全面移行する方針が出されました。
教員の負担軽減となることはよいことですが、環境変化による子どもたちの戸惑いや不安、指導者の確保や資質の保障と処遇、保護者への経済的負担など、様々な課題が今後出てくると思われます。
教育委員会として、地域から出てくる要望に対してどのように応えるか、問題を学校関係者、地域と共有し、共同して問題解決に取り組む体制を構築すること、そして、子どもたちの安全、人権を守るため、責任をもって機敏で適切な対応をすることを求めます。
大阪関西万博への児童生徒無料招待事業
来月13日の大阪関西万博開幕まで1か月を切りました。
万博開催の成否と共に大きな問題になっているのが、県の事業としての「児童生徒の万博への無料招待事業」です。メタンガス爆発事故の危険性、困難な交通手段の手配と引率教員の負担、熱中症リスク、災害対策の不備など問題が山積していることで、大阪府の交野市や吹田市などでは、市として参加しない意向を表明しています。
尼崎教育委員会は、あくまでも各学校の自主判断にゆだねています。「テストラン」という事前の下見が来月行われますが、先ほど申し上げた様々な問題がある中、通常の遠足行事と同様に各学校の判断にゆだねるのは無責任ではないでしょうか。
刻々と日は迫っています。市としてこの事業への不参加を表明すべきです。松本市長も述べたように、各家庭にチケットを配布しそれぞれが自主的に万博に行けるようにすればいいのではないですか。勇気を持った判断をすることを切に願います。
AMAあまフレンドシップ事業
「尼崎の子どもたちが奄美群島を訪れ、地元の方々とのふれあいや豊かな自然・文化等に触れる機会を通じて、伝統と文化を尊重する心を醸成するとともに、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度等を育成することで次世代のリーダー養成を行う」という目的で社会力育成事業の主要事業に新たに挙げられていますが、対象となるのは市内17ある中学校生徒のうち、各校わずか2名、計34名の選ばれた生徒だけとなっています。
歴史的にゆかりのある地域と友好関係を構築することはいい取り組みだと思いますが、「次世代のリーダー養成」などという抽象的で曖昧な目的で一部の生徒だけが参加する事業は、教育の機会均等、公平性の観点からいって問題があると思います。
じんかい収集事業
能登半島地震では、地域の行政職員の減少が災害復旧にとって大きな障害になっています。来年度、本市では一般家庭ごみ収集車の直営車両を22台から5台減車して17台とし、正規職員を20名減員するとしていますが、災害対策の観点からもこれ以上の正規職員の削減は認められません。
効率優先を理由に本来市が担うべき業務までアウトソーシング化をすすめることは、慎むべきです。
ウオーターPPP
埼玉県八潮市の道路陥没事故は、全国の自治体で同様の事故が起こりうることを示しました。下水道事業などにおいては今後老朽化する設備の専門的な管理が必要ではないでしょうか。「民間事業者の創意工夫等を活用することで、効率的かつ効果的サービスの実現が期待でき」ると、市は言いますが、それによりこれまでのノウハウを持つ正規技術職員が民間の職員に置き換えられていけば、災害時の対応に大きな支障をきたすことが懸念されます。水に関わる事業は、人間が生きていく上で最も大事な事業であり、営利を目的にした企業に任せるのではなく、行政が責任をもって担っていくべきです。
地域交通
主要事業で、路線バスの利便性低下の影響が大きい園田地域で「AIオンデマンド型交通実証運行」が実施されます。
市バス事業が阪神バスに移譲されて以降、コロナ禍や利用者の減少、構造的な運転手不足があるとはいえ、市内のバス路線のネットワークは減り続け、園田地域だけでなく、築地や大庄など他の地域も公共交通のネットワークが脆弱になっていて、買物難民までうまれています。
特に高齢者にとって公共交通機関は、社会参加や通院などでなくてはならないものです。オンデマンド交通の試行実験にとどまらず、バス路線の充実を阪神バスと協議するなど、あらゆる方策を講じて公共交通の充実を図っていくことを要望いたします。
中小事業者支援
ロシアによるウクライナ侵略をはじめ、世界的な原材料高騰、かつてない円安による物価高騰が市内中小業者の経営を直撃しています。
今行われている確定申告では、インボイス導入後初めて1年通期の申告となり、小規模零細事業者やフリーランスは、「消費税を払いたくても払えない」、「廃業するしかない」という悲痛な声をあげています。
市の中小業者施策は、スタートアップやITを駆使した先進先端産業ばかりに偏っています。地域の市場や商店街、中小零細事業者の経営を応援する施策が足りていないのではないですか。
群馬県高崎市をはじめ、全国的にその経済効果が証明されている、住宅リフォーム助成、店舗リフォーム助成制度の実施を試行的にでもおこなって、経済効果の検証をすべきです。
国民健康保険
昨年12月2日から紙の保険証の発行ができなくなり、今年7月末までの期限後はマイナ保険証あるいは資格確認書しか発行されなくなりました。
保険料滞納者の生活状況の把握とともに、強権的な徴収や差し押さえは安易に行わないことを求めます。
また、国保の基金を保険料の引き下げに有効的に活用することを求めます。
介護保険
高すぎる介護保険料が市民のくらしを苦しめています。介護保険料軽減の方策を講じることを求めます。
また、事業者においては、昨年4月からの訪問介護事業の報酬引き下げにより、経営が成り立たなくなり廃業に追い込まれる事例が広がっています。
当局は来年度事業所へのアンケート調査を行うと表明しましたが、書面だけのやり取りだけでなく、しっかりと聞き取り調査を行うことを求めます。
生活保護行政
毎年の記録的猛暑で、エアコンを使用しないと命の危険にさらされる中、電気代を節約するためエアコン使用をためらう生活保護利用者がいます。そこに電気代の高騰をはじめとしたかつてない物価高騰が追い打ちをかけ、生活保護利用者のいのちと生活を脅かしています。国に対して引き続き夏季加算の創設を求めつつ、市独自の物価高騰支援策を講じることを強く要望いたします。
個人情報保護の問題
18歳と22歳の個人情報を自衛隊にCD提供していることについてわが会派は、市報などで周知すべきと何度も申し上げてきましたが、市は、「HPに掲載している。市報への掲載より効果的」という答弁に終始しています。情報提供を拒む市民の申請が18歳4件、22歳2件と低調な状況からしても、市民が自衛隊に自らの情報が提供されていることを知らない、と思います。
なぜそこまで市報でお知らせすることを拒むのでしょうか。そんなに難しいことではないと思います。個人情報保護の観点からも、早急に周知の強化を求めます。
モーターボート事業
公営ギャンブルである競艇は、射幸心をあおり、依存症を誘発し時に家庭崩壊さえ引き起こすものです。利用者のギャンブル依存症対策を更にすすめることを求めます。
長らくその収益に頼ってきた財政構造を改めるのは簡単ではありませんが、将来的なあり方を話し合う会議体を設けるなど、あり方そのものを検討する時期に来ているのではないでしょうか。
コロナ禍を経て、世界的な原材料、エネルギー高騰の情勢の中、市民は未曽有の物価高騰で日々苦しんでいます。
「次のステージの幕開け」を文字通り「誰も取り残さない尼崎」にするため思いきった財政出動で市民生活を守ることを強く求め、日本共産党議員団の2025年度予算案に対する意見表明といたします。