2024年3月予算議会 松沢ちづる議員 2024年度予算についての意見表明

 

 

日本共産党議員団の松澤千鶴です。議員団を代表して、本委員会に付託された2024年度予算案等について意見表明を行います。

 新年度尼崎市としては景気のわずかな復調で、個人・法人市民税の増を見込んでいます。しかし一昨年からの長引く物価高騰で、市民のくらしも地域経済も実感としては苦闘が続いているのではないでしょうか。

 新年度は市長が通年で編成に関わられた予算となります。市長はこうした市民の声を受止め、「対話重視」「誰一人とり残さない」を信条に、積極的な実行力を発揮された内容となっているのかが問われると思います。

 

まず、指定管理者制度と請負等契約についてです。日本共産党議員団の代表質疑で、これらに関わる公共調達基本条例に賃金条項を加えるなどの見直しをすべきと求めました。答弁はILOや国の労働政策審議会の考え方と異なるものであり、慎重に考えなければならないとのことでした。どこが異なるのか理解できません。代質で紹介した高知市や東京杉並区では、首長の付属機関として事業者団体・労働者団体・学識者からなる審議会を置き、労働報酬下限額の設定やその他の事項について調査審議することとしています。労働報酬下限額設定は、労働者に一定基準以上の賃金を支払うよう義務付けるもので、労働の質を高め、労働者とその家族の生活を支援します。事業者にとっても優秀な人材確保につながり、ひいては地域経済の活性化に寄与するものです。公共サービスの質の向上にもつながります。ぜひ、条例の見直しをしていただきたいです。

 

次に、小中学校施設整備事業ですが、新年度大幅拡充されることを評価します。私たちは昨年の意見表明で、老朽化が進む学校施設への対策を求めました。また、その後築40年を超える学校を現場視察し、議会で詳細を報告し早期の対策を求めてきました。3月補正11号で、国の交付金活用で事業が展開できるようになり、財政的に余裕ができます。予算案で示された整備箇所以外にも対象を拡げ、児童生徒・先生たちが安心安全に過ごすことができる学校環境づくりを進めるよう要望します。

また、総括質疑では、学校施設マネジメント計画に基づき新年度下坂部小学校の建て替えが予定されていますが、体育館の空調設備と共に断熱性能が確保できると答弁をいただきました。体育館に熱効率の高い空調設備を整えていく足がかりとなります。マネジメント計画では10年で後4校が建替え対象にあがっています。着実な実施と共に、対象外の学校についても手だてを講じることを求めます。

 

 

市立幼稚園3園廃止と就学前インクルーシブ教育の拡充の問題です。

これは、2023年3月制定された財政運営基本条例に著しく縛られたものであると実感しています。本市がこれまでに経験した財政的な危機を将来にわたって二度と招くことのないよう、過去の教訓を充分に活かしていくことで、健全な財政運営を維持し、市民の福祉増進を図ることを目的とした条例ですが、第4条新規施策の実施についてはスクラップ&ビルドの考え方が貫かれています。教育委員会は「枠配分予算の精査」で対応する、具体的には3園を廃止することで生まれて来る財源約2億円の範囲で、廃園による影響を受ける地域の子どもや保護者の支援、インクルーシブ教育の「拡充」を考えています。就学前教育ビジョンでどれだけインクルーシブ教育の重要性や市立幼稚園がその実践の拠点になると強調しても、財政規模は2億円までと縛られたら、やれることは制限されます。文教分科会で様々に疑問視する意見が出ていたのは当然です。

 また、市立幼稚園3園廃止について、教育委員会は市民合意形成の努力を怠ったと私たちは捉えています。3園廃止の条例は採択されましたが、改めて見直しを求めます。これから1年かけてじっくりと市民と対話し、就学前のインクルーシブ教育の在り方も協議すべきです。

 

 中学2年生で実施されているトライやるウィークです。

2023年は4校合計12人が自衛隊伊丹駐屯地に行っています。岸田政権の下、自衛隊は敵基地攻撃能力を保有し、アメリカと共に他国への先制攻撃も辞さない方向へ前のめりになっており、伊丹駐屯地もまた、そのための拠点の一つとされています。こんなところへ教育の一環として中学生を行かせることは問題です。

 

 自衛官の募集に係る個人情報の提供についてです。

 総括質疑で18歳と22歳の個人情報を自衛隊にCDで提供していることについて、市民周知をすべきとの質問に「市HPに連続掲載しており、市報などへの掲載より効果的」との答弁でした。市HPは自ら探していかないと、知りたいものに行きつきません。ところが、市民は自衛隊に個人情報が提供されていることなど、ほぼ知りません。だからHPで検索しようがないのです。

 自治体には、市民の個人情報を守る責務があります。自衛隊への情報提供は法定受託事務でやっているのであればなおさら、市民の個人情報が自衛隊に提供されることがあるとお知らせすることは、個人情報保護上前提として必要です。

 

 あまっ子ステップ・アップ調査事業についてです。

 一人一人の児童生徒の学力や学習状況を把握・分析するとともに、学力向上の取組の成果や課題を検証し、その改善を図るために実施していると教育委員会は説明されます。そしてその結果は、児童生徒の学習のつまづきを把握し、その解消を図るために教員が活かしていくものだといわれますが、児童生徒にとってはテストがまた一つ増えることであるし、教員は調査事業に頼らなくても日々のかかわりの中でどの子にも目配りすることで把握ができます。

 教員の仕事を増やし児童生徒のストレスを増すあまっ子ステップ・アップ調査事業は全国学力テストと共に止めるべきです。

教員の多忙化を解消し、少人数学級を進めることが重要です。そのためにも、教員の未配置状況を解消することこそ尽力するよう合わせて求めます。

 

 子どもの医療費助成についてです。

 18歳までの医療費無料化は市長の選挙公約です。多くの市民が期待するものであり、市長は「任期中に必ず拡充したい」と公言されていますが、新年度予算にはその反映が見当たりません。「就学前の医療費完全無償化が2023年7月からであったこともあり、更なる拡充に向けてはその効果を一旦確認・精査したうえで」と答弁されていますがとても漠然としており、市民に説得力はないと思います。効果とは何をもって図るのか、いつまでに確認・精査するのか、次年度中に議会に対し明確にお示しいただきたいです。よろしくお願いします。

 

 民間保育園の障がい児加算についてです。

 新年度事業でもこれまでと同様、1人につき70万円程度の加算で、これは3人受け入れてはじめて1人の保育士が雇用できる金額です。公立保育所では2人に付き1人の保育士を加配しており、昨年も指摘しましたが明らかに公私間格差が生じています。早急に是正を求めます。

 

 南武庫之荘保育所の民間移管についてです。

 代質、総括質疑でも取り上げた問題です。選定委員会の在り方について早急な検討を求めます。

 

児童ホームの開所時間の延長についてです。

保護者からずっと要望の強かったものです。願い実現で多くの保護者が喜ばれていることでしょう。今後、これを機に指導員などの処遇改善を検討すべきです。

 

交通政策推進事業についてです。

新規事業で、バス停の上屋やベンチの設置が補助金対象になります。予算規模を小さいですが、阪神バスに移譲後設置を求める市民の声になかなか迅速に対応できてこなかった現状を、変えていく足がかりができたと思います。評価します。

 

 住宅政策についてです。

 ファミリー世帯の転入定住を促進し、都市の体質転換を図る新規事業として子育て世帯向け住宅取得等支援事業が取り組まれます。これ自体反対するものではありませんが、老朽化した文化住宅などから解体のため立ち退きを迫られるのは低所得の単身高齢者が多く、彼らの住処の保障も並行して必要です。代質答弁では市営住宅でその対策をとっているかのように言われましたが、住み慣れた地域からは遠い市営住宅ではニーズに応えられないし、急に立ち退きだと言われても市営住宅は年3回しか募集をしていません。また、保証人のいない単身者の場合、入居を断られる民間借家も依然として多い状況です。住宅セーフテイネットづくりを県任せにしないで、市も積極的にかかわることを求めます。また、住宅の質を保つことは生活の質を高めることでもあります。低所得の市民向け住宅家賃補助制度の創設を求めます。

 

 県道園田西武庫線整備事業についてです。

2024年度工事が終結を迎えます。藻川工区の地域住民からは、永年にわたって反対の意思表示がされてきました。最後は土地の強制収容までいくのかいう局面までありました。整備事業により地元のみなさんが慣れ親しんでこられた疎水沿いの生活道路が寸断されることとなるなど、今後も市民感情にわだかまりが残ることは必至です。尼崎市には地元住民への丁寧な寄り添いを求めます。

 

脱炭素ライフスタイル推進事業・ゼロカーボンシティ推進事業についてです。

どちらも2023年7月発表の気候非常事態行動宣言に基づく脱炭素化促進事業ですが、新年度は環境省のモデル事業に選定された小田南公園のゼロカーボンベースボールパークへの整備に予算のほとんどがシフトされました。市民向けの促進事業費は6割カットです。市民や事業者向けの啓発や個別の行動変容を推進する事業予算は減額すべきではありません。

 

じんかい収集等委託事業についてです。

2025年4月から一般家庭ごみの収集を直営15%へ、現在の32%から半分以下にしていこうとしています。代質答弁では、大規模災害時には市職員が直接廃棄物の処理を行うことよりも、受援体制の構築や応援者への指示が重要な役割となる。必要最小限の人員・機材の精査を行う考えが示されました。今後、さらなる民間委託が進む可能性があることもうかがえます。

これでいいのでしょうか。災害時は日常ごみに加え大量に発生する災害がれきの処理が必要で、これができるかどうかが市民のライフラインを守り、復旧・復興のカギになります。大規模災害時は多くの自治体が同時に被災し、計画通りの受援体制が取れない場合があるでしょう。一定自前で処理できる力は備えておくべきです。よって、直営15%への削減は認められません。 

 

国民健康保険事業についてです。

国は今年12月2日から現行の紙の健康保険証は廃止し、マイナ保険証に一本化することを決めました。市は、12月1日にすべての国民健康保険加入者に1年間有効の国保証を郵送することにしたとお聞きし、とりあえず大混乱のリスクから多くの市民が守ることにホッとしました。今後、国民皆保険制度が壊されないように、医療機関からの意見や市民の受診動向などをしっかりと調査・聞き取りをするよう求めます。

 

介護保険事業についてです。

新年度から65歳以上の介護保険料が大幅に引上げられます。早速市民から困惑と怒りの声があがっています。また、要介護状態になっても在宅で暮らす大きな支えとなっている訪問介護事業所の報酬単価が引き下げられます。総括質疑でも指摘しましたが、推計で市内120事業所が

現に赤字経営であり、報酬単価引き下げはさらに経営を圧迫し、倒産廃業を余儀なくされる事業者が出て来ると思われます。そうなれば介護難民が発生し、介護離職に追い込まれる事態も増えます。

市長は、全国市長会を通じて国に申し入れをされたとのことですが、尼崎市民にとって介護保険の今回の見直しは受け入れがたいものです。ぜひ、市民の悲鳴を国に届けてください。再三にわたる国への申し入れを求めます。

 

下水道事業についてです。

市民のライフラインを守り、被災時市民生活の早期の復旧・復興に欠かせない事業です。代質で公共がおこなうべきとの問いに、「経験豊富な技術職員の減少」を一つの理由にあげて、だから官民連携によって課題解決していくと答弁されています。経験豊富な技術職員を失ってきたのは、PPP/PFIをどんどん進めてきた結果ではありませんか。

災害時、自らが被災者であっても公のために働く使命を果たすのが公務員です。民間業者といくら被災時対応の協定書を交わしても、民間業者にその使命感は期待できません。いまからでも、北部浄化センターとポンプ場は直営に戻すべきです。

 

モーターボート競走事業についてです。

公営ギャンブルであるモーターボートは、射幸心をあおり時として依存症を誘発し、人を不幸にするものです。長らくその収益に頼っている市財政の構造を改めるのは容易ではありませんが、将来的な在り方を検討する会議体を設置することを求めます。

 

以上で、日本共産党議員団を代表しての意見表明を終わります。