2023.3月議会 松沢ちづる議員の総括質疑と答弁要旨

1 学校プール開放の廃止について

 そもそも学校プールを夏休みの一定期間開放してきたのは、2008年市内7つの公園にあった市民プールを老朽化のため5か所廃止した際、夏休みに子どもたちが水に親しむ機会を保障するために行われてきたものです。

今回の事業廃止理由は、地域団体などによる運営が困難になってきたことと利用者が減少してきたためだとのことですが、では、当初の目的であった子どもたちが水に親しむ機会の保障はどうなるのでしょうか。

 

Q1廃止によって、どこでどのように「水に親しむ機会」を保障するのですか

 

答弁要旨

小学校の夏休みの水泳指導期間以外では、有料となりますが、市内の施設では北雁替公園市民プールやサンシビック、尼崎スポーツの森アマラーゴなどのプール施設をご利用いただきたいと考えています。

今後もこれまで行ってきた尼崎スポーツの森のプール施設への市内全小・中学生向け無料招待券酉箴布を継続して行っていけるよう働きかけるなど、既存のプール施設との連携を行ってまいります。

以上

 

現在市民プールは北カリカエプールと芦原プールの2か所だけです。築49年の芦原市民プールは老朽化し、再整備のため今年も閉館が続く予定です。子どもたちが楽しめるファミリープールとしてしっかりと整備し、一刻も早く再開すべきです。

 

2 保育支援者の配置補助について

 

保育士確保のためには、保育士の処遇改善が喫緊の課題となっています。市はその一つの解決策として、保育士支援者の配置補助事業を新規事業としてあげています。

日本共産党議員団は、いくつかの保育園に直接お聞きしました。「すでに園独自で人を雇っているので、補助金が出るのはありがたい」「ないよりましだ」といったご意見と共に、「若干の負担軽減にはなるものの、保育士の処遇改善には程遠い」といったご意見もありました。

また、法人園・認定こども園・小規模保育事業施設を合わせれば事業対象者は120を超えますが、そのうち63園を目標としていること自体疑問も感じます。

 

Q2 49,050千円の予算額で申請施設63園を目標としていますが、現場のニーズに合致していると考えていますか

 

答弁要旨

この事業は、法人保育園会からの要望を受け、意見交換を行う中で、保育士の負担軽減に有効であるとの観点から、新規政策として予算提案に繋げたもので、予算成立前ではありますが、同制度に関して、法人保育施設等から問い合わせもあり、法人保育園会など現場のニーズにも合致しているものと考えています。

以上

 

 

保育士資格のない支援者で担える業務範囲は限られていて、根本的な保育士の処遇改善にはつながりません。保育現場では日々安心・安全な保育環境の下、子どもたちの豊かな育ちを支える実践が行われていますから、そこを直接支援する保育士の賃金アップや加配につながる事業にこそ予算を配分すべきです。

 

 

3 法人保育施設等特別保育事業等補助金について

 

この補助金の中に、障害児保育事業補助が含まれています。現在障害児1人に月74,140円の加算がされていますが、この単価は20年変わっていません。

障害をもつ子どもの対応には保育士がつきっきりで当たる必要があり、公立保育所では障害児2人に1人の保育士が加配となっていますが、法人園では障害児一人につき74140円ですから賃金べ一スにすれば障害児3人に保育士1人の加配となり、明らかに公私間格差があると思います。

 

Q3当局に公私間格差の認識はありますか

 

答弁要旨

公立保育所におきましては、概ね障害児2名に対し保育士1名とする配置を標準としております。一方、法人保育施設においては、加配保育士の有無にかかわらず、法人保育施設からの申請等に基づき、市において障害児として判定された児童1人当たり、月額74,140円を補助する制度を活用し、障害児保育に対応されています。

障害児若しくは気になる児童の態様も様々であり、その実(ミ)情に即して各法人保育施設において、保育士の配置がなされるなか、一概に公私間格差があるとの認識はございませんが、障害児若しくは気になる児童が多数在籍していることは認識しており、障害児保育推進の観点から、今後もよりよい保育士確保策を検討してまいりたいと考えております。

以上

 

 

宝塚市や西宮市では、障害児を2人受け入れる場合保育士1人加配できる補助金が交付されています。健康福祉分科会の質疑では、他市が保育士を加配してはじめて補助金が支給されるのに対し、尼崎市は加配していなくても1人障害児を受け入れれば74,140円が支給となり制度が使いやすくなっているといった当局説明がされました。しかしこれは、全く現場の状況をみていないものです。

代表質疑で紹介したように、尼崎自治体問題研究所の調査結果によれば、保育現場ではすでに安心・安全の保育環境をつくるために保育士配置基準以上に保育士を配置し、公定価格や他の補助金などを基に保育士などの賃金を支払っています。だから、法人園では例えば10人分の賃金見積もりで13人分の賃金にあてざるを得なくて、賃金が安い訳です。

市はこの現状に対し、しっかりと対策をとるべきです。まずは、公私間格差の是正に取り組むことを求めます。

 

Q4 格差是正し、障害児2人に1人の保育士が加配できる加算額11万円に増額すべきではないですか

 

答弁要旨

来年度予算において、障害児保育事業補助金につきましては、障害児1人当たり月額74,140円を単価として算定し、153,619千円を計上しております。

この単価を月額110千円に置き直した場合、227,920千円となり、同事業は市単独事業であり、全額一般財源を充当することから、74,301千円の財源が不足することとなります。

今後、保育現場のニーズや施策評価を通じて費用対効果や優先順位等を踏まえ、判断してまいります。

以上

 

4 重層的支援について

 

地域住民の複雑・複合化した支援ニーズに対応するために2022年度から重層的支援の取組がスタートしました。私は議員になる前、障害者福祉・高齢者福祉の現場で30年近く働いていましたから、一筋縄でいかない解決困難事例をたくさん経験しました。それだけに、重層的支援の展開を、期待を持ってみてきまし

た。しかし、多種多様な問題を様々な市民窓口で受ける市職員の側に、重層的支援についての理解ができていないのではないかと思います。

昨年の9月議会で、私はある生活保護利用者が水道料金滞納で水を止められた事例を紹介しました。料金担当課はルールに基ついたていねいな滞納指導をしたけれど、期日までに料金が収納できなかったので水を止めたとの説明でした。生活保護を利用されていることも、同居の娘さんが統合失調症で世帯主の母

親が振り回されていたことも料金担当課は知らず、機械的な対応になっていたようです。保護課の担当者は「こちらに投げかけてもらえたなら、水が止まる前に対応できていたのに」と言われていました。

2月議会で訴えの議案で上がってきた市営住宅のゴミ屋敷の事例は、10年の経過があると聞きました。様々な問題が背景にあると思われます。

こうした問題に対して、まさに担当課だけが悩み続けるのではなく、庁内の他の部署と情報交換し助け合うことで、問題解決の展望が見えてくると思います。

様々な事情から滞納になった市民は、支援を求める市民でもあります。滞納整理を粛々と進めるだけでは、支援が必要な市民に手を差し伸べることはできないと思います。

 

Q5 第2次債権管理計画は適正管理によって各債権の収納率の向上を目的とし

ていますが、そこに重層的支援の視点があるのですか

 

答弁要旨

法令の規定により滞納者の方の情報を共有することができる市税や国民健康保険料などの債権につきましては、生活保護受給者の情報などを共有しているところでございますが、一方で、全ての債権について生活保護の受給といった滞納者の方の情報を共有することはできないこととなっております。

なお、第2次債権管理推進計画には、具体的な重層的支援についての内容は盛り込んではおりませんが、滞納者の方々から債権所管課に対し、納付についての相談があった際は、現在の生活状況などについてお聞きしたうえで、滞納額の減免適用の有無についての確認や分割による納付の相談を行っております。また、滞納者の方々の状況によっては、生活保護、生活困窮者自立支援の制度説明や相談窓口を案内することにより支援してまいります。

以上

 

 

ぜひ、全庁横断的な重層支援に関わる研修を重ね、職員のスキルアップに努めていただきたいです。総務分科会では職員研修について総論的な説明しかお聞きできていません。

 

Q6 全庁横断的な重層支援についての職員研修を進めるべきだと思いますが、

計画はありますか

 

答弁要旨

重層的支援推進事業を進めていくにあたっては福祉部局だけでなく、税、国保、住宅、上下水道、教育部局などによる「重層的支援推進会議」を設置し、包括的に対応した事例の共有や連携促進に向けた協議をスタートさせるなど、庁内横断的な支援体制の構築に向けた取組を進めているところです。

こうした仕組みを機能させるためには、職員が人権尊重の理念を持って取り組んでいくことが重要ですので、どのような部署であっても、職員ひとり一人が、担当業務を遂行する際に人権に配慮がなされているかという視点を持って取り組み、状況によっては支援の必要性に気づくことができる、このような人権感度を高める研修に取り組んでまいります。

以上

 

 

5 高齢者の住宅施策について

昨年の予算総括質疑でも高齢者の住宅施策についてお聞きしています。今回は代表質疑で市営住宅の施策を尋ねていますので、私は民間賃貸住宅に絞ってお聞きします。

昨年に引き続きこのテーマをあげるのは、本市の特徴として、単身高齢者の民間賃貸住宅の割合が県全体の倍以上であるからです。

本市の「住まいと暮らしのための計画」では、高齢単身者も住宅確保要配慮者と位置付けて、居住の安定確保のために民間賃貸住宅を活用したセーフティネットの促進を行うとしています。2019年12月にはセーフティネット住宅の登録が1戸だったのが、2022年3月には154棟1,323戸になっていると答弁され

ています。また、セーフティネット住宅の登録が増えたことに加えて、連帯保証人がいなくても国に登録された保証会社を利用することで入居できるようになっているので、高齢者の住まいの確保については依然と比べて改善してきているとも答弁されています。

 

Q7 高齢者の住まいの確保のしやすさについて、その後の進捗状況はどうなっていますか

 

答弁要旨

高齢者などの住宅を、自力で確保することが困難な方が、入居しやすいセーフティネット住宅の現在(2023年3月)の登録件数は、159棟1,377戸となっており、これは昨年度(2022年3月)より5棟54戸増加しております。

また、入居契約の際に必要となる、連帯保証人がいない場合にあっても、保証会社を利用することができ、その登録件数につきましても、全国で利用できる保証会社が92社あり、利用しやすい環境にあると考えております。

以上

 

 

私は、日々市民からの生活相談をお受けする中で、住まいの確保がしやすくなっているとの実感は全くありません。物件があっても保証会社に断られ契約ができない、生活保護利用者の入居は管理人受け取りの生命保険にいやおうなく契約される、やっと見つけた住宅は共同トイレで風呂無し、それでも家賃は生活保護の住居手当と同額の42,500円、こんな状況がまかり通っています。決して高齢者が安心・安全に住めるものではありません。市の指導が必要ではありませんか。

 

Q8 市はセーフティネットの構築について、具体的に何をしていますか

 

答弁要旨

適正な水準の住宅を自力で確保することが難しい方々が、安定して住むことのできる住宅を見つけるためには、公的賃貸住宅と民間賃貸住宅の一層の活用が必要であります。特に民間賃貸住宅では、住宅確保要配慮者の入居に対するオーナーや管理会社の抵抗感を解消する取組が必要であると考えております。

そうしたことから具体的な取組としましては、住宅確保要配慮者の相談対応が可能な不動産仲介業者を、福祉部局とも共有して、気軽に相談できる体制を整えております。

また、本市の特徴として、大手賃貸住宅事業者が取り扱っている物件をすべてセーフティネット住宅として登録いただいている状況にあることから、他の賃貸住宅事業者に対しても、同様に登録をしていただくよう働きかけているところであります。

いずれにいたしましても、住宅確保要配慮者が安定して住宅を確保できるよう、先進事例も研究しながら取組を進めてまいります。

以上

 

新年度新規事業に住環境アドバイザリーボードの設置がありますが、眼目はファミリー世帯の定住・転入です。高齢者の住環境についても積極的に対応すべきです。

 

6 国民健康保険について

 

新年度保険料が上がると予測されています。物価・電気・ガス代などの高騰がす市民生活を直撃しており、加えて国保料があがれば国保加入者にとってその負担感はますます大きなものとなります。更に国保料の滞納がある世帯は、滞納分と新年度の保険料を併せて納めなければ健康保険証を手にすることはできま

せん。保険証がなければ、受診したとき10割負担になります。

一方で、国民健康保険は国民皆保険制度を支える重要なポジションにあり、市町村にその運営が任されています。市は事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民保健の向上に寄与する責任がありますが、お金がなくて滞納となり保険証を持てない人は、受診が必要でも受診をためらい手遅れとなる事例が

毎年民医連から公表されています。

 

Q9 国保料を払えない人に国保証を渡さないのは、社会保障及び国民保健の向上に反しているではないですか

 

答弁要旨

被保険者から保険料の納付相談を受けた場合におきましては、個々の事情をお聞きする中で、真に困窮されていると考えられる方に対しては、分納の取扱いを行うなど個別の事情に配慮した対応を行っているほか、医療機関の受診に急を要するケースなどは、その場の状況に応じて、保険証を交付するようにしております。

今後におきましても、保険料の支払いが困難であるという方に対しましては、引き続き、可能な限り個々の事情に寄り添う、丁寧な対応に努めてまいります。

以上

 

横浜市は2016年資格証明証を、2019年には短期保険証の発行を止め、全ての国保加入者が正規の保険証を手にするようになっています。なぜ発行をゼロにしたのか。国は資格証発行の際には機械的な運用を行うことなく、保険料を納付できない特別な事情の有無を把握するよう求めています。横浜市は国の通知通りに対応すれば多くの滞納者との愚や訪問など事務量が膨大となるため、機械的な資格証・短期証の発行をせざるを得なかった。発行業務と発行後の対応に人手が取られ、保険料滞納者への対応が十分に行えなかった。また、資格証・短期証を発行しても突如保険料を払えるようになるはずもなく、保険料の回収率が引きあがりはしない。こうした事実を振り返り、運用の見直しをした結果、資格証・短期証の発行がゼロとなりました。

尼崎市も横浜市と同様の日々が延々と続いているのではないですか。

 

滞納処分の在り方については、きちんと払える資力がある方には保険料を払ってもらうのは当然のことです。しかし、どうしても払えない世帯に対して、保険料の滞納を続けさせることは適切な対応ではありません。払えない保険料であれば保険料の滞納処分を執行停止にして、資力に応じた保険料を払っていただく、これが本来あるべき滞納整理ではないでしょうか。

 

Q10 横浜市のように、資格証・短期証の発行そのものについて運用の見直しを検討すべきではないですか

 

答弁要旨

①短期被保険者証は、保険料に滞納がある世帯との納付折衝等の機会を確保するために市町村が発行する、通常(1年間)より有効期間が短い保険証であり、また、②資格証明書は、短期被保険者証交付後も、災害や病気などの特別な理由が無い中で、滞納が継続している世帯に対して交付するもので、

医療機関窓口での一部負担割合は10割となるものでございます。

議員ご指摘のとおり、短期被保険者証や資格証明書を発行していない自治体もあると聞き及んでおりますが、本市国保における被保険者の滞納状況は様々であり、一律的にそうした取扱いを行うことは、保険料負担の公平性から見ても課題があるものと認識しております。

一方で、マイナンバーカードと保険証の一体化導入等に伴う、国の制度改正も予定されていることから、それらの動向等も注視する中で適切に対応してまいります。

以上

 

国保料が協会けんぽなとべて高いのは、所得割以外に世帯ごとに加算される平等割・本市では現在

万円になっています。また、世帯員一人一人に加算される均等割り・本市では現在1人年認万円です。こうした加算があるからです。全国市長会などを通じて尼崎市も国に補助金の増を求めていることは承

知していますが、国は昨年就学前の子どもに限って均等割りをSO°/o軽減することを決めただけです。

国レベルでの国保料軽減策を待つのではなく、物価高騰などが市民生活を直撃している今だからこそ、市独自での国保加入者の生活と健康を守る支援が求められています。