2022.3月議会 山本なおひろ議員の2022年度予算並びに関連議案に対する意見表明

日本共産党議員団の山本なおひろです。

会派を代表して2022年度予算並びに関連議案に対する意見表明を行います。    

 

 

【まず財政運営について一言申し上げます】

 2022年度予算は、先行会計繰出金を含めて収支均衡がとれた財政であると説明されています。

 また、コロナ禍にもかかわらず税収が増え、市債残高見込みも目標の1100億円を下回り973億円を達成するとのことです。これまで市民は財政難を理由に様々な公共サービス切り捨てに我慢を強いられてきました。これからは、公債返還と並行して市民福祉増進のため、市民サービス充実の施策を行う積極財政に切り替えていくべきだと思います。

 

【新型コロナ対策】

2021年度もコロナウィルス感染症が世界中で猛威を振るいました。

デルタ株に続き感染力が非常に強いオミクロン株が蔓延し、子どもたちにまで感染が広がり、各地の小中高校で学級閉鎖が頻発、多くの保育所・園では休園を余儀なくされました。家庭内感染により職場を休まざるを得ない方も続出しました。医療がひっ迫し、感染しても入院できない、自宅療養が当たり前になる異常な事態が横行しています。

稲村市長は、施政方針で「コロナ禍が2年を超え、その対策に注力するとふれるだけで、具体的な感染対策について述べられていません。変異株のまん延で、第6波に続き第7波の到来も予見される中、何よりも市民のいのちをコロナから守るための対策を最優先に示すべきではないでしょうか。

 わが党は、コロナ発生当初より、感染拡大防止のための社会的検査、PCR検査の充実、徹底を幾度となく要望してきました。無症状の感染者を未然に発見し、感染経路を割り出し、クラスターの発生を防ぐために重要であると考えるためです。兵庫県がやっと無料で受けられるPCR検査を市内の薬局を中心に行いましたが、第6波の感染拡大とともに検査キットが不足し、受けたくても受けられない状況です。コロナの終息がまだ見通せない中、国や県に引き続き検査キットの確保を要望していくべきです。そして、いつでもだれでも何度でも受けられる検査体制を構築し、市民に安心してもらうことが必要です。特に医療・介護・保育・教育などのエッセンシャルワークの施設で定期的な検査を実施することが引き続き必要です。

 保健所の体制強化も急務です。

 この間、保健所職員の増員がされましたが、現有職員数を基本に災害時事業継続計画BCPにより行っているものです。新型コロナ禍により感染症にもろい社会が露呈しました。これを教訓にして今こそBCPでなく、恒常的に保健所職員の増員を行うべきです。

 国のエッセンシャルワーカーに対する賃上げについてですが、一人当たり9千円と雀の涙であり、一桁少ないといわなければなりません。保育の現場をはじめ、多くの職場では配置基準以上の人員を雇用しているため、9千円にさえ満たない賃上げとなります。コロナで疲弊するエッセンシャルワーカーの方たちに報いるためにも、市独自の支援策が必要だと考えます。

 

 

【中小業者対策】

 市内の中小業者は、何度も発出される緊急事態宣言、まん延防止等重点措置によって、存続の危機に瀕しています。飲食店をはじめ、多くの事業者にこれまで持続化給付金、家賃支援金月次支援金などが支給されてきましたが、自粛に見合った十分なものとは言えません。尼崎市も、つなぎ資金や事業継続支援金などで事業者を支えてきました。2022年度の主要事業で、「製造業生産性向上支援事業」「中小企業BCP策定にかかる補助金の支給」などの事業者施策がありますが、市場商店街や地域に根を張って商売をされている方への支援も必要です。機動的で迅速な支援を引き続き求めます。

 消費税のインボイス制度実施が2023年から実施されようとしています。インボイス制度はフリーランスをはじめ年間売り上げ1000万円以下の消費税免税業者に打撃を与えるもので、インボイス(適格請求書)に記載する国が割り当てる事業所番号がなければ取引から排除されることになり、さもなければ消費税の課税業者になる選択を迫られます。コロナで営業が立ちいかなくなる中、来年からこの「インボイス制度」が導入されれば、ますます倒産・廃業する事業者が増えることが予想されます。市として政府に中止または延期を強く求めるべきです。

 

 

【国民健康保険・介護保険】

国民健康保険制度は、国民皆保険として、誰もが安心して医療にかかれる、社会保障制度の根幹をなすものであり、国保法第1条では「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」と明記されています。

 兵庫県は、2027年までに同一所得同一保険料、完全統一をしていくということですが、尼崎市では今より引き上げられる方向であると聞いています。

 また、2021年度に飲食店をはじめ、市内の事業者はこれまでになく多くの給付金をもらいました。その多くが生計費に消えていく中、税務当局はこれらの給付金を所得として課税し、例年になく高額な所得税と住民税負担となります。その上、国保料についても所得割が高額になり、来年度の保険料が最高額に近くなる事業者が大量に発生する見込みです。給付金をたくさんもらっているから払えるはずだと一面的にとらえず、個々の営業と生活の実態によりそい、ていねいな納付相談を行うよう求めます。

 介護保険料は第8期の改定がされましたが、第1段階から第6段階の65歳以上の被保険者は全体の8割近くを占めています。年間の保険料が2か月分の年金額に及ぶ人もいて、高すぎる保険料が市民生活を脅かしています。

高すぎる国保料、介護保険料引き下げのための一般会計からの繰り入れを行うとともに、県や国に対し全体的な保険料引き下げを求めていくよう要望いたします。

 

【こどもに関する問題についてです】

  ・こども医療費助成拡充について

 子どもの医療費無料化助成制度が、部分的に拡充されました。小学1年から中学3年までの通院の無料化は、非課税世帯のみでそのほかの世帯は1医療機関1回400円または800円、月2回までというものです。稲村市長ものべられたように、「どこに住んでいても同一の所得なら同等サービスを享受できる」ことが本来であると思います。今回の拡充を一歩前進として、早期に完全無料化の実施に向けて取り組んでいくべきだと思います。

・保育所、児童ホームの待機児童対策と職員の処遇改善

 保育所の待機児童対策では、公立保育所として残す老朽化した杭瀬・次屋・武庫南保育所の建て替え計画を策定し、ゼロ歳児保育を含めた定員の拡大を行うべきです。職員の処遇改善、配置基準の見直しも必要です。勤務時間や賃金を改善すれば、おのずと保育士が集まります。安定した保育の質の向上と保育士の働き方の改善を求めます。

児童ホームの待機児対策についてですが、民間の児童ホームで解消するのではなく、公立公営の児童ホームを増やし、抜本的に待機児解消を進めることを求めます。児童ホーム職員の処遇改善とともに正規職員の増員を求めます。

  ・いじめ・体罰問題

 この間、市立尼崎高校、双星高校などでいじめ・体罰問題が顕在化しました。学校と教育委員会の連携、事実関係の速やかな把握と共に、「子どもの権利擁護委員会」が機能する体制を強化することと、子どもたちに権利擁護委員会の存在、役割がわかるよう、周知すること求めます。

  ・GIGAスクールなどICT教育について

     小中学校の生徒に「一人一台のタブレット端末」を配備するGIGAスクール構想ですが、コロナ禍においてその有用性が喧伝されている一方で、過度なICT活用はむしろ学力の低下を引き起こすデータがあります。2015年にOECD(経済協力開発機構)のPISAピザ(国際的な学習到達度調査)調査委員会がまとめた加盟国の学校でのICT活用と教育効果に関する報告書では、読解力、数学、科学の3領域でコンピューターの利用時間が長いほど学力が低下しているとのことです。道具としてのコンピューターに過度に依存せず、対面授業を基本に、生徒にとっても教員にとっても余裕のある教育環境、少人数学級の推進こそすすめていくべきです。

  ・自衛隊への個人情報のCDデータ提供

 昨年、新日本婦人の会の方たちがこの問題で市当局とこんだんをしました。市が

18歳と22歳の市民の名前と住所を、自衛隊の求めに応じCDデータで提供していることについて参加者から「個人情報を本人に知らせないまま、CDデータを提供するのは問題だ」との意見がでました。当然のことです。しかし市は2022年度も「自衛隊から個人情報の提供依頼があれば応じる予定です」との回答をしました。本人の同意を得る以前に、そもそも知らせることなく勝手に、自衛隊に個人情報をCDデータで提供することはやめるべきです。市民が自らの情報の提供を拒否できる制度を作るべきではないでしょうか。

  ・生理用品の全小学校、中学校、高校への配置

 総括質疑で質問しましたが、一定学校の女子トイレに生理用品が常備されたことは非常に喜ばしいことです。引き続き小中高全校に常備していくことを推進していっていただくよう要望いたします。

 

【阪急武庫川新駅建設計画】

  昨年出てきた本計画ですが、「建設ありき」で進めることは戒めるべきです。コロナ禍で苦しむ市民のニーズにあっているのか、アンケート調査も半径1キロメートルという狭い範囲でなく、阪急沿線各駅、武庫之荘、塚口、園田の周辺住民にも対象を広げるべきです。 

  本来なら、計画を発表する前に広く市民に意見を聞くべきであり、順序が逆ではないでしょうか。私たちは、市民にとって真に必要な社会インフラ整備は大いにすすめるべきであると考えますが、「阪急武庫川新駅」建設事業については、財政面、市民の要求の面で慎重に議論すべきであると思います。

 

 

【ジェンダー問題】

 市民の運動により、ジェンダー平等の考え、性による社会的役割の差別、特に女性に対する差別と性的マイノリティの方への差別を許さないという認識が社会に浸透してきました。しかし依然として男女の賃金格差、雇用形態の格差があります。 

 市の策定する「第4次男女共同参画計画」の取り組みをすすめることは益々重要となっています。女性管理職の積極的登用、正規職員の割合を高めること、パートナーシップ条例のさらなる制度拡充などを通じて、誰もが自分らしく生きられる、多様な生き方ができる社会をつくることが重要だと考えます。

 

【給食センター】

     中学校給食が今年1月からスタートしました。自校調理方式でなく、PFIによるセンター方式であることは残念ではありますが、保護者の負担が減ることは喜ばしいことです。給食に求められることは何よりも「安全・安心・おいしい」ことです。今後の運営については15年間委託するとされる「スクールランチ株式会社」に対して、内部監査だけでなく権限を持った第3者機関を設置し、経営と管理運営の中身をチェックする仕組みをつくるべきだと考えます。

 

【自治体アウトソーシング】

これまで様々な分野で民営化という名の市民サービス切り捨てが行われてきました。公立保育所は45か所から9か所に減らす計画など、多くの公共施設が民間委託、アウトソーシングされてきました。市民生活の重要なインフラ設備である下水処理場までも民間委託がすすめられ、災害などの緊急時に対応できなくなることを危惧します。

2009年に国で定められた「公共サービス基本法」に基づく総合的な検証を今こそ行うべきです。

 

【モーターボート競争事業について】

モーターボート競争事業については、住民合意である年間180日を超えての開催は問題があります。また、コロナ禍で増収になったことを手放しで喜ぶことはできません。それにともなって、ギャンブル依存症になる市民の増加が懸念されるからです。市として責任をもって依存症対策に取り組むべきです。

 

【阪神バスについて】

市民の足としてのバス路線は公共交通の要です。コロナ禍で阪神バスの経営も赤字となり、2021年度は市財政から協定での取り決め額の上限1.9億円が助成されました。

赤字により不採算路線の切り捨てにつながり、市民の足が奪われることがないよう、阪神バスとも協議し、公共交通機関の責任を果たすよう求めます。

 

【デジタル化・災害対策について】

 国は2022年度に殆どすべての国民にマイナンバーカードの普及をすすめるとしています。しかし、尼崎市のマイナンバーカード普及率は42.19%で、現実問題全市民に普及することは絶望的とのことです。普及が進まない原因は、個人情報の漏洩、民間による利活用の危険のあるマイナンバー制度に対する市民の不安が払しょくされないからではないですか。今後も拙速なマイナンバー普及を戒めるべきです。

 FMあまがさきの廃止についてですが、デジタル障壁のある高齢者などに配慮し、存続の可否を含め市民の意見を広く聞くとともに、災害伝達システムとしてのアナログ媒体を何らかの形で残すべきです。費用対効果だけを考えるがあまり、デジタル情報へのアクセスが困難な市民の選択肢を狭めるべきではありません。

 

 

【園田西武庫線について】

 県道園田西武庫線整備事業は、現在藻川にかかる橋梁が完成し、東園田地域の基礎工事が進んでいます。しかし周辺住民は土地の提供については合意がされていません。市は市民と県との調整を行う役割を果たし、市民合意が得られるまで事業を凍結すべきです。

 

【尼崎城について】

 尼崎城が民間の寄附により建設され3年が経とうとしています。コロナ禍の影響はあるにせよ、入場者の大幅な落ち込み、リピーター確保の困難さを鑑みれば、尼崎城を中心とした観光戦略で稼ぐことと委託のあり方を見直して、観光客目当てから、市民の文化的施設として維持管理する方向に転換すべきではないでしょうか。 

 

 

【市営住宅について】

 代表質疑で「市民のニーズは多様な住宅、高齢者専用住宅などを求めており、市営住宅の削減計画を改めるべきではないか」と質問し、それに対して当局からは「全体の管理戸数を削減していくが、バリアフリーをはじめ高齢者や障害者の単身世帯の建設は進めている」と答弁されました。市営住宅戸数が多い尼崎市ならではの優位性を残すことこそ、市民のニーズに合ったものであり、「質だけでなく量も」増やしていくべきです。

 

【市民プールについて】

 尼崎市にはかつて7つの公営プールがありましたが、今では芦原とカリカエの2つだけになってしまい、子どもたちが水に親しむ機会が奪われ続けてきました。

また、FM計画により芦原プールの50メートルプールとその階下の更衣室が取り壊されるため、プールが休止となっています。今年の夏に向けて、仮の更衣室の設置も含め早急に対策を施し、子どもたちにプールを提供すべきだと考えます。

 

 

以上で日本共産党議員団の意見表明を終わります。ご清聴ありがとうございました。