松沢ちづる議員の総括質疑と答弁要旨です。
・新型コロナウイルス感染症対策について
・下水道ビジョン・北部浄化センター等の民間委託について
・尼崎城を中心とした観光戦略について
・高齢者の住宅支援について
<新型コロナウイルス感染症対策>
2月3日付けの中核市市長会が国に対し出された要望書「市民生活を守るための新型コロナウイルス感染症対策の見直しに関する緊急要望」では、「保健所を設置する中核市の市長として、新型コロナウイルス感染症対策を持続可能なかたちで継続するとともに、市域の社会・経済活動を維持することで、市民の命・健康と、市民が安心して暮らせる社会とを、ともに守らなければならない」と、決意が述べられています。共感するものです。
そのうえで、要望書では、「病原性の低い変異ウイルスによる感染拡大期には、膨大な数となっているすべての陽性者に対して行う積極的疫学調査や療養支援のほか、感染症法に基づく就業制限や入院勧告、感染症の審査に関する協議会の審議・意見聴取を実施することは、保健所の対応職員を増員しても極めて困難である」として、行政資源・医療資源を重症化リスクの高い方への対応に集中させることができるような制度設計を要望されました。
Q1 お尋ねします。要望書への回答はありましたか。
続けてお尋ねします。第6波では新規感染者が1日当たり800人程度の日があるなど想定をはるかに超え、現在も高止まり状況です。それに対し、保健所では積極的疫学調査や療養支援などどのように対応してきましたか。重症化リスクの高い人、低い人それぞれでお答えください。
答弁要旨
中核市要望に対する回答はありませんが、2月9日付の厚労省通知で、積極的疫学調査の対象者の重点化
や、感染症法に基づく就労制限業務の省略等、ひっ迫した保健所業務の解消につながる方針が示されました。
次に、第6波中の積極的疫学調査や療養支援における対応でございますが、重症化リスクの高い方には、保健師が丁寧に状態を聴き取り、日々の健康観察を行うことで、速やかに入院や治療に繋げております。
また、リスクの低い方には、事務職による聞き取り体制を整えたことで、遅くとも発生届を受理した翌日までの聞き取り調査を可能としており、あわせて患者情報をその日のうちにシステムに入力することで、すみやかにパルスオキシメータの貸与や、食料品の配付を行うことができ、療養中の不安の解消につながっています。以上
市民の間では、濃厚接触者の確定や職場復帰の時期などで混乱と不安が高まりました。それは、無症状の場合ほぼPCR検査を受けることができない現状があることが起因します。陽性者でも症状がなくなって7日間経過すれば検査しなくても職場復帰が可能となります。しかし、職場からは陰性証明を求められることがしばしばで、すぐにはそれができません。また、子どもを介しての感染拡大が顕著となり、保育現場や子どものいる家庭での緊張も高まりました。
代質の当局答弁では、高齢者など重症化リスクのある方や症状のある方を優先的に検査し、医療につなげていると。それは当たり前に必要なことです。それをやりながらさらに、医療や介護、保育、教育などの分野で働く人たちが、必要な時検査を受けることができる体制をつくれば、それによって安心して働くことができ、それは多くの市民の日常を維持できることに繋がります。
Q2 お尋ねします。無症状の人が検査を受けられる体制を市として創ることが市民の命・健康と安心して暮らせる社会を守るために必要ではありませんか。
市として検査キットを確保し、無症状の人への検査体制をつくるべきと考えますがいかがですか。
答弁要旨
ご提案の抗原検査キットの確保による、無症状者への検査につきましては、国において、原則、抗原検査キットは、症状のある方が対象とされておりますことから、その実施については考えておりません。
なお、無症状の濃厚接触者であるエッセンシャルワーカーへの検査につきましては、自費での検査となります
が、社会・経済活動の維持に一定必要であると考えておりますことから、既に、本市ホームページにおいて、市内の検査機関を周知しているところであり、引き続き、必要(な方に対しまして、対応可能な検査機関の案内に取り組んでまいります。以上
保健所の体制は、今年度の補正で43人増員され、新年度も続行されるようです。更に、その都度必要に応じて他局から応援職員の投入を考え、専門職の人材派遣は1日当たり10人にするとのことです。しかし、あくまで現有職員数のまま災害時事業継続計画・BCPで進めるものです。新型コロナウイルス感染症対策がはじまって、すでに2年が経過しようとしています。第6波で終わりという見通しなどない状況です。保健所応援で手薄となった他部署の困難性も表面化するでしょう。
代質でも保健所の体制強化を求めました。当局答弁は、人口減少、少子高齢化の進展が見込まれる中、限られた職員数で安定的に行政サービスを提供する必要がある。既存事業や業務手法の見直し等により生み出した人員を新たに体制強化が必要な取り組みに振り向ける等、さまざまな行政課題へ柔軟に対応できる持続可能な執行体制の構築を目指すとのことです。
生活保護の職場では1人のCWが担当する世帯数は現在114世帯、国の標準数80世帯には程遠い状況です。私は市会議員になって9年目ですがずっとこの状況が続いています。人口減少が続くので相対的に保護利用者もそのうち減少し、職員を増やさなくても標準数に近づくとでもお考えでしょうか。現有職員数で行政運営を行うという固定的な考えは、職員に過重労働を強い、市民サービスを低下させるものです。
また、予算分科会では、保健所の業務量が増えている部分を職員定数の増で賄おうとすれば、事態が落ち着いたときにたちまち人員が余剰になってしまうといった当局答弁もお聞きしました。そうでしょうか。保健所は地域保健の拠点としての役割と、自治体として解決を求められるあらゆる健康問題、たとえば乳幼児の虐待防止・自殺予防・難病対策・精神保健などに対応することになっています。新年度から重層的支援体制の構築がはじまりますが、まさにそこで多様化・複雑化する市民ニーズや問題に対応することが求められてくると思います。余剰人員にはなりません。
Q3 お尋ねします。BCPでの対応を見直し、保健所の定数増及び組織の強化を検討すべきと考えますがいかがですか。
答弁要旨
新型コロナウイルス感染症につきましては、感染拡大状況に応じて迅速かつ柔軟に対応していく必要があることから、今後も災害発生時と同様に、庁内応援体制を構築し、対応していくことが基本であると考えております。
来年度の組織体制としては、新型コロナウイルス感染症の先行きが不透明な中にあって、なおワクチン接種の推進に向けた取組が必要であることから、新型コロナウイルスワクチン担当を設置いたします。
また、保健部門に担当局長を配置し、適正な管理スパンを確保することで、これまで以上に組織マネジメントカを発揮し、新型コロナウイルス感染症への対応も含めた市民のみなさまの健康や生命に関わる事務事業のより効果的・効率的な実施が図られるものと考えております。以上
<下水道ビジョン・北部浄化センター等の民間委託>
北部浄化センターと高田・西川中継ポンプ場運営の民間委託が新年度行われようとしています。これまで、リスク管理や将来的な技術継承を維持するために、北部浄化センターは市の直営で行うとされてきましたが、昨年制定された「あまがさき下水道ビジョン2031」では、2022年から直営+運転委託とされています。
ここ3年間、休日と夜間の民間委託が行われてきました。問題はなかったとのことです。しかしこの間に大雨、台風、火災、地震、事故などの緊急事態がない中での評価です。
Q4 お尋ねします。直営+運転委託とはどういうことですか。リスク管理と技術継承はどう担保されるのですか。
Q5 また、民間委託されている東部浄化センターの指導等も北部浄化センターが担っていましたが、これは今後どうなるのですか。
答弁要旨
次期ビジョンに記載している「直営+運転委託」とは、北部処理区の下水道施設は市の職員の管理のもとで直営による運営管理を行い、その一部の業務である機器の運転操作を民間の事業者へ委託するものでございます。
また、リスク管理につきましては、令和2年7月豪雨で高田及び西川中継ポンプ場で雨水ポンプの全台運転を行った際にも、適切にポンプ設備の運転を行うことができており、その上でそういった降雨が予想される場合に市の職員も含めたバックアップ体制を確保して対応することにより担保してまいります。
次に、職員の技術継承について、北部浄化センターを「直営+運転委託」の形とし、維持管理に必要な技術力の習得のためのフィールドとして位置づけ、民間委託した後も、適正な履行確認及び評価を行うための技術力を今後とも確保してまいります。以上
現在委託事業者の入札が行われている最中で、応募事業者に渡している運転管理業務委託仕様書を見せてもらいました。第19条で、降雨及び緊急時の体制を整えることが事業者に義務付けられています。これで担保できるというのでしょうか。異常事態は予測不可能なことが多いです。瞬時の判断を求められることがあります。当局が直接運転者に指示するのは偽装請負となるので、統括責任者を通すことになるでしょう。間に合いますか。
また、機器の運転ルールを当局が作って、それに従って事業者に運転をしてもらうと言いますが、今現在はこれまで当局が運転をしてきたのでノウハウは持っています。しかし数年たてばもう直接機器の運転を経験している市の職員はいなくなるわけです。技術の継承は無理ではありませんか。
Q6 お尋ねします。今後民間委託に問題が生じたとき、直営に戻すことは考えられているのでしょうか。
答弁要旨
本市の下水道施設に係る運転管理につきましては、これまで、東部浄化センターにおいて、昭和57年の供
用開始から一部業務において民間委託を行い、その後、委託範囲を徐々に拡大してきました。その中で、多くの台風や災害なども経験してまいりましたが、これまで設備の運転操作について問題なく対応できたことを踏まえると、現状、直ちに民間委託に問題が生じるとは考えにくいと思われます。
なお、仮に民間委託に問題が生じた場合には、その原因を究明し、適切に対応することで運営管理の充実を図ってまいります。以上
<尼崎城を中心とした観光戦略>
尼崎城が民間の寄付により建設され3年が経とうとしています。当初、こぞって「城を拠点に観光で活性化を図るんだ」と期待する声が議会内にも噴出していました。日本共産党議員団は、城の維持管理のために一般財源からの持ち出しを増やすことは、他の市民サービスの施策に影響を与えることになるから厳に慎むよう求めました。当局は、城の指定管理者には城と城内公園の維持管理を委託し、指定管理費用は入城料と城内駐車場利用料、城内公園の維持管理費4500万円で行うと約束をしました。
3年たってどうでしょうか。開城時は14万人という入城者がありましたが、その後はコロナ禍の影響もあったものの、2020年度は3万人と大きく落ち込んだままです。リピーターの獲得もままならない状況です。そのため、20年度の決算は一般財源からの更なる持ち出しが4400万円になりました。新年度予算でも入城者見込みを8.5万人とし、入城料と駐車場使用料や公園の維持管理費をたしても85百万円にしかならず、指定管理者委託料109百万円には一般財源から20百万円も持ち出されています。
Q7 お尋ねします。「一般財源からの持ち出しはしない。」という議会への約束について、市はどうしようと考えていますか。
答弁要旨
尼崎城祉公園の指定管理料につきましては、尼崎城天守入城料、城祉公園駐車場使用料、城内地区自動
車駐車場使用料で天守有料部分の維持管理経費を賄うこととしておりましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、人々の行動が制限され、尼崎城の有料入城者数が減少しているところでございます。
この傾向は、尼崎城も加盟している「全国城郭管理者協議会」の51城のうち、9割のお城においても同様で、来城者数は前年度比で50%を下回っています。
今しばらくは、新型コロナウイルス感染症の影響が続くと想定されますが、収束後の観光需要回復に向けて、引き続き、ウィズコロナ・ポストコロナを見据えた有料入城者の獲得に取り組んでまいります。
以上
「尼崎城を中心とした観光戦略で稼ぐ」こと自体無理な発想ではないでしょうか。私は、観光客にとっての城内公園ではなく、市民の文化的施設として維持管理する方向に発想転換が必要だと思います。歴史博物館は市民にとって唯一の博物館です。尼崎城も、寄贈されはじめてその歴史に触れることができた市民も多かったことでしょう。観光客目当てにあれこれ算段するのではなく、もっとコンパクトな維持管理に変えていくべきだと思います。
Q8 お尋ねします。尼崎城の指定管理のあり方について見直すべきだと思いますがいかがですか。
答弁要旨
さきほどの答弁でも申し上げたとおり、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、人々の行動が制限され、尼崎城の有料入城者が減少しているところでございます。
引き続き、ウィズコロナ・ポストコロナを見据えた有料入城者の獲得に取組むとともに、これまでの管理実績を踏まえ、次期指定管理者の選定時には、より効果的・効率的な運営管理ができるよう検討してまいります。以上
<高齢者の住宅支援>
2019年から21年の市営住宅単身申し込みの募集状況について資料をいただきました。5月と11月に募集があるのでこの3年間6回の募集で、単身のみの平均倍率は12.19、トータルで1549人が応募し、130人しか入居できていません。単身以外の平均倍率は3.91であり、いかに単身者にとって市営住宅が狭き門かということ、逆に言えば、いかに単身者が市営住宅を求めているのかが明確です。代質の当局答弁では、住宅の困窮する方々のニーズを受けて対応して行くことが重要だとおっしゃっています。
Q9 お尋ねします。「尼崎市住まいと暮らしのための計画」や「市営住宅建替等基本計画」で、単身者用の市営住宅の供給計画はどのようになっていますか。
答弁要旨
「尼崎市営住宅建替等基本計画」では、単身者用の市営住宅の供給についての考え方は示しておりませんが、武庫3住宅建替事業では、単身高齢者などが入居可能な住戸を、全体の約50%にあたる533戸確保しております。
今後の建替事業においても、単身高齢者やファミリー世帯など、色々な世代の入居や様々なニーズに対応できる住宅の整備に努めてまいりたいと考えております。以上
高齢単身者については、住まいと暮らしのための計画でも住宅確保要配慮者と位置付けています。そして、こうした市民の居住の安定確保のために、民間賃貸住宅を活用したセーフティネットの促進を行うとしています。私は2019年12月の一般質問でセーフティネットについて尋ねました。そのときは、ネットに参加しているのはたった1業者だけでした。
Q10 お尋ねします。2年たった今、ネットワークは広がり、高齢単身者が住まいを確保しやすくなってきているのですか。
答弁要旨
高齢者などの住宅確保要配慮者が入居しやすいセーフティネット住宅は、本市においては、令和元年12月には1住戸しか登録がありませんでしたが、その後、大手賃貸住宅事業者の一括登録もあり、現時点では、154棟1,323戸が登録されております。
それに加えて、入居契約の際に必要な連帯保証人がいなくても、国に登録された保証会社を利用することで入居できるようになっていることから、高齢者の住まいの確保についての状況は、以前と比べて改善してきていると認識しております。以上
市は市営住宅建替等基本計画に基づいて建替えを実施し、それによって管理戸数を計画的に減らしています。しかし、住宅に困窮する市民への対応はあまりに不十分ではありませんか。セーフティネット構築のための取り組みなどは、新年度事業のどこにも見当たりません。
尼崎市高齢者保健福祉計画に、高齢者の生活の状況がまとめられています。それによれば、本市の特徴として、高齢単身者の割合が全国や兵庫県より多いこと、また、高齢者世帯の民営借家割合が兵庫県全体の倍以上だということです。更に、阪神間で市民の所得が一番低いのが本市ですから、多くの高齢者が安価で安心の住宅を公営住宅に求められるのは必然だと思います。
市は、全国の中核市や類似都市と比較しても多くの市営住宅管理戸数を持っていることから、また、公共施設マネジメント基本方針で30%以上の削減を目標としているので、市営住宅もそれに倣うとしていますが、高齢者のおかれている現状に寄り添うべきです。
Q11 お尋ねします。管理戸数削減計画を見直すべきだと思いますが、いかがですか。また、現状で高齢者の安心の住まい確保のために、市営住宅募集に外れた高齢者を対象に家賃補助の制度をつくること、住宅セーフティネットの構築に本気で取り組むことを求めますが、いかがですか。
答弁要旨
本市の市営住宅は、類似都市と比較して多くの管理戸数を有しているため、将来にわたる財政負担の点から管理戸数の削減を図ることとしておりますので、管理戸数の削減計画の見直しは考えておりませんが、市営住宅は、住宅セーフティネットにおいて重要な役割を果たしているため、今後も住宅に困窮している方々の様々なニーズに対応できる住戸の整備に努めてまいります。
また、民間賃貸住宅においても、入居に向けての相談や、入居後の見守り、生活面での支援など、幅広い居住支援に向けて、住宅関係者と福祉関係者等の双方にご協力をいただくことで、官民の両面から、住宅セーフティネットの取組を進めてまいります。以上