2021.10月 松沢ちづる議員の総括質疑と答弁要旨

まさき議員に続いて、松沢ちづるが質疑します。

続いて、松沢ちづるが質疑します。

 

まず、保育士の人材確保についてです。

 

 市は保育施設の待機児童問題の打開策の一つとして、法人保育園の弾力枠いわゆる定員の2割増しによる受け皿の拡大をあげています。2020年度は法人保育園で定員を超える106人の受け入れを行いましたが、なお目標の238人には程遠い状況です。理由は、各法人ともに保育士が不足しており、弾力枠の協力ができないからです。

今年度予算に向けた議会からの提言に対し、当局は「保育士確保策の更なる充実や就労継続につなげるための処遇改善・業務軽減等が必要である」と回答されています。

 

Q1 お尋ねします。就労継続につなげる処遇改善・業務軽減について具体的に何をしてきたのですか。

 

答弁要旨

 保育士の処遇改善については、本市独自施策として、令和2年度から潜在保育士就労支援事業をじっししております。これは保育施設等を離職して1年以上経過した保育士まてゃあ保育士資格取得後1年以上の間、勤務経験のない保育士、いわゆる潜在保育士が就労に至った場合、就労支援金として5万円を支給する事業です。

 このほか、全国市長会や中核市市長会を通じ、公定価格における基本分単価や処遇改善等加算にうちて十分な財政措置を講じるよう、国へ要望を行っております。

 また、業務軽減策としては、令和2年度からICT化推進事業費補助金事業を実施しております。この事業は、保育所における①保育計画・記録に関する機能や②園児の登園・後園の管理に関する機能③保護者との連絡に関する機能のすべてを備えたICTシステムを導入するために要した費用の一部を補助するものであり、保育施設における新型コロナウイルス感染拡大の防止と保育士の業務負担の軽減に繋がるものと考えております。以上

 

 法人保育園の2020年の平均勤続年数は8.69年とお聞きしています。公立保育所では13.6年です。また、一般事務系市職員の平均勤続年数は15.33年です。

 

Q2 平均勤続年数には公私間格差があること、また、公立においても一般事務系職員と差があることについて、当局はどのような分析をされていますか。

 

答弁要旨

 保育士の離職要因については、国の報告にあるとおり、職場の人間関係や勤務条件、賃金や業務量、長時間勤務になりやすい労働環境や妊娠・出産・結婚といった家庭環境等、様々な要因があるものと認識しております。

 ご指摘の公立・私立における勤続年数の相違について、詳細に分析したものはありませんが一般的に経営・運営の安定という面において、官公署は心理的にも勤続年数に有利に働くものと考えております。

 また、公立の保育士と一般事務職の勤続年数の差については比較分析を行っておりません。

 なお、法人保育園、認定こども園及び小規模保育事業所における保育士及び主任保育士の勤続年数は平成27年4月1日時点では7.41年でしたが、令和2年4月1日時点では議員ご指摘のとおり、8.69年となっており、定着化が進んでいるものと認識しております。以上

 

 尼崎市は保育士配置について、国基準を踏襲しています。資料を見てください。尼崎市と京都市の比較です。京都市は独自に配置基準を引き上げ、ゆとりを持った丁寧な保育の実践を目指しています。同じ規模の保育園で、保育士の数は尼崎より3~4人多くなります。それだけ処遇改善・業務軽減ができるということです。

 

次に、保育士の賃金についてお聞きします。続いて資料を見てください。

●保育士の賃金(資料を基に松澤が作成)

・尼崎市公立保育所保育士のモデル年収(給料+地域手当+期末勤勉手当)2021年4月1日時点(概算)

・内閣府調査(2017年6月)に基づき人材派遣会社が作成した私立保育士のモデル年収(概算)

尼崎市と、内閣府が2017年6月に行った調査に基づき人材派遣会社が作った私立保育施設で働く保育士の賃金についての比較です。1年目の約30万円の差は中堅の40歳で211万円に、50歳で232万円に拡大します。また、私立保育士の賃金は勤続年数35年以上でようやく400万円台になりますが、これは全産業の平均より160万円も低い額です。

 

昼休みが十分とれない、有休もとりにくい、持ち帰り残業は当たり前、賃金は低いでは、せっかく取得した保育士資格ですが、一生の仕事として全うする前にギブアップしてしまうのは当然だと思います。また、ここに行政が支援を行わなければ、保育の質が保たれません。

Q3 保育士が誇りをもって働き続けるために、市独自で保育士の配置基準を引き上げることや、賃金引き上げにさらに支援の強化が必要と思いますが、いかがですか。

答弁要旨

 保育士の配置基準につきましては、国基準を基に条例で定めております。今日、全国的に保育士不足が問題となっている中で、国基準を上回る独自の配置基準に引き上げることは、新たな財政支出やさらなる保育士不足を招くことになり、ひいては保育所の運営にも支障を来すおそれがあることから、配置基準の見直しについては考えておりません。

 また、保育士の賃金引上げにつきましては、国において、平成25年度以降、職員の平均経験年数等に応じて加算される処遇改善等加算Ⅰ等により、毎年度処遇改善が図られていることに加え、平成29年度からは毎年度、保育士確保に向けた補助制度を創設しており、国の補助対象事業である保育士宿舎借り上げ支援事業のほか、市独自事業として新卒保育士就労支援や奨学金返済支援、潜在保育士就労支援を実施しております。

 賃金引上げは、基本的には公定価格等を通じて国において行われるべきものと考えております。

 

 

次に、保健所の体制強化についてお聞きします。

 

 保健所は、最前線で新型コロナ感染症から市民のいのちと暮らしを守るために働いておられます。第5波は終わりかけていますが、コロナ感染症が収束したわけではなく、疫学調査やワクチン接種、抗体カクテル療法、予防的対策など状況に応じた対応が求められています。

 当局からいただいた資料によれば、昨年度1年間の疫学調査や入院調整などに従事した保健所職員の平均超過勤務時間は、事務職で月97時間、保健師で63時間、全体で80時間と、過労死ラインを超えるたいへんなものでした。市長は今年度の取組方針として「庁内応援体制などによる保健所全体における体制強化」をひき続き行うとしてこられました。つまり、保健所職員の増員ではなく、あくまで別の部署から必要な人員を臨時的に確保することで対応するということです。

 

Q4 それによって、実情は改善したのでしょうか。コロナとの闘いは長期化すると思いますが、このスタンスで今後も対応が可能とお考えでしょうか。

 

答弁要旨

 第5波におきましてはピーク時に一日200人を超える新規陽性患者が確認されるなど、想定を大きく上回る感染状況が続き、保健所職員一人一人の負担が急激に増大いたしました。

 このような状況を踏まえ、全庁応援や派遣職員の更なる増員により、保健所体制を強化するとともに、聞取り調査や検診案内、入院調整等の専門業務と事務業務を担当ごとに分けるなど、業務の効率化を図ることで、超過勤務の縮減に繋げてきたところです。

 今後につきましては、第5波を上回る新規陽性患者数を想定したフェーズごとの人員体制を整備し、事前に庁内共有することで対応してまいります。以上

 

 今年度に入って4月~8月5か月間の超過勤務時間についても資料をいただいています。庁内応援や保健師などの人材派遣による増員を行ってきましたが、5か月平均を見ても事務職で月65時間、保健師で100時間、全体で83時間と、むしろ超過勤務時間は増えています。一時しのぎでは対応はできないことがはっきりしたのではないでしょうか。

Q5 保健所の職員を増員し、将来にわたって公衆衛生行政を拡充する方向に切り替えるべきだと考えますが、いかがですか。

 

答弁要旨

 保健所における新型コロナウイルス感染症への対応を含め、災害等の発生時には、町内の応援体制を構築し、状況に応じて迅速かつ柔軟に対応していくことが基本であると考えております。

 今後も人口減少、少子高齢化の進展が見込まれる中、限られた職員数で安定的に行政サービスを提供する必要があるため、事業の休廃止等により生み出した人員を体制強化が必要な取組に重点的に振り向けることにより、公衆衛生行政も含めたさまざまな行政課題へ柔軟に対応できる持続可能な執行体制の構築を目指してまいります。

 

 

次に、気候危機打開についてお聞きします。

 

 IPCC 国連気候変動に関する政府間パネル「1.5度特別報告書」は、2030年までに大気中への温室効果ガス、そのほとんどがCO2ですが、排出量を2010年比で45%削減し、2050年までに実質ゼロを達成できないと、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比して1.5度に抑え込むことができないことを明らかにしました。

たとえ気温上昇を1.5度に抑えても、洪水のリスクにさらされる人口は今の2倍に、2度上昇すれば2.7倍に増加し、サンゴの生息域は99%減少してしまいます。さらに温室効果ガスが一定濃度を超えると後戻りができなくなり、3~4度も上昇してしまうと気候変動による影響が連鎖して、悪化が止められないという破局的な事態に陥ってしまいます。日本の場合、お米の栽培が可能なのは北海道だけになってしまいます。

IPCCは今年8月に新たな報告書を発表、「人間の影響が地球を温暖化させてきたのは、もはや疑う余地はない」と断言しました。同時に、これからの思い切った削減と、2050年までに温室効果ガスの排出量の実質ゼロを達成し、その後も大気中のCO2濃度を下げる努力を続けることによって、21世紀の最後の20年には1.4度までおさえることができることも示しました。

すでに世界の平均気温は1.1~1.2度上昇しており、2030年までの取組に人類の未来がかかっているわけです。

6月5日尼崎市が気候非常事態行動宣言を発表しました。2019年に策定した尼崎市地球温暖化対策推進計画では、2030年までにCO2を28%削減目標にしていたものを、この宣言で50%に修正されました。この点は高く評価するものです。ただし、この50%という数字は2013年を基準にしています。IPCCは2010年を基準にしていますから、2010年に換算すると44.7%になるかと思います。

決算分科会では、推進計画の各目標値の修正を今年度中にやるため検討中だとの答弁がありました。

肝心なのは、2030年まで10年足らずの間に、CO2をどうやって2013年比で50%削減するのかという具体策です。

 

Q6 市長はどうやって削減を進めようと考えておられますか。

Q7 具体的にはどんな働きかけがありますか。また、取り組みが進んでいるとはいえ、一番CO2の排出量が多いのは産業部門です。さらに削減を進めるためにどんな働きかけを考えておられますか。

 

答弁要旨

 本市では、今年6月に表明した「尼崎市機構非常事態行動宣言」において、2030年の二酸化炭素排出量を2013年度比で50%程度削減することを目指すこととしております。高い目標ではございますが、気候変動の影響を最小限に抑えるためには、実現しなければいけない目標であると認識しております。

 具体策としましては、省エネ住宅、建築物やエコカーの普及促進、再生可能エネルギーの導入拡大といった、消費するエネルギーの削減と再生可能エネルギー等への転換を促す取り組みを進めてまいります。

 さらに、事業者との協力や消費者である市民のライフスタイルの転換によるごみ量の削減、環境関連講座の実施や小学校でのKなきょう教育などを通じた一人一人の行動変容の促進んあどを重点施策とし、今後これらの取組を充実させていくことで、脱炭素化を加速させてまいりたいと考えております。以上

 

 市長は、推進計画の審議会委員でもある花田眞理子大阪産業大学大学院教授との対談で「製造業などの産業部門はCO2削減の取組が極めて優秀。一方で業務部門、オフィスなどはなかなか削減が進んでおらず、ここが今後の取組のポイントになる」と語られています。

 

 

 

 次に2030年までの大幅なCO2削減のためには、再生可能エネルギーへの転換が重要です。尼崎市はクリーンセンターで発電された余剰電力の地産地消を進めていますが、尼崎市の場合今後活用が期待されるのは、太陽光発電ではないでしょうか。

 

Q8 市民や事業者が積極的に太陽光発電に取り組めるように、市独自の支援策を作り、再生可能エネルギーへの転換を促進すべきと考えますがいかがですか。

 

答弁要旨

 本市は、脱炭素社会の実現に向けては再生可能エネルギーへの転換が重要であると考えており、今後の取組拡大に向け、準備を進めているところでございます。

 具体的には、エネルギーの地産地消の取組、ZEHをはじめとしたスマートハウスの普及促進んといった市独自の事業に加え、今後は、太陽光発電設備の設置において、初期費用、メンテナンス費用を必要とせず、発電した電気を自家消費することができるPPAモデルを活用するなど、新たな事業について検討しております。

こうした様々な手法について、まずは公共施設において率先して取り組みつつ、市内の事業所や家庭において、効果的に再生可能エネルギーの導入拡大が進むよう、民間事業者や他都市とも連携しながら、順次、取組を実施してまいりたいと考えております。以上

 

 再生可能エネルギーの普及を進めるうえで今重要なのは、ひとつは、再生可能エネルギーで発電した電力を優先的に利用する、「優先利用原則」を国に作らせることです。現状では、発電量が過剰になると、まず太陽光や風力での発電が電力系統から外され、原発や石炭火力での発電が最優先になっています。

 

 二つ目に、再生可能エネルギーで発電した電力を最大限活用できる送電網などのインフラ整備を急ぐことです。現状では、インフラ整備まで個人負担になっています。

 これらは、国の責任で推進すべき範疇です。

 

Q9 再生可能エネルギーへの転換促進のために、国に対し再生可能エネルギーの「優先利用原則」と送電網などのインフラ整備を求めるべきだと考えますがいかがですか。

 

 答弁要旨

 電力系統における需給バランスについては「優先給電ルール」に基づき維持されており、発電量が過剰となった場合には、再生可能エネルギーによる発電について出力抑制が行われる前に、火力発電の出力抑制や他エリアへの送電などが行われることとなっており、一定の優先利用が行われているものと考えております。

 しかしながら、関西電力(株)管内において、ご指摘のような運用実績はないものの、他地域においては再生可能エネルギーによる発電の出力抑制に至る場合があることも事実であり、こういった状況も踏まえて、現在、改定作業が行われております第6次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーの導入拡大にあたっては、送電網の容量の増強といった系統制約の克服などについても取り組むものとされております。以上のことから、現状において国に再エネの「優先利用原則」やインフラ整備を求めることは考えておりません。以上

 

 2030年までにCO2をどうやって大幅に削減していくのかについて、色々とお聞きしてきました。これは、テーマの冒頭で言いましたが人類の未来がかかっている重大問題です。一方、脱炭素社会の実現は地域経済の悪化や停滞をもたらすのではとの声もありますが、決してそうではありません。環境科学の専門家集団の一つである「未来のためのエネルギー転換研究グループ」のレポートによれば、再生可能エネルギーへの転換は地域に新たな雇用を生み出し、GDPも押し上げると指摘されています。

 尼崎市は気候非常事態行動宣言を発表しました。自治体のイニシアチブを発揮し、地域と住民の力に依拠した積極的な気候危機打開の取り組みが進むよう私たち日本共産党議員団も協力していきたいと思います。

 

 これで、日本共産党議員団の決算総括質疑を終わります。

時間の関係で取り上げられなかった問題については、意見表明で行ってまいります。

ご清聴・ご協力ありがとうございました。