2012年6月市議会一般質問 辻おさむ:原子力発電ゼロへ 大飯原発再稼動許すな

6月6日の本会議で一般質問をしました。要旨をお知らせします。

辻おさむ市政レポートNo.184(2012.6.10.)
日本共産党尼崎市会議員 辻 おさむ

辻おさむ

次に、原子力発電をなくす取り組みについてです。

これまで全国に54基あった原子炉は、福島第1原発の4基が原子炉としての位置づけが廃止されたために、50基となりました。

5月5日、北海道電力泊原発3号機が定期検査のためにとまりました。

全国50基のすべての原発が停止し、42年ぶりに原発ゼロ状態となりました。

朝日新聞社が5月19日と20日に実施した電話による全国定例世論調査では、原発に対する政府の安全対策を「信頼している」というのは21%にとどまり、「信頼していない」というのが78%にのぼっています。福井県の大飯原発の運転再開については、反対が54%で、賛成の29%を上回っています。

また、5月5日、6日の毎日新聞の全国世論調査でも、稼働する原発がなくなり、今年の夏に電気の使用が制限された場合、「我慢できる」と答えた人が74%に達しており、最も電力需給が逼迫(ひっぱく)すると予想される近畿圏でも、61%が「我慢できる」と回答しています。

原発の稼動ゼロから、原発ゼロへは、多くの人の願いとなっています。

こうしたなかで、関西電力大飯原発3,4号機の再稼動問題が、重大な局面をむかえています。

民主党政権は、福島原発事故後、菅前総理は「脱原発依存」だといいました。

ところが野田政権になって、「原子力は基幹電源」だと態度が変わりました。これは、日本経団連が昨年11月に、原発は「基幹的役割を担ってきた。」といっていたのと同じ表現です。

大阪の橋下市長は、当初、「再稼動反対」といっていたのを、「事実上、容認する」と態度を変え、5月31日に関西広域連合が大飯原発3、4号機の再稼働について声明を発表。これを受けて、野田総理が再稼働を決定しようという動きです。野田総理は今週中にも再稼動問題で関係閣僚会議を開く意向だと伝えられています。

再稼働の是非は、科学的に安全かどうかが唯一、最大の基準であるべきです。広域連合が暫定的に認めた声明をもって、再稼働への条件が整ったとは到底言えません。

しかも、野田総理は、4日の記者会見でも「暫定的」とは一言も言っていません。

5月13日、14日に福井県の大飯原発に行ってきました。いま見学者が増えているそうです。原発そのものには、テロ対策だということで入れませんでしたが、近くのPR館には3分の1の模型が展示されており、相変わらずの安全神話を振りまいていました。

海から船で、原発を眺めたのですが、一緒に行った人たちは一様に「防潮堤など、どこにあるかわからないぐらいだ。これで安全といえるのか」といった感想を述べられていました。

 原発再稼動 5つの問題

日本共産党は、大飯原発の再稼動について、5つの大問題があると考えています。

第1は、福島第1原発の原因究明がされていないということです。炉心内部の状況さえわかっていません。

第2の問題は、「安全対策」なるものの不十分さです。

福島原発の事故さえ究明が尽くされていないのに、どんな対策をとれば安全かなどいえるはずがありません。

大飯原発のストレステストをおこなったのは、三菱重工ですが、大飯原発をつくったのも三菱重工です。客観的なテストかどうか疑問です。

また、大飯原発の場合、事故のさい不可欠な免震事務棟の整備などは、すべて計画だけですまされています。まったく安全の名に値しません。
第3に、大飯原発近くに3本の活断層があることや、敦賀原発では、直下に活断層があることは、最近、わかったばかりです。地震・津波の学問的知見を根底から見直す必要があります。
第4に、原発事故が起こった場合の放射能被害の予測も住民避難計画もないことです。福井の原発から50キロ圏内に45万人が住んでいますが、その避難計画さえありません。
第5に、まともな原子力規制機関がないことです。
国会で「規制庁」法案の審議は始まったばかりです。
この状況での再稼働は無謀極まりないものです。
科学的知見も、道理のかけらもなく、中止するべきであると考えます。

原子力発電はもともと技術的に未完成で、現在の水準では「安全な」原発は実現不可能です。東日本大震災のあと、世界でも日本でも、原発からの撤退を求める声は急速に広がっています。

政府や電力業界は原発を再稼働しなければ電力不足が起き「集団自殺」になるなどといいますが、「電力需給のためには多少の危険に目をつむれ」という悪質な脅しです。

私には、福島第1原発のような過酷事故の危険を再稼動によって残すことこそ「集団自殺」行為と思えます。

再稼働問題と電力需給問題は切り離して判断すべきであり、両てんびんにかけるようなやり方は、こと原発に関しては絶対にやってはなりません

原発再稼働に国民の納得を得る見通しもないまま、ずるずると既成事実を積み重ねるだけというのでは、国民の不安を逆に高めるばかりです。

原発の再稼働は押し付けず、原発からの撤退をこそ決断し、自然エネルギーの本格的な導入を急ぐべきです。

再稼動反対の 意思表明を

さて、昨年9月の一般質問で、私は、市長が関西電力に申入れをされたので、「市長自身の考えとして、原発は、減らすのではなく、無くすべきだと考えておられるのか」とお聞きしました。

市長のご答弁は、「一層、安全性を高めることはもちろん、段階的に原子力発電から脱却する方向へエネルギー政策の転換を行い、電力の安定供給を実行されるよう強く要請したもの」と答えられました。

また、市長は、ご答弁で「今すぐに原子力発電をゼロにすることは難しいと考えていますが、再生可能エネルギーなど代替エネルギーの開発等の取組に全力をあげ、段階的に原子力発電から脱却する方向へエネルギー政策を転換する必要があると思っている」とのことでした。

当時は、「段階的に減らせばいい」との考えだと理解しました。

ところが、今年の4月23日の定例記者会見で、市長は、大飯原発の再稼動について、「『なし崩し的に再稼動するのではなく、原子力に依存しない方向をめざすべきではないか』と、反対の考えを示した」と報道されています。

そこでお聞きします。全原子炉が停止するという事態のもとで、市長は、再稼動に反対し、段階的廃止ではなく、原発の稼動ゼロから、原発ゼロへ、認識を深められたのでしょうか? 私は、そうすべきだとおもいますが、市長の考えをお聞かせください。

あわせて、そうした立場から、「暫定的」だとしても、原発の再開につながる大飯原発の再稼動について、反対を表明すべきだと考えますが、いかがでしょうか?

稲村市長

原子力発電所については、将来的に無くしていくことが望ましいという私の考えは今も変わっておりません。

本市のような産業都市においては、市民生活、産業活動への影響も考える必要がございます。

また、大飯原発再稼動については、私としては、現段階で十分な対策が取られているとは考えておらず、そのような中での再稼動に向けた動きについては残念に思っております。

このようになし崩し的な再稼動が進むことには憂慮いたします。今後、国として、安全性を十分確保しつつ、原発に依存しないエネルギー政策推進の道筋を明確にすべきであると考えます。

「脱原発をめざす首長会議」 について

辻おさむ

次に、原発をなくす取り組みで、「脱原発をめざす首長会議」について伺います。

4月28日、東京で原発反対の立場を明確にしていることで有名な城南信用金庫本店で、「脱原発をめざす首長会議」の設立総会が開かれ、原発ゼロをめざす新たな動きとして注目されています。

福島県の南相馬市長や、茨城県の東海村村長、元国立市長の上原公子氏らが呼びかけ、全国35都道府県の69人の市町村・特別区の首長や首長経験者が加入していましたが、総会の開催中に蕨市長が加盟して70人になりました。

自治体の長が決意するということは大変なことだと思いますが、世話人である静岡県湖西市の三上市長は、昨年の震災後、「脱原発」を市長として明確に訴えていくことを決意し、このネットワークには「並々ならぬ決意を込めた」と言います。

総会では、大飯原発などの拙速な再稼働に反対する決議や、今年の夏に策定予定の「新しいエネルギー基本計画」で原発ゼロを決定するよう政府に求める決議を採択しました。

兵庫県からは、宝塚の中川智子市長、篠山市長、養父市長、福崎町長が参加をしています。

お呼びがなかったのか、呼ばれたけれども行かなかったのか、わかりませんが、稲村市長の名前は入っていません。

市民との意見交換会でも、「入ったらどうか」という意見もあったと思います。

脱原発首長の会へ参加してはどうか

そこでお聞きします。いまからでも「脱原発をめざす首長会議」に入るべきではないでしょうか? 市長の決意をお聞かせください。

稲村市長

現在のところ、ただちに首長会議に参加する考えはございませんが、まずは、原発の今後のあり方について、産業界や市民の方々に、私自身の考えを伝え、幅広く意見交換をしていきたいと考えております。

原発再稼動は「限定的」の保障なし  原発からの撤退の決断こそ

辻おさむ

大飯原発再稼動について。政府や橋下市長らは、大飯原発を「限定的」でも再稼働させなければ電力供給に不安が出ると言いますが、本来原発の安全性と電力問題はてんびんにかけるものではありません。また、再稼働が「限定的」ですむ保証はどこにもありません。

5月4日に福井県知事と細野原発事故担当相らが会談していますが、席上、斎藤官房副長官は「この夏をしのぐためだけの稼動は考えていない」と、期間限定の再稼動とはしない政府の方針を述べています。

特定非営利活動法人・環境エネルギー研究所(ISEP)の飯田哲也所長=この方は、大阪市と大阪府の特別顧問もしている方ですが、飯田哲也氏は、政府の推計を「過大に見積もった需要を固定視」していると批判し、「関西電力(管内)でも昨年並みの節電と若干の追加対策や揚水発電の活用で安定的な需給はできる」とし、原発再稼働は必要ないと報告しています。

また先ほど紹介しました「脱原発をめざす首長会議」の中で、前福島県知事の佐藤栄佐久氏は、原発についていますすめられている論理は「必要だから安全だ」というものだ、といっておられました。言いえて妙であります。

原子力事故は、ひとたび起こると取り返しのつかない危険を私たちにもたらします。

そのことは、福島第1原発事故で明らかです。福井県は、14基もの原発が密集する原発銀座です。一度事故があれば、関西各地、琵琶湖の放射能汚染は、避けられません。尼崎市民の安全を守るためにも見過ごせない問題です。

電力の安定供給をいうなら、一日も早く原発からの撤退を決断し自然エネルギーへの転換や省エネルギーに力を尽くすことこそ重要です。

尼崎市政と市長がその立場にたたれるよう、強く要請しまして、私の質問を終わります。

 

▼一般質問の続きは次のリンクへ(実際の一般質問とは別にHP掲載では項目別に整理しています)

2012年6月市議会一般質問 辻おさむ:琴浦市営住宅跡地活用