2012年6月市議会一般質問 辻おさむ:東日本大震災ガレキ問題

6月6日の本会議で一般質問をしました。要旨をお知らせします。

辻おさむ市政レポートNo.184(2012.6.10.)
日本共産党尼崎市会議員 辻 おさむ

辻おさむ】 日本共産党議員団の辻おさむです。

私は、東日本大震災ガレキ問題について、原子力発電をなくす取り組みについて、琴浦市営住宅跡地活用について、市長の見解を伺ってまいります。

東日本大震災ガレキ広域処理の問題

まず、東日本大震災でのガレキ広域処理の問題についてです。

尼崎では、阪神大震災のときのガレキ処理を他の自治体にお願いをしてきました。また佐用町の水害被害のガレキ焼却を尼崎で受け入れてきた経過もあります。

災害のときは、お互いに協力し合うのが基本ですが、東日本震災ガレキについては、東京電力福島第1原発事故による放射線物質の存在が、問題を複雑にしています。

市長は、4月9日、震災前からのクリアランスレベルである1キログラム当たり100ベクレル以下を基準に震災ガレキの広域処理を受け入れるかどうかの検討を始めることを表明され、検討の各段階ごとに3回の市民説明会を開催するなど、「安全と市民合意」を基本に受け入れの可否を決めるとされました。

「安全と市民合意」が必要なことは、日本共産党も同じ考えです。

放射線をあらわす単位はなじみが薄いのですが、1秒間に1つの原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量が1ベクレルです。100ベクレル/㎏というのは、1秒間に100個の放射線がでる量です。

政府は、震災後、ガレキのうち、特別に管理が必要な指定廃棄物は、セシウム134とセシウム137の濃度の合計で1キログラム当たり8000ベクレル以上のものと定めています。1秒間に8000個の放射線を出す量ですね。

震災前の基準を80倍に引き上げたわけですが、8000ベクレル/㎏以下のものは、放射性物質が含まれていても一般廃棄物と同様の扱いとされ、まともな対策が講じられていません。

政府の試算でも、8000ベクレル/㎏というのは、廃棄物の処理をする労働者が受ける被爆量が、年間「これ以上被ばくしてはいけない」という許容量に近い被ばくを容認するものです。

この高い値で「安全だ」といわれても、国民が不安に思うのは当然です。住民の健康と安全を守る立場で、放射性物質で汚染された廃棄物の基準と、放射線防護対策を抜本的に見直し、強化する必要があると考えます。

広域処理の受け入れ基準については、自治体が独自に基準を設けることができることになっています。関西広域連合は2000ベクレル/㎏という基準を打ち出しました。これも「2000なら安全なのか」ということについては疑問があります。

100ベクレルの 市長の意図は

こうした中で、市長がいち早く震災前からの「クリアランスレベルである100ベクレル/㎏を基準とする」ということを打ち出されたことは、もし受け入れるとなると、現在の基準でも最も厳しいものとなります。

まずお聞きします。市長が10 0ベクレル/㎏で検討しようとした意図はなんでしょうか? 市長の思いをお聞かせください。

経済環境局長

国や関西広域連合の基準につきましては、東日本大震災後に作られた基準であり、市民の理解を得ることは難しいのではないかと考えたものです。

したがって、本市独自の基準として、廃棄物の処理において震災前から用いられていた、クリアランスレベルである1㎏あたり100ベクレルを基本に、受け入れ可能かどうか、の検討を始めるとしたところです。

大阪湾センターへの 対応について

辻おさむ】

次に、尼崎の廃棄物の最終処分地となるフェニックス埋立地を管理する、大阪湾広域臨海環境整備センター(通称:大阪湾センター)への対応について伺います。

これまで尼崎市は、放射性物質を含んだ焼却灰の「海洋埋め立ての基準が示されていないので、検討する段階ではない」との考えでした。現在でも示されていません。

尼崎の平左衛門町には、大阪湾センターの尼崎積み出し基地があり、阪神間と、京都府、滋賀東電福島第1発電所3県の23市3町から、毎日800トン=トラック92台分の管理型一般廃棄物が運び込まれ、船に積み替えてフェニックス埋立地に運ばれています。運搬ルートは、道意線、尼宝線、湾岸線の3ルートです。

大阪湾センターがどのような受け入れ基準を打ち出すかが、近畿圏のガレキ受け入れの放射線量の基準を決するといっても過言ではありません。

たとえ、尼崎市が100ベクレル/㎏での処理を決めたとしても、他の自治体から、8000ベクレル/㎏、2000ベクレル/㎏といった放射線量の焼却灰が、尼崎市内を通過することも考えられます。

4月12日に、日本共産党議員団として、市長が大阪湾センターに「尼崎は100ベクレル/㎏で検討を始める」ということを、伝えるよう申入れました。

そこで伺います。市長は、大阪湾センターに尼崎は100ベクレル/㎏で検討するということを伝えたのでしょうか?お答えください。

経済環境局長

大阪湾広域臨海環境整備センターに対しましては、5月はじめに、がれき受け入れの検討方法や今後の進め方など尼崎市の考え方を説明いたしました。

その際、独自の基準といたしまして、1キログラム当たり100ベクレルを基本に、受け入れ可能かどうか検討することを伝えております。

情報交換や、調整・協議を
辻おさむ

6月1日の毎日新聞の報道によりますと、兵庫県の井戸知事は、5月19日の関西広域連合の非公開協議で「焼却灰のセシウム濃度は1キログラムあたり100ベクレル以下とし、混合率も3%と厳格化」するという独自基準を提示したとあります。

県の担当課のコメントとして「焼却灰に触れた雨が海に流出することや風評被害など、万が一の事態を防ぐことを考えた」と紹介されています。

100ベクレル/㎏というのが、現実身をおびてきました。

さて、大阪湾センターに広域ガレキにたいする取り組み状況をお聞きしたところ、国の要請を受け、4月から、広域連合や環境省の職員も含めた検討委員会をつくって、広域処理に協力できるかどうかの検討を始めているということであります。

国は、「海洋埋め立ての基準は出さないが、個別の計画について評価をする」とのことです。

大阪湾センターでは、震災ガレキの焼却灰は、「他の廃棄物と分離して扱う」こととし、「セシウムは水に溶けやすいので、廃棄物が水と接触しないようにする。」「埋め立てで出来た土地は、港湾管理者のものになるので、土地利用計画に支障が出ないようにする。」との方針で検討をすすめています。

最終処分の在り方が決まらないと、尼崎だけで受入の可否を判断できるものではありません。

そこで伺います。

大阪湾センターなど、他の機関との情報交換、調整・協議はどのようにしているのでしょうか。また今後、どのように進めていくの大阪湾センターを視察(5月22日)でしょうか?

経済環境局長】

現在、大阪湾センターでは、焼却灰等の受入基準や埋立方法について、国の個別評価に向けて検討を行っているところであり、今後とも情報交換を密にしてまいりたいと考えております。

また、兵庫県内の大阪湾センターの積出基地を有している他の市町(姫路市、淡路市、播磨町)と共同で、基地周辺住民の安全確保や十分な理解を得ることなどについて申し入れの調整を行っているところでございます。

引き続き、これらの関係機関と協議・調整をしてまいりたいと考えております。

 意見交換会について

辻おさむ

次に、市民との意見交換会について伺います。 市長は、尼崎市としての検討を始める前に、2回の市民意見交換会を開かれました。いづれも160人、170人と沢山の市民、とくに小さなお子さんをお持ちの若い方や、近隣市の方々もこられており、関心の高さを示しているとおもいます。

中には、被災地や関東地方から移り住んでこられた方もおられました。

発言は、反対の意見が多く、かなり専門的な意見もありました。一方、賛成の意見を述べられた方もいらっしゃいました。すべての人が発言したわけではありませんが、アンケート文書で意見を述べられていた人もいます。

そこでお聞きします。

2回の市民意見交換会を経ての市長の感想は、どのように持たれたのでしょうか?

また、出されたおもな意見にはどのようなものがあり、市ではどのように受け止めているのでしょうか?

また、今後の検討の進め方に変更はないのでしょうか?

稲村市長

がれきの受入れについては、「市民とともに考えるプロセス」と「安全性を検証するプロセス」の双方を丁寧に進めることで判断したいと考えております。

対話集会は、まず私自身が市民の皆様の声を幅広くお聞きすることで論点を共有するため開催いたしました。

発言された方のほとんどは受入れ反対のご意見であり、広域処理の必要性、焼却処理の安全性、処分場の問題等、さまざまな観点から問題提起がありましたが、やはり放射能への不安が大きいと受け止めております。

一方、ご提出いただいたアンケート等には、「受け入れたい」とのご意見も複数ございました。

賛否いずれのご意見の方も、被災地を支援したいという思いは同じだと受けとめております。

今後とも、市民の皆さんと一緒に考えるプロセスや安全性の検証とともに最終処分場の確保や被災地の状況などを踏まえて、総合的に判断してまいります。

2回の対話集会にはたくさんの方が来られ、皆さんの関心の深さと思いを直に感じることができ、実施してよかったと思っております。

被災地の状況を調査せよ

辻おさむ

震災ガレキ処理の問題は、「100ベクレルで安全を保てるのか」という問題と同時に、「そもそも、広域処理の必要があるのか」という意見も多かったと思います。

先日、岩手県、宮城県の震災ガレキ量の見直しがおこなわれ、従来の予測より少なくなりました。それでも247万トンの広域処理が必要だとされています。

また、「現地で処理したほうが、雇用・復興対策になるのではないか」。さらに、ガレキを利用して防潮堤をつくる「希望の丘」構想も言われています。

しかし、被災地で28か所もの臨時焼却場が建設予定で、すでに11か所が稼動していますし、防潮堤建設は、将来の陥没が懸念されるなど、具体化していません。

私たちに届いている報告では、たとえば岩手県では、県全体の一般廃棄物の12年分のガレキですが、被災地だけで見れば、陸前高田市は255年分、大槌町は93年分に当たるといわれています。

がれきを集積する仮置き場が105カ所で、津波で被害を受けた市街地の中心部、港湾、運動公園などにあり、復興の中心となるべきところに10メートル、15メートルの高さでがれきが積まれている状態です。

仕事、住宅の確保、事業所、農漁業の再建が切実な要望で、そのためには津波対策として平地のかさ上げも必要ですが、そこにがれきがあるのです。

がれきの仮置き場で火災発生、夏場を迎えて虫がわくなど衛生面の問題、風でほこりや悪臭に悩まされ、外に洗濯物も干せない状況だといわれています。

災害がれきをできるだけすみやかに処理することは、被災地の復興にとって最重要の課題です。

気仙沼市だけでなく、被災地全体の状況を見る必要があります。

そこでお聞きします。

被災地のガレキ広域処理が必要なのか、必要ないのか、現状について、市長はどのように認識されているでしょうか。また、判断をされていないのであれば、どのように調査されるのでしょうか。

経済環境局長

環境省は5月21日の発表で、災害廃棄物の全体推計量と処理状況の見直しを行いましたが、依然として広域処理受入量が不足しており、引き続き、これを推進するとしておりますことなどから、現時点では広域処理の要請はあるものと認識しており、今後の被災地の状況等について、情報収集に努めてまいります。

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2012年6月市議会一般質問 辻おさむ:原子力発電
2012年6月市議会一般質問 辻おさむ:琴浦市営住宅跡地活用