2018.3月議会予算特別委員会・こむら潤議員が行った総括質疑の発言と当局答弁です

こむら潤議員の総括質疑発言
 私からは二点おうかがいします。

ひとつは、本市の最重点施策でもある「あまっ子ステップ・アップ調査事業」についてです。

先日の文教予算分科会の審議の中で、学校現場教員の負担軽減のための対策が具体的になっておらず、児童生徒一人ひとりへのきめ細やかな対応が現実的に可能なのかなど、この事業については不確かさや疑問点が多く出てきましたので、引き続いて質問していきます。

事業の目的として「子ども達一人ひとりに応じたきめ細やかな指導の充実や学習状況の改善を図る」とありますが、新たに毎年のテストを実施することが、学校現場や子ども達への負担を増やし、個々への指導充実に繋がるとは言えない、と教職員組合から不安の声があがっています。これまで行われてきた全国学力調査のとりくみをみても、自治体によってはテストの点数を上げることそのものが目的化してしまい、教育委員会から現場へ平均点アップの課題押しつけになってしまっているケースもあります。学校間に学力向上の競い合いが持ち込まれることで、教育のゆがみを引き起こす危険性を感じますし、現場の教員や児童生徒には「成果を出さなければ」というプレッシャーが押し寄せ、負担感につながりかねません。

おたずねします。このようなテストによる調査事業に3000万円近い予算をかけて進めれば、本市の教育が「学力向上」に固執した学力至上主義的な方策を取りかねないと思いますが、教育委員会の見解をおきかせください。

答弁
 来年度から実施する予定の、「あまっ子ステップ・アップ調査」は、これまでの調査と異なり、12月から1月にかけて実施することにより、その年度内に子どもたちの学力定着状況を把握することにより、子どもたち一人ひとりに応じた、きめ細かな復習指導を行うことが可能です。さらに、次年度における学習指導の改善を図ることを目的として実施するものであります。教育委員会といたしましては、校長会等を通して、調査の実施目的や活用方法を丁寧に説明することによって、一人ひとりの子どもたちにとって、これまで以上に有効な対応が可能となるよう指導してまいります。以上

 小学校では学級担任制でクラスも毎年編成が変わります。年度替わりや勤務移動もあり、担任の負担は計り知れません。分科会審議では、「こうした子ども達の個々のデータ処理の負担を軽減するのがまさにねらいだ」ともご答弁がありましたが、サポート人員の当初予算も計上されておらず、対策が見えません。また中学校では定期考査や実力考査の結果で個々の学習指導はすでに細かく対応されていますし、従来の全国学力調査の結果は蓄積されてきています。これまでの指導の方向性に間違いがあったのであれば、尼崎の子ども達の学力が全国レベルまであと一歩というところまで来なかったはずです。現場の先生方の地道な一人ひとりへの対応、放課後学習指導や家庭学習指導があってこその成果だと思います。子どもの伸びというのは、学級担任や友達の組み合わせでも大きく変わり、発達成長の根拠は一元的な調査では見えません。学力の向上は、子ども達が安心して学ぶことのできる学習環境の改善がもっとも効果的であると考えます。先日の代表質疑では、我が会派からの少人数学級の拡充を求める質問に対し、「少人数学級編制の実現はきめ細やかな指導の充実を図るためには望ましいことだ」と教育長よりご答弁いただきました。

おたずねします。少人数学級に関する人員や放課後学習のスタッフ人員を拡充することで、授業のつまずきをなくし、学習を確かな力にしていく支援にこそ、予算を使うべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

答弁
 本市におきましては、児童生徒の状況や学習内容に応じて、県の新学習システムを活用し、市内全体では、小学校92名、中学校58名の加配教員による少人数での授業を行っております。少人数での授業が児童生徒へのきめ細やかな指導に有効であることから、少人数学級編制の拡大につきましては、今後も引き続き、文部科学省や県に要望してまいります。また、各学校のニーズに応じて、学力定着支援事業における授業補助や放課後学習等を行う指導補助員を継続して支援することで、さらなる学力向上を図ってまいります。

 また、外部の研究員等を迎えた「尼崎市学びと育ち研究所」において、科学的根拠「エビデンス」に基づく多面的な研究・分析を、中長期的な視点で行い、教育政策の立案に向けた方策を教育委員会にフィードバックしていく、としています。

 

おたずねします。「子ども達一人ひとりに応じたきめ細やかな指導の充実や学習状況の改善を図る」という目的より、学びと育ち研究の実績作りのための事業にみえます。

調査の採点・集計は業者委託、分析研究は研究員に委ねるとのことですが、教育委員会はこの事業からどうやって一人ひとりに丁寧な教育指導を実現するおつもりでしょうか。

 

答弁
 先ほどもお応えいたしましたが、「あまっ子ステップ・アップ調査」は、12月から1月に実施することにより、その年度内に子どもたちの学力定着状況が把握できることに、その特徴があります。

調査結果は、年度内に、子どもたち一人ひとりに対して、どの領域や単元の学習に課題があるか、子どもたち自身が自分の課題を把握できるような資料を返却し、合わせて、教員が復習方法や学習計画などの具体的なアドバイスを行うことで、子どもたちが目標を持って学習に向かうなど、主体的な学習スタイルの確立につなげてまいります。教育委員会におきましては、調査結果をもとに分析を行い、次の教育施策につなげていくことにより、市全体の学力向上をめざしてまいります。(以上)

 「あまっ子ステップ・アップ調査事業」は今後、どのようなスパンで展開していく予定なのかも不確かです。中長期的というのは5年後、10年後、20年後までの展開を想定しているのでしょうか。子どもの育ちを追っていくには、小学校1年生から中学校2年生までの成長を観察するにも8年かかることになります。また先ほどもお話ししたように、子どもの伸びは様々な要因が絡み合っており、紙の上での調査だけで測れるものではありません。

おたずねします。研究員の方々が数字の結果だけで分析されるのでは、本当に本市の学びと育ちの現状を理解していただくことにならないと思いますが、いかがですか。

答弁
 尼崎市学びと育ち研究所は、子ども一人ひとりの状況に応じ、実社会を主体的に生きていく力を伸ばしていくために、研究による科学的根拠に基づく政策立案ができるよう、設置したものです。研究につきましては、数値のデータ分析を中心とした分析型の研究と、教員の自主研究グループなどと連携し、学校現場で研究を進めていく実践型の研究がございます。分析型の研究につきましても、数値の結果だけで判断するものではなく、実際に教育現場に入り、調査を行うものもございますし、教育委員会との連携のもと、現場での経験や実践から乖離していないか、振り返りや意見交換を行いながら進めてまいります。以上

  代表質疑や分科会審議のご答弁の中で「子ども達が主体的に生きていくための必要な育成を図る」とまで述べておられますが、この事業についてはとりあえず毎年テストをしてみよう、という大雑把な事業計画に見えて仕方ありません。数年でフェイドアウトしてしまうようであれば、多額の予算をつぎ込む価値はありませんし、子ども達と教育現場の貴重な時間を無駄にしないためにも、「あまっ子ステップ・アップ調査事業」については見直すべきだと考えます。
 次に中学校給食準備事業費についてです。本市は1月に中学校給食基本計画を策定し、それによると1万1千食を1か所の給食センター建設により供給する、早くて2022年6月からの全校一斉実施をめざすとしています。

おたずねします。市民の多くは、給食は小学校と同じように自校調理方式とイメージしています。給食センターについて不安を感じている声はあちこちから聞こえてきます。本市の基本計画についての市民説明は充分であったといえるでしょうか。

答弁
 中学校給食基本計画につきましては、最も関心の高い小学生の保護者に対して、PTA連合会を通じてご説明するほか、ご要望に応じて学校ごとにご説明するとともに、市政出前講座により、複数の市民グループへご説明を行ってまいりました。このように、中学校給食の実施に向けた取組みに関する情報提供や周知につきましては、それぞれの段階で適時適切に実施してきたものと考えております。以上

 本市のかかげる「ファミリー世帯の定住・転入促進」という方針に照らしてみても、これからまだ5年近く待たされる本計画は、現役の市内在住のファミリー世帯の期待を大きく裏切ることになっています。実際、中学校、小学校の保護者から「がっかりした」「知り合いはもう他市へ引っ越した」という話を聞きます。

本市はそのことについての認識はありますか。

答弁
 中学校給食の開始時期につきましては、他都市の事例を参考に、官民連携手法を導入し、給食センターの整備を進めることを前提に設定したものでございます。今後は、パブリックコメントなどを通じて、早期開始を望むご意見が多数寄せられていることも十分に踏まえ、様々な課題について精力的に調整を図り、できる限り早く給食が実施できるよう、取り組んでまいります。以上

 全校が一斉に5年後に実施することよりも、1校でもできるところから1年でも2年でも早く確実に実施を進める方が、市民に望まれていると考えます。我が会派は、(敷地などの条件がよい中学校には)自校調理方式、(自校が困難な学校は近くの小学校から供給する)親子方式、または(中学校同士で供給する)兄弟方式も含めたやり方で、できるところから早期の実施を求めています。代表質疑でもお話ししたように、親子調理方式の給食を実施する高槻市の学校給食の様子、尼崎市内の小学校の、自校式の給食の様子を会派で視察して参りました。代表質疑では、この視察の体験から「給食センターにこだわらず、さまざまな調理様式を組み合わせ検討すべきだと思うが見解は」と尋ねたところ、主に次のようにご答弁いただきました。まず、「親子方式」を実施する場合について。1、自校の食数キャパシティで手一杯のため、同じ釜を途中で洗浄し2回転させると衛生管理上問題がある。2、キャパを広げるためには増築が必要だが、ドライ化工事をほぼ完了した小学校の給食室の改修や増築工事は、二重投資になってしまう。3、配送する中学校分を先に調理するため、2時間以内に喫食というタイムリミットが厳しい、とのことでした。また、「兄弟方式」の場合、2校分の大きな給食室を新築すると、建設する中学校に教育環境上、影響が大きくなるといったことです。このご答弁を受け、いくつかの点について、さらにおうかがいしたいと思います。

まず、「親子方式」を実施する場合について。調理行程を2回繰り返すこととなり、厨房機器の洗浄作業を行うと衛生管理上問題があるとのことですが、今現在、小学校の調理の過程で、途中で洗浄することはまったくないのですか。

答弁
 国の学校給食衛生管理基準におきましては、「調理室内における機械、容器等の洗浄及び消毒は、全ての食品が給食室から搬出された後に行うよう努めること」とされており、本市におきましても、そうした取組みの徹底を図っているため、調理途中で洗浄作業を行うことは基本的にはないと考えております。ただし、教職員も含めた食数に対し、厨房機器の調理能力が限度一杯の状態にある給食室におきましては、献立内容によって、やむを得ず途中洗浄を行う可能性があるものと認識しております。以上

 実際、視察で市内小学校の調理場では釜を洗浄し、次の調理にかかっているところを見せていただきましたが、シンプルで素早い作業で、周りに汚れた水が飛び散るということもなく、時間的にも5分とかからずに済んでいました。衛生管理上の問題があるというのは、あたらないと思います。

教育委員会では、実際にこの厨房機器の洗浄行程は視察されたのでしょうか。

答弁
 教育委員会では、管理栄養士による給食室の巡回指導を継続的に行っております。議員ご指摘の視察校に確認いたしましたところ、当日の献立の調理過程で、釜をすすいだことはあったものの、調理途中での洗浄作業は行っていないと聞いております。国の学校給食衛生管理基準を遵守し、安全・安心な学校給食を提供するという観点からは、日常的に調理途中で洗浄作業が発生することは、望ましくないものと考えております。そのため、中学校給食の実施にあたりましては、国の学校給食衛生管理基準を遵守できるよう給食センターの整備を行ってまいります。以上

 次に、ドライ化の完了した小学校では、増築や機器の増設は二重投資になるとのことでしたが、小学校の給食室の中には、増築工事を行わなくてもキャパシティに余裕のあるところはあると思います。現在のキャパを見れば、200食以上の余裕を持ち、尚かつ児童数が急激に増える可能性の少ない小学校は10校あります。1校から1校への供給は難しくても、複数の小学校から供給すれば親子方式が可能です。

おたずねします。教育委員会では、検討段階でどのくらい具体的に親子方式について試算されましたか。

答弁
 本市において、親子方式により中学校給食を実施するとなれば、小学校の給食室で調理した給食を中学校に配送することが基本になると想定し、必要となる経費を試算いたしました。その内容につきましては、初期経費として、中学校分の給食実施に必要な面積を増築する費用、既存の小学校給食室の改修費用、新たに小学校に設置する配送用コンテナスペースの増築費用、2校分の給食調理に必要な厨房機器の増設等の費用を、また、運営経費として、中学校分の給食調理業務にあたり必要な人件費や配送費用等を見込んだものでございます。以上

 高槻市の親子方式の取り組みを視察し、大きな気づきがありました。たとえ小学校の敷地内で調理していても、そこは「教育委員会が所管する、学校給食のための調理場である」ということです。小学校と中学校の行事や授業体制が違うとか、小学校の負担になるとかいった、小さな観点ではないのだ、ということがよくわかりました。市の政策として実施する、「小中にかかわらず子ども達の食を保障する」大きな事業なのだ、ということです。次に、「兄弟方式」の場合、2校分をつくる給食室を新たに建設するといっても、単純に丸々敷地面積が2倍必要になるものではありません。学校保健課長に以前うかがったお話でも、敷地面積と給食室のキャパシティは比例するものではない、とのことです。

建設する中学校の教育環境にそこまで大きな影響が出るとは思えませんが、その点についてはいかがですか。 

答弁
 中学校給食を兄弟方式で実施する場合、安全で安心な学校給食を提供するためには、国の学校給食衛生管理基準の遵守を考えますと、2校分を同時に調理できる環境を整えることが必要であります。本市の多くの中学校において、新たに給食室を設置するために必要なスペースを確保することが困難である中、自校以外の学校分の給食も調理する給食室を建設することにつきましては、当該設置校において少なからず学校運営や教育環境への影響が生じるもの、と考えております。以上

最後におたずねします。教育委員会は、自校方式や親子・兄弟方式での実施についても引き続き具体的な調査を続ける予定はありますか。

答弁
 中学校給食基本計画でお示しいたしましたとおり、安定的に安全・安心な給食を提供できるよう、長期的な視点から検討を行った結果、給食センター方式の採用が最善であると判断いたしましたことから、他の実施方式の調査を行う予定はございません。今後は、多くの市民の皆様からお声をいただいている、できるだけ早期の給食実施に向け、力を注いでまいります。以上

 振り返ってみますと、1、給食センターありきでコンサルタント業者主導でここまで進められてきた事、2、市民意見聴取が形骸的になり、多くの市民が中学校給食について意見するチャンスが乏しかった事、3、具体的な経費試算の比較検討など議会で十分審議するタイミングがなく基本計画が立てられた事など市民にとって不本意な中学校給食になってしまうのでは、と残念でなりません。

要は「行政のやる気」そして「市長の決断」の問題であり、高槻市と本市の違いは、「初めにどの方式を前提にしたか」の出発点です。もちろん自治体ごとに事情が違いますが、本市の選択は、できるだけ手間を省きたい、という方向にばかり進んでいるように感じられます。現在の小学校給食業務の委託要綱をみても、食育についての記述は概要的な文言で、たったの二行です。食は子どもたちの心と体の成長発達に欠かせない基本要素です。ただ食べ物が配られればよい、というのではなく、作る人と食べる人の心の通う、安全でおいしい給食を実現してほしいと願っています。「より良いものを、より早く」という観点からは、まだまだ調理方式についても給食センターに決論づけてしまうのは納得がいかず、調査・議論を尽くすべきだと考えます。中学校給食の給食センターでの基本計画については、見直しを行うべきです。私からは以上です。真崎委員にかわります。