日本共産党議員団を代表して、2016年度決算について、川崎敏美、私、徳田稔が総括質疑を行います。
子どもの医療費
まず子ども医療費助成事業について事務事業シートにも関連してお尋ねします。
こども医療費の無料化は、多くの子育て世帯の強い要望となっています。
県下の自治体では、通院も入院も中学3年生まで無料がほとんどであり、小学4年から中学3年まで自己負担が2割なのは尼崎など3市のみとなっています。昨年12月六星会も中学3年生までの医療費無料化を要望し、今議会へも市民から陳情が提出されています。この様にこれまで無料化を求める陳情が絶えないのは、市民の中に強い要求があることを示しています。
お尋ねします。子どもの医療費を中学校卒業まで無料化を実施すべきと思いますが、市長の見解をお聞かせください。
答弁要旨
本市では、大変厳しい財政状況が続く中、これまでも入院無料化の対象を「小学3年生まで」から「中学3年生まで」に拡充し、通院無料化の対象を「3歳未満児」から「就学前児」に拡充したほか、通院の助成対象についても「小学6年生まで」としていたものを「中学3年生まで」に拡充してきました。乳幼児等医療とこども医療を合わせると、既に事業費全体で約7億円を市が負担しており、子どもの医療費を中学校卒業まで完全に無料化した場合、新たに約4億円、所得制限を維持したまま行ったとしても、約2億円が必要となります。この事業費は、県制度を基本とする医療費助成事業において、県が中学校卒業まで完全無料化していない現状では、市が全て負担することになります。平成28年度の施策評価結果にもあるように、ファミリー世帯の定住・転入促進を促すための重点化施策として、学力向上や待機児童対策が優先的に掲げられる中で、多額の事業費を要する子どもの医療費の拡充は、現段階では困難であると考えています。
(徳田)実施が困難とのことですが、続けて質問します。2016年度予算に対する会派議員の代表質疑で、「子育て世代の子どもの医療費の完全無料化にどのように応えていくのか。
財源が厳しいからと県のレベルに甘んじていれば、受診控えや他市への転出を促す要因になるのではないか」とお聞きしました。当局からは「一人当たりの年間平均受診件数は例年伸びてきており、必要な医療が受診控えされているとまでは言えない」と答弁されました。本当にそうでしょうか。
今年9月5日の毎日新聞は、小児医療費助成が低所得者の入院を減らす効果があることが、慶応大学などの共同調査でわかったと報道しています。この調査では、医療費助成のうち、通院費の支給対象年齢が引き上げられた度合いを数値化。全国977の病院に2012,13年度に1390市区町村から入院した6歳から18歳の延べ36万6566人の患者データと関連を分析しました。さらにその市区町村の1人当たりの対象所得を高所得地域、低所得地域に分けて分析しています。結果、低所得地域は医療費助成を12歳から15歳に引き上げると、入院数が5%減る関連性が見られた、中でも緊急入院やインフルエンザなど外来で対処すれば入院が防げる「外来治療可能疾病」の入院が減ったとしています。調査した慶応大学の後藤准教授によると、「低所得地域では家計が苦しく病院に行けなかったり、慢性的な病気にかかりやすかったりした患者が、医療費助成で外来が利用しやすくなり、結果として入院が減ったとみられる」と述べ、所得レベルに応じた助成が効率的と提案しています。
お尋ねします。尼崎の子どもの医療費が中学卒業まで無料化することによって、受診控え少なくなると考えるべきと思いますか、見解をお聞かせください。
答弁要旨
慶応大学の後藤准教授の調査において、低所得地域では医療費助成の対象年齢の引き上げにより、入院を減らす効果があるとの調査結果は承知しております。この調査では、市区町村の1人当たり課税対象所得について、平成24年度の中央値を275万5千円とし、これより上の自治体を「高所得地域」、下を「低所得地域」に分けて、例えば対象年齢を12歳から15歳に引き上げると、低所得地域においては、入院数が5%減る関連性が見られたとの内容になっております。
尼崎市は、ここでは関連性の見られなかった「高所得地域」に分類されております。一般的には、医療費の無料化により、受診しやすくなるものとは考えますが、無料化を実施していない本市においても、一人当たりの年間平均受診件数は増えており、基本的に、必要な医療は受診されているのではないかと考えております。
(徳田) 尼崎は低所得地域でなく高所得地域とのことですが、1人当たりの対象所得が中央値より上の自治体を高所得地域、下を低所得地域となっています。この中央値は12年度で275万5千円で、尼崎は303万3千円です。尼崎は高所得地域の中の一番低い地位で、慶応大学のこの調査の動向は尼崎でもあると思います。2015年6月、尼崎版総合戦略策定に際して実施された、尼崎の住まいと暮らしに関する調査で、2009年以降に近隣他都市に転居した子育てファミリー世帯へのアンケートで、引っ越し先を検討する際に、決め手とした子育て施策などの行政サービスがあると答えた人のうち、決め手となった行政サービスで、「乳幼児医療費等の助成金額や助成期間」が最も多くなっています。さらに複数回答を求めた結果では、実に2人に1人が乳幼児医療費助成をあげています。
お尋ねします。アンケート結果の、この項目をもっと重視し、子どもの医療費無料化の拡大など子育て施策の検討に活用すべきと考えますがいかがでしょうか、お答えください。
答弁要旨
一般にアンケートは施策を考える上で活用しているところですが、このアンケート結果については、少し内容を詳しく説明させていただきます。アンケート結果によると、市外に転出した子育てファミリー世帯338世帯の中で、「現在の居住地に決めた一番大きな理由は何か」との問いに回答のあった204世帯のうち、1位は「親・きょうだい・親戚が近くに住む」が46世帯(22.5%)、2位が「通勤に便利」30世帯(14.7%)、3位が「治安がよい」21世帯(10.3%)、そのほか「小学校・中学校区」20世帯(9.8%)、「同じ広さの住宅が安い」17世帯(8.3%)などと続きます。
さらに、同338世帯のうち「引っ越し先を検討する際、子育て施策など行政サービス・制度について調べたか」との問いに回答のあった338世帯のうち、「調べた」、「調べなかったが、知っていた」との回答が150世帯あり、この世帯に対して、現在の居住場所を決める際、決め手になった行政サービス・制度の有無を尋ね、「ある」と回答があったのは51世帯でした。この51世帯に「一番大きな決め手となった行政サービス・制度は何か」との問いに、「乳幼児医療等の助成金額や助成期間」を選んだのは6世帯(24%)になり、「小・中学校の空調や給食等の教育環境」が5世帯(20%)、「小・中学校の学力や学習内容」も5世帯(20%)などの順となっています。このように、回答のあったファミリー世帯338世帯のうち、制度を調べたり知っていたりして、「乳幼児医療等」を決め手に選んだのは、6世帯(1.8%)となっているのがこのアンケート内容です。何れにいたしましても、乳幼児や子どもの医療費助成が引き続き必要であるということは認識しておりますので、財源や施策の優先順位などを勘案するとともに、他都市の実施状況についても研究してまいりたいと考えております。
(徳田) 市外に移りたい理由に挙げている方の第1の理由はマナーが悪いことだと言う答弁ですが、この結果は、尼崎に転入して、現に尼崎に住んでいる、若い夫婦や子育てファミリー世帯が市外に移りたい理由の第1です。そして、この人たちが転出先を選ぶための行政サービスも、やはり第1は「乳幼児医療費等の助成金額や助成期間」であることを指摘して、次に移っていきます。
(アスベスト対策等)
次に施策評価の地域保健の項のアスベスト対策における被害者支援強化についてお聞きします。アスベストによる健康被害は深刻です。低濃度であっても、アスベストを吸い込むと20年から50年経過して中皮腫や肺がんなどを発症します。市内における中皮腫による死亡者は、2015年は41人、2002年から15年までの14年間で380人にのぼっており、小田地域に集中、これからがピークです。アスベスト疾患による犠牲者を減らすためには、早期発見にあり、検診受診のための積極的な呼びかけが不可欠となっています。私は、昨年9月議会で、旧小田南中学の卒業生から中皮腫の発症が続いていることを指摘し、クボタ旧神崎工場がアスベストを飛散させた期間、周辺の小・中学校に在学していた人、市外在住者も含めてアスベスト検診の勧奨を強化すべきではないかとお聞きしました。市は「当時通学していた人を把握することは、個人情報保護の観点や転居等の問題もあり、困難である」との答弁でした。この問題を昨年11月、共産党議員団が堀内照文前衆議院議員と環境省への申し入れの際に取り上げたところ、環境省は「教育委員会が卒業生にアスベスト検診をすすめる文書を送るのであれば、その郵送代は国が負担します」と回答しています。
教育委員会にお聞きします。国が郵送代を負担するとの回答を得ている今こそ、クボタ旧神崎工場周辺の小中学校へ、1955年から75年在学していた卒業生にアスベスト検診をすすめる文書を送付し、検診をすすめるべきと思いますが改めて見解をお聞かせください。
個人情報は学校から出すので抵触しないのではないですか。卒業生の氏名の名簿は保存され、住所は調査をすればわかるのではないでしょうか。時間の関係で次に行きます。
次に施策評価の地域保健また環境保全・創造の項にあるアスベスト問題について、市営住宅のアスベスト対策についてお聞きします。公営住宅の壁などで使われていたアスベストによって居住者が健康被害にあったケースが明らかになり、不安が広がっています。この問題を公表した患者団体の調査では、32都道府県の県営・市営、UR団地など少なくとも2万2千戸でアスベストが使用されており、最大23万人がアスベストにさらされるおそれがあると推計されます。患者団体が公表したのは、アスベストが使われた住宅に住み、被害にあった神奈川県の53歳の女性の事例です。女性は2015年に急に激しいせきに襲われ、アスベスト特有の胸膜中皮腫と診断されました。原因は1歳から22歳まで住んだ県営住宅の天井の吹き付けアスベストであったことが判明しました。尼崎の市営住宅でも、室内に吹き付けアスベストが確認されているのは14団地、共用部では5団地で確認されています。すでに2006年と10年に飛散防止対策が講じられています。
お尋ねします。アスベストが確認されている団地はすべて老朽化しています。今後、劣化などにより剥離し、飛散が心配されますが、日常的な監視、点検対策はどのように行われているのでしょうか。
また過去を含め、居住者への被害の可能性の周知はどのようにされているのでしょうか、お聞かせください。
答弁要旨
在学していた児童生徒の氏名、住所に関する記録につきましては、指導要録に記載がありますが、学校教育法施行規則の規定により、保存年限は20年と定められております。当時、在学していた生徒は、学校を卒業してから既に40年以上経過し、当該指導要録は廃棄していることから、文書を送付することはできません。
市営住宅に係るアスベスト対策については、平成17年度と平成21年度に分析調査を行い、アスベスト含有が判明した住宅については、それぞれ平成18年度と平成22年度に、室内天井の吹付け材は囲い込み、共用部の吹付け材は除去により、対策を実施しました。室内天井の囲い込みは、膜天井で密閉する方法で対策し、施工後おおむね10年経過していますが、膜天井のメーカーによると、施工実績として約30年経過したものでも特に機能に支障は生じていないと聞いており、また、空家修繕などで膜天井の状況を確認していますので、現時点では日常的な監視までは必要ないものと考えています。
アスベスト含有のある吹付け材が使用されていることについて、平成17年度と平成21年度の分析調査後に、それぞれ調査結果を入居者にご説明しています。この調査結果とその後の対策内容については、現在、市のホームページにおいて、対象となる住宅と住棟、部位、アスベストの種類などを掲載しており、合わせて、健康被害に不安のある方のために、石綿健康相談や健診の相談窓ロなどの情報も掲載しています。
(徳田) 昨年も大西、杭瀬などの保育所の壁にアスベストが含まれていることが分かり、保護者から不安の声が上がっていました。解体中の宮の北市営住宅にもアスベストが含まれて慎重に解体工事がされています。アスベストが含まれている市営住宅の入居者から被害が出ないよう、今後とも、慎重な対処を要望しておきます。
市営住宅の障害者用の風呂についてお聞きします。
この問題は、会派議員が建設消防企業分科会でも取り上げました。
この質問に関連してお尋ねします。
上ノ島町にある市営野上団地のお住まいの女性からの訴えです。ご主人が要介護3でかつ左下半身マヒの身体障害者2級の車いす生活です。この女性は障害者向けの市営住宅に応募し、やっと入居出来たとのことでした。そして入居したところ、障害者用のお風呂は、今まで見たことのないようなお風呂で、入浴することができず途方にくれているそうです。お手元の写真ご覧ください。この様な風呂で、ご家族は入浴できないため、そのためシャワーのみで済ませており冬は寒くて、一時血圧が下がりヘルパーさんに来ていただいた事もあるそうです。家に来られた方やヘルパーさんに見てもらっても全員が異口同音「どうやって入いるのか」と首をかしげているそうです。私も見に行きました。これまで市に何度も改修を申し出たそうですが、介護保険や障害者向け制度の枠内により、自己負担で改装するように言われています。
お尋ねします、市はこの市営住宅の障害者用風呂の実態をご存知でしょうか。
どのような障害者の方を想定して風呂を作られたのでしょうか。入居者のニーズに合わない風呂を障害者用の風呂と言えるのでしょうか。
障害者向けの市営住宅として募集を行うのであれば、障害者が利用できる風呂にすべきと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。
答弁要旨
この入居者の方は、平成28年度第1回空家募集で当選され、同年8月に入居したあと、入浴の際に既存の手すりが障害になるので取り外してほしい、あるいは浴槽を跨ぐことができないので段差を解消してほしいといった要望があり、市営住宅北部管理センターが対応しておりました。
その内容については、同センターから随時報告や相談があり、市も把握しております。また、浴室の実態についても、入居者の説明どおりの仕様になっていることを承知しております。
市営野上住宅は、平成2年に完成した住宅で、車いす世帯向け住戸のトイレや浴室については、本市が策定した福祉まちづくり環境整備要綱などを参考にして設計しております。この住戸の浴室については、車いす利用者が体を洗うための洗い場として、浴槽の横に床面から高さ約45センチメートルの台を設けるとともに、車いすから洗い場・浴槽に移動するための手摺を設置しているものです。
市営住宅の建設時に設ける車いす世帯向け住戸は、ある特定の入居者のニーズに合わせて建設するのではなく、標準的な仕様で建設しております。しかしながら、この仕様ではすべての身体障がい者の方の障がいの内容や程度に合致できないことがあります。市営住宅は、一一般住戸も含めて、入居当初の状態のまま使用していただくことを原則としておりますが、障がいの度合い・状況により模様替えが必要となった場合は、市の承認を得て、入居者の負担で模様替えができることとしております。その場合、通常、介護保険制度を活用して模様替えをされている事例が大半となっております。
(徳田)この問題は引き続き取り上げていきたいと思います。時間の関係で次に進みます。
(市税、国保料の納付)
次に市税、国民健康保険料の未納問題についてお聞きします。
納付は誠実に行われなければなりません。そして納付しない場合には滞納処分ができます。
市民が納期限までに完納しない場合には、一定の期間を経過したのち財産を差し押さえることができます。しかし、不況に陥って収入が減り生活が苦しくなったり、事業が行き詰まり、納付が困難な場合が起こります。その様な場合の対策として法律に基づく納税緩和措置があります。この制度は、徴収の猶予、換価の猶予、滞納処分の執行停止です。徴収の猶予は納付が困難になった場合に、納付能力調査を行い、納付が困難な部分について猶予を認めるものです。許可されると督促や滞納処分を受けることなく、猶予期間中の延滞金も軽減されることもあります。換価の猶予は、さらに広範囲に適用するとされています。
お尋ねします。この徴収の猶予、換価の猶予、滞納処分の執行停止の制度がこれまでどの程度活用されていますか。
答弁要旨
地方税法の規定により、市税の徴収の猶予、換価の猶予、滞納処分の執行停止のいわゆる「納税の緩和措置」が一定要件に該当する場合に限り適用できることとされており、平成28年度の実績で申し上げますと、徴収猶予は7件、換価の猶予は8件、滞納処分の執行停止は、2,302件となっております。
一般的に市税の納付が困難になり市に相談に訪れると、任意の分割によって納税を求められます。
市税を未納している市民が相談に訪れた時には、先ず法律に基づく徴収の猶予や換価の猶予を活用して納付計画を立て、できない場合にのみ、任意の分割納付で進めるべきと考えますがいかがですか。
分納相談を丁寧にすることは当然です。その前に国税徴収法などに基づく制度を活用した納付計画の作成を求めているものです。次に行きます。
この徴収の猶予や換価の猶予などは国民健康保険料にも適用されます。ある自営の製造業者が経営不振で国保料が未納となり、国保課へ出向き、法律に基づく換価の猶予を申し出たところ、担当者から「実績がない」と断られたと聞いていますが、なぜ断ったのでしょうかお聞かせください。
市民への説明が、十分でなかったのではないでしょうか。今後とも法に基づいて、執行をおこなうことを求めて、川崎議員へ交代します。