業務プロセス分析結果とさらなるアウトソーシング
市は。これまでにも、保育所の民間移管等をはじめ、様々な施設で指定管理を入れるなど、公務労働を民営化していくことを行なってきています。2016年1月から市民課窓口の民間委託が行われています。外部委託で市民のプライバシーは守れるのか、委託先の職員が窓口での相談業務に対応できるのか、市の職員が直接委託先の職員に指示をするなどの偽装請負は起こらないのか等、問題点があげられていました。当初では一部偽装請負と疑われる事象も発生したことが、市職員労働組合からも指摘されていました。2015年10月に「今後の超少子高齢社会に対応するための行政執行体制のあり方について、さらなるアウトソーシングの導入のための基本的方向性」が示されました。そこでは「政策企画業務、公権力の行使、高度な専門性を除く業務は、基本的にアウトソーシングの方向で検討を行う」とされていました。日本共産党議員団は、2016年度予算案に対する意見表明で、市職員は通常の業務以外にも災害時の対応が欠かせない、職員には業務の技術的蓄積が必要であるから、「安易なアウトソーシングを行うべきではない」と意見表明し、受注者や労働者の意見をしっかり聞くべきだと提案しました。
おたずねします。そもそもアウトソーシングの目的はどこにあるのでしょうか?
昨年度、2585万円あまりをかけてコンサルティング業者「株式会社富士通総研」業務プロセス分析が委託されています。他市での実績があるとはいえ、市の業務に精通していない外部の1業者にこの業務を委託、丸投げにする手法でいいのかという声も、市職員OBからお聞きしたこともあります。株式会社富士通総研」が行った業務プロセス分析の結果内容に基づいて、アウトソーシングが第1クール先行39業務について具体的な検討が、議会に示されることなく行われてきています。
「株式会社富士通総研」が行った業務プロセス分析の結果が議会に示されなかった理由をお示しください。また職員労働組合には分析結果を公表、説明をされているのでしょうか?
将来の尼崎市庁舎の人的構成がどうなるのかという問題は議会にとっても大きな関心事であり、また労働組合にとっては職員の公務労働の内容に直接影響を及ぼすものであり、もっと慎重に取り扱われてしかるべきだったのではないかと考えます。業務プロセス分析の結果による庁内検討が第1クールとして39業務、第2クールとして先行39業務以外の検討が行われており、そこには、介護関係や税・社会保険・生活保護等の市民との窓口相談業務や、下水道課など技術の伝承をどう後世に伝えていくのかを検討する職場がかなりの数含まれています。「株式会社富士通総研」業務プロセス分析業務報告書によると、正規職員478人分の業務について、非正規化やアウトソーシングなどの見直しが可能とされています。総務の決算分科会で、「北部浄化センターについて災害対策あるいは事業の継承、技術の継承等でこれまで直営で行うということを言われてきたが、今回のアウトソーシングについてどう考えるのか」と聞きました。答弁は「ノウハウの継承等については委託の仕様書、危機管理等については契約書の中に記載するなどして対応していきたいと考える」とのことでした。
おたずねします。マニュアルで技術の継承や危機管理への対応策がそう簡単にできるとは思われないのですが、改めて当局の答弁を求めます?
やはりマンパワーがあってこその公務労働ではないでしょうか?マニュアルで文書の紙面だけでは伝わらないことが多々あるのではないでしょうか。人から人に事業や技術・知識の継承を、年月をかけて直に伝えていくことが大切にされなければならないと思います。
さらに今後の経済動向によっては、経済的なメリットが満たされていくのかという問題があります。デフレ経済下では物価・賃金の下落もあって、経済的に民間が活用できるかもしれません、しかしインフレ経済の下では、①供給力不足により必要なサービスが安定的に調達できなくなる、②調達価格が上昇することが考えられます。
民間委託が進めば進むほど受け手があるのかという問題が出てきます、デフレからインフレへの経済動向の変化によっては、受託者を将来にわたって本当に確保できるのかという点について、どのように考えますか?
アウトソーシングの実施によって、市民サービスの低下、職員のやる気、スキルが低下させられる状況があらわれかねない懸念は拭い去ることはできません。全庁的なアウトソーシング化は、見直すべきだと考えます。
保育所民間移管
尼崎の公立保育所は現在21カ所残されており、そのうち12カ所は民間移管、9カ所は公立として残されます。施策評価表では、保育事業の成果について、定員増や施設の建て替えなど老朽化対策を盛り込んだ第4次保育環境改善および民間移管計画を策定し、今後6カ所の民間移管の方向性を定めています。残された民間移管6カ所と、公立のまま残される9カ所のうち建て替え必要な6カ所はどうなるのでしょうか?今回の「第4次保育環境改善および民間移管計画」で、6か所の民間移管が終了する年度は7年後です。残された6か所のうち早期の建て替えが必要な3カ所、今北築48年、戸ノ内築50年、水堂築45年については、結局建て替え問題の解決はおそらく10年以上も先に追いやられるということになってしまいます。また公立として残される9か所のうち、建替えの必要性のある6カ所は代替えの土地がある3カ所については建設を進めるとあります。残りの3カ所、杭瀬は築48年、次屋は築51年、武庫南は築49年で代替えの土地が見つかるまで計画がたてられない状況です。
公立保育所の建て替え計画はもっと短期的に解決すべきあり、早期の総合的な計画づくりが必要だと思います。当局の見解を求めます。
次に保育士不足の問題についてです。近年、第3次民間移管計画でも、受け入れに手を上げる福祉法人が極端に減少しています。また園田地域での保育園設置に名乗りを上げるところがありませんでした。根底には保育士不足問題があります。これまで尼崎市が独自に、保育士の処遇改善や公私間格差是正施策を積極的に行ってこなかったことも原因の一つになっています。神戸市では新たに保育士の独自の人材確保のための事業が予算4億円をかけて始まっています。
公立では任期付き保育士の採用が行われていましたが、それが今は中止され、正規の保育士募集が行われるようになっています。この政策転換は何が理由だったのでしょうか?
保育士不足の解決に向けて、市独自の民間の保育士の処遇改善とともに、公立で正規の保育士を思いきって雇用する対策こそとるべきだと考えます。
次に保育所の待機児童対策についてです。規制緩和された小規模保育事業などで保育基準を切り下げて、これまでの認可保育所との格差を広げる方向では、保護者のよりよい保育環境を望む声に届きません。小規模保育事業をさらに増やせば、3歳のカベ問題も出てきて、連携先へのスムーズな移行ができにくくなる可能性がますます増えてくると思います。
小規模保育事業の活用を推進する待機児童対策を改めるべきだと考えますが、当局の見解を求めます。
また公立保育所の民間移管による、施設を建て替えて定員増を行う方向では、待機児童対策解決に時間がかかってしまいます。委託先をさらに企業等などに広げていく方向では、儲からない企業は保育事業から撤退すること等が他都市では起きています。民間移管先に企業等を加えることは、保育の安定供給にはつながらないという不安を抱え込んでしまいます。第4次民間移管計画は、この際きっぱり中止して、公立保育所は公立のまま残し、その建て替えや保育士の確保も行政の責任で果たして、定員増を行い待機児童対策も行っていくことが、尼崎の子育てに施策に必要かつ重要であると考えます。
児童ホーム
施策評価表では児童ホーム運営で、成果として将来的に利用希望者が多いと推計される武庫と潮の児童ホーム定員を80人増加。さらに民間児童ホームの定員を154人増加し定員拡大を行ったとあります。そのことで2016年度の利用希望者は増えたものの、待機児童数は減ったとされています。しかし実際の待機児童数は今年度350人と増え続けています。建て替えを行った武庫では2階建てのものを求める要望が出されていました。新施設ができても余裕教室との併用で対応しなければならないといった問題があり、同じ児童ホームの利用者一人当たりの面積差や施設が新しい古いで、児童の間に差別が生じる、という問題が指摘されていましたが、2階建ての要望は満たされませんでした。潮では計画段階での保護者や指導員からの意見を聞くことがなされずに、設計図面ができあがってから説明が行われています。指導員が定点から子どもたちの様子がとらえられる、男女別のトイレがきちんと設置される等、本来あるべき状態、使い勝手の良い施設にしてほしいとの要望は、結局は図面が上がっているから反映できない等のことが起こっており、要望を取り入れていくための機会を与えてほしかったとの声が、指導員、保護者双方から議員団に寄せられています。
事前に保護者や指導員の意見・要望を取り入れた設計にするなど、きめの細かい配慮が必要とされていると思うが、どう思うか?
児童ホームの待機児童対策として、民間を活用するとしているが、民間は利用料も児童ホームと比較してかなり高額な利用料を設定している所もあり、本来の、生活の場としての留守家庭児童対策事業として位置付けていいのか疑問を感じています。どの場所に設置するのかという計画も、事業者任せで、本当に待機児童対策が必要な所には手が届かないということもあります。
市は、児童ホームの待機児童対策のためには積極的に民間活用ですすめるとの考え方を示していますが、この考えは改めるべきではないでしょうか?
児童ホームの施策について、子ども子育て支援新制度のもとで、6年生までの受け入れ拡充、男女別のトイレの設置、1カ所につき40人定員であるべきとの国基準を達成していく施設建設、これらの課題を、児童ホームの待機児童対策とともに、市は抱えています。行政の責任で、優先順位を決めて施設建設の計画たてることが必要です。待機児童対策は民間活用や子どもクラブの活用でお茶を濁すやり方を改めるべきだと考えます。きちんと、尼崎の良さである学校内に施設建設の計画をたてることを求めます。
以上で2016年度決算総括質疑を終わります。この後は意見表明で会派としての態度を表明します。