2016.9月議会・まさき一子議員の一般質問の発言と答弁概要

第1登壇

 

日本共産党議員団のまさき一子です。今回は、保育所の建て替え計画、人口減少社会、子どもの貧困について質問をします。

まず最初に≪保育所の建て替え計画について。

3月議会の総括質疑で、私は武庫東保育所の建て替えについて建て替え場所を提案し、質問をしました。「建て替え中の時友住宅の余剰地を活用して、武庫東保育所の建て替えを検討する」との答弁をいただきました。余剰地活用は来年度末までにその計画を具体化しなくてはなりません。まず最初にお尋ねします。

  武庫東保育所の建て替え計画はどのように検討され、具体化されていますか? 来年度の予算には反映されるのですか。

答弁要旨

今年の2月議会における真崎議員の総括質疑にご答弁申し上げましたとおり、公立保育所の建替えは、庁内関係部署とも連携する中で、必要な用地の確保など条件を整えた上で、進めてまいりたいと考えております。お尋ねの武庫東保育所につきましては、市営時友住宅の建替えに伴う余剰地の活用を計画案としているところであり、当該住宅の建替えの動向と連動する必要がございます。現時点において、時友住宅の建替え事業は平成31年1月頃完了予定と聞いておりますことから、武庫東保育所の整備時期は、それ以降になる予定でございます。以上

それでは人口減少社会について伺います。

都道府県別の人口増減率を見ると、東京都が最も増加しており、東京圏の大都市で人口が増えています。一方では都道府県別特殊出生率(女性が一生のうちで子どもを出産する数、以後出生率と言います)をみますと、2015年厚労省の調べでは、全国は1.40人。出生率が一番に多い県が沖縄県(1.94人)であり、反対に最下位は東京(1.17人)です。なぜ、東京では出生率が少ないのに、人口は増えているのでしょうか。出生率が高い沖縄県をはじめとする九州・中国地方等で生まれた人たちが東京に移動して都市部の人口増を支えています。地方では子どもを産み育てる中で、近くに身内が住んでおり一緒に育ててもらえる環境があることが、出生率を高めている一因ではないか考えます。しかし子どもの成長に伴い、大学が少ない、働く職場が少ないことが、大都会に若い人が流出して行っていると考えられます。私は尼崎市を囲む西宮市、伊丹市、宝塚市の人口ビジョンをもとに、出生率と出生と死亡の増減割合を示す自然増減、転入転出の割合を示す社会増減を比較してみました。兵庫県は人口減少が緩やかにすすんでおり、出生率は1.38人です。西宮市は1.32人、伊丹市は1.54人、宝塚市1.34人です。尼崎市は1.47人、全国・兵庫県・近隣都市と比較しても、子どもが産みにくい環境ではないと言えます。

資料の図1をご覧ください。

自然増減は、尼崎市は2009年以降、死亡数が出生数を上回る自然減の状態が続いています。西宮市と伊丹市は、出生数が死亡数を上回っているものの、出生の減少と死亡の増加で、その差が縮まってきています。宝塚市は、出生数の減少と死亡数の増加で2012年に自然減になりました。結果は自然増減では、尼崎市が生まれる人より死ぬ人の人口幅が近隣市の中では大きく、高齢化と早期に亡くなる人が比較的多いということです。高度成長時代に地方から多くの労働者が転入し、住み続け発展してきた街です。今その人たちが高齢化しています。早く成長した街だということでしょうか。また図2をご覧ください。人数の単位が各市違いますし、細かくてわかりにくいと思いますが、大まかな転入転出の流れを見ていただいたらいいと思います。社会増減では、尼崎市は1995年の阪神淡路大震災以降は年間5000人にも及ぶ大幅な社会減になっていましたが、近年減少幅は縮小し、2013年には年間900人程度の転出超過になっています。西宮市と伊丹市は転入超過がほんのわずか、宝塚市では2013年以降は僅かながら転出超過に転じました。資料を見て頂いたらわかるように、尼崎以外の3市は転入転出がほぼ同数で推移しています。尼崎市は就学前の子どもと30歳代のファミリー世帯が、西宮市や伊丹市など近隣市への転出超過となっています。また特徴として20歳代前半の単身者の転入者は多く、その人たちが結婚や子育ての時期になったら転出をするという傾向にあります。質問します。

市長は、尼崎市の自然増減が近隣市と比較しても、出生率は高いのに人口は減っている現状にどのような見解を持っておられますか?続けて質問します。

尼崎市の社会増減が、近隣都市はわずかながら増加、または変わらずを推移しているのに、本市は減少し続けています。この状況をどのように受け止められていますか。見解をお示しください。

答弁要旨

出生率が高いにもかかわらず自然減となっていることにつきましては、他都市に比べて早く成熟期を迎え、高齢化が進行しているところが大きいと考えております。また、近隣市と異なり、社会減が続いていることにつきましては、中学生以下の子どもを持つ世帯の転出超過の影響が大きいと考えております。これは、住宅やマナー・治安、環境、教育への不安等によるものと認識しており、課題意識を持っているところでございます。こうした状況に対応すべく、昨年、尼崎版人ロビジョンや尼崎版総合戦略を策定したところであり、ファミリー世帯の定住・転入促進に向け、庁内連携のもと、課題解決を図るための政策パッケージを実行していくことで、希望する子どもが持て、住み続けることができる尼崎を目指してまいります。(以上)

OECDは国際共同研究の結果、出生率の回復には、「子どもを持つ家庭への税控除」、「児童手当」、「育児休業」、「保育所の増設」など家族政策を国全体で行うことが必要であり、こういう政策は相当な効果を発揮する。という見方を打ち出しています。これらの政策を国がやれば、出生率が減少している先進国でも出生率は2.0人までは回復するという推計をしています。スゥエーデンやフランスではこういう政策で効果を上げ、出生率を回復しました。 日本の「地方創生」政策は、自治体に地方版総合戦略をつくらせ「地方創生競争」をさせるというやり方です。国の指導で尼崎市は「人口ビジョン」をつくり、「尼崎版総合戦略―ひと咲き まち咲き あまがさきにむけて―」を作成しました。その主要取り組み項目①子どもの育ちを支え、生きる力や学力向上を図る。➁安定した生活が送れるよう、就労や健康を支援する。③地域内の経済循環を図り、街の魅力を高める。④住環境の整備と公共施設の機能強化。を掲げています。尼崎市は、今後特別な対策を講じずこのままの傾向で自然減少・社会減少が続いた場合、2040年には35万人を切り、2060年には26万人程度まで減少するとされています。人口減少を防止するため、結婚している人が自身の希望する数(出生率1.74)の子どもをもてることを想定しています。また社会移動についてはファミリー世帯が転出超過しないことを仮定して、2040年の人口を38万人、2060年は34万人程度を見込んでいます。質問します。

 若い世帯が、希望数の子どもを持てる社会、転出超過しない尼崎市を実現することは、現実問題として可能ですか?結婚しても出産・子育てできない現実を解決していくためには、若い人の厳しい暮らしや働き方の改善と、生活できる賃金の確保が必要ではないですか?市長の見解を伺います。

答弁要旨

正規雇用を希望しながら非正規を選択せざるを得ないという状況は、生活の不安定や将来に対する不安にもつながることから、より安定した生活基盤の確保に向け、非正規雇用労働者の雇用の安定と処遇の改善が課題であると考えております。国におきましても、非正規雇用労働者の待遇改善を最重点課題に位置づけ、今後、取り組んでいくことが示されております。また、本市といたしましても、引き続き国の動向等を注視する中で、労働者がより安定した雇用条件を確保できるよう、技能習得やスキルアップに対する支援を充実してまいります。そのため、庁内はもとより、ハローワークやポリテクセンターなどの関係機関をはじめ、市内産業関係団体とも一層の連携を深め、積極的な情報発信と多様な人材育成メニ.ユーの提供等に取り組み、求人、求職者双方のニーズを踏まえた労働者の働きやすい環境づくりを推進してまいります。(以上)

続いて、≪若い人の生活設計についてです。

先日「クローズアップ現代プラス」というテレビ番組で、大学生が卒業と同時に1000万円の奨学金という借金があり、その借金を20年かけて返済しなければならない。大学中退したら学歴が付かず、借金返しがもっと悲惨になるという内容でした。大学を中退する人は年間8万人余り。5人に1人が「お金がない」ことが原因だと回答しています。中退後、安定した職に就けず、奨学金の返済ができなくなる「中退難民」が相次いでいます。背景のひとつが「晩婚化」です。高齢の親が年金だけで学費を支払えず、子どもが自力で学費を捻出しなければならないケースが続出しています。「お金がなくて授業料が払えない」学生が増えています。そんな中退難民を防ぐにはどうしたらいいのかを考える番組でした。借金を背負って社会に放り出されほんろうする若者は、「結婚し子どもができるなんて、夢のまた夢」といいます。

 私の知り合いの息子さんはすでに30歳を超えています。長く一緒に暮らしている彼女がいますが二人とも派遣社員です。1年ごとの契約更新のたびに10日ほどの仕事がない期間があり、その間は親のところに帰ってきます。親が毎月家賃を仕送りしています。その親は「働いている間は負担に感じなかったが、年金暮らしからの仕送りはとっても負担。今仕事を探している」といいます。二人で働いても生活できないのですから、とても子どもを産むなんて考えられない状況です。年金生活者が若者の暮らしを支えている、こんな社会って一体何なのでしょうか。2005年に出生率は過去最低の1.26を記録しました。その翌年、政府は「少子化社会白書」を出しました。その中には少子化の原因について「結婚や結婚後の生活の資金がないこと、雇用が不安定であるため将来の生活設計が立てられない事、結婚すると仕事と家庭・育児の両立が困難となる事」を挙げ、育児や教育に係る費用の重さなどが課題になりました。それから10年がたつのに、数々の課題は改善に向かうどころか、ますます深刻化するばかりです。

つぎに、《子どもの貧困対策についてです。》

尼崎市は児童虐待の相談件数が多いということが、尼崎市の「子ども子育て支援の充実」の課題として「総合戦略政策パッケージ」にかかげてあります。生活支援相談担当課の資料によりますと、児童虐待件数が2013年962件、14年1288件、15年1752件で、近年急速に増えています。年齢別では2015年度、0歳~就学前764件(43,6%)小学生605件(34,5%)、中学生236件(13,5%)それ以上が147件(8.3%)でした。私は、虐待の件数を聞いて驚きました。この数は氷山の一角だと思います。特に0歳~就学前の乳幼児虐待は助けを求める術を持たない子にとって、命の危険と紙一重だからです。保育園や幼稚園にも通っていない、社会的にも孤立している親子関係の中で子どもが犠牲になっています。質問します。

児童虐待について、小学生になったら、学校という社会的なかかわりの中で、発見してくれる大人がいます。対応してくれる学校の先生や養護教諭、スクールソーシャルワーカーがいます。何らかのサインをキャッチできるチャンスもあります。しかし、保育園や幼稚園にも通っていない社会的に孤立している親、乳幼児への対策対応はどのようにされていますか?

答弁要旨

保護者の孤立は児童虐待のリスク要因の一つといわれており、それを防ぐことは、虐待予防の観点から重要であると考えております。そのため、医療機関との連携による養育支援ネットから情報を受けて、妊娠期・出産後の早期から保健師による介入を行い、また、生後2カ月頃に全戸訪問を行う「こんにちは赤ちゃん事業」や乳幼児健診等を通じて、必要なケースの個別支援を関係機関と連携しながら行っております。また、児童虐待の予防と早期発見、迅速な支援のため、「要保護児童対策地域協議会」を設置し、西宮こども家庭センターや福祉事務所、保健センター、学校、警察、民生児童委員協議会など地域の関係機関が、養育支援を必要としている家庭について相互に情報を共有し、子どもの安全確認や家庭の状況把握のため連絡を取り合い、必要に応じて個別ケース検討会で支援の協議を行うなど、連携を図りながら、適切な対応に努めているところです。以上

 

また、若くして出産する母親が他都市と比較しても多いことも課題です。

ここで言う若くしての出産というのは、19歳未満の出産を言います。10代の出産率を健康増進課で調べたところ、2014年では全国・兵庫県では総出産数の1.3%でした。尼崎市は1.66%。西宮市は0.7%で、ちなみに阪神間では尼崎市が一番高い割合になっています。若くしてお母さんになることは決して不幸なことではありません。でも望まない妊娠、一人で育てなければならない状況、精神的にも経済的にも大きなストレスを抱えた母親、母親自身が発達障害等の生きにくい状況もあります。また母親も貧困の中で育った「貧困の連鎖」という現状も少なくありません。問題を抱える母子にとって、孤立させない社会的なつながりが必要です。母親が妊娠した時から、望まれた妊娠であるのか、妊婦健診を受けているのか、出産時の母親の生活状況、「こんにちは赤ちゃん事業」での訪問、乳幼児健診の状況など情報を持っている保健機能を充分に活かしえたら、早期発見、早期救済が可能だと思います。そのためには、身近な保健師、身近な乳幼児健診や密な家庭訪問ができる体制が必要です。今行っていることをますます発展させていくことが必要です。今回保健福祉機能を、市内2か所に集約し、市民から遠いところに配置するという、市のやり方にはどうしても理解することができません。後日、川﨑議員も質問しますが、私からもこれだけは要望したいと思って質問します。

社会的に孤立し、ストレスを抱える母子を救える存在として、保健機能や保育所があります。そんな身近な保健機能を市民から遠ざけることは、市民サービスを低下させることです。孤立した母親は、バスや電車に乗って遠いところまで相談には行きません。せめて乳幼児健診は地元で行い、100%の健診率を目指してほしい。誰もこぼすことなく家庭訪問につなげる、早期対応につなげるように努めてほしい。いかがですか。

答弁要旨

乳幼児健康診査は、設備を始め、安全面やプライバシー、また衛生上の面において不十分な場所で行うのではなく、安全・安心な新しい(仮称)保健福祉センターで実施し、引き続き受診率の向上に努めてまいります。また、地域での保健活動に関しましては、今まで通りに地区担当制を維持し、新たなセンターから遠くなる地域に関しましては、電動アシスト自転車などを準備する中で、積極的に訪問活動を行ってまいります。また、生後2カ月頃に全戸訪問を行っている「こんにちは赤ちゃん事業」などを通じて、支援を必要とするケースを把握し、早期対応に努めてまいります。以上

これで第1問を終わります。

2登壇

感想 もう一度言いますが子どもの虐待、特に就学前の子どもは764件。そのうち0,1,2歳の虐待数は279件。保育所にも幼稚園にも通っていない社会から孤立した母子をどうやったら救えるのか? 小児科の受診か乳幼児健診で子どもの異常に気付き、身近な保健師につなぎ児童相談所や保育所に相談する。救うのは子どもだけではない、その親も救くわなくてはいけない、保健師の存在はたいへん大きいものがあります。地域から保健師をなくしてもいいんですか。

それでは、≪人口減少社会の2問目として人口移動について質問していきます。

尼崎市の人口移動の特徴として0歳~就学前や子どもを持つファミリー世帯の流出が多いことが問題です。2015年の「尼崎の住まいと暮らしに関するアンケート」では、市外に移りたい理由として、「治安・マナーが悪い」「尼崎市のイメージが悪い」「学校教育に不満」「子育て支援に不満がある」等の理由になっています。私は、尼崎市は街のイメージアップに頑張っていると思っています。多かったひったくり件数が近年激減しています。街中をひったくり防止のアナウンスカーが良く走っていますし、市民の意識も自転車のかごにカバーをつけるなど防犯意識が高まっています。まだ十分とは言えませんが、放置自転車のマナー違反にも駐輪場を増やし、路上駐輪防止の看板が市民を啓発しています。また、学力向上も学校の先生や教育委員会が頑張り、目に見えて高まっているのがわかります。小中学校の空調整備、中学校給食の実施に向けた準備等にも取り組んでいます。尼崎市は河川や水路、公園や緑が多く、空気が悪いという声は最近ではあまり聞かれません。しかし、安全対策や学力向上にがんばっても、尼崎のマイナスイメージがゼロになったのであって、他都市並みになっただけでは、「子どもを産み育てたい街、人を呼べる魅力ある街」にはなっていないのが現状です。質問します。

  市長は、ファミリー世帯の人口流出を止め、魅力ある街にするため、どんな施策をやろうと考えておられますか?

答弁要旨

ファミリー世帯の転出抑制に向けて、本市では、現在の負のイメージを他都市並みに引き上げることと、現在ある魅力をより高めることが必要であると考えております。そうしたことから、近年は、「教育・子育て」、「安心・安全」に予算を重点配分して取り組むとともに、まちの魅力をより高める尼崎版シティプロモーションに注力しているところでございます。来年度の予算編成方針におきましても、「子ども・子育て支援の充実」として、待機児童対策や保育所の老朽化対策、「学校教育・社会教育と人材育成」として、学力向上、旧聖トマス大学における教職員研修・先進研究機能の充実、「シビックプライドの醸成」として、みんなの尼崎大学、自転車総合政策、街頭犯罪防止対策などを重点化施策に位置付け取り組んでいく所存でございます。以上

「子どもを核としたまちづくり」を掲げ、関西圏で唯一人口がV字回復しているのが、兵庫県明石市です。中学生まで医療費の無料化、第2子以降の保育料無料化など、全世帯対象の子ども施策を打ち出しました。では施策にかかるコストはどうするのか?明石市は「優先順位の問題、明石市は子どもを後回しにしない。例えば第2子以降の保育料無料化は大きなコストがかかるが、最初に確保し、残りでほかの予算を編成する」といいます。施策の効果もあり20~30歳代の子育て世帯の転入が目立っており、出生率も2013年には1.55人と増加しています。「人が増え、地価が上がり、住民税や固定資産税の収入が増える。税収アップで住民サービスがさらに充実できる。そんな好循環を作り出していきたい。何も特別なことではなく、どこの自治体でもできる」と答えています。尼崎市の子ども子育て支援が国や県基準にとどめており、市独自で上乗せしようとしない不十分さが、尼崎を転出された世帯の不満として表れているのではないでしょうか。例えば幼稚園や保育所の保育料は、どの自治体を見ても国基準に市独自の財源を上乗せをして、料金を下げています。ところが尼崎市は、低所得者の減免制度や収入階層の細分化はあるとしても、料金は国基準となっています。そのため日本一高い保育料となっています。子どもの医療費や母子家庭医療費負担も県レベルにとどまっています。ファミリー世帯の定住・転入促進を進めるため、出生率をあげるために、住んで安心、子育てしやすい尼崎を実現する政策が必要だと思います。質問します。

 国県に子育て支援の充実を求めつつ、市としても最低基準にとどまらず、独自の子育て支援政策に力を入れるべきではありませんか?市長の見解をお示しください。

答弁要旨

本市はこれまで総合計画や「未来へつなぐ」プロジェクトにおいて、「ファミリー世帯の定住・転入促進」を重点課題として掲げてまいりました。更に昨年、総合計画のアクションプランとして策定した尼崎版総合戦略においても、基本目標の一つに「ファミリー世帯の定住・転入促進」を位置づけ、その実現のための政策分野の一つとして「子ども・子育て支援の充実」を挙げております。また、平成28年度施策評価においても、「子ども・子育て支援」を重点化する施策と評価し、平成29年度予算編成方針を策定したところです。このように厳しい財政状況下にありますが、本市は、これまでも「子どもの育ち支援条例」に基づき、子どもの育ちを支える仕組みとして、子育てコミュニ.ティワーカーによる地域社会の子育て機能の向上に取り組むなど、本市独自の子ども・子育て支援施策に力を入れており、今後も「子どもの育ち支援センター3の設置に向けた準備を進めることをはじめ、公立保育所も含めた保育環境改善の充実など、子ども・子育て支援を総合的・計画的に検討し、推進してまいりたいと考えております。以上

子育て支援の一つに「子どもの医療費の無料化」があります。

2015年に、子ども子育て制度に関する国のヒヤリングの中で、尼崎市が国に対して提言、あるいは期待することの中で、「医療費助成などは、日本全国どこで暮らしても同じレベルのサービスが受けられるべきであり、ナショナルミニマムとして、国の一律の制度として取り扱ってほしい。」全国市長会の少子化部会の委員である稲村市長が、市長会からの提言として要望されたものです。私もその通りだと思います。国の制度として、充実を図るべきだと思います。しかし子どもの医療費の無料化は全国的に多くの県、自治体が実施しているにもかかわらず、国レベルでの実施がされていません。ファミリー世帯への「尼崎の住まいと暮らしに関するアンケート調査」の結果では、尼崎から転出した方は「転出先への大きな決め手となった行政サ-ビス・制度は何でしたか?」との問いに、1位が乳幼児医療等の助成金額や期間、2位空調・給食などの教育環境、3位学力や学習内容が続きました。多くの保護者が尼崎市の子育て支援で、不満に思っている現れです。

 子どもの医療費の問題は、尼崎市の大きな課題です。学校でケガしたら償還払いになっていますが、一時立て替えにも財布の中身と相談しなくてはならない現状があります。幼いころからぜんそく発作で治療を受けている子が、窓口で2割負担となる小学生4年生から治療を中断する、薬を飲まないことで喘息発作や悪化する子がいます。子どもの命を救う政策として、医療費の無料化は必要です。アンケート結果からでもわかるように子どもの医療費の無料化は、貧困対策ではなく、多くの子育て世帯の強い要望なのです。兵庫県でも「子どもの医療費」通院も入院も中学3年生まで無料がほとんどであり、通院の有料は、尼崎、伊丹、川西、神戸、加古川、豊岡市と太子町のみとなりました。尼崎市でも無料化に取り組んでほしい。兵庫県小野市は今年7月から、高校3年生まで医療費無料化を実施しています。

尼崎市が本気で、子育て支援に取り組むと決意されているのであれば、国県への要望するとともに、子どもの医療費をせめて義務教育中は無料にする。その決意をお聞かせください。 

答弁要旨

少子化が進み、子どもは社会全体で育てるという観点からも子どもの医療費助成については、ナショナルミニマムとして実施すべきであるという基本的な考えは変わらないため、今後とも機会を捉えて国に要望を続けてまいります。一方、現在、近隣の都市間で医療費助成の格差が生じているのも事実でありますので、安心して子供を産み育てる環境づくりの一助となるよう中学3年生までの医療費の無料化について検討を行っておりますが、所得制限を撤廃して完全無料化した場合、約4.4億円の財源が新たに必要となり、また、所得制限を維持したまま行ったとしても約2.2億円が必要となります。兵庫県が無料化していない現状では、市が全額負担することになり現下の厳しい財政状況の中、単独での実施は困難と考えております。(以上)

次に子どもの貧困について

私は「大阪子どもの貧困研修会」に参加した時に、講師の方が紹介された事例が忘れられません。小学4年生の男の子が「オレは大人になるまでに死ぬねん。だから勉強なんてせんでもいいねん。死ぬ前にめちゃくちゃにしてやんねん」というそうです。その子には地域の大人が、子ども食堂を通じて見守っています。悲しくて胸が締め付けられる思いです。また同じ研修会で「大阪子どもの貧困アクショングループ」が、「シングルマザーたち100人がしんどい状況について話しました」という調査の中間報告をしました。母親に幼少期からの生い立ちも含め、丁寧な聞き取りが行われています。その中で一つの事例を紹介します。16歳と12歳の女の子の母親(46歳)は、「幼いころ父親はサラリーマン、ギャンブル好きで家族に無関心。母親は異常に厳しく、気分で叩くなど暴力も日常的でした。7歳で離婚し、父子家庭で育ち父親はネグレクトで家に帰ってこない。17歳の時家出、働きながら定時制高校を卒業し、20歳で就職。29歳で結婚、夫のDVが自分だけでなく、子どもにまでおよぶようになり、これではいけないと家を出た。昼間、深夜と働いて給料が月15万6000円で家賃6万8000円。子どもの心のケアが十分でなく、長女が不登校になり、妹に当たるようになった。今度は長女が妹に暴力を振るうようになった」 生まれてからこれまで一度も幸せと思ったことがない。人生の安定がない。「自分は幸せになったらいけない人間なんだ」と自己否定の人生です、これが「貧困の連鎖」の怖さです。 質問します

子どもの虐待や子どもを殺してしまう事件が、この夏休みにも立て続けに報道がされました。生活苦が子どもの命と健康を危ぶんでいます。 尼崎でも年間1752件の虐待があり年々増えています。過去に最悪の事態も発生しています。若くしての出産に限らず、困難を抱える家庭の支援と救済につなげるシステムつくりが必要だと思います。市長の見解をお聞かせください。

答弁要旨

議員ご指摘のとおり、本市においても、児童虐待の相談件数が増加しており、その要因として保護者の養育力の低下や経済的問題のほか、子ども本人の育てにくさなどの問題が複合的に絡み合っている場合があります。こうした課題に適切に対応するため、旧聖トマス大学の跡地に、子どもの成長段階に応じた切れ目のない総合的な支援を行う「子どもの育ち支援センター」を設置し、福祉、保健、教育分野に精通した専門職員を配置することにより、民生児童委員をはじめ、行政以外の関係機関等も含めて関係者が協力、連携して、子どもが主体となる支援を行う仕組みを構築することにしており、現在、庁内の関係職員による会議体を設置し、準備を進めているところです。以上

 

最後に≪就学援助制度についてです。

私は3月総括質疑で、財源を必要としない制度改善として、教育委員会が所管する準要保護児童生徒の「新入学学用品費」については、入学前支給とすることを要望しました。 教育長の答弁「対象者が市民税非課税世帯等であることから、毎年6月1日に決定される市民税課税額をもとに、就学援助の審査を経て、毎年7月下旬をめどに支給している」ということでした。「貧困対策が重要になる中で、できるだけ保護者の状況に配慮して、学校教育がスムースに進むように図っていきたい」と入学前支給を今年から新潟市が実施し、福岡市・青森市はすでに実施しています。全国の自治体でも「新入学学用品費」を入学前支給の要望が高まっています。「6月1日の市民税課税額をもとに決定する」ということですが、源泉徴収票は1月に、確定申告は3月に出るではありませんか。尼崎市も新小学1年生には、10月に行われる入学説明・健康診査時に、就学援助の申請書を渡して3月には新入学学用品費が支給できるようにしてほしいと思います。また準要保護の小学6年生が次の年に中学1年生なり、95~97%の子どもが引きつづき就学援助費が支給されている実態から、中学生の「新入学学用品費」の前倒しはたいへん喜ばれる制度であり、子どもたちが進学に心を弾ませることができます。今から準備したら来年の実施にも間に合います。他の自治体で実施できているのに、尼崎市ができないはずがありません。質問します。

 入学準備にはお金がかかります。ランドセルは最低でも2万円、その高額さに驚いてしまいます。中学生の制服だって冬用だけでも5万円かかります。多人数の子育て世帯では、学用品購入などで支出がかさむ時期です。準要保護の児童生徒への新入学学用品費の前倒しの支給をぜひ実施してほしい。いかがですか。

答弁要旨

新入学学用品費につきましては、準要保護児童生徒を対象に、毎年6月1日に決定されます世帯の所得をもとに、就学援助の審査において可否を決定し、7月下旬をめどに支給しているところでございます。入学前の支給を望む声は一定理解できるところではありますが、税負担であることから直近の所得等、家庭の状況をもとに適正な審査をすることが重要であり、入学先が確定していないことを考えますと、現状では年度前の前倒し支給は、困難であると考えております。以上

これで第2問目をおわります

 

3登壇  

昨年に尼崎市が作成した「尼崎版総合戦略政策パッケージ」では、子ども子育ての支援の充実について、尼崎の現状と課題を掲げている項目があります。① 母親の就労形態と保育ニーズが多様化している。②子ども同士の遊ぶ機会の減少、地域活動に参加する機会の減少により、子育て世帯の孤立を招いている。③ 子育てに対する不安や負担を訴える、就学前児童・小学生の保護者は半数程度いる。特に教育問題や経済的負担を感じている保護者が多い。④ 児童虐待の相談件数が、阪神間他市に比べて多い。また児童虐待など要保護児童に関する相談件数が多い。それに非行問題も依然としてある。⑤ 出産、育児では、若くしての出産が県下他市と比較すると多い。そこでは養育支援が必要な家庭が多い。⑥ ワークライフバランスに考慮した、働き方を考える必要がある。とまとめられています。

いずれも、子どもの貧困につながる深刻な現状です。こんな深刻な状況を尼崎市の課題だと認識しておきながら、あまりにも対応が遅いのではないでしょうか。 私なりに、救済が必要な子育て世帯へのシステムつくり、就学援助費の入学準備費の前倒し、そして子どもの医療費の無料化等やろうと思えばやれる事業です。子どもの成長は待ってくれません。子どもの健やかな育ちを街全体で支える、「尼で生まれ育ってよかった。やっぱし尼が好き」といってもらえる街になることを願ってすべての質問を終わります。