6月議会本会議、真崎一子議員の一般質問の発言です

今回私は「子どもの貧困」について質問をします。経済規模で世界第3位の日本。物質的には豊かで平等な社会と言われ、多くの国民が「中流家庭」と自認していたのは、ひと昔以上も前の話です。今や所得の格差の拡大やワーキングプアの出現などを背景に、日本の貧困率は世界的に見ても高くなっています。厚生労働省が2014年にまとめた「国民生活基礎調査」によると、等価可処分所得いわゆる世帯収入から税金、社会保険料などを除いた手取り収入の中央値の半分の額にあたる122万円に満たない世帯の割合を示す「相対的貧困率」は16.1%でした。これら貧困世帯で暮らす18歳未満の子どもを対象にした「子どもの貧困率」も16.3%であり同じような割合を示し、過去最悪を更新しています。これは、日本人の約6人に1人が相対的な貧困層に分類されます。国民生活基礎調査で生活意識が「大変苦しい・やや苦しい」とした全世帯の割合は59.9%、中でも母子世帯が84.8%で大変深刻な状況です。貧困率が過去最悪を更新したのは、長引くデフレ不況下で子育て世帯の所得が減少したことや、母子世帯が増加する中で働く母親は給与水準の低い非正規雇用であることも影響していると分析されています。シングルマザーの81%が働いています。ひとり親世帯は可処分所得122万円以下の貧困世帯が54.6%です。年122万円以下というのは月約10万円、家賃を支払ったら手元にはわずかなお金しか残りません。仕事を2つも3つも掛け持ちせざるを得ません。働く女性の賃金の低さ、子どもを持つ母親の働くことの障害が大きいことや、離婚後の子どもに対する父親の養育費の不履行が多いことが母子世帯の貧困状態の原因になっています。貧困について、市長の認識をお伺いいたします。

質問します。尼崎市民の暮らしは、たいへん厳しい状況にあると思いますが、市長はどのように認識されていますか? 

今回、その上にたって、貧困に対する施策について伺っていきます。まず、児童扶養手当についてです。児童扶養手当は、子どもを持つひとり親世帯に、家庭の生活の安定と自立を助ける目的でその児童を養育している人に支給される制度です。低賃金で働くひとり親世帯にとって、賃金では生活に足りない分の補助になっています。「家賃を児童扶養手当で補うと、生活がギリギリでも何とかやりくりができる」とひとり親にとって児童扶養手当はまさに命綱です。親の所得により全部支給と一部支給とがありますが、最高でも子ども1人では月42000円、2人目は5000円の加算、3人目以降は3000円の加算となり子ども3人の場合は月5万円となります。子どもの多い世帯ほど貧困のリスクが高くなります。2009年度の内閣府の女性と経済ワーキンググループの調べでは、子どもがひとりいる世帯の貧困率は15%、二人いる世帯は16%と、ほとんど差がないものの、三人以上になると20%となり、家計が一気に苦しくなるとの結果が出ています。

質問します。ひとり親世帯が、仕事を掛け持ちをしなくてもいいように、育児時間を確保するためにも、児童扶養手当の増額が必要です。国に手当の増額を求めてほしい。いかがですか?

児童扶養手当は、支給開始から5~7年経過すると、手当の一部が2分の1を限度に減額されます。現在の経済状況では仕事の安定や賃上げは望めません。

引き続き質問します。5~7年後には減額が申し渡されていますが。減額しないように国に働きかけてほしい、いかがですか?

次は、母子家庭等医療費助成制度についてです。2014年7月に兵庫県の行革で、「母子家庭等医療費助成制度」の所得制限が厳しくなりました。そのために尼崎市では1824世帯の人が、この制度から排除されました。Aさんは、神経内科で薬をもらいながら、フルタイムの非正規雇用で働き、生計を何とか保っていました。ところが母子医療助成から外れてしまい、医療費が3割になり受診と薬を止めてしまいました。夜不眠となり朝起きることが出来ず、仕事に行くことが出来なくなり辞めざるを得なくなりました。また私の知り合いの娘さんは、シングルマザーです。この人も医療費助成から外れ、子どもが熱を出し受診したら、もっぱら祖父母の年金から孫の医療費を出しています。医療費助成から外れたことを嘆いています。昨年9月議会でわが会派の松沢議員が「母子家庭等医療費助成をもとに戻せ」と質問をしました。当局は「ひとり親と同程度の所得水準である、他の子育て世帯を比較した場合に、医療費助成の対象範囲や負担額に不均等が生じており、より公平な制度として維持するために見直しを行う」と答弁がありました。均等をはかるとするならば、所得が激減したらひとり親だろうと、両親が揃っていようと医療にかかりやすくするのが当然です。均等にするというのであれば、低い所得水準にあわせようとするのでなく、所得水準を引き上げ、対象者を拡充するべきです。昨年9月議会でとりあげましたが、どうしても母子家庭等医療費助成制度をもとに戻してほしい。1824世帯の願いです。

質問します。①母子家庭等医療費助成をもとに戻すよう、県に働きかけてください。②また県が実施しないようなら、市独自でもとりくみしていただきたい。③これまで市が支出した分を使い、所得制限の緩和を求めます。いかがですか。

子ども医療費助成事業についてです。私はこの事業については、議会で繰り返し拡充を求めて質問をしてきました。小学4年生から中学3年生まで、通院2割負担を無料にするように求めてきました。当局は「通院費を無料にすると市支出金2億円が必要。県が無料化を実施した場合は2分の1の補助となり、市の負担が軽減され実施可能となる。県に実施を求めていく」との答弁でした。今兵庫県では41市町ありますがその中で30市町で、中学校卒業まで子どもの医療費の無料化が広がっています。尼崎市も実施に向けて前向きに考える必要があります。

質問します。この3月議会の答弁を聞いた限りでは、県が実施したら市もやる考えがあるということでした。そしたら市の支出金1億円で、低所得世帯の子どもを無料にするとか、または2割の自己負担を1割にするなど、無料化に向けて1歩前に進めてはいかがでしょうか?

これで第一問目をおわります。

小児科のドクターが「ぜんそく発作で苦しい時だけ救急外来に来る子がいる。定期受診を予約してもその子は来ない、薬がない。また発作を起こし救急受診を繰り返す。悪循環になっている」と言われました。その子は医療費を払えていません。貧困は、病気の子をつくり出すと言われています。栄養状態が悪い、住環境が悪い、体の清潔が保てないために病気にかかりやすいのです。母親も同じです。生活のイライラが精神を追い詰め、不安定な状態の人が多い、薬を飲みながら働いている人もいます。子どものいる低所得者が求めているのは、現金給付の拡充と医療費負担の軽減です。子育て支援の充実を要望して、次の質問に行きます。次に虐待の問題についてです。悲惨な虐待の報道がしばしば新聞紙上やテレビ等で取り上げられるようになりました。幼い子どもを50日間置き去りにして、餓死した遺体が見つかった事件や、つい最近ではウサギ小屋に子どもを入れたまま、放置して食べるものも3日に1度しか与えず衰弱死させる、といった痛ましい事件を見るたびに胸が張り裂けそうになります。今回、私は尼崎市で貧困により子どもたちがどんな育ち・暮らしをしているのかを知りたくて、学校の養護教諭や保育園に聞き取り調査をしました。その中から出てきた子どもの実態をもとに、子どもの貧困・虐待への対応について要望していきます。虐待でも、暴力とネグレクトがあります。暴力は体の傷やあざで比較的わかりやすいのですが、ネグレクトは立証しにくい、入浴させず着替えもせず清潔が保てない、食事をさせない等命の危険にさらされることもあります。中でも危険なのが母親が保育園や学校に行かせない、公共から切り離され助けを求める場所がなくなります。10代の望まない妊娠・出産したCさんは、幼児期から貧困と虐待・学校にも通うことが出来ずに育ってきました。生まれた赤ちゃんをCさんの父親が、生活保護費を増やすために養子にしましたが、当然育てる気持ちはなく放置状態。地域の保健師が家庭訪問したところ、3ヶ月の赤ちゃんが真っ暗な部屋でタバコのヤニにまみれた布団に寝かされていました。Cさんは赤ちゃんの育て方がわからない、発見された赤ちゃんは生まれてから一度もお風呂に入ったことがなかったと言います。保育園で入浴させたところお湯が真茶色になったそうです。無表情で感情はなく泣くことさえできない状況でした。保健師が1週間通ったところ泣くようになり、笑うようになったそうです。その後保育園に通っていましたが、生後8が月の時登園しないため保育園から保健師に連絡し、家庭訪問すると重度の脱水状態でした。医師からはあと1時間遅かったら命が危なかった、といわれました。その後乳児院に2か月間の一時保護してもらいました。しかし乳児院は死に至るギリギリの状態でないと強制措置できません。乳児院に入所するには親の了解が必要です。養父は保護費ほしさに、赤ちゃんを手放そうとはしません。もうすぐ2ヶ月間の一時保護の期限が来ます。赤ちゃんは養父と暮らすことになります。保育園と児童相談所、地域の保健師が連携して役割分担を決め、見守っていこうと話し合っています。

質問します。今示したような、子どもの生死にかかわるようなネグレクトは決して特別な事例ではありません。一刻も早く発見して支援が必要、保健師の力が発揮されるところです。そんな中、公共事業の再配置計画で、地域保健担当が市内2か所に集約されます。地域から保健師がいなくなる。保健師もまた地域が見えない状況を、市自ら作りだそうとしています。市長、それで子どもの命が守れますか?

地域には子どもが小学校に上がるまで、幼稚園にも保育園にも行かない。近所の公園にも行かない引きこもりの親子がいます。そこには母親の発達障害や精神障害、DV、貧困があります。そんな親子は決して自ら相談に来ません。地域の保健師が出向いて子どもの状態を見守っています。発達障害のある母親は、電車やバスに乗れない人もいます。自転車での移動範囲が生活圏です。そんな人は今度計画されている、遠く離れた保健福祉センターまで相談に行きません。保健師は地域の育児困難な人の情報をきちんとつかみ、こちらから出向いていくしかないのです。保育園に入園したDくんは、落ち着きがなく攻撃的な態度に発達障害があるのではと思われていました。専門家に見てもらったところ「この子は発達障害ではない、虐待によるもの」と診断されました。母親から虐待され、Dくんなりの精いっぱいの反抗だったのでしょう。保育士は地域の保健師に相談、連携し解決をめざしています。

質問します。保健福祉センターとして市内2か所に集約されて、保健師は地域の家庭訪問や地域住民のSOSに、これまでと同じようにきめ細かな対応ができるのですか。

次は保育所についてです。保育園の保育士さんは、3・4年前から保護者のネグレクトや暴力等の虐待が増えてきているといいます。両親が低賃金で働いていると、母親が病気等で働けなくなるとたちまち生活が不安定になり、父親が仕事量を増やす、疲労やイライラして母親に当たったり暴力を振るう、子どもは父親母親から暴力を受ける。ひとつ歯車が狂うと簡単に家庭が崩壊してしまいます。また困難な状況は人の介入を拒み孤立してしまう、唯一のつながりが保育園であったりします。保育士さんが言っていました「親の転職の時、失業時は、子どもの状態を注視しています」と、子どもの状況とともに保護者の生活実態も見守る必要があります。そんな家庭が増えてきているとのことです。民間保育園によってはかなり対応が負担になっています。公立保育所は、2007年に「公立保育所の今後の基本的方向」を出しました。この計画にそって公立保育所は9園残すとして、民間移管を進めてきました。その基本的方向には公立保育所の果たすべき役割が次のように記載されていました。「保育に欠ける子どもの受け入れを保障する役割。 近年、保育所においても、子どもの育ちに問題のある家庭が増加傾向にある中、こうした家庭には適切に対応することが求められている。今後直接入所契約などの導入も具体化に向けて動き出す中、保育に欠ける子どもがいる保護者が保育所を利用するに当たり、定員充足などによる施設側の正当な理由により契約が不成立になり、入所できないといった事態も想定される。行政としてはこうした子どもについては、可能な限り入所できる体制を整えていく」と、あります。基本的方向策定から約8年余りたちました。この間国レベルでの貧困率は過去最高を記録し、若い子育て世代に収入減少や不安定雇用が直撃しています。尼崎市は全国と比べても、離婚率が高くひとり親家庭が多い、生活保護率が高い、就学援助率は4人にひとりと高い、など貧困の状況は深刻です。その為に家庭保育が困難な市民が増えています。公立保育所の公共のネットワークを生かした適切な対応が求められおり、今後はますます公立保育所の果たす役割は大きくなってきます。

質問します。①「公立保育所の今後の基本的方向」が出て8年がたちました。この間子どもの貧困が広がる中で、虐待など困難をかかえた家庭が増えているのではありませんか?当局はこの実態を把握されていますか?

②公立保育所は保育に欠ける子どもの受け皿です。これ以上数を減らさないでくれというのは、市民や保護者の声でもあります。市としてはこの声に対して、どのように答えられるのでしょうか? 

③子どもにまつわる状況が悪化している現状では公立保育所の役割は大きくなっています。公立保育所の民間移管は再検討する必要があるのではないですか? 

次に「子ども貧困対策に関する大綱」の具体化についてです。「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が2013年に成立し、さらに2014年8月に「子ども貧困対策に関する大綱」(以後大綱といいます)が制定されました。その理念には、1、子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、また貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、必要な環境整備と教育の機会均等をはかる。2、全ての子どもたちが夢と希望をもって成長して行ける社会の実現をめざし、子どもの貧困対策を総合的に推進すること。 とされています。尼崎市では、大綱に示されているスクールソーシャルワーカーの増員、生活困窮者世帯の地域学習事業、ひとり親世帯の就労支援等、「大綱」に先立って取り組んできました。しかし自治体の頑張りとは裏腹に、国が作成した「大綱」には、数値目標が示されていません。これでは「絵に描いた餅」です。アメリカは先進国の中で最も貧困率が高い国です。しかし貧困対策のために、数値目標を決めて取り組んでいます。そして少しずつ改善しています。日本も実行可能な数値目標を決めて、政策を具体化してほしいものです。

質問します。尼崎市は「子どもの貧困対策に関する大綱」を受けて、今後はどんな支援事業を考えておられるのでしょうか? 

スクールソーシャルワーカーについて伺います。小学生は家庭での状況を、聞くと話しをしてくれたり、服装や体の状況等によって学校の教師も比較的生活実態をつかみやすいと言いますが、中学生になると私生活のことは話さない、制服なのでわかりにくい。不登校や非行と貧困との関連がわかりにくい。教師が学力向上やクラブ活動に追われ忙しすぎる。例えば両親が離婚したこともわからない状況にある。担任も高校入試時に、公立・私学の受験を決める時になって初めて家庭の状況がわかるといいます。昨年から増員され期待されているのが、スクールソーシャルワーカー(以後ワーカーといいます)の存在です。これまでも「ワーカーさんに家庭に入ってもらって助かった」という声をお聞きしています。不登校等の子どもの支援要請があると、福祉的な立場で問題を見つけ、子どもと家族の気持ちや家族状況を聞き問題が多い場合には、公共の関係機関との話し合いと支援体制を共有します。学校教師や保健師、児童相談員等が役割分担を決め、家庭訪問等の支援を具体化し問題解決にあたる。ワーカーは大変頼れる存在になっています。相談件数も、ワーカー3名の時の127件から6名に増員し202件と、支援が必要な人の掘り起しができていることに、大変うれしく思います。相談内容は、圧倒的に「不登校相談」が多いのですが、それを入り口に家族の問題・子どもが抱える問題を支援しています。ワーカー6名は、6か所の行政区に派遣され、小学校42校中20校、中学校19校中10校、希望する学校に派遣しています。雇用契約は嘱託雇用で週3日、1日6時間の契約となっています。社会福祉士・精神福祉士の国家資格の専門職です。国が定める「大綱」ではワーカーを約1000人から1万人増員するとしています。尼崎市も3人から6人に増員して、学校では見えにくい家庭の問題に対応しています。

質問します。スクールソーシャルワーカーが、小中学校ではまだ半分しか対応できていません。実績を重ねすべての学校で対応してほしいと願っています。きめ細かな対応するための人員確保ができていますか。今後のスクールソーシャルワーカーの増員計画はどうなっていますか?

最後に、子どもの貧困の実態調査についてです。「大綱」では、子どもの貧困に関する調査研究が十分ではなかったとして、実態調査に乗り出すとしています。子どもの貧困というのは、大変見えにくく闇に隠れた部分も多くあります。しかし実態を見ようと情報収集したら必ず見えてきます。今、全国的にも事例報告や調査研究が進んできています。子どもが抱える多くの問題は、根本には貧困があります。私たちの地域・隣で起こっている大変身近な問題です。しかし実態が見えない、是非調査してほしいと思います。まずは、子どもに関わる専門家である、スクールソーシャルワーカー、保健師、保育士、学校教師、児童相談所や乳児院の職員等まだまだたくさんの職種があるかもしれません。保育園入所担当の方も情報をつかんでいるでしょう。まずは各専門家がもっている情報を一か所に集約すること。この学校にこんな子がいる、この地域に生活困難な赤ちゃんが生まれた、引きこもりの親子がいる、虐待が疑われる等の情報の共有ができ、その中から支援の具体化が見えてくるのではないでしょうか。

質問します。「子どもの貧困対策に関する大綱」にも掲げてあります。子どもの貧困の実態調査を行なってほしいと思いますがいかがですか。

これで第2問目をおわります

答弁を聞いて、地域保健担当を2か所にすることについて、現場で働く保健師さんの意見は聞かれたんでしょうか。私には現場の意見よりも上が勝手に決めてしまったと感じました。私は、今回初めて子どもの貧困という重いテーマで質問をしました。貧困を考える時この子たちが安心して安定した生活ができるよう、公共がやらなければならない制度拡充や具体的な支援が多くあります。子どもは幸せになるために生まれてくるのです。親が出来ないことは、公共がやらなくてはならないのです。小学3年生の子がつぶやくんです。「死ね死ね死ね死ね」と、誰に言っているの?と聞くと「自分・・」「俺は大人になるまでに死ぬんだから、勉強なんかせんでもいいねん」と。私はこの言葉を聞いて大変ショックを受けました。小学3年というとまだ小さい子ども、この子の何が起こったんだろうとおもいました。生まれてきてよかったと思える社会であってほしいと思います。私の一般質問を終わります