6月市議会本会議、松村ヤス子議員の一般質問の発言です

 まず、尼崎市国民健康保険 保健事業実施計画・データヘルス計画に関連してお尋ねします。尼崎市が、10年前から取り組んでいる「ヘルスアップ尼崎戦略事業」は、担当課の職員が力を合わせて、国保加入者の膨大なレセプトをデータ化し、健診実施により、市民の健康状況の確認、保健指導により市民自らが日常生活の習慣を改善、市民とともに、取り組みの効果などを点検、医療費の上昇を抑えようとする事業です。今年4月に、「尼崎市国民健康保険 保健事業実施計画」(データヘルス計画)第1期(案)をパブコメに付すとして、事前の説明を受けました。「データヘルス計画」という言葉は初めて聞く言葉でした。厚生労働省が本市の「ヘルスアップ尼崎戦略事業」を高く評価し、「国の計画」として、「データヘルス計画」と名前を付けたのではないかと思っています。データヘルス計画は、民間企業の健康保険組合等にも取り組みを求めており、まさに、全国的な取り組みとなっています。「ヘルスアップ尼崎戦略事業」については、数年前に、大阪社会保障推進協議会や新日本出版社の雑誌「経済」が関心を持ち、取材に訪れた時、私も同席させてもらい、事業を始めるに至った経過の説明なども、改めて、聞かせてもらったこともありました。私は、この事業は、極めて道理にかなった、科学的な取り組みだと認識し、高く評価しています。この事業が全国的な取り組みになると知り、大変うれしく思っています。本市は、阪神間の中で、市民の一人当たり市民税額が最も低い都市です。不安定雇用の低所得市民の割合も高く、一人住まいの高齢者も多いなか、食事内容に、配慮できない市民もおられるのではと思っています。健康と経済力とは深いつながりがあります。すべての市民に配慮ある取り組みを行い、より一層市民の健康増進に役立つ事業に発展させることを強く願って、質問をさせていただきます。

これまで、特定健診と保健指導により、重症の生活習慣病を示す検査データが改善に向かっている、また正常値になった特定健診受診者は、どれぐらいおられますか。また、改善・克服した症状や病名なども合わせて答弁願います。

2014年度の特定健診受診率は、39.5%です。決して高いとは言えません。受診率が低い要因は、どこにあると分析していますか。

また、受診率を高めるために、たとえば、健診後の保健指導により、状態が改善した市民の率直な声を広く市民に知ってもらうことも必要です。市報あまがさきなどで紹介するなどのシリーズを掲載してはどうでしょうか。答弁願います。

特定健診の要は、丁寧で継続した保健指導です。保健師の人数確保が絶対必要です。私は、この間、ずっと、なぜ、特定健診担当の健康支援推進担当課と保健所の健康増進課とが連携して一体的に取り組まないのかと疑問に思ってきました。

お尋ねします。市民の健康の保持・向上という共通の目的を持って、全庁的に連携して取り組むなかでも、特に、健康支援推進担当課と保健所の健康増進課は、しっかり力を合わせて連携して取り組むべきだと思いますが、いかがでしょうか。

気になるのが、生活保護利用市民への健康支援・保健指導についてです。1年前の2014年6月時点での生活保護世帯は13,357世帯、その内、高齢世帯が48.6%、母子世帯が7.7%、障害者世帯が9.1%、傷病者世帯が23.9%、その他が10.7%となっています。傷病者世帯とは、世帯主が入院しているか、在宅患者加算を受けている世帯、若しくは、世帯主が傷病のため働けない世帯と規定されています。高齢世帯に次いで多いのが傷病世帯です。生活保護利用者の中には元気で生活されている方と治療中の方がおられます。病気治療中の場合でも、特定健診で別の異常が見つかることが十分考えられます。それに、国保世帯が生活保護世帯になれば、国保を離脱し、医療費は全額、医療扶助となります。医療扶助総額は生活扶助総額を大きく超えています。扶助費が地方交付税の基準財政需要額で、賄えるとしても、やはりできるだけ健康回復によって、扶助費を抑制できるようにすることが必要です。生活保護利用者にも、2013年度から、健康増進事業健診を実施しています。しかし、国の制度であり、その検診項目には、特定健診で入っている腎臓機能の低下や動脈硬化、感染症・心筋梗塞・白血球や血小板を検査する項目が入っていません。

お尋ねします。生活保護利用者についても、特定健診と同レベルの検査内容にする必要があると考えますが、いかがでしょうか。

健診受診者には、保健所の保健師が保健指導を行っています。しかし、健診受診率は、今のところ、6.6%ときわめて低いレベルにとどまっています。

お尋ねします。受診率引き上げの努力はどのようにしていますか。受診率引き上げは、ケースワーカーの任務ですか、それとも保健所の任務ですか。答弁願います。

次に、特別養護老人ホームの整備についてお尋ねします。現在本市には20か所・1388床の特別養護老人ホームがあります。3月の予算議会での私の代表質疑に対する答弁では、「昨年の6月の調査では、特別養護老人ホームの待機者数は、2,194人で、このうち、入所の必要性が高いと判断された人は、246人、介護保険施設・居住系のサービスは、特別養護老人ホーム待機者の状況を勘案し、2015年度からの第6期介護保険事業計画では、特別養護老人ホーム200床と小規模特別養護老人ホーム29床の整備着工を予定している」との答弁があり、今年度から、第6期介護保険事業計画に基づいて整備を推進する段階に入りました。これまでも、特養建設を進めていますが、入所希望者の増加に追い付いていません。新設されても、また、新しく入所希望の方がでるために待機者は常に、240~50人ほどで、入所までに、数年待つ状況は改善されていないとのことです。これまでの特養整備についての進捗は、第1期、2期の介護保険事業計画では、特養の整備目標を設定せず、あわせて、4か所・280床が実績です。第3期は3か所・190床の計画で、2か所120床を整備したものの、1か所未達成。第4期は4か所・400床を計画し、4か所400床を整備完了し、3期の未達成分を回復。第5期は2か所・200床の計画で、1か所80床整備中であり、未達成の1か所については、今後、第6期計画とは別枠で事業者の公募を行う予定とのことです。なお、現在の第6期は2か所・200床の計画としています。この第6期事業計画の200床のうち、1か所については東高校跡地で調整しているとのことです。この3年ごとの介護保険事業計画では、特養の整備計画は、ほぼ、計画通りに進んでいると受け止められますが、

お尋ねします。特養整備計画は待機者の状況を勘案して計画されるのでしょうか。それとも社会福祉法人の整備意向を調査し、その範囲内での計画とするのでしょうか。答弁願います。

特別養護老人ホーム建設の上で、土地の確保は大きな課題です。社会福祉法人が建設を希望しても、土地の確保で行き詰ったのが5期計画でした。本市では、学校統廃合や公共施設の再配置を進めており、用地が多く生まれることになります。

そこでお尋ねします。それらの公共施設などの跡地を特養用地として積極的に活用することで、特養建設を促進できると考えますが、いかがでしょうか。

これで,第1問目の質問を終わります。

次に介護保険法改正による要支援者への対応について質問します。介護保険法は2000年4月からが実施され、要支援と要介護1から5の6段階の介護度に応じたサービスを利用できる制度としてスタートしました。3年ごとに介護保険料が引き上げられ、2006年4月からは要支援2段階、要介護5段階に細分化され要支援1および要支援2が予防給付と位置付けられました。介護保険法の改正で、現在の第6期事業計画から制度がさらに、大きく変えられ、要支援者に対しては、有資格者だけではなく、無資格者による支援も受けることになります。ホームヘルプとデーサービスについては要支援の人を従来の介護保険事業によるサービス提供から切り離そうとする動きです。尼崎市では、2017年度から、要支援1,2人のホームヘルプサービス、デイサービスは、「介護予防・日常生活支援総合事業」に移行することになります。この介護予防・日常生活支援総合事業は、これまでの介護保険事業者によるサービス提供から、「市民ボランティア」や「無資格者によるサービス」など「多様なサービス」に置き換えるもので、コストを大幅に削減しようとするものです。「生活支援」「介護予防」について、主要な担い手を住民主体の互助サービスとすることにより、介護保険の範囲を大きく削減し、住民同士の自助・互助にゆだねることになります。保険外しの第一歩です。厚生労働省の「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン」では、要支援者のホームヘルプ・デイサービスが総合事業に移行した場合のサービスの多様化の「参考例」として、訪問型サービスについては、①「現行相当サービス」、②主に、雇用労働者が生活援助等を行う、「緩和した基準の訪問型サービスA」、③住民主体のボランティア活動として行う「生活援助等の訪問型サービスB」、④保健師・医師による居宅での相談指導等をおこなう「短期集中予防サービスの訪問型サービスC」をあげています。このうち、①の「現行相当サービス」は、現在の要支援サービスを提供している事業者がそのまま、移行することになり、移行後も当面は、ホームヘルプ・デイサービスの継続利用は可能です。しかし、このように、「多様なサービス」ができたとしても、質的・量的に要支援者のニーズにこたえることはおそらく困難ではないかといわれています。総合事業への移行当初は、サービス提供の大部分は、既存の事業者による「現行相当サービス」の提供となりますが、問題は、その単価です。単価については、厚労省は、国が定める額を上限として、市町村が定めるとしています。しかし、すでに2015年度の報酬改定で、要支援のデイサービスの基本報酬は20%以上も引き下げられました。介護事業者への影響を心配します。3月の代表質疑に対しては、「平成29年度からの総合事業では、介護の必要な人には、引き続き専門的な知識と技術をもつ専門職により、介護サービスの質が確保されるよう努力する」との答弁とあわせて、「なお、今般の介護保険制度の改正では、高齢化がさらに進み、介護人材不足も見込まれるなどから、制度を持続可能なものとするために、従来の介護サービス等の質の確保に加え、住民やボランティア、NPO等による共助の仕組みづくりなど、地域社会全体で、高齢者を支えるための体制整備が求められており、行政が果たすべき役割はさらに大きくなるものと認識している」というものでした。国のガイドラインによると、要支援のデイサービスに対する単価の引き下げとあわせて、「緩和した基準による訪問型サービスA」も「生活援助等の訪問型サービスB」も無資格者によるサービス提供ができることになります。このように、新規認定者には、無資格者のボランティアなどに誘導することをめざし、継続利用者については、「一定期間後のモニタリングに基づき、可能な限り住民主体の支援に移行していくことを検討する」と、無資格者のボランティアへの移行を促進させる構えです。そして、現行の事業者によるサービスについては、自由に選択できるようにするのでなく、認知症の人や状態が変化しやすい人など「専門的サービスが必要と認められる人」に限定しようとするものです。ただし、本市は、現時点では、専門的なサービスの対象者をどのように規定するかは、今後、検討するとしています。

お尋ねします。要支援の高齢者には、無資格者のボランティアも参画できるという介護保険制度の大転換です。要支援の方たちが不安を持つことなく、あたらしい制度にスムーズに移行できるためには、質の高いボランティアが必要な人数確保されなければなりません。ボランティアの人材確保ができる確信はあるのでしょうか。答弁願います。

事業所に雇用されているヘルパーであれば、仕事としての責任があります。しかし、ボランティアの場合、①有償ボランティアにするのでしょうか、無償ボランティアにするのでしょうか、②2年間での準備で、体制が構築できなければ、現在の事業所によるヘルパーでということにするのでしょうか、③利用者が有資格者によるサービスかそれとも無資格者によるサービスかの選択ができるのでしょうか。④その場合、利用料は同一価格なのでしょうか。⑤ボランティアの場合、被雇用者のように、責任をもった安定した活動をしてもらえる体制がとれるのでしょうか。など、さまざまな問題が考えられます。

お尋ねします。これらの疑問・不安をどう解消するのでしょうか。また、サービスを受ける高齢者が安心できる体制は、いつを目途に構築する予定なのでしょうか答弁願います。

要支援について、端的にいえば、現在は介護の必要はないが、何もしなければ、将来的に要介護状態になる可能性があるので、要介護状態にならないように、また、体の機能低下を抑えるように、支援を行うということが介護保険法でも規定されています。このようにみると、介護するよりも支援する方が、あるいは、難しいのではないかとも思います。それに、厚労省は「これからの介護予防」という文書で、「これまでの介護予防の手法が心身機能を改善することを目的とした機能回復訓練に偏りがちであり、サービス利用者も機能回復を中心とした訓練の継続こそが有効だと理解し、介護予防の提供者の多くも「活動」や「参加」に焦点を当ててこなかった」と述べ、介護予防に対する考え方を改善するためだとして、「介護予防はリハビリテーションの理念を踏まえて、「心身機能」「活動」「参加」で、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を促し、一人一人の生きがいや自己実現のための取り組みを支援して、QOLの向上を目指す」とし、そして、ボランティアによる介護予防サービスも導入しようとしているのです。私は、ここに言う、「地域での活動や参加」を否定するものではありません。しかし、だからといって、介護予防サービスを一定の教育を受けた有資格者にしてもらうことを否定することにはならず、問題があると考えます。正に、論理のすり替えです。

お尋ねします。要支援の人の社会参加を促すのであれば、それこそ、現行の資格者による要支援事業を前提として、ボランティアは、補完的・補助的な役割を果たす存在として、活動するようにするのが、要支援の高齢者にとって、望ましいことと考えますが、いかがでしょうか。

なお、昨年9月議会で、会派の松沢議員が介護認定を省くチックリストで振り分けないようにと質問したことに対して、認定を希望する場合は、従前どおり要介護認定の申請手続を行うと答弁されました。答弁どおりの対応を改めて求めておきます。

これで第2問目を終わります。

2015年度の国の予算では、社会保障費を削減・抑制し、特に、介護保険関係の報酬引き下げ、利用者負担増などに集中し、高齢者を苦しめます。一方、多額の軍事予算を使う集団的自衛権行使の戦争立法は、国民の命とくらしを削りながら進められようとしています。こんな政治のあり方に、大きな憤りを抱き、高齢になっても、安心して暮らせる社会にしなければならないと強く申し述べて、質問を終わります。