6月市議会本会議、徳田稔議員の一般質問の発言です

 第1問、まず尼崎休日夜間急病診療所、以後は急病診療所と呼びますが、診療体制変更についてです。急病診療所は40年前に設立され、尼崎市と医師会との試行錯誤の苦労の中で現在の体制に至っています。救急医療は原則として重篤な3次救急は国が、2次救急は県が、軽い症状の1次救急は市が持つべきとして、尼崎市は1次救急に責任を負い、また開業医のみなさんも1次救急には責任があるとして、市と医師会が協力しながら急病診療所を運営してきました。そして、急病診療所の内科と小児科は医師会の内科医師と小児科医師が原則として1名ずつ診療にあたってきました。そして2011年度から2013年度までの3年間平均で内科は年間1万1千200人、小児科は年間1万1千800人受診し、市民の急病にこたえてきています。夜間に子どもが急に熱を出し、急病診療所に駆け込んでほっとしたと多くのお母さんから声が寄せられています。ところが小児科医師の不足と医師の高齢化によってすべての診療時間に小児科医師の配置が困難な状況が続き、やむをえず内科医師が小児科診療を補ってきましたが、小児科医師が診るべきとして非常勤の小児科医師を募集して補ってきました。 このような状況の下で、尼崎市は今年7月15日から、受診者数が少ない深夜帯、午前0時から6時までの診療を中止し、来月7月に開院する県立尼崎総合医療センターで受診してもらう。合わせて、午前0時から6時までの深夜帯に看護師を配置して、あらたに小児救急電話相談を開設、症状が出ている子どもに対する相談を広く受けるとしています。この診療体制の変更について、医師会救急委員会で救急医療への影響や問題点について検討がされ、今年5月1日付けの医師会会報にその見解が掲載されています。その内容は、2次、3次を担うべき県立尼崎総合医療センターに1次救急業務を課するは同院小児科の疲弊、崩壊につながる可能性がある。午前0時以降は県立尼崎総合医療センターの小児科で診て貰えることが県民に知れ渡れば、急病診療所の受診を控え、県立尼崎総合医療センターを受診する患者が増加し、いわゆるコンビニ受診の広域化が予測される。これまで急病診療所が1次救急患者の中から2次救急の患者をふるいにかけ、患者の住所地や普段の受診歴などから近隣の各病院に分散転送させていたが、県立尼崎総合医療センターが一手に深夜の2次救急患者を引き受けることで、1次から2次への流れが悪くなることが懸念される。急病診療所は40年間、朝6時まで小児科診療を続けてきており、診療時間変更を知らずに午前0時以降に急病診療所に来院する患者が後を絶たないことが予測される。と指摘しています。

そこでお尋ねします。市は医師会、健康医療財団、県病院局及び県立病院で調整が整い、了解ものもとで進められていると聞いていますが、医師会救急委員会の、①尼崎総合医療センター小児科の疲弊、②コンビニ受診の広域化、③1次救急から2次救急への流れが悪くなる、④深夜の急病診療所への患者の来所が続くことが予測されるなどの指摘に対して、市長はどうお考えでしょうか。

 尼崎の急病診療所の午前0時から6時までの受診者数は2011年度から2013年度の3年間の平均で年間2155人、1日の平均では6人程度です。この3年間で、インフルエンザ流行期12月から2月、そのうち12月29日から1月3日の年末年始を除いた中で、受診者が最も多い日は、2014年2月4日の土曜日でした。その日の午前0時から6時までの、深夜帯の受診者は19人で、そのピークは午前0時から1時までの1時間に9人受診と超過密な診察となっていました。 今年の正月も大人を中心としてインフルエンザが大流行し、急病診療所へ夕方訪れたある市民の話では、受診が終わったのは深夜であったと聞いています。 また医師会救急委員会は、尼崎市の今回の急病診療所の診療体制の変更について、次のような見解も述べられています。県立尼崎総合医療センターへのいわゆるコンビニ受診を抑制するため、尼崎市は小児救急電話相談、あまがさき小児救急相談ダイヤルを計画している。午前0時以降の患者は相談ダイヤルに電話し、早急に治療が必要と判断される患者は県立尼崎総合医療センターを受診できるというものである。看護師による電話相談は全国各地で実施が拡大している。一般的な電話相談では看護師のほかに相談員(多くの場合は消防職員またそのOB)と医師が常駐し、相談内容に応じて各種の役割を分担かつ協力することで不要不急の受診抑制や受診必要者の選別に成果を上げている。尼崎市が計画する電話相談では看護師1名が単独で実施するため、必ずしも不要不急の受診抑制につながらない可能性がある。尼崎市がこの様な電話相談の効果や欠点も十分に検証しないまま安易に実施しても、目的の効果が得られない可能性がある。と指摘しています。つまり、全国的に広がっている救急電話相談には、看護師のほかに医師や消防職員が配置されていますが、今回の市の電話相談は看護師のみで行うものです。

そこでお尋ねします。今回、市が行う市の電話相談は看護師一人で行うもので、十分な対応ができるのでしょうか。電話相談者の病状が悪化した場合にだれが責任を負うのでしょうか。またインフルエンザなどの流行などに対応ができるのでしょうか。

お尋ねします。まず深夜帯の電話相談は小児科医師を配置して行い、効果を検証してから、どうするのか考えるべきと思いますが、市長の見解をお聞かせください。

 次にアスベスト被害対策についてお聞きします。この問題は綿瀬議員も質問されましたが、私なりの視点で行います。クボタ旧神崎工場の労働者だけでなく周辺の住民に中皮腫などのアスベストによる健康被害が多発していることが2005年6月29日の新聞報道で明るみになった、いわゆるクボタショックから今年で10年目を迎えます。公害型の尼崎アスベスト訴訟の上告審は、今年2月17日、最高裁判所第3小法廷が原告とクボタ双方の上告を棄却し、大阪高裁の判決が確定しました。高裁判決は、クボタの周辺住民への加害責任を認め、1人の遺族に対してクボタに約3200万円の支払いを命じましたが、国の責任は不問としました。しかも、大阪高裁が認めたクボタの責任飛散範囲はクボタ旧神崎工場から300メートルと被害実態とはかけ離れたものとなっています。しかし公害としてアスベスト被害の企業責任を認定したのは全国で初めてのことでした。市長は、2013年9月議会での私の一般質問に対して、「アスベスト被害について公害を認定する因果関係は特定に至っておらず、アスベストによる健康被害の救済に関する法律が制定された経緯もございます。また平成24年8月7日、神戸地方裁判所において被告企業の責任を認める判決がありましたが、控訴され、確定したものとはなっておりません。したがって今後の動向を注視していく必要があると考えております。いずれにいたしましても,本市におきまして多数の被害者が出ている問題であるということをしっかりと受け止めて、取り組みを進める」と答弁されています。

そこでお尋ねします。上告棄却によって大阪高裁判決が確定し、住民への企業の加害責任を認め、公害としてアスベスト被害の企業責任を全国で初めて認定したことに、市長はどのようにお考えでしょうか。

以上で第1問を終わります。

 第2問、答弁をいただきました、急病診療所の小児科救急診療体制変更ですが、予定通り実施するとのことですが、問題が起こってからでは遅いわけです。十分なチェックと検証が必要だと言うことを要望しておきます。アスベスト被害者対策では、市長の答弁をふまえて第2問を行います。尼崎市内における中皮腫の死亡者は近年、毎年30人から40人と、全国的に突出した異常な犠牲者を数えています。全国的にはおおよそ10万人に1人に対して、尼崎では1万人に1人、全国比で10倍のハイリスク地域となっています。さらにクボタ旧神崎工場が操業していた小田地区に限定すれば、尼崎市のアスベストリスク調査結果からみて、30倍から50倍の中皮腫死亡リスクが推計されています。疫学調査によってアスベスト被害に対する因果関係の解明の研究が必要となっています。市は疫学研究者による研究被害関連の調査研究のために、大阪大学の研究班へ尼崎における中皮腫及び肺がん死亡の地理的集積に関する資料の提供をしています。この研究に対しては、今年度文部科学省科学研究費より、2015年度から3年間実施する症例対象研究について研究費が採択されました。早期の研究結果に期待がもたれています。

そこでお尋ねします。疫学調査を急いで進めるためにも、費用を加害企業であるクボタに拠出を求めるべきではないかと考えますが、市長の見解をお聞かせください。

クボタ旧神崎工場で1954年から1995年まで41年間にわたって、中皮腫を発症するリスクが500倍とされる青石綿8.8万トンを含む、23万トンを越えるアスベストが使用され、石綿セメントや建材を製造してきました。そして、製造工場から発生したアスベスト粉塵を工場周辺にまきちらしてきました。尼崎アスベスト裁判の中でも原告側証人が「クボタの工場の天井に大きな換気こうが7つあり、24時間、アスベスト粉塵を外に排出していた、窓や扉はいつも開いていた」と証言したように、工場周辺への大量飛散につながり、いまも発症が続いています。そしてアスベスト疾患の発症のピークを迎えるのは2028年ごろといわれている。お手元に配布した資料は、「平成25年度尼崎市における石綿の健康リスク調査報告書」に掲載されている図です。2013年のリスク調査で、1955年から1975年に尼崎市内に居住していた人の環境暴露によるアスベスト疾患者の居住地、居住歴を地図上におとしたものです。この地図でも小田地域の居住者に集中していくことが分かります。

お尋ねします。2005年度から2014年度まで10年間のリスク調査で判明した環境暴露によるアスベスト疾患者を、居住地、居住歴をもとに、お手元の資料のように10年間の人をすべて同じ地図上におとして、市民へアスベスト疾患の発症地域をわかりやすくしてはと考えますが市長の見解をお聞かせください。

2014年3月にアスベストの健康影響に関する検討会が報告書を取りまとめました。これまでの健康リスク調査により一定の知見が得られたことから、第2次リスク調査終了後の2015年度以降は、データ収集を主な目的とする調査ではなく、アスベスト検診の実施に伴う課題などを検討するための調査として、リスク調査にかわって試行調査が始まっています。アスベストによる健康被害の特徴は、低濃度であっても、アスベストを吸い込んで20年から50年経過して中皮腫や肺がんなどを発症します。静かなる時限爆弾と呼ばれるゆえんです。アスベスト疾患による犠牲者を減らすためには、早期発見にあることは言うまでもありません。小田地域の人々にアスベスト検診の受診を促しても、「見つかったら怖い」「見つかっても死ぬのを待つだけだから」と言われて検診に消極的な人もいます。中皮腫は早期に発見できれば手当ができると聞いています。また新しい治療法も研究されています。アスベスト検診の受診のための積極的な呼びかけと、恒久的な健康管理体制の確立が不可欠となっています。

そこでお尋ねします。クボタ旧神崎工場がアスベストを使用して操業して、アスベストを飛散させた、1954年から1995年に尼崎市内に居住していたすべての人にアスベスト検診を、加害責任のあるクボタへ費用の拠出を求めて実施し、早期発見早期治療に取り組むべきと考えますが、市長の見解をお聞かせください。

 次にマイナンバー制度についてお聞きします。 マイナンバー、社会保障・税番号制度は、10月から全市民へ番号の通知が行われ、来年の2016年1月から運用が開始されます。 6月の尼崎市報では、「マイナンバーは、住民票のあるすべての人に与えられる12桁の番号です。複数の行政機関にある個人の情報が同一人物であることを正確に把握することで、社会保障や税、災害対策などの分野で効率的な情報管理と情報連携を図ります。行政手続を行う際の住民票などの添付資料の削減による国民の利便性の向上、事務処理における行政の効率化、税負担や行政サービスの適正化による公平・公正な社会の実現に期待されます」と記載されています。開始当初は年金、医療、介護、福祉、労働保険などの社会保障制度、国税、地方税の税制、災害対策に関する分野での利用に限定していました。ところが、今国会で、利用範囲は金融や医療機関などの分野にも広げていく改正案が審議されています。この改正案では金融機関で新規に口座を開設する際にマイナンバーの記入を求め、また特定健診などの履歴にも付番してマイナンバーで一元的に把握できるようにしようとしています。安倍首相は5月29日の産業競争力会議で、カルテや診療報酬明細などの医療分野や戸籍、旅券、自動車登録などへの利用拡大、民間分野での利用の加速化などまで指示をしたと報道されています。今回の改正では、預貯金や特定健診など、さらに高い個人情報に番号を付番して利用するものであり、より深刻なプライバシー侵害や成りすましなどの犯罪を招く恐れが増していくことになります。6月1日に日本年金機構が、年金の個人情報を管理しているシステムがウイルスメールによる不正アクセスを受け、加入者の氏名や年金番号など約125万件に上る個人情報が流出したと発表しました。昨日、東京商工会議所の1万2千件に上る会員情報などが漏えいしたと発表しました。ある公共機関の情報管理を請け負っているIT企業幹部は「次から次へと出てくるウイルスの対策は追い付かない」と嘆いていると報道されています。個人情報を1元管理するマイナンバーによるシステムがこの様な被害を受ければ、個人情報の流失は計り知れない情報量になることが想定されます。

そこでお尋ねします。このマイナンバー制度に対してプライバシー侵害やなりすましの犯罪を招く恐れがますと指摘されていますが、市長の見解をお聞かせください。

 計画では、今年10月から国民一人ひとりに生涯変わらない数字のマイナンバーを知らせる通知カードを簡易書留で郵送します。1月からは、希望者には通知カードと引き換えに顔写真やICチップを内蔵したプラスチック製のカードを無料で作成するとなっています。そして、年金や児童手当などの給付、確定申告の手続きの際にマイナンバーを使用することが始められます。企業では、社員やパート・アルバイト従業員から扶養控除や源泉徴収、社会保険の届け出などに記載を求めています。そのため企業は、マイナンバーを集め、管理しなければならなくなります。集めた番号の保管や廃棄について、政府は企業にガイドラインを示しています。内容は、鍵でのファイル管理や不正アクセス対策など多岐に及びます。漏えいには、最大で「4年以下の懲役、または200万円以下の罰金」の罰則があります。従業員100人の企業ではマイナンバー対応の初期費用が1000万円、維持経費が毎年400万円との試算もあります。とりわけ中小企業への負担は大きくなり、悲鳴が上がっています。多くの中小企業は、今の事業経営で手いっぱいでマイナンバー対策への費用の捻出に困っています。6月5日付けの朝日新聞によりますとマイナンバー制度が来年1月から始まるのを前に、準備を手がけていない企業が8割以上であると報じています。つまり対策を始めている企業は2割にみたないわけです。

そこでお尋ねします。市内の企業ではマイナンバー対策はどの程度行われているのか、調査をされたのでしょうか

尼崎市もマイナンバーの実施を急いでいますが、市民には詳しい内容は知らされていません。私も多くの市民にマイナンバー制度について尋ねましたが、ほとんどの人は初耳であると語っています。内閣府の2月公表の世論調査ではマイナンバー制度の「内容まで知っていた」人は回答者の28.3%にすぎませんでした。実施まであと半年余なのに認知度が広がらないのは、制度が国民の切実な要求ではないことを浮き彫りにしています。国民はむしろ不安を抱いています。内閣府調査では、プライバシー侵害の恐れが32.6%、個人情報不正利用被害の心配が32.3%、国による監視の恐れが18.2%と、いずれも「特に不安がない」の11.5%を上回りました。

そこでお尋ねします。日本年金機構のような大量の個人情報が流失したように、情報流出のリスクが高く、国民のプライバシー侵害の危険性が高いマイナンバー制度、10月からの番号通知を中止して、制度の再検討と市民的議論を行う必要があると考えますが、市長の見解をお聞かせください。

以上で第2問を終わります。

 第3問、答弁をいただきましたが、アスベスト被害者対策ですが、クボタ旧神崎工場周辺における住民の被害は現在も増加の一途をたどっています。その被害範囲も優に半径1.5キロメートルに及んでいます。環境暴露は公害であり、公害による対策は発生源が責任を負うことは当然です。そのため発生源のクボタに費用の救出を求めて行くことを重ねて要望しておきます。マイナンバーについては、十分に対策は講じるとのことですが、情報漏えいの危険性は、日本年金機構、続いて東京商工会議所と、不安が日増しに強まっています。中小企業のマイナンバー対策は進んでいません。このようななかで強行すれば中小企業の中で混乱を引き起こすことは明らかです。本来は、一時マイナンバー実施を中止して、再検討が必要と思いますが、それでも強行するのであれば、中小企業に対する低利、長期返済の特別融資など中小企業支援策必要であることを要望して、私のすべての質問を終わります。