予算特別委員会総括質疑の松沢ちづる議員の質問です

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 阪神淡路大震災から20年がたちました。あの時、住宅が全壊しても、国は「個人の私有財産だから」と言って、再建に対する保障制度をつくりませんでした。そのため、尼崎でも4002人が災害援護資金貸付を利用して、被災後の生活再建の糧としました。災害援護資金は、国が4分の3・県が4分の1負担して市に無利子で貸付ける制度です。2005年から償還が始まり、2934人は返済が終わりましたが、なお863人・貸付金額で9億8千万円が未償還になっています。2017年度が償還期限とされていますが、未償還分は市が国や県に支払わなければなりません。そのため、市は市民には償還指導の強化、国や県には免除基準の拡大と償還期限の延長について働きかけていくとしています。日本共産党はこれまで、国会で繰り返しこの問題を取り上げ、生活保護を受けている世帯やそれに準ずる世帯、連帯保証人の返済免除を求めてきました。そこで、質問します。

質問①市は、国・県への働きかけで、神戸市や西宮市と歩調を合わせていますか。神戸市は、少額返済をしている人や連帯保証人も免除要件にすべきだと求めるようですが、尼崎市はどのような対応を求めていますか。

 未償還の863人の内訳をみると、月1000円など少額返済している人が743人、自己破産して返済不能と思われる人が64人、行方不明で徴収困難な人が65人となっています。863人の方はいずれも生活状況は厳しく、更なる償還指導の強化は、被災者に新たな困難を持ち込むことになります。そもそも、阪神淡路大震災の時国に被災者生活再建支援制度があれば、こんな借金を背負わずに済んだ人が多かったのではないでしょうか。質問します。

質問②現在少額返済している方の中には、生活保護を受けている方も実際います。最低生活費から返済させること自体、矛盾するのではないですか。

質問③市は、返済免除の拡充を国と県に精力的に求めるべきだと思いますが、いかがですか。

 日本共産党は20年前から被災者のみなさんとごいっしょに生活再建支援制度をつくれと国に要望し続け、2004年念願の被災者生活再建支援制度ができました。さらに、2007年には、住宅全壊の場合300万円まで補償する制度の拡充が実現しました。阪神淡路の被災者の運動が、支援制度を充実させてきたんです。国は昨年、東日本大震災の被災者には、返済免除の要件について、死亡または重度障害に加えて返済期限10年を経過した時点で「無資力」で返済できる見込みのない場合は、災害援護資金の返済を免除する規定を設けました。しかし、あくまで特例で、阪神淡路大震災の被災者には適用されません。市は、東日本大震災の被災者への返済免除の拡充と同じ要件を、阪神淡路大震災の被災者にも適用するよう、国に強く求めることを要望します。がんばってください。国保料収納率アップについて市は、新年度予算で国民健康保険料の収納率を88%から90%に上げるとしています。そのために2月の補正予算では2名の職員を新たに増やしました。   これまでは高額滞納世帯を中心に、預金調査を行い、窓口で市民と交渉して、できるだけ自主納付するように指導し、応じなければ資格証を交付するというやり方でした。質問します。

質問④収納率を新年度2%アップすることを目標にしていますが、そのために、具体的にはどうしようとするのですか。

 わが会派の代表質疑で「窓口で強引な対応がされているのではないか」と質しましたが、当局は「窓口で強引な対応はしていない。一人ひとりに丁寧な対応をしている」と答弁されています。しかし、昨年相談を受けた市民からは痛烈な批判の声を聞いています。こんな内容で「精神疾患と慢性疾患があり、なかなか就労が続かず生活が苦しい。国保証がなかったら必要な薬ももらえないので、何とか借金してでも国保料を払ってきた。窓口で分納手続きはしてもらったが、とにかく払え払えと言うばかりで、医療費の窓口負担3割も苦しいのにその解決策は、働いている妻と離婚すれば生活保護が受けられるということだけだった。妻とは支え合って暮らしており離婚なんて毛頭考えていない。5年以上ずっとこんなやりとりを国保窓口でしている。しんどい。」と話されます。この方は糖尿病もあり薬代だけでも毎回の受診で5千円以上かかるとおっしゃるので、院内処方している医療機関で、無料低額診療をやっているところを情報提供すると「国保窓口で1度もそんな制度があることを教えてもらわなかった。知っていたら5年前借金することもなかったのに」と、窓口対応の非情さに怒りが爆発しました。昨年12月のことです。

質問⑤市民協働局長に伺います。このケースについては局長にも対応していただき、職員指導をしっかりやってくと語っておられました。その後、どのような対策を講じられましたか。

 国保の安定化のためには、病気の早期発見早期治療、保健指導の充実で病気にならない・重症化させない、国保の収納率を上げることが重要です。当局もそのために努力されていると思いますが、市民一人ひとりに丁寧に対応してこそ収納率も上がるものです。市民から信頼される窓口対応をお願いします。次に、国保料が1年以上滞納になり資格証交付となっている市民の状況を見てみます。当局からいただいた資料によれば、2015年1月現在で759世帯が資格証交付となっておりこの方々はお医者さんにかかると全額負担です。所得に対する保険料の割合が10~20%未満で315世帯、20~30%未満で70世帯となり全体の41.2%を占めます。世帯主の年齢では、30歳代で136人、40歳代で274人、50歳代で183人となり、全体の78.1%を占めています。

質問⑥お伺います。給与年収400万円、15歳未満の子どもが2人いる40歳代の夫婦の場合、国保料はいくらになりますか。

 この場合所得が228万円くらいになりますから〇〇%の負担です。1ヵ月単位でみると、24万円ほどの月給で国保料に○○円支払うこととなります。先ほどデーターで紹介したように、働き盛りの世帯に資格証交付が多いのは、子育て真っ最中で日々の暮らしに精いっぱい、とりあえず高い国保料は後回ししている様子が伺えます。がんばったら払える国保料に引き下げることが求められます。

質問⑦稲村市長になって国保料の軽減策として所得の2割を超える分は市独自で25%減免をされています。金額にしてだいたい毎年2億3千万円ほどが一般会計から繰り入れになっています。また、白井前市長の時国保料全体の引き下げのために4億円の繰り入れが行われ、稲村市長はそれも踏襲されています。それでもなお高すぎて払えない市民が多くいて、市としては収納率を上げることが大きな課題となっています。なぜそうなるのか、原因はどこにあると考えておられますか。

 国保に加入しているのは、自営業者・失業者・無職・学生・本来なら健康保険組合や協会けんぽなどに加入すべき非正規雇用やパートの労働者など所得の低い層です。年齢も高齢者が多く占めており、医療費は高くなるばかりという宿命をもっています。国民健康保険法には第1条で社会保障制度のひとつであると規定され、第4条で国に国保事業の運営が健全に行われるための責任があることが明記されています。国保制度を安定化するためには国費の投入が不可欠です。しかし、1984年退職者医療制度が実施され、退職者が従前加入していた健保組合に国保財政の一部を負担させることとなり、国庫負担の割合はその分減らすとされました。1984年までは尼崎市の国保会計の総収入に占める国庫支出金の割合は54%ほどあったものが、年々減らされ続け、2014年では24.6%半分以下になっています。これが市でがんばって一般会計からの繰り入れをしても保険料がなかなか引き下げられない一番の理由です。国は2018年国保を広域化する方針です。そして国保の財政基盤を安定化するために、これまで地方自治体が独自に一般会計から繰り入れをしてきた分に相当する3400億円を新たに国から投入するとしています。しかしこれだけでは今までといっしょ、少しも改善はしません。そこで質問です。

質問⑧広域化になっても、6億円は、今後も国保料引き下げの為に継続して繰り入れすべきではないですか。また、国に対して国庫負担を1984年以前に戻せと要請すべきではないですか。市長の見解を求めます。

 2009年6月議会でわが会派の質問に対して、当時の担当局長が「医療費の増加、一昨年来の社会経済の低迷など、国民健康保険をとりまく環境が厳しさを増していることから、今後、制度の健全化のための国庫負担割合の引き上げについて要望していく」と答弁しておられます。ぜひ、続けて国への要請を行ってください。

質問⑨新規事業であり、相談支援事業では何を重点的に取り組もうとしていますか。

 様々な困難を抱えた市民を対象に行う事業です。前提として生活保護適用か否かをしっかり見極めたうえで、市民によりそった対応が求めてられます。昨年9月議会の一般質問でわが会派の松村議員が、生活保護世帯のうち稼働年齢世代の方々に行っている就労支援について質問しています。当局の答弁では、支援の内容として、就労支援促進相談員を配置し、ボランテイア活動や職業体験を通じた就労前の意欲喚起、履歴書作成や面接指導、ハローワークへの同行訪問、求人や能力開発に係る情報提供、しごと課を通じて各種セミナーへの参加や無料職業紹介の促進を行い、その結果就労支援を行った285人の57%にあたる105人が就職したとのことでした。フルタイム勤務は19%、大部分がパート就労で、月収5万円未満が46%、就職して生活保護から自立できたのは12人でした。そこで質問します。

問⑩健康福祉局長は、これまでの生活保護で行ってきた就労支援で、就職に結びつくまでに長期の時間を必要とする方が多いといった印象を持っていると答弁されています。生活困窮者等就労準備支援事業も一人ひとりによりそって、長期の関わりが必要と思われますが、その認識はありますか。

質問⑪生活保護に該当せず生活困窮者就労準備支援事業の対象になった方が、なかなか就職できず、その間に所持金がなくなって生活保護の適用となる場合も出てくると思われます。そのあたりのチェックはしっかりとできる体制が用意されていますか。

 代表質疑でも強調しましたが、生活困窮者支援制度が生活保護の適用を押さえる水際作戦となってはいけません。しっかりと区別し対応されるよう求めます。

次に、介護保険の問題に移ります。特養の待機者は2194人、そのうち在宅で入所の必要性が高い人が246人と代表質疑で答弁されています。

質問⑫市は入所の必要性が高い246人について、どのような判断基準で絞り込んでいらっしゃるのでしょうか。

 多くの要介護者とその家族が特養入所を待っています。新年度80床の新規特養と29床の小規模特養がオープンすると思いますが、それでもニーズに追いつきません。国は、特養の代替施設としてサービス付高齢者向け住宅の利用を促進しています。尼崎市も第6期介護保険事業計画の中間まとめで、基準を満たすものは計画値に入れていれています。

問⑬現在市内にはサービス付高齢者向け住宅がいくつあり、尼崎市民が何人入居されていますか。

サービス付高齢者向け住宅はざっと調べたところ、月12・13万円~28万円、頭金が0円から数千万円とバラバラです。自立から要介護5まで入居できるところがほとんどです。特養の原則要介護3以上でないとダメという縛りがない分、利用しやすい利点はあります。しかし、介護の質については利用料の額によって大きな差があると思われます。また、利用料の大半を占める部屋代と食事代については補足給付の制度が使えません。

質問⑭低所得の高齢者が多い尼崎市では、特養の充足が最優先だと思いますが、いかがでしょうか。

次に、介護労働者の置かれている状況について話を進めます。日本医療労働組合連合会が2月23日「2014年介護施設夜勤実態調査」の結果を発表しました。それによれば、夜勤形態は9割近くが2交代制で、そのうち7割は16時間以上の連続勤務です。小規模多機能施設やグループホームでは、そもそも1人夜勤体制が制度的に認められています。夜勤回数に法的規制はありません。看護師確保法の指針では「複数体制で2交代なら月4回」を提唱しています。介護現場ではどうでしょう。3割以上の職員が月4回以上の夜勤、グループホームでは月10回以上という回答もありました。比較的非正規職員の割合が少ない特養や老健施設でも、夜勤は1割程度非正規職員に頼っています。小規模多機能施設やグループホームでは非正規職員の夜勤が4・5割となっています。勤務シフトは早出・日勤・遅出・夜勤などが入りまじり、勤務間隔や出退時間が不規則です。そのうえ、賃金は一般労働者の7割程度と言われています。調査結果をみれば、介護労働者の置かれている非常に厳しい状況がわかります。そのうえ介護報酬平均2.27%の引き下げで5割の特養は赤字になると、全国老人福祉施設協議会は発表しています。介護報酬の引き下げは、更に利用者や労働者にしわ寄せがいく危険性が明らかだと思います。

質問⑮要介護高齢者の安全確保、介護労働者の労働環境・処遇の改善は、市民の安全や命を守ることを第一義としている地方自治体の責務だと思いますがいかがですか。

質問⑯また、その責任において、国に介護報酬の引き下げをやめよ、介護保険と別枠で実効ある介護労働者の処遇改善を行えと要請すべきではないでしょうか。市長の見解をお聞かせください。

新年度は介護保険制度が大きく変わる年です。ぜひ、介護現場の現状を市としても把握する努力を惜しまないでください。次に2017年から始める総合事業についてお聞きします。新年度予算には事業所へのアンケート調査と生活支援コーディネーターを6名配置するものが入っています。

質問⑰要支援認定者へのサービスの受け皿について、市の基本的な考えと具体策をまずお示し下さい。

国が介護保険から要支援者のヘルパーとデイサービスを外すのは、上り続ける介護予防給付費を押さえる目的があります。しかしこれは、国が決定した後でも介護の専門家や団体から、要支援者の状態を却って重度化させてしまうと警鐘が鳴らされています。そこで質問します。

質問⑱要支援状態を維持し重度化させないためには、生活支援サービスを介護事業所の専門職に実施してもらうことが一番だと思いますが、いかがですか。

国は生活支援サービスの単価を下げるように指示していますが、単価を決めるのは市です。資格を持った介護職が提供する生活支援サービスの単価は、現行の予防介護と同等か、よりその水準に近づける努力をお願いしたいです。そうすれば介護事業所は安心して今まで通りサービス提供ができます。それが要支援の人を重度化させない道です。

質問⑲高齢者が寄り合える場の確保・日常的な簡単なお世話や見守りはどうですか。

また、国は介護の専門職が対応しなくてもボランテイアやNPOでできるサービスがあるだろうと言います。いわゆる「多様なサービス」というものです。確かにあります。今でも、シルバー人材センターやボランテイアなどがワンコインサービスで庭の手入れや電球の取り換え、ゴミ出しなどのサービスをおこなっています。地域の福祉会館や地域学習館、いこいの家などを利用してお食事会をしたり気軽に集まれる場をつくっています。こうした取り組みは、独り暮らしや引きこもりがちな高齢者の日常生活を豊かにしています。しかしこの取り組みはあくまで補助的な物、ひとりひとりの要支援の方に必要な介護の専門職によるサービスを提供したうえで、区別し、併用して利用できるようにすべきです。繰り返しになりますが、市には、生活支援サービスの提供者を類型化し、それぞれのサービスの単価を決めることができます。介護の質を低下させないために、現行の事業者に「多様なサービス」を持ち込ませず、「多様なサービス」を担うのはNPOやボランテイアだと明確に線を引くガイドラインをつくるべきです。生活支援コーディネーターは、「多様なサービス」を発掘、育成し、繋ぐ部分で大いに活動していただきたいと思います。これで、私の質疑は終わります。