オーバーツーリズムの現場を歩く…ベネチアで吉本博美記者が書いた記事。
10月26日号のしんぶん赤旗日曜版16.17面です。
世界中で観光客の急増が地域社会に深刻な影響を与えています。
イタリア・ベネチアでは、観光客がひしめき、住民の生活が圧迫される「オーバーツーリズム」が問題となっています。
しんぶん赤旗日曜版(2025年10月26日号)では、現地の様子が詳しく報じられ、民泊による騒音や生活環境の悪化が浮き彫りになっています。
テーマパーク化してしまった街で暮らす家族は嘆きます。
「昔ながらの商店や食品店は消え観光客用の店に様変わり。客の8割が観光客なので店も売るものを変えてしまった」「公共交通機関だった水上バスは観光客の移動手段になり住民は乗ることすら困難」…
大きな利潤を生む観光業。推進派が強い政治権限を持つため、住民の願いは取り上げられません。
イタリア観光連盟ベネチア支部のアンドレアさんは「エスプレッソの器にカプチーノは注げない」と言います。ベネチアが有機的な都市ではなく写真のための舞台創始になってしまうと危機感を抱いています。
日本の大阪市でも、国家戦略特区を活用した民泊制度が急拡大し、住民の暮らしに深刻な影響を与えています。大阪市では特区民泊に関する苦情が3年間で5倍以上に増加。2025年度には600件超が見込まれ、主な内容は「騒音」「ゴミ出しのマナー違反」「不法滞在の疑い」など。
特に西成区などでは「町の活性化よりも分断が進んだ」と住民が訴えるケースもあり、民泊施設の急増が地域コミュニティに摩擦を生んでいます。
ベネチアと日本──遠く離れた都市で起きている共通の問題。
それは「観光のために、誰が犠牲になっているのか」という問いです。
