2024年9月議会 川﨑としみ議員の一般質問と当局答弁要旨

日本共産党議員団の川﨑敏美です。

昨年の12月議会でとりあげた犯罪被害者の支援策と、児童ホームの職員の処遇改善について、質問します。

 

  • 犯罪被害者に寄り添う市政を

犯罪被害者の多くの皆さんは、事件により近親者が亡くなったり傷つけられたりして、そのショックは計り知れないものがあり、自力でさまざまな支援制度の申請を独力で行うことは大変困難です。

国が発表しているデータ(注:机上配布資料)があります。年度別犯罪被害者数と「給付金」申請者数及び支給金額の推移です。給付金とは犯罪被害にあった被害者と遺族に国から支払われる見舞金のことです。

 

西暦年(和暦)

 殺人件数 件

傷害(傷害致死)件

 支給件数

 支給金額合計

2008年(平成20)

  1,297      

28,291(不明)

  510件

 9億700万円

2009年(平成21)

  1,094

26,464(不明)

  656件

12億7700万円

2011年(平成23)

  1,052

25,922(131)

  835件

 20億6500万円

2019年(令和1)    

   950

21,188(67)

  393件

 10億2936万円

2022年(令和4)

   853   

19,514(56)

  441件

 14億8447万円

 

 上表の通り、毎年事件数も減少しているが、事件件数に比べて給付金の支給件数は少ない。その理由として考えられるのは、①申請主義であること。②被害者に寄り添って、制度を知らせ、手続きを援助する体制が出来ていないことがうかがわれます。

昨年の12月議会で、尼崎市の犯罪被害者支援条例を制定してからの申請実績をお聞きしました。市の答弁は「条例を施行した2015年(平成27年)7月から2021年(令和3年)度まで遺族見舞金が7件、重症病見舞金が35件、転居費用助成が4件、家賃助成が6件となっており、年平均で7件程度の申請、なお、2022年(令和4年)度は申請がなく、2023年度につきましては、11月末現在で重症病見舞金が4件申請されている」とのことでした。

 

 質問1 尼崎市では、条例制定以後、この間の犯罪発生件数はどのくらいあったのでしょうか?支給率はどのくらいあったのでしょうか?また国に対する犯給金の申請や支給状況について把握されていますか?

 

 答弁要旨

  本市の犯罪発生件数につきましては、兵庫県警本部発行の犯罪統計書によりますと、市内3警察署の刑法犯認知件数は平成28年以降の7年間で36,965件あり、うち、殺人が45件、傷害が1,224件となっております。

 これら認知件数は、尼崎市民以外の被害者も含まれており、その内訳は公表されていないことから、支給率については把握しておりません。

 しかしながら、市といたしましては、支援の漏れが生じないよう、報道等により被害者が市民であると知り得た場合には、所管警察署に確認するなど警察と連携し、取り組んでいるところであります。

 なお、国の犯罪被害者等給付金の申請状況や支給状況についても、尼崎市民に限定して公表されていないことから、把握しておりません。以上

 

 

ある被害者は夫が亡くなってから、犯給金の申請期限2年間のギリギリになって申請をされたということです。犯給金として定められている金額は2023年の最高額で約2594万円、平均で約707万円であることに、夫の命の価値はたったこれだけなのかと悲嘆に暮れ、どうしても納得がいかなかった。またいざ申請となると書類の記述がままならない、これ以外にも、日常生活を取り戻すために、いろんな申請(死亡届・相続手続き・学校への届け)が必要で、おまけに夫がなぜ亡くなったのか、窓口の担当者が変わるたびに何度も説明しなければならないという心労に耐えながらの生活が続いていたので、ギリギリの申請となったと言われていました。

遺族に寄り添い、必要な時はカウンセリングが受けられる支援体制が求められていると思います。

 

質問2 犯罪被害者に寄り添い、支援していくためにはワンストップの相談窓口等が必要とされていると思いますが、市はどのようにお考えですか?

 

答弁要旨

 本市といたしましても、犯罪被害者の負担を考えますと、ワンストップの相談窓口で対応することが望ましいと考えており、支援が他局にまたがる場合には、危機管理安全局の生活安全課が主体となり、関係局と連携を図っております。

 また、県においても、今年度から見舞金制度が創設されたことから、被害者支援に関する相談を受ける際には、相談者のご負担を軽減するため、県・市職員の同席のもと聞き取りを行うなど、連携しながら、可能な限りワンストップができるよう努めてまいります。以上

 

 

前回の質問でもお尋ねしましたが、明石市の条例が3年ごとに見直しの規定を設けていることを紹介した上、支援策の引き上げを求める質問に対し、市は「犯罪被害者支援につきましては、国が中長期的な支援を実施するべきと考えておりますことから、現段階で、明石市が実施されているさまざまな対策を実施していく事は考えておりませんが、犯罪被害に遭われた遺族や重傷病者への見舞金については、条例制定後一定の年数が経過していることから、被害直後の被害者支援策が現在の社会状況と適合しているのかを、近隣他都市の動向を注視しながら、検証していきたいと考えております。」と答えています。市は見舞金の検討をする、これだけを行うということだったのでしょうか。

国の支援策が昨年から今年にかけて議論され一定の前進が図られています。今年の秋ごろには改定される見通しとなっているようです。

今回の国の犯罪被害者への支援策の改定は、国の犯給金の支給基準の大幅な見直しが主です。しかし、これらはいずれも今後起きる犯罪事件に対してのものであり、過去に遡及されません。

また、犯罪被害者の多くの皆さんが求めていた国による損害賠償の立替払い制度は設けられませんでした。裁判で損害賠償が認められても、加害者に支払い能力がない、逃げて支払わないなどのことで、実際に少しでも賠償金が支払われているのは6.8%にすぎません。尼崎市在住の被害者遺族のある方は、約2980万円の判決に対して、加害者は資産があるにもかかわらず、わずか700万円の支払いですませています。国はこうした損害賠償を立て替える制度については今回も見送りとしています。

実際に住んでいる市町村での生活支援が必要とされています。

昨年の12月議会で、市へのお願いとして質問の最後で、私は、このように述べました。国の制度の充実が重要ではありますが、被害者の思いが国になかなかとどかない状況です。犯罪被害にあった市民の生活を本当の意味で支え、積極的な役割を果たせるのは市町村です。是非とも尼崎で条例が制定されてからの8年間を振り返り、改めて被害者の生活再建は権利であることをご理解いただき、条例の見直しに踏み込んでいただけたらと思います。

 国が真に犯罪被害者が事件以前の生活を取り戻すために、国が実施するまでの間、自治体が率先して支援すべきだと考えます。

 

質問3 制定してから8年も経っている条例改正について、明石市で実施している賠償金の立替、賠償金の判決が時効になった際の印紙代の建て替え支援、賠償金を得るための訴訟支援等、具体的な見直しは検討されていませんか?

 

答弁要旨

 本市といたしましては、条例制定後に一定の年数が経過していることから、見直しの必要性について認識しておりますが、国・県・市それぞれが担うべき役割がある中で、明石市で実施している制度そのものを採用することは難しいと考えております。

 具体的な取り組みとしましては、今年度は他都市の制度や支援状況の把握を進めているところであり、今後、犯罪被害者当事者や民間支援団体の皆様へ予定しているヒアリングの中で、犯罪被害者の皆様が抱いている課題や必要とされている支援内容等をお聞きしたいと考えております。

 併せて、関係課が参画する庁内連携会議を設置し、支援策の見直しや条例改正の是非を含め協議していきたいと考えております。以上

 

 

以上で第一問を終わります。

 

 

第2登壇

 

  • 児童ホームの職員の処遇の改善について

 

議員団は7月に指導員の皆さんと懇談しました。今年度から2点、大きく働き方が変わったと言われていました。

一つは、児童ホームの開所時間が19時まで延長されたことと、学校によって違いがあるのですが、授業時間の短縮化によって子どもたちの下校時刻が早まっている学校があり、去年まではおおむね14:45であったのが早い日で13:30となっています。多くの学校はこれまでとあまり変わっていませんが、今後は授業時間の短縮が増えて、下校時間が早くなる学校が増えていく可能性があるということです。児童に対応する時間は早まり長くなっており、そのため開所のために必要な前日の日誌のチェックや、指導員同士の打ち合わせが難しくなり、連携がとりにくくなっています。

二つめは、ICT化の導入によるものです。業務効率化のための準備は通常業務と並行しながらの新たな作業となり、これまでにない負担が生じる中で、こどもたちの育成支援や保護者支援にあたってこられたということです。

児童ホームの指導員さんは、これまで嘱託職員さんとも呼ばれてきましたが、2020年から会計年度任用職員となり、今年度から非常勤行政事務員の指導員A(有資格者・月額報酬)と非常勤事務補助員の補助指導員B(日額報酬)さんが児童ホームの運営に携わっています。働く時間はAは週30時間、Bは週27時間です。パートだけで現場を支えています。

指導員の勤務時間は、平日と長期休業日によっても出勤時間が異なっており、複雑な勤務体系となっています。

今年度から、児童ホームの開所時間が19時まで延長されたこと等もあって職員配置がかわり、40人定員1クラスで児童を預かるホームでは有資格者の指導員Aが3名(去年まではAが2名とBが1名)、60人定員ではAが3名と事務補助員、無資格(有資格者もいるがAにならなかった人は無資格扱い)の補助指導員Bさん1名の配置に改定されています。
 これにより昨年度まで春・夏・冬の長期休業日には、日給月給の賃金であるBさんが、Aさんの勤務時間6時間より長く、働いてもらうことが常でした。今年度から40人定員1クラスの学校は6時間勤務のAさんが3名のみとなったことで、Bさんの不平等な働き方と平日の勤務ローテーションは改善されました。しかし長期休暇中は開所時間が増えたので、人手不足が生じるようになっており、Aさんが多くの超過勤務をしなければならない状況が生まれています。

 

質問4 人員不足はどこまで逼迫しているのでしょうか?必要な人員に対してその充足率はどうなっているのか?また、その対策についてどのようにされようとしていますか?

 

答弁要旨

 令和6年度からの児童ホーム開所時間の延長にあたっては、施設責任者や現場職員、職員団体役員など様々な立場の職員で構成する検討会での協議や職員アンケート等を行い、様々なご意見をいただきながら、議論を重ねる中で、今年度からの児童ホーム指導員の勤務体制の再構築を行いました。

 議員ご指摘の指導員の配置体制の見直しは、長期休業期間を除く平日の延長育成時間の勤務シフトの負担軽減を図ること、行政視線事務システムや入退室管理等システムの導入によるICT化の促進は、事務の効率化により、指導員の業務負担の軽減を図ることを目的としたもので、職員団体をはじめとする現場職員の要望を受け、実施したものでございます。

 なお、令和6年度の指導員の充足率は93%で、保育業界における全国的な人手不足の影響などから欠員が生じており、長期休業期間等で指導員に超過勤務が発生しているところでございます。

 指導員の欠員補充対策としましては、通年募集のほか、市ホームページやSNSによる広報、ハローワークや求人サイト、人材派遣の活用などを実施しており、引き続き、欠員の解消に向けた取組を進めてまいります。以上

 

派遣会社からの人材派遣

人がなかなか集まらないので、人員の不足を人材派遣会社から入れているということですが、勤務時間は現場責任者が派遣の本人と調整する等のこともあって、勤務シフトのやりくりに苦労しているとのことでした。そこから派遣されてくる人は、学童保育の経験がない人が多いということです。

 

質問5 派遣会社からどれだけの人員を派遣してもらっているのか、その人数と費用について教えてください。

 

答弁要旨

人材派遣会社からの派遣人数につきましては、令和5年度において、児童ホーム指導員の有資格者枠16ポストに対し、延べ18人の派遣を受けておりました。

 また、児童ホーム指導員派遣事業費につきましては、令和5年度決算見込み額で、2,046万5千円となっております。以上

 

共産党議員団は、従来から指導員を正規職員として採用すべきと提案してきました。それがすぐに実行できないのであれば、当面、現行のパートタイマー制も残しつつ、好きな時間で働けるフレックスタイム制を導入するとか、会計年度任用職員のフルタイム8時間制を取り入れるべきではないでしょうか?そうすれば、現場で直面している指導員同士の打ち合わせや、開所までの準備時間が不足している等の問題の多くが解決するのではないでしょうか。現在のような全員が最大6時間、週30時間しか働けないパートの指導員さんの働き方では、若い人たちが働き続けることができる職場として選択できない、結婚してこどもを育てることができない、せっかく仕事に慣れても、将来のことを考えると転職してしまうといった環境ではないでしょうか。

 

 

質問6 児童ホーム指導員の会計年度任用職員は、社会通念上の常勤職員である1日8時間勤務のフルタイム職員を現場に取り入れるべきではありませんか?

答弁要旨

 会計年度任用職員の勤務条件につきましては、所管部局である総務局と協議を行う中で、それぞれの職が担う職務・職責を十分に勘案し、その業務に見合った業務量を精査して設定しているものであり、議員ご提案のフルタイムの会計年度任用職員は、現在の本市の制度上では設置されておりません。

 児童ホーム指導員の勤務時間につきましては、児童ホームの開所時間や業務量等を考慮して定めているところですが、人員確保の観点から、労働者の多様な就労ニーズを踏まえ、勤務条件を工夫する必要はあるものと考えており、地方公務員制度の範囲内で、より効果的、効率的な勤務時間の設定に努めてまいりたいと考えております。以上

 

 

待機児童対策も、指導員さんとの懇談で大きな話題となりました。1・2年生しかいない児童ホームでは、3年生以上の上級生との関わりがなくなり、学年の縦の関係がつくりにくくなっています。春には、ほとんど一から指導員が1年生に児童ホームの生活を指導していかなければならないといった状況が生まれています。

 

あらためて児童ホーム、学童保育における指導員の仕事について、その役割とは何か考えてみました。児童ホームとのかかわりがない人にとって一般的には、「こどもと遊んでいるだけ」との見方がまだまだ多いのではないでしょうか。しかし指導員の仕事は、

  • 子供が安全に安心して過ごせる生活を守る。
  • 放課後や学校休業日を過ごすために必要とされる基本的な生活内容をつくる(休息やおやつの提供など)。
  • 子どもが遊ぶための環境の整備と、援助を行う。
  • 子ども一人ひとりと、子どもたちの生活内容を豊かにするための継続多岐な働きかけを行う。
  • 保育内容を記録する。
  • 保育内容に関する情報の共有のための会議や打ち合わせを行う。
  • 連絡帳などを通じて子どもの様子を保護者に伝える。

などがあり、「こどもと遊んでいるだけ」ではありません。

その業務内容は、安全管理、学校地域との連携、特別支援児童の対応、性被害防止、発達に合わせた育成支援、(日誌・計画書・報告書の作成)などの事務、今年度からはICT化への対応、来年度以降は昼食提供事業も検討されており、これらの業務は多岐にわたっており、まさに学童保育の専門性が問われるところとなっています。

私は、学童保育には留守家庭児童、子どもたちの放課後の生活を保証すること、子ども集団を豊かにすることが、求められていると思います。保護者の労働を保証するための制度という側面はありますが、第一は子どもファースト、子どもたちの生活の場、人間として健全に発達できる場としての位置づけが重要であると思います。

 

質問7 当局は指導員が学童保育の専門性を深めていくための取り組みを強化すべきだと思うが、この点をどのように捉えているのか?新しい指導員に対する初心者研修、一定の期間ごとの研修制度を充実すべきではないか?

 

答弁要旨

 児童ホームは年齢や発達の状況が異なる多様な子ども達が一緒に過ごす場であり、児童ホーム指導員には、それぞれの子どもの発達の特徴や子どもどうしの関係を捉えながら適切に関わることで、一人ひとりと集団全体の生活を豊かにすることが求められるものと認識しております。

 そうしたことから、児童ホーム指導員に対し、その資質の向上を図るため、兵庫県が実施する放課後児童支援員認定資格研修や子育て支援員研修の受講のほか、採用時の新任研修、実例を踏まえた児童の育成支援、安全・安心の対応、指導員の役割や職場倫理等の研修を実施しているところでございます。

また児童ホームの現場においては、一度に多くの指導員が業務を離れることが出来ず、研修の時間を確保しにくいといった課題がありますことから、ICT化の推進の一環として、各施設に行政支援事務システム端末を導入し、録画動画の活用やオンラインでの研修の取り組みを進めており、引き続き、指導員の資質向上のための研修の機会の確保と充実に努めてまいります。以上

 

第3登壇

 

最後は意見・要望を述べさせていただきます。

犯罪被害者支援について、兵庫県下では尼崎市は明石市に次いで、積極的な取り組みを進めてきたと思います。しかし被害者と遺族のみなさんが事件以前の生活を取り戻すためには、さらにきめの細かい、被害者に寄り添う支援策が必要だと思います。一つ提案として基金の創設をお願いしたいと思います。毎年条例に基づいて予算が計上されていますが、未執行の分を基金に積んでいく、広く募金を呼びかけるなどして、支援のための財源を恒常的につくりだす等のことを行なってほしいと思います。

児童ホームの職員の処遇の改善についてです。指導員さんから、最初に尼崎市新型コロナウイルス感染症「記録と検証」プロジェクト報告書の中で、指導員さんから児童ホームでもどんだけ頑張ったか、でも児童ホームのことがいっこも書かれていない残念との声がありました。この意見今後の検証活動の参考にしていただきたいと思います。

児童ホームが白井市長の時に、当時私は保護者の組織である尼崎学童保育連絡協議会の事務局長を務めていました。有料化をめぐって、白井市長と懇談した際、有料化によって得た収入は今後の児童ホームの施策の充実のために使いますとおっしゃっていました。市はこの約束を実践してこられたのでしょうか。私は尼崎の児童ホーム、学童保育の制度は学校内の敷地内に公設・公営で設置されており全国一だと思っています。それを支えている指導員の皆さんが、全員パートで55歳からは昇給もストップという状況が何十年も続いているのです。現場は高齢化も進み、これ以上頑張って働いてと言えない状況です、周30時間のパート職員のみでの安全な運営は限界がきています。こども家庭庁は今年度「運営費における常勤職員配置の改善を」打ち出しています。市はこの補助金制度を積極的に活用して、欲しいと思います。そして学童保育を必要とする子どもに、豊かな生活の場を保障するために、指導員の常勤配置、複数体制の確立を要望します。指導員の多様な働き方と共に生活をしっかり保障する取り組みが必要だと思います。それが引いては、児童ホームの子どもたちの健やかな成長を保障することになると思います。

 

以上で私の一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。