2023年12月山本なおひろ議員 一般質問と当局答弁要旨【国民健康保険収納業務・消費者教育について】

 第1登壇 

 日本共産党議員団の山本直弘です。今日は、「国民健康保険」と「消費者教育」について質問いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

まずは国民健康保険についてです。国民健康保険制度は、国民皆保険として、誰もが安心して医療にかかれる、社会保障制度の根幹をなすものです。国保法第1条では「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」と明記されています。相互扶助ではなく社会保障制度であることは明白であります。しかし、年々引き上げられる国民健康保険料は加入者の生活と健康を脅かし、「払いたくても払えない」状況が広がっています。

わが会派の松澤議員が9月議会での総括質疑でも述べたように、本市の国保保険証交付対象世帯総数61,388世帯のうち、未交付世帯が4,451世帯。未交付率は7.3%で5年連続県下ワースト1となっています。その原因は、阪神間で最も所得が低い本市において、年々高騰する保険料により、払いたくても払えない状況があります。納付相談に行った窓口で「過年度分」と「現年度分」の支払いを求められるけれども、資力が不足するため払えず保険証が未交付となり、そのまま窓口に寄り付かなくなってしまう事態があるのではないか。かつてない物価高騰と円安により、市民生活は極限まで困窮しています。政府が掛け声をあげるも、物価高騰に追いつくような賃金アップは一向に実現しません。保険証が手元になければ、受診控えがおこり、健康寿命を延ばす上で最も重要な病気予防をすることが困難になります。国民皆保険制度の実質を守っていく上で、自助共助公助のあれやこれやでなく、社会保障の視点からの行政運営が必要ではないでしょうか。長年、新自由主義的の考えによって「自己責任論」が蔓延してきました。松本市長の誰も取り残さない、という市政運営のスローガンを、スローガンに終わらせないためにも、あらゆるところに蔓延する「自己責任論」を一掃すべきです。

 そこでおたずねします。

Q.保険証の未交付の根底に自己責任論の考えがあるのではないですか

答弁要旨

本市国民健康保険における保険証の交付にあたりましては、保険料に未納のある世帯に対しまして、生活状況の確認を行う中で、分納等も含めた納付相談を行うために来庁いただき、有効期間の短い短期証を窓ロ交付しているところでございますが、来庁が困難な方に対しましては電話相談の上、短期証を送付するなど、日々柔軟な対応を行っております。

また、短期証の更新時期には来庁案内ハガキの送付や、休日開庁の実施など、生活状況の確認や納付相談の機会を増やす取組みも行っており、未交付の解消に努めているところでございます。

その上で、医療機関受診等の理由で短期証を必要とされている世帯に対しては、すみやかな交付を行っております。今後も引き続き、対象世帯との納付相談等の機会を確保しつつ、短期証の未交付解消に取り組んでまいります。(以上)

 

次に、徴収業務に関わってですが、先日、市民の方から次のような内容の電話がありました。「うっかり先月分の国民健康保険料を支払うのを忘れたら、市から委託された者だと名乗る人が保険料徴収に家に来た。新手の詐欺ではないかと思い一旦追い返したが、その後調べたらその会社が尼崎市から徴収業務を委託されていることがわかった。お金を扱う市の仕事に民間企業が関わるわけがないと思っていたので驚いた。私みたいに知らない人はたくさんいると思う。これまで市報などに掲載していたのかもしれないが、もっと大々的に市民に知らせるべきだ」という苦情と要望をお聞きしました。後のテーマでも述べますが、年々巧妙化する高齢者や若者を狙った詐欺事件が発生し、連日新聞やテレビで報道される中で、見知らぬ来訪者に対する市民の警戒心は非常に強いものがある、と感じました。決してこの方が無知であったということで済ませられないと思います。徴収業務が民間業者へ委託されて何年か経っていますが、まだまだ知らない方が多いのが現状ではないでしょうか。

おたずねいたします。

Q 高齢者を狙った詐欺が横行する昨今、収納業務が外部の企業に委託されたことを、これまでどのような形で市民に周知してきましたか。今後、より一層周知することが必要であると思いますがいかがですか。

答弁要旨

現在、本市国民健康保険におきましては、保険料収納業務のうち、文書及び電話、並びに訪問催告や、ショートメッセージサービス(SMS)による催告業務を民間事業者に委託しております。

こうした取組にかかる市民への周知方法としましては、市報及びホームページへの掲載や、本市からの各通知用封筒への表記のほか、国保加入の全世帯へ送付する「保険料賦課決定通知書」の同封資料等にも業者名を記載しているところでございます。

今後も、様々な機会を捉えて周知を図っていくとともに、受託事業者に対しては、電話及び訪問時のマニュアルの遵守を徹底するよう指導し、市民の皆様に不信感を抱かせないよう、誠実な対応に努めてまいります。以上

 

次に、「消費者教育について」です。

近年、振り込め詐欺をはじめ、高齢者を標的にした詐欺、特に組織的な犯罪集団による大規模な詐欺の被害にあう人が続出し、社会問題になっています。警察による捜査と検挙率の向上はもとより、詐欺被害にあわないための予防が何よりも重要です。その要は、消費者自身の詐欺に対する警戒心をもつことと、詐欺集団の手口に対する知識の習得です。振り込め詐欺に対しては、行政としてこれまでも録音機能付き電話機購入に対する補助をはじめ、ハード面でのサポートをするとともに、ソフト面では消費生活センターでの相談活動、巡回講座などの啓蒙活動を通じて消費者被害を未然に防止し、悪質業者に騙されない賢い消費者になるための自立を支援することなどを行う、「消費生活安全推進事業」と「消費者行政活性化事業」を中心に施策を展開してきたと思います。しかし、その施策の2027年度達成目標値90%としている、「消費生活などの面で安心感を持っている市民の割合」が、

2020年度89.3%であるのに対し、2021年度82.6%、2022年度81.0%と減少してきています。

おたずねします。

Q 減少した要因をどのように分析し、今後どのように向上させようと考えますか。

答弁要旨

消費者の意識傾向につきましては、内閣府が実施する消費者マインドアンケート調査の近年の集計結果をみましても、約6割の方が半年後の暮らし向きが「やや悪くなる」又は「悪くなる」と回答しているなど、全国的に悪化傾向にあります。本市も同様の傾向にあると考えております。

この要因としては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う物資や人員の不足、国際的な原材料価格の上昇、円安の影響などを起因とするエネルギー・食料品等の価格上昇が生活を取り巻く環境を変化させており、本市におきましても、その影響が小さくないと分析しております。

消費者意識の回復・向上には、社会的不安の払拭が必要不可欠であることから、引き続き、消費者トラブルを未然に防止するため、時勢を踏まえた各種講座の実施、市報、チラシ及びホームページなどを活用した啓発を粘り強く継続していくことで、安心感の向上につなげていくよう取り組んでまいります。(以上)

 

尼崎市消費者生活センターの主催で7月31日に「投資はじめて講座 トラブル対策と新NISA活用法」という「令和5年度消費者トラブル防止セミナー」がすこやかプラザで開催されています。

案内のチラシにはこう書かれています。「低金利、物価上昇などにより、昔のようにお金を貯めておけば大丈夫な時代ではなくなりました。金融のIT技術も向上し、今や金融取引はスマホ一つでできるようになっています。簡単便利になった反面、SNSやアプリを介しての投資詐欺被害が増加しています。そこで本講座では、詐欺や危険な金融商品にだまされず、安定的に資産形成できる方法を学びます」

第一部は、弁護士が講師となって、金融商品被害、トラブル事例についてのお話があったようです。しかし、第二部では、一般社団法人投資信託協会から来た人が、投資初心者向けに国が進める「新NISA」の始め方、投資信託の種類などについての説明がされたようです。「NISA(ニーサ)」とは、「少額投資非課税制度――通常では、株式や投資信託などの金融商品に投資した場合、売却益又は配当益に約20%の税金がかかるものが、一定の金額の範囲内に購入したこれら金融商品により得た利益が非課税になる制度」です。このNISA制度が来年1月から購入金額の上限が年間160万円から360万円に引き上げられ、非課税保有期間が最大20年から無期限になるなど大幅に緩和され、国民に投資を強く促すものに変わります。

消費トラブルに対する学習、啓蒙ということは有益であると思いますが、国が「貯蓄から投資へ」の流れで推奨する新NISA制度は、元本割れの危険性がある不確かなものです。こういった不確かな株や投資信託の指南を、行政の主催する講座で行うことに私は非常に違和感をもちました。

Qお尋ねします。消費者トラブルの啓発だけでなく、今年度行われた、「新NISA」をはじめ投資に特化した講座を今後も行っていく計画ですか。

答弁要旨

消費生活センターでは、市民が消費者生活全般にわたる基礎的な知識の習得を図ることを目的とした「くらしのトラブル防止セミナー」や「くらしの通信講座」などの啓発講座を実施しております。

当該セミナーにつきましては、消費生活相談での投資や副業といった儲け話をきっかけにした消費者トラブルが増加している状況や、セミナー等の受講者アンケート結果などを踏まえているものであり、市民の皆様が興味を持って楽しく学習していただけるものとして企画したものとなっております。

その内容は、市が積極的に投資を働きかけるものではなく、詐欺的な投資勧誘被害の救済に取り組む弁護士から具体的な事例を聴き、その手口を知ることで被害の未然防止を図れるようにするとともに、金融商品についての正しい知識や制度変更内容、あわせて投資に関するリスクについても説明を行っており、議員がご心配されているような内容ではございません。現段階で当該セミナーの継続を決定しているものではございませんが、引き続き、消費生活相談における投資関連の相談件数などの推移を注視する中で、同様のセミナー実施の必要性について検討を進めていきたいと考えております。以上

 

Q 政府が進める「貯蓄から投資へ」の最大の目玉として、来年1月から「新NISA」が始まりますが、元本割れの危険がある投資信託や株運用の推奨について、地方自治体は抑制的であるべきだと考えますがいかがですか。

答弁要旨

当該セミナーにつきましては、先ほども答弁しましたとおり、市が積極的に投資を推奨するものではなく、投資初心者に金融商品についての正しい知識を伝えるとともに、消費者被害の未然防止の観点から、詐欺等の手ロや投資に関するリスクをお伝えする内容となっております。

今後も、消費生活相談の状況等を踏まえながら、消費者被害の未然防止や消費生活の基礎的な知識の習得を図ることを目的として、市民の皆様が関心を持ち、積極的にご参加いただけるよう有意義な講座の実施に努めてまいります。以上

 

  これで第1問を終わります。

第2登壇 

次に、来年秋からのマイナ保険証に関わって交付が予定されている「資格確認書」についてお聞きします。マイナンバーカードを持っていない人、持っていても保険証と紐づけていない人、または紛失した人、介護が必要な高齢者や子供らカード取得が難しい人でも保険診療を受けられるように、健康保険組合などの保険者が保険証の代わりとなる資格確認書をプッシュ型で送付する仕組みを計画されています。しかしこの資格確認書を利用した場合は、現行の保険証を利用した場合と同様、マイナ保険証を利用した場合よりも、受診料が高く設定されるという差別が設けられるという事です。保険料をキチンと支払っていても、本来の保険証ではなく「資格確認」という名称の保険証ではないものを交付されること自体がおかしいものではないでしょうか。

Q.本来任意であるマイナンバーカードを持たない被保険者に、資格確認書を交付することは、国民皆保険の趣旨に反すると考えるがいかがですか

答弁要旨

国民皆保険制度の趣旨は、国民全員がいずれかの公的医療保険制度に加入し、互いに支えあうことで、いつでも、誰でも、必要な医療サービスを一部の費用負担により受けることができることにあり、現行の健康保険証は、そうした医療サービスを受けるための証明書となっております。

現在予定されている令和6年秋の健康保険証の廃止後におきましては、健康保険証の利用登録がされたマイナンバーカード、いわゆるマイナ保険証によるオンライン資格確認が基本となりますが、これを持たない被保険者も保険診療を受けられるよう、資格確認に必要な事項を記載した資格確認書を職権により一律で交付することとなっております。このことによりまして、全ての被保険者がマイナ保険証又は資格確認書を保有することとなり、これまでどおり、

必要な保険診療を受けていただくことができますことから、資格確認書の交付が、先に述べた国民皆保険制度の趣旨に反するとは考えておりません。

以上

 

今、詐欺集団の主なターゲットは、高齢者に対する「振り込め詐欺」から、SNSやセミナーを利用した投資に、大学生や専門学校生、新社会人などの若者を巻き込むものにシフトしてきています。

スマホやパソコンなどを駆使して、SNSで巧妙に投資させる手口の中身は、金融庁の許可を取っていない業者がセミナー等に若者をおびき寄せ、言葉巧みに「必ずもうかる」かのような虚言を吹聴し多額の投資をさせることです。お金のない若者には消費者金融から1日のうちに数百万円もの多額の借金をさせて、そのお金をむしり取り投資マルチ商法に巻き込むという非常に悪質なものです。1日のうちに消費者金融に借り入れをさせるのは、翌日以降になると借入情報が信用情報機関に登録され、多額の借り入れができにくくなるためです。

4月22日のNHKスペシャルで「若者を狙う“闇の錬金術”~調査報告 借金投資の罠(わな)」というタイトルの番組が放送されました。そこでは、多くの若者の無知につけこんだ悪質詐欺集団の犯罪の手口と、その被害を受けた若者の実態が紹介されていました。

就職活動に失敗した派遣社員の男性は、営業先の人から投信話を持ち掛けられ、将来不安にかられてコツコツ貯蓄してきたなけなしの80万円を託したら投資先の会社に「80万円では足りない」と言われて、消費者金融から借金をして合計300万円を渡しました。当初は、スマホのアプリから毎日自分の投資資産が増えていくことに喜んでいたけれども、ある日口座から現金を引き出すことができなくなって、業者に連絡するもなしのつぶてになってしまった。という事例が紹介されています。スマホに表示される架空の数字を前に男性は一言「単なる数字ですね」とつぶやいていました。

もう一人の方の事例はさらに悲惨です。大学の友人から誘われて何気なしに信用して投資詐欺に引っかかり150万円を失った20代の女性が、詐欺にあったことに悲嘆して、自ら命を絶つという痛ましい事例です。女性は母親に宛て「今日で自分の人生を終わりにします 今までありがとう」という内容の遺書を残し、若い命を絶ちました。たった150万円でなぜ命まで、と思うことは簡単ですが、奨学金の返済もある中で、少しでもその返済に充てようとしていたところで大金を騙されたことが、第3者では伺い知れないショックをこの若者が受け、絶望したことは確かです。

未来ある若者が、うっかり信用してしまったばかりにマルチ投資詐欺にあう。社会経験に乏しい若者は、生き馬の目を抜く狡猾な詐欺集団の前にあっては、赤子も同然です。資産運用の教育よりも何より、こういった詐欺にあわない啓蒙が必要ではないでしょうか。

本市の、若年者への消費者教育の取組は、市立(いちりつ)の小中高校生に、小学生にはAKC(あまがさきキッズコンシューマー)ニュース、中学生にはAJC(あまがさきジュニアコンシューマー)ニュース、高校生には「若者トラブルあれこれ」という啓蒙チラシを年1回配布しています。啓発講座では、先ほどの投資入門講座のみ。その他は、成人の日や市民まつり、街頭でリーフレットやティッシュを配布するぐらいです。これだけでは様々な詐欺に騙されない心構えをもつには不十分です。 おたずねします。

Q 社会的経験が乏しい大学生や新社会人が、年々悪質巧妙化する詐欺に騙されないために、消費者教育を中学高校の段階で系統的に行うべきだと思いますが、いかがですか。

答弁要旨

小・中学校では、学習指導要領に基づき、社会科や家庭科、総合的な学習の時間の中で、計画的な金銭の管理の必要性や金融などの仕組み、働きを理解すること、消費者としての知識等を身につけるとともに、身近な消費行動と関連を図った物資・サービスや消費者被害等についても学んでおります。このような消費者教育を通してより豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて主体的に行動できる態度等を養うよう努めております。

また、高等学校では、公民科や家庭科の時間の中で、悪質商法」や「クーリングオフ」、「契約」等について、消費者の権利と責任の項目で学習に取り組んでおります。

悪質で巧妙化する詐欺など消費者トラブルに若者が巻き込まれないためには、早い段階での学びが大切であることから、引き続き児童生徒の発達段階に応じた消費者教育の充実に努めてまいります。(以上)

 

第3登壇

国民健康保険についてですが、

国保証の未交付率が高いままでは、市民の命、健康を守ることはできません。

一方、市が求める納付額に見合わないと保険証を渡さないということはやめて、市民が求めれば保険証を渡すという対応に改めたとお聞きしました。市民の声を受け止めた一歩前進な事であると評価できます。

来年秋から予定されている、「資格確認書」なるものの詳細はまだ明らかになっていませんが、マイナンバーカードを持つ市民ともたない市民との間で格差を設けることは、憲法14条の「法の下の平等」に反します。今後も注視すると共に、国に対して積極的に要望することを求めます。

消費者教育についてですが、

私たちは、株や投資信託などの資産運用が全て悪だとは考えません。しかし、国の進める「貯蓄から投資へ」の大号令に地方自治体が付き従って、投資講座などを積極的に行うべきではないと考えます。そういったことは民間の証券会社などがするでしょう。「安心感の醸成」のためには、投資教育よりも若いうちからしっかりと世の中にはびこる投資話に騙されないための教育ではないでしょうか。

バブル経済が崩壊後、日本経済が長期に渡って停滞してきた、いわゆる失われた30年を作った原因は何でしょうか。大企業の利益優先、財界の要望をまるごと受けて、労働法制の相次ぐ改悪で不安定雇用労働者を作り出し、正規労働者にも過酷な労働を強いる一方、消費税の相次ぐ増税と社会保障制度の改悪、教育予算の削減など、将来に希望が持てない政治を行ってきた、政治の無策、失政です。貯蓄から投資と「自己責任」を強調し、政治の責任を放棄するのでなく、働く人たちの賃上げや中小企業、中小業者支援、年金制度をはじめ社会保障制度の充実でこそ、将来不安をなくすことができるのではないでしょうか。地方自治体の役割の一つは、国の悪政の防波堤になることです。 市民が安心して暮らせるような施策を行うことが、行政に求められるといることであるという事を強調して、私の質問を終わります。