2023年12月議会 松沢ちづる議員 一般質問と当局答弁要旨 【特別障害者手当・高齢者虐待について】

日本共産党議員団の松澤千鶴です。

私は、特別障害者手当と高齢者虐待の対応について質問します。

 初めに特別障害者手当についてですが、この制度は20歳以上で、精神または身体に著しく重度の障がいを有するために、日常生活において常時特別の介護を必要とする方に手当てを支給することにより、福祉の増進を図ることを目的としたものと市は説明しています。今年度の支給額は月27,980円、所得制限はありますが、大方の目安として、一人くらしの年金生活者の場合、年金収入が年額500万円・月額40万円程度を越えない方は受給対象になります。障がい福祉の制度ですが、障がい手帳を持っているかどうかが支給対象を限定するものではありません。

 私は市の支給状況をお聞きしました。11月の支給件数は524件 このうち障がい者手帳を所持していない受給者は何人かと尋ねると、「統計をとっていないが障がい福祉施策なのでほぼ手帳を所持されているのではないか」との担当課の説明でした。障害者手帳のあるなしは関係ないはずなのに、市の制度説明と現支給状況に乖離があるように感じます。

 

Q1 市は特別障害者手当について、対象者の範囲をどのように理解されていますか。

 

答弁要旨

特別障害者手当の対象者の範囲につきましては、議員のこ案内にもありましたとおり、厚生労{動省が定める「障害程度認定基準」に該当する20歳以上で、精神又は身体に著しく重度の障害を有するために、日常生活において常時特別の介護を必要とする方となっており、障害者手帳の所持を手当申請の要件としているものではございません。以上

 

 次に、高齢者虐待の対応についてお尋ねします。

 私はこの間いわゆる加害者とレッテルを貼られたAさん、高齢者虐待の対応マニュアルでは養護者と表現されている方から相談を受けました。虐待案件と認定した行政側の話は聞いておらず、もっぱらAさんの訴えのみなので客観性に欠ける部分があるだろうことは承知の上で、あえて質問テーマにあげました。

 Aさんは今年3月に介護をしていた父親の顔をポールハンガーで1回殴ってしまった。その後父親を怒鳴りつけたことから虐待と認定され、父親は病院に保護されました。6月のはじめに、司法書士から成年後見人の手続きをしているとAさんの下に封書が来たとのことです。

 父親の顔を殴ってしまった3月は、前月頃から市内に住む叔父の介護でも先方のケアマネから連絡が来てそのために動かざるを得ず、疲れてストレスが高く、父親のケアマネにこのことは話していた。また、3月から関わるようになった地域包括支援センターの職員が高圧的で、その人に会うことでイライラ感が募る、担当を変えてほしいとも訴えていたが聞いてもらえなかったとAさんは言っています。

資料①をご覧ください。これは市が2019年発行した「高齢者虐待対応マニュアル」20ページにある対応フローチャートです。

これによれば、Aさんの場合、初動期段階から対応段階に移ろうとする段階のようです。

同じくこのマニュアル11ページには、高齢者虐待の防止に向けた基本視点⑧として「高齢者とともに、養護者を支援する」という記載があります。ここには、「在宅で養護者による虐待が起きる場合、虐待している養護者を『加害者』として捉えてしまいがちですが、介護疲れや養護者自身が何らかの支援を必要としている場合もあります。・・・養護者への支援を適切に行うことが求められます。」と明記されています。

 

Q2 Aさんへの支援は、対応フローチャートでしっかりと位置付けられ、適切に行われたのでしょうか。

 

答弁要旨

高齢者虐待は、高齢者が重度の要介護状態であることや、養護者の介護疲れ、家族間の人間関係や経済的な困窮状態など、一般的には様々な状況が虐待の背景にあると考えています。

議員ご質問の事案の養護者支援につきましては、尼崎市高齢者虐待対応マニュアルの対応フローチャートに基づき、「初動期段階」として、養護者の状態把握や今後の意向などの事実確認を行い、そこで把握した情報をもとに対応方針を決定しています。

また、マニュアルで「対応段階」として、対応方針に基づき支援を行い、その状況をモニタリングしているところであり、現在適切に対応しているものと判断しています。以上

 

 これで1問目の質問を終わります。2問目からは1問1答で質問を続けます。

 

<2問目>

特別障害者手当からお聞きしていきます。1問目で説明したように、この手当の受給については障害者手帳を持っていることが必須条件ではありません。 

 本市の各障害者手帳の所持者数は、2022年で身体障害者1級6,831人、療育手帳A1,879人、精神障害1級577人合計9287人です。さらに、要介護5の方が2,551人、要介護4が3,676人を加えると15,514人です。そのうち特別障害者手当受給者は524人なので3.34%となります。

 あまりに少ないと思います。

 

Q3 特別障害者手当についての市民周知はどのような方法でされていますか。

 

答弁要旨

障害者手帳をお持ちの方に対しましては、手帳の交付時等に「福祉の手引き」という冊子をお渡しし、それを活用しながら種々の制度等のご案内を行っており、その中で特別障害者手当についても丁寧にご説明しているところです。

また、過去に手帳を取得しており窓口に来られる機会の少ない方々等に対しましては、市報やホームページを活用して広報に努めているところでございます。以上

 

国によって特別障害者手当の障害程度認定基準が変更になることがあります。これにより、これまで対象外とされた方が新たに認定されることも出てきます。

 

Q4 こうした変更は、どのように市民周知されていますか。

 

答弁要旨

厚生労働省により障害程度認定基準が変更となった場合につきましては活用しておりますリーフレットや市ホームページの内容を修正するとともに、本庁障害福祉課のほか南北障害者支援課、各地区保健・福祉申請受付窓ロへも周知し、各種相談の機会を通じて、対象となり得そうな方へご案内するよう努めております。以上

 

次に、要介護4あるいは5の方にも支給対象者はいらっしゃるはずです。この方たちには、どのように周知されているのでしょうか。

Q5 介護保険だよりや介護認定のお知らせの際などに、特別障害者手当の案内はしていますか。

 

答弁要旨

介護保険だよりや介護認定の通知における特別障害者手当の案内の掲載については、これまでのところ行っておらず、要介護認定を受けられている方への周知が十分進んでいないことは課題であると認識しております。

なお、包括支援担当が発行している「尼崎市認知症あんしんガイド」には「重度の認知症で在宅で生活しており、日常生活上、常時特別の介護を必要とする方に対して特別障害者手当が支給される場合がある」旨を掲載しているほか、ケアマネージャーや民生委員向けの研修といった機会を捉えて特別障害者手当の制度説明を行うよう努めております。以上

 

市のHPに特別障害者手当のリーフがアップされています。

資料②をご覧ください。

 

おおよそリーフと呼べないA4の紙1枚裏表です。字も小さく、書かれている内容も、日常生活動作表で10点以上や日常生活能力判定表で14点以上と明記しながら、項目ごとの点数はおおむね全介助2点、半介助1点、介助なし0点と書かれているだけなので、どういう状態なのかイメージしにくいです。別表にいたっては専門的表現ばかりで、わかりづらいです。申請するとき医師の診断書が必要ですが、医師の参考資料なのかと思ってしまいます。

 

Q6 このリーフは誰のために作られたものですか。 

 

答弁要旨

お尋ねのリーフレットにつきましては、厚生労働省の認定基準等を正確に市民の皆様へお伝えする主旨で掲載しているもので、ホームページへの掲載のほか、窓口や電話などで、具体的に状況の聞き取りを行いながら、説明を行う際にも使用しているものでございます。以上

 私はこの質問に当たって、介護保険の担当課にも特別障害者手当についての取扱いについて聞きましたが、介護保険の範疇ではないといった対応でした。

 今年3月10日付けの「厚労省障害保健福祉関係主管課長会議資料」では、特別障害者手当については、自治体の介護保険に関する窓口などで制度について紹介し、説明の求めがあれば担当部門に案内することを例示しています。

 

Q7 厚労省の通知を受けて、市の対応を改めるべきではありませんか。

 

答弁要旨

今後、介護保険だより等においても特別障害者手当の制度説明を掲載するとともに、介護保険事業担当や地域包括支援センターなど介護保険に関する窓口において、特別障害者手当制度のリーフレットを設置し、詳細な説明を希望される方については障害福祉課を案内できるよう、各関係課間での連携を深め、要介護認定を受けられている方へのより一層の制度周知を図ってまいります。以上

 

 資料③をご覧ください。

これは、兵庫県高齢者生活協同組合の特別障がい者手当を紹介したリーフの一部です。こんなリーフが様々な行政窓口におかれていたら、市民にとってわかりやすく、制度の周知は広がると思います。

 

Q8 市民にわかりやすいリーフに作り直すべきと思いますが、いかがですか。

 

答弁要旨

先ほども答弁いたしましたとおり、現在使用しているリーフレットについては非常にわかりにくいものになっておりますが、厚生労働省の認定基準等を正確にお伝えする趣旨で、障害者手帳をお持ちでない方、要介護認定を受けられている方などへの制度周知を進めるには、より目に留めていただけるか、自分事として捉えていただけるかという観点も必要と考えております。

そういった観点から、今後、議員ご紹介の兵庫県高齢者生活協同組合や他都市のリーフレットなども参考に記載内容を検討し、よりわかりやすいものに改めてまいります。以上

 

特別障害者手当月額27,980円は魅力的な金額です。介護保険の利用者負担が重くて、必要なサービスを利用せず我慢している市民が多くいます。支給対象者に制度を積極的に紹介し、くらしやサービス利用の一助に活用していただけるように、障害福祉と介護保険の分野できっちりと連携していただくよう強く求めます。

 

次に、高齢者虐待についてお聞きします。

 

 在宅介護での認定された高齢者虐待の実数は、2020年53件、21年64件、22年43件とお聞きしています。一つ一つの事例が社会の縮図であり、対応する関係機関では担当者一人で抱え込まず、チームアプローチで臨んでいると思います。最優先は高齢者の安全確保ですが、今後の再発防止を考えれば、並行して養護者へのケアも重要です。

 

Q9 虐待対応で行政が介入する最初の時から、チームの中で役割分担ができているのですか。

 

答弁要旨

高齢者虐待の対応は、組織的に行うことが必要であり、虐待の相談や通報、届出があった場合、まずは、包括支援担当と地域包括支援センターを中心に、緊急性の予測や初動対応を決定した後、関係機関への聞き取りや高齢者や養護者への訪問等により事実確認を行うなど、情報を収集した上で、コァメンバー会議を開催し、内容の精査や虐待の有無、緊急性の判断、対応方針の決定を行っています。

また、高齢者や養護者の支援にあたっては、通報等の以前から携わっている関係機関をはじめ、今後、関与を依頼する関係機関などを招集した支援チーム会議を開催し、支援内容や各機関の役割などを決定し、支援を進めるとともに、適宜、関係機関との情報共有やモニタリングを行い、その時々に応じた役割を再編することにより、適切な支援に努めているところです。以上

 

Aさんは加害者のレッテルを貼られてから、どこにも相談する場がないと感じています。Aさんは自分なりに虐待について学び、自分のした行為を振り返っています。父親の日常的な介護からは解放されましたが、レッテルは貼られたままです。また、入院によって食欲減退から口腔摂取ができなくなり鼻腔栄養でやせ細ってしまった父親を、もう一度在宅介護で看取ってあげたいと思っています。

 

 私自身も夫の在宅介護を16年やってきました。なぜ在宅介護を選択したのかというと、1年2か月お世話になった病院では夫の尊厳が守られない、自分で頑張れる間は在宅で2人で生きていこうと強く思ったからです。介護疲れはつきもので、Aさんが衝動的にやってしまった暴力は、私にとっても明日は我が身で起こりうる可能性のあるものです。

 Aさんにも同じような思いがあります。Aさんは納得のいく母親の看取りができませんでした。それだけに、父親にはできるだけのことはしてあげたいと思っています。そのAさんが加害者のレッテルを貼られたままというのは、あまりに残酷です。

 養護者支援の質の向上を切に要望して、質問を終わります。

資料