日本共産党議員団を代表し、本委員会に付託されました2023年度予算案等について意見表明を行います。
松本新市政のもと、「ありたいまち」の実現に向けて尼崎を「次のステージ」に導くための、「第6次総合計画」と「財政運営方針」が来年度からスタートします。
そして、来年度主要事業の中では、注目事業として「子どもの医療費助成の更なる拡充」「インクルーシブな教育・保育の推進」「良好な住環境形成に向けた取り組みの推進」が掲げられています。
来年度予算のポイントとして、主要一般財源の歳入1139億円、歳出の義務的経費は1329億円。個人市民税収などが増え、財政規律、財政運営の目標とルールを踏まえた予算編成により、収支均衡を達成し、目標管理対象分の将来負担は来年度末で1023億円の見込みとのことです。
長年にわたる市民サービスの抑制や市の財産売却などでたどり着いたもので、多くの市民のくらし、教育、福祉が犠牲になってきました。2度と再び財政悪化の轍を踏まないことと共に、子どもの医療費無料化のとりくみをはじめ、市民の福祉充実のための方向に大きく舵を切っていくことが必要ではないでしょうか。
それでは、2023年度予算の個別の問題について述べてまいります。
・新型コロナ対策
政府は新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを第2類から第5類に5月以降変更することを決めました。日常生活を取り戻し、経済活動を本格的に再開することはもちろん大事なことですが、発熱外来のひっ迫、救急搬送困難事例、自宅待機による重症化が頻発するなど、コロナ禍で露呈された医療・保健所体制の脆弱さも直視すべきです。
インフルエンザよりも感染力が強く、死亡者数が多い新型コロナウイルスは、変異を繰り返しながらまたいつ何時、感染拡大が広がるか予断を許しません。
高齢者施設や医療機関、学校などでのクラスター発生を防ぐためにも、国からの臨時交付金がなくなる可能性がある今後は、自治体独自の支援が欠かせません。機動的で柔軟な対応を強く求めます。
・行政のアウトソーシング
市民課窓口業務や債権管理業務をはじめ、多くの行政実務がアウトソーシングの名のもとに外部委託されてきました。
内部的な検証にとどまらず、これまでアウトソーシングしてきた業務の検証内容と見直すべき業務を明らかし積極的に議会に報告するよう求めます。
・職員定数の削減
今回、市立高校などで職員削減が行われています。行政サービスと行政職員の専門性の低下、そして現場職員の過重負担を引き起こす、これ以上の職員削減をしないよう強く要望いたします。
・インクルーシブ教育
インクルーシブ教育について新年度の計画では、小中学校では生活介助員を11名増やして77名体制に、特別支援教育支援員を10名増員して全小中学校58校に配置する構想が示されました。しかし、就学前については明確な対策がありません。
また、いわゆるグレーゾーンに属する気になる児童と、虐待の可能性のある児童については、障害児加配の制度が適用されません。障害児加配については、当面公私間格差をなくすことと、障害児1人に保育士1人の配置を目指すべきです。気になる児童や虐待の可能性のある児童もふくめ、調査し対応策を検討すべきです。
・学校施設の老朽化
本市の公立学校施設は、建設後40年以上経過した校舎が6割を占め、老朽化が進み、多くの学校の校舎が安全性と機能性の面で大きな問題を抱えています。
学校現場からの要望に積極的に対応し、教員と子どもが安心して学べる学校環境を整えることを強く要望いたします。
・子どもの医療費助成の拡充
子どもの医療費無料化助成制度が、就学前の所得制限が撤廃されることとなりました。1歩前進であり、今後も手を緩めずにさらなる拡充を早急に行っていくことを強く要望いたします。
・保育士の確保・配置基準
尼崎の国基準に対する保育士の配置状況ですが、1歳児では、国基準6人に対し、公立保育所が4.7人、私立は4.6人、5歳児では、国基準30人に対し、公立10.3人、私立13.1人となっています。国基準を超える配置せざるを得ない中、基準を超える人件費等に対して、補助はありません。その分が運営者の持ち出しとなり、保育士の低賃金やゆとりのない保育士配置となっています。
市は、保育士の配置基準の見直しをしない理由として、配置基準を拡充すれば、ただでさえ保育士不足なのに、より大きな保育士不足を引き起こすからと、述べています。
しかし、保育士不足の本質は、保育士を取り巻く劣悪な働き方、労働条件、職場環境が整っていないことではないでしょうか。
保育現場で事故や不祥事が相次いでいますが、背景には人手不足があります。安心安全な保育と、保育士の働き方の改善のために「せめてもう1人保育士を」という願いは本当に切実です。
保育士が不足するから配置基準を増やさないといった考えを改め、保育環境を整えるための市独自の補助金制度を拡充するべきです。
・夏休みの学校プール開放事業の廃止
尼崎市の屋外公営プールは今では芦原と北カリカエの2つだけになってしまい、夏休み中、子どもたちが水に親しむ機会が奪われてきました。それを補う目的で学校プールの開放事業が行われてきましたが来年度廃止されようとしています。一方、芦原プールは閉館されたままです。早急に整備し、子どもたちが楽しめるファミリープールとして一刻も早く再開するべきです。
・気候危機対策、再生可能エネルギー推進
主要事業で「脱炭素社会の実現に向けた省エネ設備等導入補助」事業が挙げられています。また、公用車へのエコカー導入実施、民間カーシェア事業者と協定したEVカーシェアの普及促進などの拡充と、「市営若草住宅への再生可能エネルギー導入を核とした地域マイクログリッド構築の検討」など、エネルギーの地産地消の取組みについて新たな取組みも出されました。
これらの施策を着実に実施することはもちろん重要ですが、さらにふみこんで、市民意見を反映し共同していくための「気候市民会議」を設置し、「尼崎市気候非常事態行動宣言」で掲げた2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする脱炭素社会の実現を、市民参加で推進していくことを求めます。
・中小事業者支援
長らく続くコロナ禍、そして政府の経済失政による円安とロシアによるウクライナ侵略の影響で原材料、燃料が値上がりし、かつてない物価高騰が市内中小業者の経営に暗い影を落としています。さらに今年10月からは、小零細事業者のみならず、シルバー人材センターで働く方、ウーバーイーツなどのフリーランスの方たちに、実態とかけ離れた納税を強要する消費税インボイス制度が開始されようとしています。
コロナ対応融資(いわゆるゼロゼロ融資)の返済がはじまり、過剰債務問題も深刻です。
来年度の経済対策として、「脱炭素化設備等導入促進支援事業」「SDGsあま咲きコイン推進事業」「産業振興基本条例関係事業」などがありますが、さらに地域経済を守り発展させていくためにも、「住宅・店舗リフォーム助成制度」や、「地域経済再生給付金」を創設し、困難に直面している中小企業・小規模事業者へ直接支援を行うべきです。
・重層的支援
2022年度から始まった重層的支援の取組みですが、多種多様な問題にあたっていくうえで、市職員の側に重層的支援の観点が不十分ではないでしょうか。滞納問題などで機械的一律的に対応するのでなく、市民が抱える様々な背景をよく精査し、全庁横断的な対応が求められます。市民に寄り添う伴走型支援とそのためのスキルを培う職員研修の充実を求めます。
・市営住宅など住宅施策
市長は施政方針の中で、「ファミリー世帯の定住・転入促進の観点からは、子育て・教育といったソフト戦略に加え、住環境の整備が極めて重要である」と述べていますが、ファミリー世帯だけでなく、住宅確保要配慮者へのより積極的な施策展開が必要です。
市営住宅の戸数割合が他市よりも多いから減らすのではなく、ニーズに見合った計画に改め市営住宅の適切な供給・管理に取り組むべきです、
・国民健康保険
国民健康保険は国民皆保険制度の根幹であり、市民のいのちと健康を守る社会保障制度です。
保険料が高すぎて払えないのに、滞納者に実質無保険と何ら変わらない資格証明書を発行する制裁行政はいいかげんやめるべきです。全国市長会を通じ、国に国庫補助金の増額を強く要望することと、当面国保基金からの繰り入れと共に、一般会計からの繰り入れを行い、保険料の値上げを抑制するべきです。
・生活保護行政
毎年の記録的猛暑で、エアコンを使用しないと命の危険にさらされる中、電気代を節約するためエアコン使用をためらう利用者がいます。そこに電気代の高騰をはじめとしたかつてない物価高騰が追い打ちをかけ、生活保護利用者の生活を脅かしています。国に対して引き続き夏季加算の創設を求めつつ、市独自の物価高騰支援策を講じるべきです。
・マイナンバーカード
国は2022年度にほとんど殆どすべての国民にマイナンバーカードの普及をすす
めるとしてきました。しかし、一向にすすまない状況に業を煮やした政府は、マイナポイ
ント付与というアメとともに、紙の保険証廃止、普及率により地方交付金支給に差をつ
けるなどのムチをちらつかせ、マイナンバーカード普及を強引に進めています。
マイナンバー制度の問題点は、個人情報の漏洩、民間によって営利目的に利活用される懸念があることです。岡山県備前市のように、マイナンバーカード取得の有無により行政サービスの内容を差別することは絶対あってはならないことです。市長は代表質疑の答弁でこの点、「法律の根拠なく・・・カード取得を条件づけるようなことはしないようにした」いと答弁されました。非常に前向きで評価できる内容だと思います。しかし、例えば法律ができたら「条件づけること」もあり得るということではないでしょうか。憲法の14条には「法の下の平等」が謳われています。いかなる法律も憲法の趣旨に反すれば無効です。一歩踏み込んだ立場を切に要望いたします。
・個人情報保護の問題
国は、2021年5月に成立したデジタル関連法において、国や自治体が持つ膨大な個人情報のデータ利活用を成長戦略に位置づけ、外部提供したAIで分析させ、企業の儲けのタネにすることを「デジタル改革」の名で進めようとしています。
各地方自治体レベルで進めてきた個人情報全般を保護する条例を、データ流通の支障になるとして、条例をリセットし、法による共通ルール化を規定しました。
自治体が保有する個人情報は、企業から見れば収益を得るうえで最上級の個人情報の宝庫です。匿名加工するとはいえ、情報の特定が全くできなくなる保証はありません。企業の儲けのために個人に関する情報を外部に流出させ、目的外利用させるべきではありません。
・モーターボート事業
公営ギャンブルである競艇は、射幸心をあおり、依存症を誘発し時に家庭崩壊さえ引き起こすものです。長らくその収益に頼ってきた財政構造を改めるのは簡単ではありませんが、将来的なあり方を話し合う会議体を設けるなど、ありかたそのものを検討する時期に来ているのではないでしょうか。
・小田南公園周辺事業
2025年完成予定の「阪神タイガースファーム球場建設」の工事が始まりました。工事期間中はもとより、完成後も良好な住環境の構築のために、地域住民の声をよく聞き、反映させるための機会を定期的にもつことを要望します。
・阪急武庫川新駅建設
一昨年出てきた本計画ですが、「建設ありき」で進めてきたのではないでしょうか。
私たちは、市民にとって真に必要な社会インフラ整備は大いにすすめるべきであると考えますが、まちづくりの観点を土台に、財政、市民の要求の両面で慎重に議論すべきです。
・県道園田西武庫線
県道園田西武庫線整備事業は、現在藻川にかかる橋梁が完成し、4月から自転車と人の通行を開始するということです。しかし周辺住民は土地の提供については合意がされていません。市は市民と県との調整を行う役割を果たし、市民合意が得られるよう努めるべきです。
以上、日本共産党市会議員団の2023年度予算に対する意見表明といたします。