2022.12議会 川﨑としみ議員による代表質問と答弁要旨

12月20日川崎議員が市長への代表質問を行いました。

 

日本共産党の川崎敏美です。日本共産党議員団の代表質問を行います。松本市長、当選おめでとうございます。

 市長に対する代表質問に入る前に、少し国内外の情勢について触れておきたいと思います。12月17日に臨時国会が閉会しました。岸田首相は、8月に新内閣を組閣して以来、野党の臨時国会開催要求に背を向け続け、ようやく10月3日開会したにもかかわらず、国民にとって、たくさんの課題を残したまま早々と国会を閉じたことは、無責任極まりない政治だと一層の批判が高まっています。

大きくは3つの点を指摘しておきたいと思います。

 

 まずは統一協会問題です。

 

 統一協会が行っている正体を隠した伝道活動、霊感商法と高額献金、当事者の意思を無視した集団結婚など数々の反社会的活動は、どれも司法によって法律違反と断罪されたものであるとともに、日本国憲法に保障された思想・良心の自由、信教の自由をはじめ基本的人権を蹂躙(じゅうりん)するものです。統一協会の反社会的活動を一掃し、被害者救済をはかることは、憲法に保障された国民の基本的人権を守る意義があります。国会は終盤で被害者救済法を成立させましたが、被害者団体からもまだ不十分だと指摘されており、直ちに見直して 実効性ある救済制度をつくる、統一教会の解散命令を請求する、自民党と統一教会の癒着を解明する等の問題が残されています。自民党は50年来の統一教会との関係性について明らかにせず、調査もしないという態度は許せません。統一協会と政界との癒着を一掃することが求められています。

 

 第二は、物価高騰と国民の生活苦がいよいよ深刻になっている問題です。

 

岸田政権は、その最大の原因である異常円安に対して対応不能に陥り、「構造的賃上げ」と言いながら中身はありません、物価高騰のさなかに医療や年金削減、今後介護保険の負担増を押し付ける計画がすすめられる政治が行なわれています。「総合経済対策」を打ち出しましたが、電気・ガス料金の抑制などの個別的、一時的対応では、焼け石に水です。

 この現状を打開するためには、賃上げを軸とした実体経済の立て直しに本腰を入れて取り組むことが必要です。

 日本共産党は、大企業の内部留保への時限的課税を行い、税収10兆円を中小企業の賃上げの直接支援にあて、最低賃金を1500円に引き上げる具体的な賃上げ政策の実現を求めています。

 また消費税の5%への緊急減税とインボイスの中止、社会保障と教育の負担軽減を行うことが必要だと考えます。

 農産物の価格保障・所得補償の抜本的強化によって食料自給率を引き上げ、省エネルギー・再生可能エネルギーの大規模普及によってエネルギー自給率を引き上げることは、地球規模の食料危機、気候危機の打開にとって急務であるだけでなく、地域に新たな産業をつくり、国民生活と日本経済の基盤を強くするうえでも待ったなしの課題であると考えます。

 

 第三は、岸田政権の暮らし、憲法、平和を破壊する危険な大軍拡の動きについてです。三つの問題が起こっています。一つは、自民党と公明党が「反撃能力」の名で「敵基地攻撃能力」を保有していく方針を合意した。二つ目は、岸田首相が、軍事費を「5年間で総額43兆円」にするよう指示した。三つ目は、首相が、その財源として「足らない部分は増税」などの指示を出したという問題です。

 こうして「敵基地攻撃能力」の保有、「軍事費43兆円」、「増税」という3点がセットであらわれてきました。日本国憲法の恒久平和主義に基づく戦後の国のあり方を根底から覆し、「戦争国家づくり」に突き進む非常に危険な動きです。

 この道を進んでしまったらどうなるか 第一は暮らしの破壊です。軍事費の財源をめぐり、消費税の大増税や社会保障削減の加速の危険があり、恐るべき暮らしと経済の破壊の泥沼に落ち込むことになります 。第二は憲法の破壊です。敵基地攻撃能力保有が憲法違反であることは明瞭であり、従来の政府の憲法解釈を180°覆しという点では立憲主義の破壊に他なりません。第三は平和の破壊です。 安保法制に基づいて集団的自衛権を行使する際に、敵基地攻撃能力が使われれば日本に対する甚大な報復攻撃を招き、日本を守るとの言い分とは正反対に、日本に戦禍を呼び込むものとなります。日本共産党は、大軍拡・大増税に断固反対の立場でこの逆流に立ち向かって参ります。

 

 

Q1日本は法治国家であるのに、憲法を無視して戦争をするくにづくりが、国会での議論を経ることなく決められていくことについて、市長はこの問題についてどうお考えでしょうか?

 

答弁要旨

12月16日に閣議決定された「反撃能力」について明記した安保関連3文書及び、それに伴う与党税制改正大綱における防衛力強化にかかる財源確保のための税制の措置について、私自身、日本が過去に戦争悲惨さ経験し、戦争による被害者を絶対に出さないと強く願う心と、大きく変化する日本をめぐる安全保障環境の中で、国民の命と平和な暮らし、そして我が国の領土・領空・領海を守るという政府が果たすべき大きな役割を想像する中で、一国民として、非常に揺れ動いているというのが率直な、見解です。

現時点では、政府・与党における議論の段階であると認識しており、まだまだ多くの論点があることから、今後、国会において丁寧な議論がなされることを期待しています。以上

 

 

 

【市長の政治姿勢】

これまでの稲村市政について

稲村市政の前身は、20年前に誕生した白井市政でした。市の大幅な行財政改革を突然一方的に発表した宮田市政から、日本共産党も加わる「民主市政をつくる会」や市民派などの市民団体との共同の力で誕生しました。しかし白井市政は2期目となると、財政再建を市の最優先課題として、市民には緊縮財政を強いる行政運営を行うようになりました。

その後白井市政を引き継いだ稲村市政は様々な業績を残されました。評価すべき点として挙げられるのが、公共施設の耐震化、小中学校のクーラーや洋式トイレの設置、ひったくり防止策や、放置自転車をなくす、暴力団事務所の撤去等があります。さらに今年からは、1月の中学校給食の実現、7月からの中学卒業までの子どもの医療費の無料化の制度が一歩前進しました。

しかし財政再建を最優先で取り組んできたため、市民の暮らし・福祉に関わる施策は後景に追いやってきました。高すぎる国保料、介護保険料に市民は苦しんでいます。特に子育て施策の立ち遅れは、ファミリー世帯の転出超過の流れを推し進めています。

学校の耐震化など国の予算がつく事業は行うが、市民のための独自予算を使った施策は小さな予算で限定的なものばかり。それどころか国の「2040構想」に沿う30%以上の公共施設の再編・再配置計画を推進、公立保育所は45から15カ所にまで民間移管計画が進行中です。公立幼稚園も18園から9園にまで減らされました。市営住宅も市民ニーズがあるにもかかわらず10,800戸から9,200戸まで削減する計画です。さらに業務執行体制の見直しで、市民課窓口や上下水道の各種業務、道路・公園の維持管理、ゴミ処理の公務労働もアウトソーシングが押し進められ、市民サービスの切り捨てにつながる事態が進行しています。中学校給食では、小学校と同様に自校調理方式を望む市民の要望は横に置かれ、PFI方式で給食が実施されています。こうした状況が生まれたのは、国が強硬に推し進めている自治体のトップランナー方式が押し付けられてきた結果となっています。交付金頼みで国言いなりの市政運営がなされてきたといっても過言ではありません。一面財政再建を優先せざるを得なかったということがあったとしても、さまざまな業務が民営化、アウトソーシングされた結果、失ったものの大きさに気付くべきです。USB流出事件も民間委託ゆえに、しかも業務管理体制の甘さともあいまって、委託業者任せにしてしまい、市職員のスキルも低下し、杜撰なチェック体制を生んだということではなかったのではありませんか。

 またコロナ禍を体験して、尼崎市も全国と同様に、保健所や職員数を減らし続けてきた結果、緊急事態に対応できない脆弱な体制となっていることが明らかになりました。市の総合計画の根底にある、なんでも効率化という新自由主義の考え方からの脱却が必要とされています。

 

Q2市長は対話重視、実行力、誰一人取り残さないという政治姿勢を示されています。稲村市政のどこを引き継ぎ、どのような尼崎市政を作っていくのか?さらなる次のステージへとうたっていますが、具体的には次のステージとは何をさしているのですか?

答弁要旨

私は所信表明において、稲村市政における、本市財政をはじめ、治安や環境の改善、学力や都市イメージの向上など市民の皆様との取組の成果を「胎動」と表現しました。

こうした「胎動」を確実なものとし、この尼崎市を「住みたいまち」、「住んで良かったまち」、そして誰もが関心と興味を抱き、「人が集まる賑わいのあるまち」へと発展させていくことを「次のステージ」と考えています。

そのためには、公約で掲げた5つの観点から、それぞれの施策を連関させ、全体の底上げを図っていくことが重要であり、特に、ファミリー世代が、安心して子育てをし、教育を受けることができるようなまちに向けた取組や住環境整備、マナー向上などまちの魅力とイメージ向上に向けた取組に注力してまいります。以上

 

市の最上位計画である総合計画についてお伺いします。私は、この計画は根底に新自由主義の考え方があり、また国が進める2040構想や田園都市構想に沿ったもので小さな市役所づくりがめざされている、職員の手引き書として総合計画があるとの印象を受けています。本来は、市民にとって将来の尼崎の街づくりがどのようなものになるのかということが具体的にイメージ化できるものこそ、総合計画だと思うのです。

 

Q3市の最上位計画である総合計画について、評価する点、また課題をどのように捉えているのでしょうか?

 

答弁要旨

新たに策定した第6次となる尼崎市総合計画は、今後IO年間のまちづくりの大きな方向性を示す大変重要な計画であると認識しています。

過去20年間の行財政改革路線の取組などにより、各施策のさらなる充実に向けた展開方向が示されており、これら内容の方向性自体が、これまでの尼崎市民の努力を示すもので、前向きな計画だと受け止めています。

一方で、社会経済の変化はスピードを増していることから、今後、尼崎市総合計画の大枠は重視しつつ、個別の施策の展開については、市民の生活状況等を踏まえ、柔軟に優先順位を組み替えるなど、臨機応変な対応行っていくことも必要だと考えています。以上

 

 2008年度に13都市、2012年に本市も含め7都市、2013年度に3都市の計23都市が、低炭素社会の実現に向け高い目標を掲げて先駆的な取組にチャレンジしている都市を「環境モデル都市」として政府が選定しています。選定された都市では、地域資源を最大限に活用し、低炭素化と持続的発展を両立する地域モデルの実現を先導する役割が期待されています。

そして、2021年6月5日に尼崎市気候非常事態行動宣言が出され、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロとする炭素社会を実現するため、日々の行動を変えていくことを宣言しています。

市長はマニュフェストで、脱炭素社会に向けて、2030年までに二酸化炭素排出量を2013年比で50%削減を達成するため食品ロスやプラスチックごみの減量に取り組もうとしています。この数値目標自体低いものであり(2010年度比で50~60%削減がのぞましい)、気候危機変動対策についてはもっと大胆な政策提言が必要だと思います。省エネ、再エネ、新しい産業を起こしていく、宝塚市などで行われている市民発電所の取り組みなど大いに参考にすべきです。

 

Q4気候変動危機、地球環境を守っていく脱炭素化社会を目指す取り組みについて、市が率先して行っていく最優先の取り組みとしてあげられるのは何ですか?

 

答弁要旨

尼崎市は、2050年の脱炭素社会の実現に向け、市民や事業者の皆さんと共に行動するため、「尼崎市気候非常事態行動宣言」を表明し、市は率先して、特に効果が大きい「省エネ対策」と「再エネ導入」について、民間の新たな技術・ビジネスモデルを取り入れ、取り組みを開始しています。

具体的には、公共施設のZEB Ready(ゼブレディ)化や、さらにZEB Readyに近づけるため、民間によるPPAモデルによる太陽光発電設備の導入などに取り組み、これらの経験、成果を広く周知し、市民、事業者の疑問や不安を解消することで、市域全体の脱炭素化につなげてまいります。以上

 

 次にコロナ対策についてです。兵庫県では、人口100万人あたりのコロナ死亡者が全国ワースト4位になっています。県政が病床削減と保健所つぶしを継続し、医療が脆弱な県にしてしまったからです。2014年の地域医療構想で病床削減を続け2020年までに急性期病床を5883床も削減。2020年からのコロナ期でも3年間で484床もの削減を行い、2025年までに10490床削減する計画を変更していません。

1997年に県は、41か所あった保健所を、現在17か所まで減らし、尼崎でも4保健所2支所が1か所となっています。尼崎には市民病院がありません。医師会の協力に頼らざるを得ず、発熱外来を受診することも、検査が受けられない、入院先がなかなか見つけられない等の逼迫した状況がうまれています。せめて、保健所は10万人に1か所、最低でも4か所にして、保健所主導で対応できる環境を整えるべきではないでしょうか。

 

Q5、コロナ禍から市民の命と健康を守る施策について、何を最優先で取り組むのか

 

答弁要旨

 

新型コロナウイルス感染症対策につきましては、本年9月26日より、高齢者等の重症化リスクの高い人へ医療的な支援を重点化させるため、国が全数把握の見直しを実施しているところであり、本市としましても市民の生命を守るためには、ハイリスク者への対応を重視した取組が最優先であると考えています。

そのため、保健師等の正規職員が重症化リスクの高い人への対応に専念できるよう、医療専門職や事務職の派遣職員を積極的に導入しているところであり、あわせて、医師会との連携による往診をはじめとした医療提供や、高齢者施設へのサーベランス事業、新型コロナワクチンの接種等を通じて、死亡率や重症化率の低下に努めているところです。

今後とも、県や医師会等の関係機関と有機的に連携しながら、臨機応変に対策を講じていきます。以上

 

 

【子育て施策】

 中学3年までの子どもの医療費の無料化は、市民の運動ともあいまって県下41市町中37市町へ前進しています、そのうち19の市町が所得制限なしです。また残念ながら尼崎は一部負担金が残され、不充分です。一刻も早く完全無料化、そして18歳までの高校卒業までの医療費無料化をめざすべきと考えます。

 

Q6、18歳までの医療費の無料化に向けて、市長は所信表明で推進する、任期中に前進させると述べられています。実現までどのようなロードマップを策定しようとしているのか、お答えください?

 

答弁要旨

 

地域でできる子育て支援の充実・子育て負担の軽減に向けた取り組みは、一丁目一番地の課題と考えており、すでに、こども医療費の無償化を推進するための、具体的な検討をはじめとする子育て支援の充実に向けた総合的な検討の指蹴ところです。財源とセットの話となり、どのような手法や手順で進められるのかも含め、今後、検討を進めてまいります。以上

 

 中学校給食は2022年から尼崎市と川西市が実施、その他の計画も含めると県内全自治体で ほぼ実現の見通しとなっています。 給食費の保護者負担は小学校が年間に43,920円 中学校が56,730円と大変重くなっています。 兵庫県では加西市が小中学校で、明石市、 たつの市が中学校で無償化を実施しています。一部補助実施を合わせると17の市町と2組合が取り組むようになっています。 更に物価高騰対応の地方創生臨時交付金を活用し、単年度でも給食費無償化を実施しているのは 八つの市町にのぼっています 。憲法、教育基本法、学校教育法で義務教育は無償と定めています 。食育として教育の一環と位置づけられる学校給食は無償であるべきです。 給食費無償化を推進するために 県に 無償化補助を 実施することを求め 、さらに市の独自の取り組みも必要だと考えます。

 

Q7、義務教育の無償化についてどう考えるのか、給食の無償化は不可欠の問題であると認識されていますか?

 

答弁要旨

 

日本国憲法第26条第2項で「義務教育は、これを無償とする。」とされており、その具体的な無償の内容については、教育基本法において「授業料を徴収しない」と定めることにより具体化されています。

ただ、現行制度においては、授業料に加え、教科書無償措置法等により教科書も無償となっていますが、これは、日本国憲法で保障する「無償」から直接的に導かれるものではなく、立法措置による無償と解されるのが通例と理解をしています。

私としても、これからの尼崎市の成長を考えたとき、可能な限り、子育て負担の軽減を図ることは望ましいものとは考えておりますが、このように、義務教育の無償の範囲は、財政状況も踏まえて現実的に定めざるを得ないものでもあり、まずは、公立学校に通っていない子どもも対象となる、こども医療費の無償化の推進に向けた具体的な検討を進めていきたいと考えています。

いずれにしましても、庁内で指示をした子育て支援の充実に向けた総合的な検討の中では、給食の費用負担の在り方も排除することなく議論をしていきたいと思います。以上

 

【教育・保育】

 市長方針である「誰一人とり残さない」子どもバージョンとして、インクルーシブ教育、医療的ケア児の保育と教育についてお聞きします。

インクルーシブ教育にふさわしい教育制度の検討――国連の「障害者権利条約」(08年5月発効)は、障害のある人が障害のない人と分け隔てなく人権を保障され、豊かに生きられる社会を実現するために、教育の分野で「インクルーシブ教育」(障害のある子どもが一般の教育制度から排除されず参加を保障される教育)を提唱しています。そのためには、子どもの「最大限の発達」と「社会への完全かつ効果的な参加」が大切にされなければなりません。

 

 本市ではすべての子どもが健やかに育つ社会の実現を目指して「尼崎市子どもの育ち条例」を策定しています。

 条例では、「子どもはその成長過程において生きる、育つ、守られる、参加する権利といった子どもの人権が尊重されるとともに、多様な人々との関わり、多様な経験を重ねることにより、自分を大切にする心、他者を尊重する心、規範意識等が育まれ、社会の一員として責任を果たせる大人へと成長していく」ことをめざしています。

 近年、医療的ケアを必要とする子ども、発達上の障害を持った子ども、また家庭的な困難を抱えている子どもが年々増えており、医療的ケアやインクルーシブ保育・教育のニーズが高まっています。医療的ケアを必要とする子もしない子も、「ともに遊び、共に学び、共に育つ」よう、インクルーシブな保育や教育をすすめていくための保健・医療・障害福祉、学校、保育分野の理解と連携が必要です。

 

Q8、医療的ケア児の受入れ、障がいを持つ子どもの受入れ、インクルーシブな保育・教育を実践していくうえでの課題はなんとお考えでしょうか?

 

答弁要旨

 

インクルーシブな保育・教育を目指す上での最大の課題は、障害の種類に応じて、きめ細やかに制度を整え、その制度に対象者を計画的に振り分けるといった制度設計から由来する考え方、そして、「合理的配慮」を巡る十分な財源保障がないことだと考えています。

簡単な問題ではありませんが、関係者の意見もよく伺いながら、共生社会の実現に向けたインクルーシブな保育・教育の充実に向けて、着実に取組を進めていきたいと考えています。以上

 

障がいがある・なしに関わらず、幼児期に集団の中で育つこと、遊びを通じて社会性、コミニュケーション能力を身につけ、小学校へとつないでいく。それが誰もとり残さない社会、尼崎で生まれ育つことへの喜びにつなげられるのではないかと思います。

全国的にも保育所(こども園)におけるバス置き去りや保育士による虐待事件等を踏まえて、保育士の適正配置の見直しと処遇改善が大きな社会の問題として提起がされています。特に1歳児6人に対し保育士1人の配置基準では子どもの安全が保障できないと思います。尼崎自治体問題研究所が、昨年より実施したアンケート結果では、実際には公立保育所では4.7:1、民間保育園では4.6:1でおこなわれています。1歳児は月齢差の発達差が大きく自己主張が出始める時期であり、いやいやが出始め、嚙みつきなど目が離せない時期、一人ひとりに丁寧な対応が求められます。だからこそ実態に合わせた1歳児の配置基準の改善が必要です。保育士からは「せめて保育士あと一人ほしい」という切実な声があります。

保育団体が行った保護者向けアンケートでも「保育士さんが忙しすぎで子どもが怪我したことに気づかない。子どもの状況を聞きたくても保育士さんに声をかけにくい、保育士に余裕がないと、良い保育はできないと思う」等、保護者からも保育所に望むことの一番に上がっています。

2011年地方分権一括法による児童福祉法の一部改正によって、保育士の配置基準は県・政令市・中核市の条例で定めることになりました。本市も中核市として独自基準を作ることは可能です。

 

Q9、国に対して保育士の配置基準の改善を求めるとともに、本市自ら配置基準を改正して、民間保育園と小規模保育事業所に対し市独自の補助を創設することを求めますが、市長の見解をお示しください。

 

答弁要旨

 

保育士配置基準の見直しについては、去る11月17日、全国市長会を通じて国への要望を行ってきております。

一方、市内保育事業者からは、保育士が不足し確保に苦労しているとの声も寄せられていることから、市としてもこれまで保育士の確保・定着につながる各種施策の充実等を進めてまいりました。

もし国基準を上回る配置基準を設定した場合、待機児童を多く抱える本市においては、一層の保育士不足を招き、これまで以上に保育ニーズに応えられなくなるといった課題が生じることから、現状において、市独自の配置基準の見直しや補助金の創設は困難ではありますが、いずれにしましても、今後の国の動向を注視するとともに、保育士の負担軽減に係る現実的で持続可能な制度の構築に努めてまいります。以上

 

公立幼稚園の3歳児受け入れの問題でも、2019年から3歳児からの就学前教育の無償化が始りました。

本市での公立幼稚園における児童数は、定員1325人に対し実際は420人であり3分の1にも満たしていません。この少ない原因は3歳児を受け入れていないからです。私立幼稚園では障害児の受け入れが行われておらず、障害を持っている3歳児は幼稚園による就学前教育が受けられないことになります。

 

Q10、公立幼稚園の3歳児受け入れについて、市長の見解をお示しください。

 

答弁要旨

 

市立幼稚園においては、少子化の影響や就労と子育てを両立する家庭の増加等に伴う保育需要の増加等により、園児数が大幅に減少する一方で、特別な支援が必要な子どもの入園割合が増加傾向にある中、特別支援教育のあり方についても検討が必要な状況にあります。

そのため、現在、就学前教育施設に共通する教育内容の充実策や官民幼保の連携方法、更には、今後の市立幼稚園に求められる機能・役割の再整理や少子化を見据えた効果・効率的な運営体制等について、その方向性や取組等を示す「尼崎市就学前教育ビジョン(素案)」の策定作業を進めており、その中で、市立幼稚園における3年保育の実施や特別な支援が必要な子どもの受入の拡充についても、検討の対象としているところです。

3年保育につきましては、幼児の発達の面からも好ましいものと考えておりますが、その実施にあたっては、適正な職員配置や財源の確保の課題とともに3年保育を既に実施されている私立幼稚園連合会等のご理解を得る必要もあります。

そのため、今後は、市立幼稚園の在り方や、特別な支援が必要な子どもの就学前教育の在り方などについて検討していくヰ1で、3年保育についても、関係者のご意見も丁寧に伺いながら検討を行ってまいります。以上

 

 

第2登壇

以下、私が教育問題で特に関心が高い問題について質問をします。

 

ICT教育は諸刃の剣となっており、タブレットの長時間使用は健康を損なう、まだ知られざる健康被害が発生するかもしれないという問題を抱えています。また教師との対面授業や生徒同士の集団による学習などに、どのように活用していくのか、まだまだ課題がたくさんあると思います。特に私が危惧するのは、授業がパッケージ化され機械的に一律に授業が提供されるということになると、教師との人間的なふれあいによる教育が軽視されるのではないかという問題です。

 

11、ICT教育について市長が考える、メリットとデメリット、今後の展開についてお示しください?

 

答弁要旨

教育におけるICT活用は、ICTの特性とそれぞれの授業目的の理解が不可欠と考えています。

ICTの特性の例としては、例えば、プロジェクター等を通じて「瞬時に共有できること」など限られた授業時間の中で、教師が子どもの意見を把握するためには、従来では、いわゆる「机間巡視」をしたり、子どもを指名して発表させたりすることが通例でしたが、ICTを活用すると、クラス全員がどのような作業をしているかを瞬時に把握し、それを踏まえた授業展開が可能となります。また、子ども同士も、クラスメートの様々な考え方の比較をすることも可能となります。

こういった多様な意見を瞬時に集約したり比較したりできることにより、一方的な教え込みの授業ではなく、子ども同士が協働で学習したりする環境がより強化されると考えています。

一方で、課題については、視力への影響、セキュリティ、費用などが考えられます。

いずれにしましても、ICTを活用した教育は万能ではなく、ICTの特性を理解しながら、どういった場面で使うことが効果的か、教員自身が考えることが大事であり、教育委員会や学校においては、そうしたICTを活用した授業研究が進むことを期待しています。以上

 

日本共産党はいじめ問題について、今から10年前の2012年に、提言を発表しています。10年前の共産党の提案であることが味噌です。10年経ってもこの提言で述べられていることは色褪せていません。多少社会は少しだけいい方向に向かっていると思いたいのですが。提言を紹介します。

 今日の「いじめ」は人間関係を利用しながら相手に恥辱や恐怖を与え、思い通りに支配しようとするもので、ときに子どもを死ぬまでおいつめる事件に発展し、ネットによる中傷、傷害、性暴力、恐喝などの犯罪ともつながっています。多くの「いじめ」被害者は、その後の人生を変えてしまうような心の傷を受け、大人になっても恐怖で社会に出られないなど後遺症に苦しんでいます。「いじめ」はいかなる形をとろうとも人権侵害であり、暴力です。

 そしていじめ根絶のために、様々な提案を行なっています。ここではどのようなことを提案しているのか。主な項目だけを紹介させていただきます。

 提案の第1は、「いじめ」から子どもの命を守る――「いじめ」対応の基本原則の確立です。
■「いじめ」への対応を後まわしにしない――子どもの命最優先の原則(安全配慮義務)を明確にする

■「いじめ」の解決はみんなの力で――ささいなことに見えても様子見せず、全教職員、全保護者に知らせる

■被害者の安全を確保し、加害者には「いじめ」をやめるまでしっかり対応する

■被害者、遺族の知る権利の尊重

■「いじめ」の解決にとりくむための条件整備をすすめる

教員の「多忙化」の解消、35人学級の完成、養護教諭・カウンセラーの増員、「いじめ」問題の研修――「いじめ防止センター」(仮称)の設立

提案の第2は、子どもたちに過度のストレスを与えている教育と社会を変えることです。

【競争と管理の教育と子どもたち】

 国内の調査では、子どものストレスの最大の因子は「勉強」です。競争教育の勉強は子どもを早くから「できる子」「できない子」により分け、多くの子どもが劣等感を与えられ、「わかる喜び」やみんなで学ぶ心地よさを得ることができません。この間の「学力向上」政策でテストばかり繰り返したり、夏休みを減らしてまで授業時間を伸ばすなども、子どもに強いストレスを与えています。

 

【「いじめ社会」と子どもたち】

 社会の変化に目をむければ、90年代後半からの「構造改革」により、国民のなかに「貧困と格差」が急速に広がったことは重大な問題です。

 競争原理が労働や社会の各分野に浸透し、人間的な連帯が弱まり、弱い立場の人々を攻撃する風潮が強まりました。弱肉強食の社会を正当化するため、競争に負ける方が悪いという「自己責任論」の考え方もひろがっています。文化のなかでは、タレントをイジったり困らせたりして笑いをとる、嘲笑的で暴力的な要素が組み込まれるようになりました。

 こうして社会自体が「いじめ社会」とも言うべき傾向をつよめているのではないでしょうか。子どもの「いじめ」の深刻化は、その反映に他なりません。

 

子どもたちが人と人との間で生きる喜びを感じられる教育と社会を築くために、私たちは以下の三つのことを提案しています。

第1に、子どもの声に耳をかたむけ、子どもの社会参加を保障することが大切です。世界では、子どもの権利条約の精神にそって生徒が学校運営に参加するなど、子どもの社会参加が大きな流れになっています。耳をかたむけられ、参加を保障された子どもたちは、自己肯定感情を深め、人と人との間で生きる喜びを感じながら成長できます。こうした教育や社会は、大人どうしの人間関係も豊かで平和なものにするのではないでしょうか。

第2に、日本の競争的な教育制度は、憲法の精神に反して、財界の要求で1960年代頃からつくられ、自民党政治により強められてきました。それは高校受験の存在、一点差できまる個別の大学入試など他国に例がなく、子どもたちの創造性や思考力を歪め、世界では通用しないものになりつつあります。国連・子どもの権利委員会も日本政府に再三、「過度に競争的な教育制度」の改善を勧告しています。過度な競争教育から脱却し、すべての子どもたちの能力を豊かにのばす教育と学校制度のあり方を探求する、国民的な議論ととりくみをよびかけます。

第3に「いじめ社会」に立ち向かい、人間的な連帯のある社会に

 東日本大震災はあらためて助け合い連帯することにこそ、人間らしさがあることを示しました。人間の尊厳を踏みにじる政治や経済社会にたいする国民の批判は、「原発なくそう」「ストップ貧困」など様々な運動や新しい政治を模索する動きとしてあらわれています。そうした大人たちの姿をみて、子どもたちは明日に希望をつなぎます。

 子どものことを学校、地域、社会の各分野で語り合い、「いじめ」のない学校と社会をつくための共同をひろげることを心からよびかけます。と提言は結んでいます。

 以上のことと関連して、教育問題で3つのことをお聞きします。

 

12、いじめの問題が発生した時に、社会がその問題を共有するまでに時間がかかりすぎているという認識はありませんか?対策を行っている間に問題が広がったり、その事案に関わる人だけが対応して、周りには事後の検証結果だけが伝えられるという状況になっているという問題を抱えていると思うのですが、市長はこうした問題をどう捉えていますか?

 

答弁要旨

 

いじめの問題は、当事者が私人であり、また、事案発生の経緯等も決して単純でない場合が多かったり、家庭環境が複雑であったりする場合も多く、早い段階で共有することばかりが望ましいわけではないものと認識しています。

また、いじめ事案が社会的に共有される場合は、当事者の同意が得られていることが前提になります。

こういった教育委員会の事情については、私自身も一定の理解をしておりますが、一方で、例えば、保護者や当事者の意向を盾に、本来、社会的に共有すべき事案や、当該事案に対する教育委員会や学校の対応までもがブラックボックスになってしまうことは、その後の適切ないじめの防止や事後対応の改善等の観点からも望ましいものとは考えておりません。議会の皆様への説明も含め、学校や教育委員会等の

対応については、いじめの当事者のプライバシーに配慮しつつ、可能な限り透明性を持って、速やかにご説明できるよう、教育委員会と連携してまいります。以上

 

13、帯学習などが10分間とはいえ、日に2回も行っていることによって、子どもの遊びの時間が奪われているのではないか。学力至上主義が教育のあるべき姿を壊しているという見方、または子どもの全面的な発達と人間の成長を手助けする教育を取り戻していくという考えについて、どう思われていますか?

 

答弁要旨

 

公教育は、一人ひとりが、自律した生活を送ることができるようになること、その結果、持続可能な社会の担い手となることを期して行われなければならないものと考えています。

このような視点に立ったとき、教育において大切なことは、決して一面的ではなく、物事を考えたり、判断したりするための基礎的な学力(知識・技能)も当然大切でありますが、例えば、他者を尊重したり、自然を愛したりできるようにする教育も大切であり、特定の側面のみにこだわりすぎないようにしていくことが大切であると考えています。

 

14、あまっこステップアップ調査事業が行われていますが、子どもたちの学力のつまずきを発見するために、悉皆調査が必要なのでしょうか?子ども個々人のつまずきを把握したとしても、そこを改善していくための取り組みは今の教育体制の下では、一人ひとりに寄り添う時間的余裕もなく、すぐに学年も変わることから、不可能であることを、現場の教職員自身が認めています。見直しを検討すべきではありませんか?

 

答弁要旨

 

「あまっ子ステップアップ調査」の目的は、教育活動に関する継続的な検証改善サイクルを確立することにあり、調査結果に基づくフィードバックにつきましては、個に応じた指導の充実を迅速かつ継続的に図っていく必要があると考えています。

この調査を毎年悉皆で行うことによって、児童生徒一人ひとりの学力やつまずき等を早期に発見することができ、また、学力の定着が図られていない層に改善が見られるなど一定の成果が上がっていることから、引き続き、継続実施すべきものと考えています。

なお、当該調査の更なる運用・改善については、引き続き、教育委員会と連携して模索してまいります。

以上

 

【学童保育・児童ホーム】

 尼崎における学童保育、児童ホームの制度は発足当初、公設・公営・利用者の費用負担なしの無料の制度でした。しかも施設のほとんど全てが学校内に設置されるといった、全国的にも非常に優れた制度として注目を集めてきました。運営についても、指導員と保護者が連携、毎日のおやつの手配や、運動会、ドッジボール大会、スキー教室などにも参加、行事に積極的にかかわることで、子どもを育てていく喜びを共有して、良好な関係が築かれてきていました。

しかし近年保護者の児童ホームへの関わり方も大きく変わってきており、また従来から課題となっている待機児童問題、教室のすし詰め状態、延長保育、指導員の処遇改善、早期の解決策が求められている課題が山積しています。

 

Q15、延長保育を19時まで、1か所40人定員の国基準にしていくこと、職員の処遇改善についてどう考えるのか?

 

答弁要旨

 

私も教育長時代児童ホームの利用者でしたが、仕事で(?)帰宅が遅くなる時は(?)も併用するなど、苦労したこともございました。19時までの延長保育については、市民からも要望が多い中、整理すべき課題も多々ありますが、できるだけ早期に実施できるよう取り組みたいと考えています。

次に、定員につきましては、厚生労働省令で各自治体の状況に応じて条例で定めるとされています。

本市では待機児童が発生している現状もあり、既存施設については当分の間、60人としている施設もありますが、待機児童の解消を進め、児童にとって良好な環境の確保に努めてまいります。

職員の処遇改善につきましては、本年2月に国の方針に基づき、保育士や児童ホームの指導員等の処遇改善がなされたところであり、本市としても、全国市長会を通じ、国に対し更なる処遇改善を要望してまいります。以上

 

【ジェンダー平等】

会計年度任用職員の処遇改善について

 全国自治体労働者連合組合では、全国の自治体で働く約62万人の会計年度任用職員を対象とする「今だから聴きたい!誇りと怒りの2022年アンケート」に取り組み、オンライン回答率57%の結果をまとめました。会計年度任用職員の約8割が女性であり、その4分の1が「主な家計維持者」と答え、そのうち4分の3が年収250万円未満、そして2分の1が世帯年収で200万円未満の「官製ワーキングプアの世帯」であることがわかりました。会計年度任用職員制度の低すぎる処遇が、ワーキングプア世帯を生み出しています。ジェンダー平等の視点からも、行政として速やかに実効性のある処遇改善が求められます。

 尼崎市は国の制度をそのまま引き継いでおり、会計年度任用職員の8割が女性、平均年収は260万円、期末手当はありますがそこには勤勉手当はありません。ジェンダー平等の観点から本市の会計年度職員の処遇改善を行い、女性職員のやりがいと自治体職員である誇りを持ち続けながら仕事を継続できる道筋を作ってほしいと思います。

 また女性幹部職員の登用についてです。市長の公約には「女性幹部の登用などダイバーシティーマネジメントを推進します」とあります。2021年兵庫男女共同参画についての調べでは、阪神間の女性管理職の占める割合は、あしや35.2%、伊丹27.2%、尼崎12.4%で、阪神間都市で最も低いのが尼崎市でした女性幹部の登用を積極的に実現するべきです。

 

Q16、自治体から会計年度任用職員の官製ワーキングプアを生み出さない処遇改善について、市長の見解を求めます。また今後、女性幹部職員の登用をどのようにすすめますか?

 

答弁要旨

 

本市の会計年度任用職員につきましては、令和2年度に現在の会計年度任用職員制度を導入した際には、初任給再算定による実質的昇給等の仕組みを導入し、また、今般の給与改定に当たっては、勤勉手当の引上げも踏まえた改定を実施するなど、一定の処遇改善が図られたところです。

引き続き国や他都市の動向を踏まえながら、会計年度任用職員の処遇改善について検討したいと考えています。

また、女性幹部職員の登用につきましては、今後、定期昇格に係る育児休業による除算期間の見直しやテレワークの活用、国が実施するキャリアアップ研修の受講促進等、女性職員が自らのキャリアをデザインし、能力を発揮できるような環境づくり、そして男性職員側の意識改革にも努めながら、管理職割合を着実に増やしつつ、幹部職員の登用についても積極的に検討をしてまいります。以上

 

 

【自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)】

 

 自治体のデジタル化を進める、自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)が、今から3年後の2025年より実施とされています。

  2021年5月、当時の菅政権のもとでデジタル関連法が国会で成立しました。関連法には6つの法律があります。①デジタル社会形成基本法②デジタル庁設置法③デジタル社会形成整備法④公的給付支給預貯金口座登録法⑤預貯金口座マイナンバー管理法⑥自治体情報システム標準化法等です。日本共産党は、プライバシー侵害、地方自治の侵害、国民生活への影響、そして官民癒着の問題があるとの理由から、これらの法律全てに反対しました。

 第1の問題は、デジタル技術は、誰が、何の目的でどのように使うのかということです。

・デジタル技術は人類が生み出した最新の技術であり、実際においてもこの技術を有効に活用して、住民の福祉の増進と自治体職員の労働条件の改善を図ることが必要です。

・しかし技術は未完成でセキュリティーは万全ではありません。使い方によって住民に重大な被害をもたらしかねないという問題を抱えています。

第2の問題は、政府がすすめるデジタル化戦略で住民の暮らし、地域は良くなるのかということです。国が進めてきた構造改革によって、非正規雇用の拡大、社会保障の削減と負担増、大企業減税、消費税増税、賃金の地域間格差・貧困と格差の拡大等が生まれています。国の「行政改革」によって〜住民サービス削減、市町村広域合併、三位一体改革、自治体職員削減、民営化などがすすみました。

 政府の「デジタル田園都市国家構想」で、「人口減少、人材不足の問題が解消し、住民の利便性向上と行政の効率化が実現する」、「日本の新たな経済成長が実現できる」、「東京一極集中を是正できる」、「誰1人取り残さない、人に優しい社会になる」等とあり、デジタル化さえ進めれば、地域の未来はバラ色となるような記述があります。本当にそうでしょうか?

そうであるなら、暮らし、地域を疲弊させてきた最大の原因である「構造改革」路線は転換されなければなりません。しかし、政府の狙いは転換どころか、デジタル化で新たな「構造改革」を進める方向となっています。そのことによって、今後は新たに、国の「規制改革」によって〜大企業の利益拡大を目的に国民の安全・権利を守る規制を緩和・撤廃されるのではないかとの恐れが出てきています。

その根拠となるものとして、3つのことがあげられます。

一つは、岸田内閣は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(2021年12月閣議決定)で、構造改革のための基本原則」を定めています。

二つ目に、「自治体戦略2040構想」(2018年総務省研究会報告)では、・AIなどを活用した「従来の半分の職員でも、自治体が本来担うべき機能を発揮できる仕組みが必要」と、自治体職員の大幅な削減が狙われています。

自治体は、公共サービスを提供するサービスプロバイダー(サービス提供者)から公共サービスを管理するプラットフォーム(行政の施策を実施するための基盤)ビルダーに転換する。市町村の行政サービスを圏域に統合・一元化するなどとしており、これは単なる自治体連携にとどまらず、将来的には新たな市町村合併をもたらすことにつながりかねません。

三つ目に総務省「自治体DX推進計画」(2021年)の意義・目的では、「多様な主体との連携により、民間のデジタル・ビジネスなど新たな価値創造等が創出される」とありますが、実際のところは、デジタルで国民の情報を集積・活用し、大企業の新たな利益拡大と権力による国民監視を行うということになります。

そして、自治体業務の集約化、民営化、中央集権化で、地方自治体を財界・政府に奉仕する機関に変質させる、新たな構造改革が実行されるということになってしまいます

 

Q17、2025年度から実施予定の自治体デジタルトランスフォーメーション(D X)について、市長はどうとらえているのか、見解をお示しください?

 

答弁要旨

 

自治体デジタルトランスフォーメーション(DX)推進計画などの国のデジタル化構想は、生活者の利便性の向上や行政運営の効率化を目指すものであり、ご指摘のような市民の皆さまの情報の集積や国民監視を目的としておらず、個人情報等の漏えいがないようセキュリティ対策を講じることで、さらにその効果を高めるものであると認識しています。

ただし、リスクを完全にゼロにすることは難しいことから、許容できるリスクについての丁寧な合意形成プロセスや、そのリスクを上回る利便性、政策的合理性の確保が合わせて求められるものと認識しています。

本市におきましては、このような認識のもと、行政手続等デジタル化推進計画に基づき、市民サービスの向上に努めてまいります。以上

 

 

【国民健康保険料・介護保険】

日本の健康保険制度は、全ての国民が何らかの健康保険に加入し、必要な医療が保険の範囲で受けられる国民皆保険となっており、国際的にも優れた制度と評価を受けています。その中で、国民健康保険は他の健康保険や後期高齢者医療に加入していない人全てを対象とし、国民皆保険を下支えするものとなっています。また、国民健康保険法第1条で、「国民健康保険事業の健全な運営を確保しもって社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」と示されているように、明確な社会保障の一制度です。

2018年から都道府県単位化が実施され、財政運営の主体は都道府県になったものの、市町村はこれまでどおり地域住民と身近な関係の中、被保険者の実情を把握した上できめ細かい事業を行うこととされています。

尼崎市の国民健康保険は、現在加入者が61,388世帯87,913人 人口比率19.3%です。保険料は、所得割の他に家族員の数による均等割り、世帯ごとの平等割が加算されるため、協会健保の同程度の所得・家族構成と比べて2倍近い高負担となっています。ちなみに尼崎では、均等割がひとり3、9万円、平等割が1世帯あたり2.6万円となっています。

また、加入者は個人事業者や無職、74歳までの定年退職者とその家族であるため、時々の社会情勢に左右されやすい低所得者が多くを占め、保険料の滞納が大きな問題になっています。滞納が解消されず市の指導に応えない状況が続けば、健康保険証は発行されません。いのちと暮らしを守る社会保障制度なのに、医療を受けにくくさせる制裁があることは、制度の大きな矛盾です。滞納世帯は8,809世帯、全体の14.3%にあたります。

国民健康保険への国庫負担は、1984年をピークにどんどん削減されてきました。それにつれて加入者個人が払う保険料の負担は重くなってきました。滞納問題を解決し国民健康保険財政の安定運営には、保険料の引き下げが不可欠です。

日本共産党はいのちと暮らしを守るために、保険料の引き下げを求め続けてきました。具体的には均等割と平等割をなくすこと、そのために国全体で必要な財源は約1兆円となります。また、国が実施するまでは、市として一般財源からの繰り入れを行って、保険料の引き下げに努力することを求めています。

 

Q18、市長は国民健康保険について、社会保障の1制度だという見解はお持ちでしょうか。大きな問題となっている滞納について、解決の方向はどのように考えておられますか。

 

答弁要旨

 

国民健康保険制度は、わが国の社会保障制度の一部であり、年金保険や介護保険と同じく、相互扶助の精

神に基づく社会保険として、国、県及び保険者としての市町村の責任のもとで運営されていると認識しています。

一方、保険料の滞納につきましては、国民健康保険は制度の構造上、年齢構成が高いことにより医療費水

準が高く、退職者や年金生活者といった低所得の加入者が多いため、所得に占める保険料の負担が重くなることが、要因のひとつであることから、今後とも本市として出来る限りの対策を講じるとともに、被保険者の皆さまへの丁寧な説明を行う中で、個々の事情にも配慮しつつ、解決に向けて取り組んでいきます。以上

 

 

 次に介護保険制度についてです。今、国では、2024年度からの介護保険制度改正に向けた作業が進んでいます。報道によれば、少子高齢化が加速する下で制度の持続可能性を保つためには、負担の増かサービスの縮小が問われているとのことです。具体的な論点は、①介護保険サービスの利用料について2~3割負担の対象を拡大 ②要介護1・2の保険給付外し ③ケアプランの有料化④老健施設などの相部屋の有料化 ⑤補足給付の資産要件に不動産を追加 ⑥高所得者の保険料引き上げ です。

 いずれにしても介護保険料はほとんどの人が年金や給料から、自動的に天引きされ、かつ改定のたびに引きあがっているのに、サービスを利用する際には負担がさらに重くなり、サービス内容についても制限がかかってきます。これではサービスを控えざるを得なくなって、介護離職や介護をめぐる不幸な事件が増えると懸念します。ケアプランの有料化はケアマネージャーの相談機能にも壁を作り、市民と介護保険制度の距離が生じてくると思います。

 

Q19、市長は次期介護保険制度改正の方向について、市民生活への影響についてどのよう捉えているのか見解をお示しください。

 

答弁要旨

 

超高齢化が進展する中、介護事業費全体の増加に伴う介護保険料の上昇と財政の圧迫、また、介護人材の不足が大きな問題となり、高齢者人口がピークを迎える2040年頃を見据えると、制度の持続可能性を確保していくことが大きな課題であると認識しています。

現在、国において、次期介護保険制度改正に向け、議員のご指摘のあった「給付と負担について」の見直しに関する議論を行っていますが、これまで、全国市長会を通じて、国に対し、将来にわたって都市自治体の財政負担や被保険者の保険料負担が過重とならないよう、国費負担割合の引き上げ要望を行ってきたと説明を受けています。

そのため、現時点で、その市民生活への影響について見解を申し上げることはできませんが、引き続き、市民生活に大きな影響のある見直しが行われることがないよう、必要な事項について(適時、必要な要望等を行ってまいります。以上

 

【経済・中小企業零細事業対策・支援策】

尼崎市は製造業者の街、商売人の街として長年栄えてきましたが、大店立地法の施行、消費税の相次ぐ増税、長引く不況と後継者不足などで、年々衰退してきました。

政府の中小業者つぶしとも言うべき無為無策により、日本全国の街並みは地域の特色が薄れ、どの駅に降りても金太郎飴のごとく大型チェーン店、パチンコ、サラ金の店舗が林立しています。

先般、NHKの夜ドラマ「あなたのブツがここに」などで、尼崎の街、商店街がロケ地になり、そのレトロな雰囲気が人々の郷愁を誘い、注目されています。しかし、商店街のシャッター通りとなった光景は、地域の衰退を最も如実に表しているものであり、看過することはできません。

 

Q20、尼崎の特色を生かしながら、地域の市場・商店街の再興、発展のために、行政が抜本的な施策を打ち出していくべきだと思いますが、市長の考えをお聞かせください。

 

答弁要旨

私自身も市内各地の現状を見て回る中で、シャッター通りとなっている市場・商店街も数多く、防犯やまちづくりの観点からも、市場・商店街の再興、発展への支援は、対応すべき大きな課題であると、強く認識しています。

商店街や市場には、それぞれの課題があると思いますので、商店街や市場の方々の声も伺いながら、ニーズに応じた適切な支援策の紹介など、伴走型での支援を一層進めてまいります。

一方で、空き店舗率が高いなどにより、再生が困難な市場・商店街は、共同設備の撤去経費への補助など、安全・安心なまちづくりに向けた支援なども、引き続き行ってまいります。

今後におきましても、市場・商店街における、にぎわいの創出や魅力づくりを促進するための支援を積極的に実施し、再興、発展に向けた取り組みを進めてまいります。以上

 

また、製造業をはじめ、地域の中小企業、小規模零細事業者の方々は、かつてない円安、ウクライナ侵略による原材料・資源高の影響で、未曽有の物価高騰に苦しめられています。来年10月からは1000万円以下の消費税免税事業者に、課税業者になるか、さもなければ取引きを打ち切られ、廃業に追い込まれるか、の選択を強いる「消費税インボイス制度」が予定されています。そもそも消費税が導入された1989年、当時の竹下内閣は、小規模零細事業者はその資本力の小ささ故に、消費税分を販売価格に転嫁できず、煩雑な事務をすることが困難であることなどから、年間売上3000万円以下(現在は1000万円以下です)の事業者に消費税の申告を免除する、免税点を設けました。

その逆進性の高い間接税である消費税によって、中小業者は当時よりさらに苦しめられているのが現状です。

 

Q21、市が、これら国の悪政の防波堤となり、また、持続可能な地域経済をつくっていくためにも、これまでの延長線上でない、コロナ禍における一時的でもない、地域の中小業者のための戦略的かつ早急な支援策、対策が必要だと思いますが、市長の考えをお聞かせください。

 

答弁要旨

 

本市の事業者支援につきましては、国・県の制度と連携する中で、めまぐるしく変化する経済環境に対応すべく、事業者の持続力向上を目指し、地域の中小事業者への効果的かつ効率的な支援を行うこととしています。

こうした考え方を基本とし、今後とも中長期の視点を持ちつつ、中示事業者の操業継続や発展を支えることを大きな目的として掲げ、時宜に合った対策を戦略的に実施していきたいと考えています。以上

 

【アウトソーシング・民営化】

 

指定管理、または民間移管してのち、市民サービスの低下が危惧されるものとして、取り上げるのが、尼崎市社会福祉事業団の事業です。

尼崎市社会福祉事業団は1984年市が設置した社会福祉施設について専門的な施設運営体制を確立し得る方法として、市の外郭団体として設立されました。2006年からは、03年に市が導入した指定管理者制度の下、児童養護施設・母子生活支援施設・身体障害者デイサービスセンター・児童発達支援センター・医療型児童発達支援センター・養護老人ホームの管理運営を担ってきました。09年には、母子生活支援施設と養護老人ホームについて市から施設移管を受けています。

 民間委託から今年で38年、2021年度事業団事業報告で人材確保が大きな課題であることが明らかになっています。①これまで30歳から50歳までの中間層で離職者が増え、新卒などでその補充を行ってきたことから、経験年数の浅い職員の割合が高くなった ②係長・課長級の職員のほとんどが後7~8年先に定年退職となり、このままでは後継者がいなくなる ということです。背景には、賃金や処遇等で兵庫県下中から少し下の水準にとどまっていることが上げられると思います。

 公共サービスの民営化は経費節減と効率化が目的とされてきました。施設の物的経費は運営形態によってそれほど変わらず、経費節減は人的経費に集中します。社会福祉事業団としては、所属ごとの職員数や専門職種・資格者の必要数などを示して尼崎市に指定管理料の増を求めているものの、なかなか前に進まないとのことです。社会福祉事業団の担っている業務は、公的責任の下で行うものばかりです。人件費が抑圧されれば人材確保はままならず、それは市民サービスの低下に直結します。

 

 ここに民営化の弊害が端的に現れていると思います。

議員団は,本来市職員が行わなければならない業務について,アウトソーシング,民間移管・委託することについて,議会で一貫して反対してきました。またこれまでの保育所の民間移管,市民課窓口の民間委託,下水道事業等の業務委託等についても,定期的に検証を行い,必要があれば見直しを行うべきだと主張してきました。その理由は,このまま民営化が進めば公務労働を担うベテランの職員,職務に精通しているスペシャリストがいなくなり,災害等の際の危機管理に対応することも、市民のニーズに積極的に応えることもできなくなる,ひいては市民サービスの低下をもたらすことになると指摘してきました。また守秘義務を有する公務員だからこそ,市民のプライバシーが守られ,安全を確保することができると訴えてきました。やみくもな民営化の流れは,情報漏洩を引き起こし,市民の安全性を担保することはできないと警鐘をならしてきました。

 

Q22、市長に伺います。今、例示したものに限らず民営化そのものの見直しを求めますが、いかがでしょうか

 

答弁要旨

 

私としては、アウトソーシングそのものについて否定するものではありませんが、業務の性質ごとにその効果をしっかりと見極めながら、丁寧なプロセスを経て、アウトソースの判断をしていくことが重要と考えています。

ご指摘のとおり、アウトソーシングには、本市職員のノウハウの喪失に加え、サービスの質、災害時の対応、個人情報の取扱いなどの課題があると認識していることから、コンサルティング事業者の知見も活用しながら、現在、評価検証に取り組んでいるところであり、必要に応じて改善等を行うことで、引き続き、適法・適正かつ効率的・効果的な行政運営に努めてまいります。以上

 

第3登壇 

 

ここでは今後の市政のあり方について、私たち日本共産党の基本的な考え方とともに、要望について述べさせていただきます。

まずは国の戦争する国づくりについてです。 政府は16日、「国家安全保障戦略」など安保3文書を閣議決定しました。歴代政権が違憲としてきた敵基地攻撃能力(「反撃能力」)の保有を明記。日本が攻撃されていないもとでも、米国からの要請があれば「存立危機事態」(集団的自衛権の行使)での敵基地攻撃も可能とし、「日米が協力して対処していく」(国家安保戦略)と盛り込みました。敵基地攻撃を実行するため、米国製の長距離巡航ミサイル・トマホークなど大量のミサイル配備計画も明記。戦後安保政策の根幹である「専守防衛」を国民的議論もなく放棄する安保3文書の具体化を許さない世論と運動が急務となっています。日本共産党は、100年間反戦平和を貫いた党として、閣議決定の撤回を求めるものです。平和でなければ市民の暮らしを守ることはできません。ともに声をあげていこうではありませんか。

次のステージとのかかわりの問題では、過去の財政問題をどう総括するかということが問われていると思います。

 共産党議員団は、過去の身の丈を上回る大型開発によって借金が膨らんだことに、真摯に向かい合い反省をすべきだと主張してきました。次の議会で尼崎市財政運営基本条例案が提案されるようです。この条例案の制定背景で、説明されている点、「すでに着手済みであった駅前等の大規模開発事業の継続実施や、土地開発公社の経営健全化に取り組む必要が生じたことなどから、本市は多額の負債を抱えることとなり、利子を含めた多額の公債費負担が生じたことで、硬直化した厳しい財政状況が続くこととなった。」と述べ、そして「本市がこれまでに経験した財政的な危機を将来にわたって二度と招くことのないよう、過去の教訓を充分に生かして行くことで健全な財政運営を維持し市民の福祉の増進を図っていくため尼崎市財政運営基本条例を制定する」としています。大型開発の予算に一貫して反対してきた議員団の考えがおよそ30年を経てようやく共通認識となったことは感慨深いものがあります。

 

地域経済への支援策

日本共産党はこれまで「住宅店舗リフォーム制度」や「小規模修繕工事希望者登録制度」など、地域の事業者が潤う施策実現を要望してきました。

「地域内循環型の経済社会」の構築こそ地域経済の発展にとって大事であり、やみくもなグローバリゼーションの押しつけは、大企業、とりわけ多国籍大企業やIT産業だけを利するだけです。

地方自治体の役割として、格差と貧困を拡大する大企業優位の経済から地域内循環型の経済に抜本的に転換するよう、強く要望いたします。

 

民営化の見直しについてです

民営化路線を改めるべきです。

自治体の民営化路線を避けられない既定路線と考えるのか、それが本当に市民サービスにプラスになっているのか、質の高いサービスが提供でき、働き手が安心して就労できるものになっているのか、民間移管、民間委託、指定業者制度等、全面的な見直しが必要となってきていると思います。今後とも大いに議論して行きたいと思います。

 

最後に、国の政策を無批判に推進、行財政改革で借金を減らすことを、最優先で取り組んできた市政を、今後は、市民の福祉・暮らしを最優先で守る市政に転換していくためにともに力を尽くしていきたいと思います。                         

 

以上で日本共産党議員団の代表質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。