2022.10月議会 決算委員会 山本議員の2021年度決算に対する意見表明

日本共産党尼崎市議団  2021年度決算に対する意見表明

 日本共産党議員団を代表し、本委員会に付託されました2021年度決算等について意見表明を行います。

 

 2021年度決算は、「主要基金残高は着実に増加傾向」として、財政調整基金、減債基金、公共施設整備保全基金の主要3基金の残高は304億円。対前年度比で18億円増えました。西宮市をはじめ、類似中核市との基金残高と比較して減債基金の比率が多いとはいえ、財政調整基金残高は115億円と、100億の大台を超えています。

 将来世代への負担は2123億円。対前年度比で147億円減りました。プロジェクトの財政改善の目標の1つである目標管理対象将来負担1100億円以下についても、近年中に達成を見込めるとしています。

 これらの改善は、行財政の効率化などによるものが多く、また、市民サービスの切り捨てが長年にわたって行われてきたことが大きな要因です。

バブル時代の負の遺産である市の借金を着実に減らし、市財政再建の道筋に一定の目途がついたということです。であるならば、今後は市民サービスの充実と財政健全化のバランスを保ちながら、行政の運営に努めていくことが必要ではないでしょうか。

長引くコロナ禍で先が見通せない中、またかつてない円安、原材料・食料高騰で市民生活が不安定な状況に陥っている時だからこそ、市民のいのち、くらしを守る行政運営と機動的な財政出動が求められています。

 

それでは、2021年度決算の個別の課題について述べてまいります。

 

・新型コロナ対策について

  コロナ禍も3年がたとうとしていますが、依然として市民のくらしと生業に引き続き暗い影を落としています。

 第6波、第7波とオミクロン株をはじめ、変異種の蔓延でかつてない感染拡大と死亡者を出しています。医療機関はパンク状態で発熱外来に多くの市民が殺到し、現場の医師、看護師、事務員をはじめとした医療従事者の方たちに、多くの負担がのしかかっています。

 このように、いわゆる新自由主義的政策、大企業と富裕層の利潤を最大限に追求する一方、雇用を不安定にし、社会保障を切り捨て、医療、福祉、介護といった国民のいのちと健康にかかわる、最も大事な分野を削りに削ってきたこの新自由主義の弊害が、新型コロナ禍によって顕在化しました。にもかかわらず政府はこれを是正するどころか、逆に「地域医療構想」の名で公立病院の統廃合をすすめる、それによって、さらなる病床削減をすすめようとしています。許しがたいことと言わなければなりません。

病床だけではありません。地域の保健所も減らされ続けてきました。尼崎市でも、かつて6か所あった保健所が今では保健所1カ所、南北の保健福祉センターに縮小され、結果、コロナ禍で保健所はひっ迫し、保健師や保健所職員では対応しきれず、緊急的に庁内の職員が応援に入る、BCP対応が敷かれる事態となりました。

首尾よく新型コロナが収束したとしても、また新たな感染症が発生し、これまで以上の広がりで市民の命と健康を脅威にさらす可能性があります。BCP対応を改め、保健所の拡充、保健師の増員、市として国に対し「地域医療構想」の見直しを求め、医療・福祉施設への支援を強めるべきです。

また、国の施策待ちでなく、地域経済の主役である中小事業者への支援、コロナで雇用を失った市民や生活困窮者への支援制度を機動的かつ柔軟につくり、市民のくらしと生業を支えていくことがより一層必要ではないでしょうか。切に求めるものです。

 

・行政のアウトソーシングについて

  本庁の市民課窓口やサービスセンター、上下水道の各種業務、道路や公園の維持など、様々な分野でアウトソーシングが実施されています。これまでわが党は、偽装請負、市職員のスキル継承ができない問題、市民サービスの低下につながることを指摘してきました。その懸念が、外部委託業者による「USBメモリー紛失事件」という最悪な形となって、現実のものになってしまいました。 市民の個人情報を守ることと共に、行政職員のスキル向上と技術・ノウハウ継承の観点から、重要な行政実務をアウトソーシングすることは、この際見直すべきです。

・女性をはじめとした会計年度任用職員の処遇改善について

  労働法制の規制緩和で働く女性の56%がパート、派遣、契約など非正規雇用です。自治体では国の交付金において行革推進の誘導がおこなわれ、アウトソーシング、民営化、指定管理者制度など様々な方式が持ち込まれ、すでに多くの業務が非正規雇用に代替えさせられました。自治体で働く非正規雇用の8割が女性であり、自治体は官製ワーキングプアを生みだしている当事者となっています。

ジェンダー平等の立場からも会計年度任用職員の処遇改善を求めます。

 

・がん検診の充実について

  尼崎市民の死亡原因は2013年から約10年間の第1位は悪性新生物(がん)です。2位の心疾患の2倍以上の死亡率です。

 特に働き盛りの年代、子育て中の年代にがん検診へ誘導するアプローチが必要です。近隣他都市の取り組みを参考にしながら、市民のいのちを守るため早期発見早期治療のシステムをつくるべきではないでしょうか。

 

・こども医療費助成制度について

  7月から条件付きで中学校卒業までの医療費無料化が実現しました。

所得制限を撤廃した場合、約3億3600万の財源が必要だということですが、引き続き完全実施、そして高校卒業まで無料化を目指しての施策の拡充を求めます。

・小田南公園の周辺事業について

  地域住民の方は、良好な公園環境をせめて存続してほしいとの願いから、イチョウ並木や梅林、池に生息する魚などを別の場所に移すことを求めています。

  これらの環境保全の要求と共に、新たな施設に設置されるトイレや駐輪場など、地域住民の声、要望をよく聞き、最大限汲み取ることを強く求めます。

 

・尼崎城について

  コロナ禍の影響があったとはいえ、入城者は、当初見込み目標の85,000人に対して、半分以下の3万1千人となりました。インバウンド頼みの観光事業のあり方を、今こそ再検討すべきです。

 

 

・国保・介護・後期高齢医療について

  高すぎる国民健康保険料、介護保険料の引き下げのために、一般会計からの繰り入れなど積極的な対策を講じるべきです。国民皆保険の精神に反する「資格証明書」「短期保険証」の発行をやめ、市民が安心して医療にかかれる体制をつくることこそ行政の果たすべき役割です。

 

・中小商工業者対策について

  空き店舗、シャッター通り商店街、市場対策は、全国の自治体が頭を悩ませる問題です。大店立地法施行により、大型店出店が大幅に規制緩和されたことが最たる原因ではありますが、後継者問題、人口減少問題とも相まって有効な対策が打ち出せていないのが現状ではないでしょうか。

創意工夫をして活性化させようと努力している市場・商店街の方たちを真ん中に据え、ひざを突き合わせて議論し財政的にもしっかり行政が支援することが必要です。店舗リフォーム助成制度を創設するなど、地域の市場商店街の継続的な発展に寄与する支援策を講じるべきではないでしょうか。

  また、コロナ禍と未曽有の物価高騰によって、地域経済は極限まで疲弊しています。市独自の全面的・抜本的な支援策を、中小業者の声を聴きながら行うべきです。

 

・自衛隊への個人情報提供問題について

  防衛省の意向に沿って、18歳と22歳の市民の個人情報を、CDデータ提供していることには問題があります。市民の追及もあり、希望する市民のデータ提供はしないことになりましたが、周知が不足しています。該当する市民への周知を強く求めます。

 

・モーターボート事業について

  モーターボート事業について、センプルピアの開催日数はここ数年来、地元合意の180日間を大きく超えていることは問題です。

 

・水道事業について

  先日、わが党の松澤議員が一般質問しましたが、最も大事なライフラインである水道供給を停止することは、慎重に慎重の上行うべきです。市は、重層的支援の強化を進めているのであれば、滞納者の窮状に寄り添った、全庁横断的な相談体制の構築が必要ではないでしょうか。強く求めます。

 

・マイナンバーカードについて

  総務省は、マイナンバーカードの普及を、今年度末までにほとんど全ての国民に普及するとして、2度にわたるマイナポイントキャンペーンを行い、10月2日時点で6170万枚を交付、交付率は5割弱と発表しています。そして、マイナポイントキャンペーンの第2弾を年末まで延長し、年内に申請ベースで8100万枚強の発行を目指すとしていますが、多くの国民が不安を抱き、これまで普及が遅れていた大きな原因である「個人情報の漏洩」の懸念は払しょくされていません。

また、普及率に応じて自治体への交付金を増減するという政府の方針は、任意であるはずのマイナンバーカード取得を、実質強制するものであり、市としても強く抗議すべきです。

 

・あまっ子ステップアップ調査事業について

  これまでも共産党議員団は、年度末にかかっていく実施時期の問題点を指摘するとともに、この事業は、教職員や生徒に負担を強いるものであり、根底に学力至上主義の考え方があると批判してきました。子どもたちの学力調査は、悉皆的に全員に対するものでいいのかと指摘する研究者の意見もあります。調査分析結果をどのように現場に生かしていくのか、現場の教職員とともにこれまでの取り組みを検証し、今後の実施について検討すべきです。

 また、ベネッセコーポレーションなどの民間事業者に公教育の委託が今後さらにすすめば、教育の市場化に道を開き、教育行政が企業の食い物にされてしまう危険性があります。

 公教育は本来もうけの手段として最もふさわしくない分野です。正規教員の増員、少人数学級の推進で、子どもたち一人一人に目が行き届いた教育をすすめていくべきです。

 

・子どもの人権について

 尼崎市ではこの間、いじめや体罰の問題が発生し、教育委員会や第三者委員会の対応が注目されてきました。問題が発生した時に、早期に事実関係を把握すると共に、問題を整理し、課題を共有する体制が必要です。何よりも、いじめ、体罰問題を人権にかかわる問題として捉えること、子どもの権利条約を基本とし、児童・生徒の目線に立った対策、取り組みの強化が求められます。「子どものための権利擁護委員会」の存在がまだまだ当事者である子どもたちに認知されていません。繰り返し繰り返し、子どもたちに「子どものための権利擁護委員会」とはそもそも何なのか、を伝え、自らの権利であることを周知していくべきです。

・教育現場でのICT活用について

  タブレット端末による授業が本格化していますが、市立高校では機器購入代金の負担が保護者に重くのしかかっています。現下の物価高騰の情勢、教育の機会均等の観点からも、端末は無償で支給すべきです。

 

・保育士の確保・配置基準見直し

  国の4、5歳児の保育士配置基準は、1人の保育士に対し30人のこどもで、これは70年間変わっていません。国基準の改正を自治体として求めることと共に、市独自で配置基準の抜本的な見直しを行うべきです。

 

・児童ホーム建て替えと待機児童対策について

  実効性が疑問な民間のホーム活用ではなく、老朽化した施設の建て替えや児童ホーム指導員の処遇改善、国基準の1施設あたり40人定員に基づく整備こそ早急に行うべきです。

・気候危機対策、再生可能エネルギー推進について

 「尼崎市気候非常事態行動宣言」では、2050年度までに二酸化炭素の排出量ゼロをめざし、2030年の二酸化炭素排出量を、2013年比で50%程度削減することを宣言しました。省エネ、再生可能エネルギー普及の取り組みと市民にライフスタイルを見つめなおし、大量生産、大量廃棄型社会からの脱却を掲げていますが、CO2排出の大きな要因となっている企業の排出抑制をこそ最優先に進めていくべきです。市として市内企業のCO2削減を計画的にすすめるため積極的にかかわっていくべきではないでしょうか。

・県道園田西武庫線について

  いまだに地元住民との合意が得られていない中で、工事が進行中です。市民は「生活環境を破壊される」「個人資産を奪われる」「周辺住民のコミュニケーションが分断される」といった不安をかかえています。市は県に対して地元住民との合意を得る努力をさらに行い、合意が得られるまで工事は凍結すべきです。

 

以上、日本共産党市会議員団の2021年度決算に対する意見表明といたします。