「どんな国であれ覇権主義を許さず、平和の国際秩序を築く」日本共産党綱領より

私たちは、国連憲章違反の侵略を糾弾し、軍事行動の即時中止を求めます

 昨日、ロシアのプーチン政権が、ウクライナへの侵略を開始しました。

現在、侵略は、ウクライナ全土に及び、首都キエフにも攻撃が行われ、民間人を含む多数の人々が犠牲になっています。

21世紀のこの世界に、まるで19世紀のような弱肉強食の「切り取り勝手」の領土拡張、こんな光景を見ようとは、多くの方々は思いもしなかったと思います。心を痛めておられると思います。

 今回のロシアの行動が、「主権の尊重」、「領土の保全」、「武力行使の禁止」などを義務づけた国連憲章に違反することは明々白々であり、日本共産党は断固として糾弾するものです。そしてロシアのプーチン政権に対して、軍事行動をただちに中止することを求めるものです。

プーチン大統領の侵略合理化論は、どれも成り立たない

 プーチン大統領は、侵略を合理化するために、テレビ演説で、あれこれの弁明を行っています。しかし、どれも成り立つものではありません。

 たとえばプーチン大統領は、今回の行動を「NATO(北大西洋条約機構)の脅威への対抗」だと言っています。しかし、どんな理由をもってしても国連憲章に違反した戦争行為は許されない。これが世界のルールじゃないですか。

 プーチン大統領は、「ウクライナ東部地域の要請」による国連憲章51条を発動しての「集団的自衛」だとも言っています。しかし、他の国のある地域を、一方的に「独立」と認めること自体が、国連憲章違反です。その地域の「要請」として、「集団的自衛」を行うなど、二重の国連憲章違反であって、絶対に通用するものではありません。

 プーチン大統領は、侵略を合理化するために「民族」という言葉を言っています。ウクライナ東部地域のロシア民族を守る。こう言って侵略を合理化しています。これに対して国連安保理会合でケニアの国連大使が痛烈に批判しました。

 “ほとんどのアフリカ諸国の国境線は自分たちで引いたものではない、植民地時代に宗主国によって民族に何ら関係なしに引かれたものだ。だから国境の向こう側には、同胞たちが住んでいる。しかしわれわれは受け継いだ線で国境を定めることに合意し、偉大な未来を選択した

 こういって「領土拡張主義」を拒否すると表明したことに、強い共感が広がっています。「民族」を理由に侵略を合理化することも絶対に許してはならないということも訴えたいと思います。

先制核兵器使用の恫喝を許してはならない

 とりわけ、許しがたいのは、プーチン大統領が、ロシアが核保有大国であることを誇示して、“攻撃されれば核兵器でこたえる”と公言していることです。

ここで言われている攻撃というのは、通常兵器による攻撃なんです。それに核兵器でこたえると公言している。つまり、核の先制使用をやると言っているのです。

核保有5カ国のリーダーの中でも、核兵器の先制使用を公言している人物はプーチン大統領一人です。広島・長崎を体験した被爆国日本のすべての声を集めて、核による世界に対する恫喝(どうかつ)は許せないという声を突き付けようではありませんか。

 そしてこの事態からも明らかになったのは、核兵器というのは人間が持ってはならない絶対悪だということではないでしょうか。「核兵器のない世界」をつくることが人類にとっていよいよ急務となっていることも訴えたいし、唯一の戦争被爆国日本が核兵器禁止条約に参加することを訴えたいと思います。

「侵略やめよ」「国連憲章を守れ」の一点で声をあげ、力をあわせよう

 それではどうやってロシアの侵略を抑えるか。

 テレビのニュースで、たくさんの方々がいま傷つき、亡くなる姿を見て、いてもたってもいられない方が、たくさんいらっしゃると思います。どうやれば抑えられるでしょうか。

 当然、国際社会が協調しての効果的な経済制裁が必要だと思います。

 同時に、いま何よりも重要なのは、世界中の国ぐにと市民社会が「ロシアは侵略をやめよ」「国連憲章を守れ」――この一点で、声を上げ、力を合わせることではないでしょうか。

いま侵されているものは何か

 いま侵されているのは何でしょうか。ウクライナの主権が侵されています。ウクライナの人々の命が侵されています。お年寄りや子どもたち、女性や男性、多くの方々の命が脅かされています。

 同時に、侵されているのはそれだけではありません。国連憲章にもとづく世界の平和秩序が根底から脅かされているのではないでしょうか。

国連憲章では、「主権の尊重」、「領土の保全」、「武力行使の禁止」などを義務づけています。二つの世界大戦の惨禍をへて、もう人類は戦争をしてはいけない。このことを刻んだのが国連憲章です。

この国連憲章にもとづく平和秩序がいま根底から脅かされている。

 ですから私は、心から訴えたい。

日本に住む私たちにとっても決して人ごとではないのです。日本国民自身の問題でもあるのです。どうか日本国民が、この蛮行を許すなという声を、みんなであげようではないかということを、心から訴えたいと思います。

世論、運動、たたかいが、平和をつくる力

 そうした国際世論だけでプーチン大統領を止められるのか。そういう声もあるかもしれない。しかし私は、これが唯一の大道だと思います。

広島県被団協の佐久間邦彦理事長が、こうおっしゃっています。「まだやめることはできると思います。それは国際世論だと思う」。私は、その通りだと思うのです。被爆者の方々は、「核兵器のない世界」を求めて、長い間ずっと国際世論に働きかけてきた。そしてとうとう核兵器禁止条約をつくったじゃないですか。

 世論が、運動が、たたかいが、平和をつくっていく力であります。

今ロシアの国内でも戦争に反対するデモが大規模に起こっています。SNSでも抗議の声が広がっています。世界中で「ロシアは侵略をやめよ」、「国連憲章を守れ」の声を広げに広げ、その声でプーチン政権を包囲し、ロシアの国民の中にもいま広がりつつある声と連帯していく――これが侵略をとめる道ではないでしょうか。そのことを私は心から呼びかけたいと思います。

「どんな国であれ覇権主義を許さず、平和の国際秩序を築く」日本共産党

 最後にみなさん、私は、今回の事態に接して、「民族の牢獄(ろうごく)」といわれ、たくさんの民族を自分の支配下において苦しめてきたロシア帝国、東ヨーロッパへの覇権の拡張や日本の千島列島を占領したスターリン時代の覇権主義、そして今回のプーチン大統領――ロシアに脈々と流れる歴史的な覇権主義の根深さを痛感いたします。

 そして私が、みなさんにお伝えしたいのは、日本共産党が、旧ソ連による覇権主義――チェコスロバキア侵略、アフガニスタン侵略、そして日本共産党に対する悪辣(あくらつ)な手口を使っての干渉の攻撃、そのすべてと正面からたたかい、打ち破って、最後はソ連の崩壊という歴史的決着をつけた、そういう政党だということです。

 そういう党として、今私たち日本共産党は、綱領にこういう一文を、2020年の綱領一部改定で掲げました。

 「どんな国であれ覇権主義を許さず、平和の国際秩序を築く」

 これが私たちが綱領で掲げている大方針です。「どんな国であれ」と書いてあります。世界で覇権をふるっている国は、アメリカだけではないからです。中国もロシアも覇権をふるっている。どんな国であっても覇権主義を許さず、国連憲章にもとづく平和の国際秩序を築く。これが日本共産党の綱領にきざんだ立場であります。

そういう党として、平和をまもり、平和をつくるたたかいの先頭に立つ決意を申し上げまして、私の訴えといたします。

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 志位和夫委員長 2022.2.25新宿駅西口 街頭演説より