2021.12月議会 山本なおひろ議員の一般質問と答弁要旨

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日本共産党の山本直弘です。

 自治体デジタルトランスフォーメーションについて質問いたします。

9月の決算分科会での総務分科員間協議で、重要事項の一つとして「行政手続きのオンライン化をはじめとする、自治体デジタルトランスフォーメーションの取組を推進すること」が決められましたが、この自治体トランスフォーメーションがデジタル技術の有効活用により社会の在り方をより良い方向へ変革すること、それを自治体行政に活用し、市民や職員にとって便利、効率かが図られるという良い面をもつとともに、看過できない負の側面もあると考えるため、この問題について質問をいたします。

 

 今年5月12日に「デジタル関連法」が成立し、菅前首相の肝いり、目玉政策としてその中身を推進するための司令塔として、9月には「デジタル庁」が新設されました。

 デジタルトランスフォーメーション、自治体トランスフォーメーションといった言葉が、コロナ禍にあって様々な場面、様々な媒体を通じて頻繁に耳にするようになりました。

 このデジタルトランスフォーメーション、以下、適宜DXと略します、この言葉そのものが使われるようになったのは、2018年に経済産業省が出した「デジタルトランスフォーメーション推進ガイドライン」が最初であると認識しています。

 この時の用語の意味の説明では「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位を確立すること」と定義されていました。

 

 このDXを地方自治体にも適用し、昨年12月25日に政府全体に効力が及ぶ「デジタルガバメント実行計画」が閣議決定で定められるとともに、総務省は「自治体デジタルトランスフォーメーション推進計画」を定めました。

 さらに今年7月7日に、総務省は「自治体DVF推進手順書」を公表し、自治体に対し、これに従ってDXを推進するよう促しています。

 自治体においては、自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させ、デジタル技術やAI等の活用で業務の効率化を図り、人的資源を行政サービスのさらなる向上につなげていくことを求めています。

 また、政府は新型コロナ対策の様々な遅れの一因として、「行政サービスや民間におけるデジタル化の遅れ」に求めて、各省庁や自治体の縦割りを打破し、行政のデジタル化を進めること、そして今後5年で自治体のシステムの統一・標準化を行い、どの自治体に住んでいても、行政サービスをいち早く届けると宣言しました。

 自治体DXの取組を今後推進していくためとして5月に成立した「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」には、2つの大きな問題をはらんでいると思います。

 1つ目は、2025年までに、全国の自治体、市区町村の住民情報、住民基本台帳、選挙人名簿、年金や介護などの社会保険、住民税などの情報システムについて、国が標準仕様を定め、その使用に基づいたシステムを、国が容易するガバメントクラウドに集約しようとするものです。

 これまで各行政は、自前のサーバーの基盤システムをもっていて、運用してきましたが、これを民間企業が所有・管理するサーバーを使用するクラウドで運用する大転換をしようとする動きがあります。

 昨年10月から、「第2期政府共通プラットホーム」と呼ばれる日本の中央省庁向けクラウドの運用が米国Amazon社のアマゾンウエブサービスを基盤として開始され、また、今年の10月26日にデジタル庁がガバメントクラウドの先行事業として、米国Googleのクラウドサービスを使うと発表しました。

 これでは、米国企業などや諜報機関に、地方自治体が持つ重大な個人情報が渡ってしまう危険があるのではないでしょうか。

 この基本方針の策定には、知事会・市長会・町村長会から意見聴取の上、方針案を作成する旨の規定があります。さらに、所管大臣は情報システムの標準化のための基準を策定する際、地方公共団体の「意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない」としています。

 

お尋ねします

 

Q1 米国などの民間企業や諜報機関に住民の個人情報が渡ってしまう危険性のある「地方公共団体の情報システムの標準化」について、市長はどのようにお考えですか。お聞かせください。

 

答弁要旨

 「地方公共団体の情報システムの標準化」は、令和7年度末までに、全国一律の標準仕様に基づき、住民系のシステムを再構築し、国・自治体共通のクラウドサービスを利用することにより経済的かつ安定的な市民サービスの提供を実現するものです。10月には、先行事業として8自治体が米国2社のクラウドサービスを利用して、クラウド化の実証をすることが発表されました。

 この標準化に向けた国・自治体共通のクラウドサービスは、国が国際標準等を踏まえて策定したセキュリティ基準に基づき、各基準が適切に実施されているかを第三者が監査するプロセスを経て選定したサービスのみに限定されています。したがいまして、8自治体の実証結果を踏まえた上で、同サービスを利用して本市としてのシステムの標準化を進めてまいります。

 

続けて質問します。

 

Q2 そして市民の個人情報を守るためにも、このシステムの統一に反対すべきだと思いますが、いかがですか?

答弁要旨

 本市は、現在、安全かつ安定した業務システムで継続的に市民サービスを提供する観点から、システムの保管場所として、地震に強い地盤や高台等の立地にあること、建物が耐震免震、耐火等の構造であること、広域的な停電時においても電力を一定期間供給できる電源設備を有していること、入退管理等厳重なセキュリティ対策が施されていること、などの条件を満たす、情報システムのクラウド化の検討を進めているところです。

「地方公共団体の情報システムの標準化」については、国のガバメントクラウドサービスを利用することが前提となっており、同サービスは本市が進めるクラウド化と条件が合致することから、この考え方のもとで進めてまいります。

 

 

 次に、この国と地方自治体のシステム標準化・共通化によって、住民サービスが切り捨てられる危険性についてお尋ねいたします。

 

 全国の自治体は、地方自治体の本旨に基づき、子どもの医療費助成や生活困窮者や災害被災者を救援するために住民税や国民健康保険料、介護保険料を減免するなど、住民の要求や地域の特性に応じて独自の住民サービスを実施しています。尼崎市でも国民健康保険料の軽減、低所得者への介護保険サービスの減免など、自治体独自の施策を行っています。

 この自治体独自の住民サービスを維持していくには、標準化されたシステムでは対応できないことが指摘されています。

 

 富山県上市町では、国民健康保険料や医療費の情報システムについて、隣接する7市町と共同してクラウドを利用しています。町議会で議員が、3人目の子どもの国保税を免除することや、65歳以上の重度障害者の医療費窓口負担を免除することを町独自に実施するように提案しましたが、町長は「町独自でカスタマイズすることは、経費の軽減に向けてクラウドを導入した決定医師に反する、コストがかかる」として拒否しています。

 滋賀県湖南市の市長は「事務については無理にカスタマイズするよりは簡素化を図って業務を減らしていくことも大事だ」と議会で答弁しています。国の情報システムの「標準化」や「クラウド化」が押し付けられれば、自治体独自の住民サービスをやめる自治体が広がるおそれがあります。

 しかも総務省は、地方自治体が独自の施策を行うためのカスタマイズを抑制するために財政誘導を行っています。標準化基準に適合させるためにかかる費用について国は一定の財政支援を行うとしていますが、標準化対象外のシステム化やカスタマイズにかかる費用は全額自治体の負担としています。

 

お尋ねいたします。

 

Q3 独自施策を行うための情報システムのカスタマイズの必要性について、どのように考えていますか。

続けて質問します。

Q4 カスタマイズするとするならば、どれほどの費用を見込んでいますか。お答えください。

 

答弁要旨

 情報システムの運用にあたりましては、条例等で定めている本市独自の施策や本市特有の効率化について、一定の対応が必要と考えております。

まずは、現在標準仕様が示されている住民記録システムについて、本市が導入している現行のシステムとの差異を分析し、業務及びシステムの見直しを図った上で、必要なところは、対応を検討してまいります。

 なお、標準システムを自治体がカスタマイズすることは禁止されており、別のシステムを外付けする、いわゆるアドオン対応となりますが、現時点で費用を算出することは困難でございます。以上

 

 

 次に、自治体が独自に制定する個人情報保護条例をリセットし、個人情報を含むデータの利活用を強力に進める危険性についてです。

 

 2015年の個人情報保護法改悪によって、行政機関や独立行政法人などが保有する個人情報を匿名加工したうえで、民間事業者から利活用する提案を募り、審査を経て提供される仕組みが作られました。本人の同意は不要とされています。さらに、今回のデジタル改革関連法では、データ流通に邪魔な規制を取り除き、利活用をしやすくする仕組みを盛り込みました。本人の知らぬ間に、行施から民間へ、データ提供するのがこの個人情報保護法改悪の実態です。

 これまで自治体は、個人情報保護条例を設けて国の個人情報保護法よりも厳しい独自の規制を行い、住民のプライバシー権を守ってきました。個人情報保護条例では①住民からの個人情報の提供は本人の同意に基づく、②提供した目的以外には使用しない、③自治体から外部には抵抗しないことを原則としています。

 個人の情報の利活用、漏洩に対する不安という点では、本市でも18歳、22歳の市民の個人情報を、本人の同意なく自衛隊にCDデータとして渡されているという問題もあります。本人が知らぬところでみずからの情報が様々の機関にわたっている実態があることに多くの市民が不安を抱いています。

 

そして国は、各自治体の個人情報保護条例に基づく運用が「官民や官同士での円滑なデータ流通の妨げになっている」とし、国として「統一ルール」を定め、個人情報の取り圧かいを国の個人情報保護委員会に一元化するとしました。

 今、尼崎市には57条の条文からなる「尼崎市個人情報保護条例」がありますが。国は自治体に対して個人情報保護条例の見直しを求めています。

 この「条例リセット」の最大の目的は匿名加工情報制度と情報連携を自治体に行わせ、教育、健康診断、介護サービス、子育て支援といった住民サービスに直結する個人情報の「宝庫」である自治体が保有する情報を吐き出させることにあります。

 

お尋ねします。

 

Q5 デジタル関連法によって、尼崎市の「個人情報保護条例」を改正することを考えていますか・

考えているとすれば、どの条文をどのように変えるか具体的にお示しください。

 

答弁要旨

 個人情報の保護に関する法律が令和3年5月に改正され、改正規定の施行後、本市の個人情報保護制度は、個人情報保護条例ではなく、同法律の規定に基づき運用することとなります。

 改正後の個人情報保護法では、地方公共団体が条例において定める事項を規定しており、本市においては、例えば、開示決定の期限が国よりも短縮されていることなどが街頭することから、こうした事項については、条例で定めることが必要になるものと考えています。以上

 

 続けて質問します。

 

Q6 市民が自らの個人情報をコントロールするため、外部の機関等に自らの情報がわたることを事前に市民が知り、拒否する権利は補償すべきだと思いますがいかがですか。

 

答弁要旨

 先ほどご答弁申し上げまたとおり、改正後の個人情報保護法の施行後は、本市の個人情報保護制度は、同法の規定に基づき運用することとなります。

 同法の規定の解釈等につきましては、今後、国において、ガイドラインが示される予定でございます。

 本市の条例にどのような権利義務規定を設けることができるかについては、国のガイドラインの内容を踏まえて検討する必要がありますので、国の動向を注視してまいります。

 

 次にマイナンバーカードについてです。

かねてから、我が党はマイナンバーカードの問題点を指摘してきました。

社会保障と税、災害対策のみに活用してきたマイナンバーカードを、今年10月からの健康保険証としての本格運用開始、2022年中にはスマートフォンへ搭載、ハローワークカードとの一体化、マイナポータルを通じた自治体検診情報の提供開始、2023年度には介護保険証としての利用、生活ほど受給者など、矢継ぎ早に様々なものがマイナンバーカードと一体にさせられようとしています。

 マイナンバーカードについては、昨年の国民一人当たり10万円給付する「特別低額給付金」の際、マイナンバーカードで申請すれば素早く対応できるかのふれこみで、市の窓口に市民が殺到しましたが、結果、システムがパンクしてむしろ混乱を引き起こしてしまったことも記憶に新しいところです。

 一方、その普及率が、10月末現在全国で39.1%、尼崎市も39.0%にとどまっているのが現状です。これは政府に対する不信、自らの情報が漏洩する危険性に対する不安が、多くの国民の中にあることを示しているのではないでしょうか。

 

 デジタル化を進めるならば、官民問わず情報が漏洩した場合の原因解明と責任追及、プライバシー侵害の補償などの諸規定の整備が大前提です。コロナ対応での自治体窓口混乱等の徹底した検証もせずに、マイナンバーカードを行政のデジタル化の基盤に据えることは危険極まりないといわなければなりません。

 

お尋ねします。

 

Q7 今後、このように個人情報がマイナンバーカードと紐づけられれば、個人情報の漏洩の危険性が増すと思いますが、どのように考えますか。

 

続けて質問します

 

Q8 多くの市民に個人情報の漏洩に対する不安が払しょくされない中、マイナンバーカード普及促進を急ぐべきではなく、市民の意向、意思を尊重すべきだと考えますが、いかがですか。

 

答弁要旨

 マイナンバーカードは、安全・安心で利便性の高いデジタル社会の基盤となるものであり、今後、健康保険証や運転免許証との一体化など、個人情報を紐づけることにより、更なる利便性の向上が期待されております。 その一方、個人情報の漏洩はあってはならないことであり、マイナンバーカードには不正な情報取得を防止する機能や電子証明書ごとの暗証番号の設定などのセキュリティ対策とともに、紛失や盗難にあった場合も24時間365日体制で一時利用停止の受付を行うなどの対策が講じられているところでございます。

 いずれにいたしましても、マイナンバーカードがより一層、普及することにより、市民の利便性の向上や行政の効率化、更には社会保障の公平性の実現などにつながるものと考えており、今後とも、その利活用の促進とカードの安全な取扱いが図られるよう、国とともに丁寧な説明に努めてまいりたいと考えております。以上

 

 このように国の推し進める「デジタルDX」は、様々な問題を抱えていると思います。

 地方自治体は個人情報を守る「防波堤」です。

市民の個人情報を外国や民間企業に売り渡す恐れ、そして自治体独自の施策ができなくなる恐れのある「自治体DX」に対し、国の圧力に屈するのではなく、自治体の自主性を発揮して、デジタル技術を住民のくらしと権利、住民サービスの向上、職員の労働環境の改善、能力の発揮などに生かすように活用することこそが、憲法の要請である地方自治体の本旨にかなった真のデジタル化の方向性だということを強調いたしまして、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。