2019.12月議会・川崎敏美議員の一般質問の発言と当局答弁概要です

 

 

日本共産党議員団の川崎敏美です。

今回は憲法にかかわって全国首長9条の会のアピールに対する市長の政治姿勢と人権文化いきづくまちづくり条例案にかかわって部落問題について質問します。

全国首長九条の会

自治体の首長とその経験者による「全国首長九条の会」が11月17日結成のつどいが開かれています。17日現在で現職13人を含む131人が賛同・呼びかけ人に参加。このつどいには、玉木デニー沖縄県知事、武村正義元滋賀県知事、嘉田由紀子参院議員・元滋賀県知事らがメッセージを寄せ、250人が参加。結成総会で採択されたアピールの要旨は次の通りでした。

私たちは、日本国憲法第9条を守り抜くという壮大な目標に向かい、さまざまな垣根を取払い、「9条を守る心は一つ」「一人の百歩より百人の一歩」を合言葉に、本日その第一歩を踏み出しました。全国の住民ともっとも密接な行政機関の長として、住民の生命・財産を守る仕事に携わっている首長とその経験者による「全国首長九条の会」の発足は、「9条を守れ」という国民多数の意思を体現するものであると考えます。9条改憲が草の根での攻防に入ったいま、私たち首長九条の会は、全国7000を超える地域、分野の九条の会と歩みを共にし、憲法9条の理念を高く掲げ、これを堅持し実践することをめざして、地域住民の知恵と力に依拠して運動を進めたいと決意しています。全国の自治体首長、元職の皆さまにも本会の趣旨に賛同し、ぜひこの一員に加わっていただくことを呼びかけます。また地域住民の皆さまにも本会の趣旨に賛同され、ご支援をお願いするものです。」と以上がアピールの要旨でした。

この全国首長九条の会には元秋田県横手市長 千田謙蔵さん、元茨城県東海村長 村上達也さん、東京都武蔵野市長 松下玲子さん、元東京都国立市長 上原公子さん、宝塚市長 中川智子さん、元長野県木曽町長 田中勝己さんも名をつられています。そして、宝塚市の中川智子市長は次のコメントをされています。一部を紹介します。「私は2015年、安保法制は絶対反対だと会見を開きました。戦争が起これば、全てが崩れてしまいます。市民の日々の暮らしを失います。市民の首長として絶対に反対です。憲法をなし崩しにし、平和を脅かすことに対して声を出すことは譲れません。とにかく黙らず声を上げるのを大切にしたい。市民の命を守るために首長がやれることを、仲間をつくって勇気を出して声を上げていきたい。」というコメントを発表されています。

Q①お尋ねします。稲村市長はこの呼びかけに対して、どのように考えますか。また今後この会への参加を表明されるのかお伺いしたいと思います。

答弁要旨

既に「平和首長会議」に参加しており、今のところ同会への参加は考えておりませんが、憲法9条に関しましては日本が平和国家として歩むことを規定したものであるとともに、平和な社会の実現に向け、たゆまぬ努力を誓う、その決意が込められたものと受け止めており、以前にもご答弁申し上げましたとおり、私個人といたしましては、9条を守っていくべきだと考えております。以上

 

人権条例について

来年の2月議会に「人権文化いきづくまちづくり条例」案が市によって提案されようとしています。民族差別や障害者差別などと同じ扱いで、すでに実態のない部落問題までをことさら人権問題としてとらえ、理念条例が予定されています。

地方自治体が条例を制定する場合、地方自治法には次のような留意点が規定されています。「行政上の目的及びその実現の必要の理由を明確に把握すること。殊に当該普通地方公共団体の行政として独特の意義を有するものかは十分に検討されるべきである。」「目的実現の方法として条例制定以外に方法がないか否かを慎重に検討すること。」「当該普通地方公共団体の方向性に適合するものであり、かつ、国の法律制度の一般体系に合致するものであること。」

この点から今回の「人権文化いきづくまちづくり条例」案は条例制定のための要件を満たしているとは思われません。尼崎での人権問題がどのように発生しているのか、他都市との比較もされておらず、市がことさら条例を定めなければならない理由が示されていません、条例をつくる必然性が明確でありません。さらに、市民に対して人権について理解と関心を深めこれを行動や態度に表していくことが必要と、市民に市の人権施策に協力することを責務として押し付けています。これは明らかに市民生活に踏み込んで、内心の自由を侵すことになってしまいます。私たちの権利を守るために市が行うべきは、市民生活を豊かにする人権保障の具体化だと、私は思います。県下の自治体と比べても高すぎる国保料の値下げとか、障害者には障害の程度に応じた施策、生活困窮者へもっと手をさしのべる、最近問題になっているクラブ活動で生徒が体罰を受けるような状況、実態をなくす等、具体的な施策を実行することです。はじめにこの条例を制定するにあたって基本的な問題についてお聞きしていきます。

尼崎における人権侵害の事実がどれほどあるのか明らかにしてほしいと思います。

またその実態は、他市との違いがあるのか、尼崎が条例を制定しなければならない特段の理由があるのか?お答えください。

 答弁

神戸地方法務局尼崎支局に相談があった人権侵犯事件は平成28年から30年の3年間の平均で年間15件程度あり、本市が把握している昨年度の実績といたしましては、インターネットにおける差別書き込みが114件、人権相談が12件、差別落書きが1件ございました。また、部落差別解消推進法にもとづき、国の依頼により実施しました「部落差別の実態に関する調査」におきましても、本市において、複数の結婚差別事案の報告がありました。

さらに、平成28年には市内の居酒屋で聴覚障害者の入店が拒否されるという事案が生じております。加えて、本市が昨年度実施いたしました市民意識調査におきまして、自分の人権が侵害されたことがあるという回答が、24.5パーセントとなっており、平成19年に実施しました前回調査結果の20.1パーセントと比較し、4.4ポイント増加しております。他市との比較は行っておりませんが、本市においては、このように依然として人権侵害事案が発生しており、人権が侵害されることなく、一人ひとりの人権が尊重されるまちにしていくために、人権尊重の基本理念を示す人権条例制定を制定しようとするものであります。以上

次に条例案の名称にもなっている、人権文化という用語についてです。一般的に文化は多様なもので、市民間の対話交流を通じて自然に形成されるものであって、行政が考えるこれがあるべき人権文化の姿などと言って、条例など法で定め市民に押し付けることはできないのではないか?人権は抽象的な文化ではなくて実生活での具体的な補償問題だと考えます。

Q③お伺いします。人権文化とは何か、そしてその文化を行政が主導してつくり、市民に押し付けてよいと考えているのですか?

 答弁

「(仮称)人権文化いきづくまちづくり条例」につきましては、国において人権に係る法律が制定されたことに加え、先程申しましたように本市において近年、差別を助長し、誘発することに繋がるインターネット上での悪質な書込みや、さまざまなハラスメント、子どもへの虐待、性的マイノリティの方や障害者への差別など人権問題が多様化している現状を踏まえ、人権に係る条例を制定しようとするものでございます。一方、「文化」とは定義が幅広く、その形成過程も様々であり、また人権教育のための国連10年行動計画において、「人権という普遍的文化」との表現が用いられております。こうしたことも踏まえまして、本条例においては、単に人権の尊重をうたうのではなく、日々の暮らしの中で人権尊重の精神が自然なこととして根付いていることが重要であるとの考えから、こうした状態を「人権文化」と表現し、目指すべきまちの姿を「人権文化いきつくまち」として掲げ、条例の名称にも使用することにしております。このようなまちの実現は、行政のみで達成し得るものではないことから、市民や事業者に連携、協力を求めるものでございます。以上

条例の目的として、人権文化いきづくまちづくり計画とそのための審議会をつくることとされています。これまでの「尼崎市人権教育・啓発推進基本計画」を練り直していく方向性から転換、新しい計画づくりを行おうとしているのですが、その理由とこれまであった計画の問題点、課題等が、総括され示されていなければならないと思います。

お尋ねします。今回の条例は、人権文化いきづくまちづくり計画と審議会をつくるための条例としているが、これまでの「尼崎市人権教育・啓発推進基本計画」に対する評価、総括をどのようにしているのでしょうか。

答弁

現在の「尼崎市人権教育・啓発推進基本計画」は、平成13年に策定し、平成22年に改定を行っておりますが、この計画に基づき、これまで様々な人権問題に関する教育・啓発や人権擁護への取組を推進してまいりました。しキ具体的には、インターネット」での差別書込みに対するモニタリング事業や、犯罪被害者支援事業など、多様化する人権問題への対応を図ってきたところでございます。しかしながら、先程ご答弁申し上げたとおり、依然として人権侵害事案が発生しており、また昨年度実施した市民意識調査の結果においても、市民の人権意識は必ずしも向上しているとは言えない状況でございます。一方、現在の基本計画は法令等に基づくものでなく、また各種施策の実施について意見を聞く「尼崎市人権教育・啓発推進懇話会」もその設置の根拠を要綱に置いております。こうした状況を踏まえ、条例を制定することにより、他の施策と同様に、懇話会を発展的に解消し、審議会の設置を条例に規定するとともに、次期計画を条例に位置付け、計画の策定に当たっては審議会からの意見聴取を義務付けるなど、施策の推進体制を明確にし、人権施策の更なる推進を図っていこうとするものです。以上

高校の教科書、東京書籍・現代社会では、「人権保障と個人の尊重」という項目で「人権が実際に保障されるためには、憲法が大きな役割を果たしている。憲法はおもな人権を規定し、それらの権利を政府が侵すことを禁止するとともに、権利保障のために政府が必要な施策を行うことを求めている」とあります。市の条例に対する説明文では、条例制定にあたって、「自分の人権のみならず、他人の人権についても理解と関心を深め、これを行動や態度に表していくことが必要です。私たちは、相互理解を深め、人権について学び続けなくてはなりません」と記述し、「市民の責務を設け、市が実施する人権施策に協力するよう努めなければなりません」とあります。これは尼崎市が市民各個人の生活態度・行為や学習にどんどん踏み込んでくるものとなっています。これは憲法に規定された基本的人権第19条「内心の自由」の侵害につながるものと考えます。市は何を根拠に、市民や事業者に責務を課そうとしているのでしょうか。市が行うべきは、市民への情報公開であり、人権が保障される条件整備に徹することです。人権が守られる環境をしっかり整え、人権保障のための具体的な施策に取り組むことのほうが大切であると思います。

お尋ねします。人権保障を個人の「行動や態度」に求めるのは、人権概念を誤って解釈しているのではないのか?責務がなぜ市民に課せられるのか?市の見解を求めます。

答弁

「(仮称)人権文化いきつくまちづくり条例」は、一人ひとりがかけがえのない存在であることが認められ、全ての人が生まれながらにして持っている普遍的な権利である人権が尊重されるまちの実現を目指すことを目的としております。人権が尊重され、保障されるために、まずは市が人権施策に取り組むことが必要であることから、本条例に1おいて人権施策の策定等を市の責務として規定等を市の責務として規定する予定でございます。しかしながら、先ほど申しましたように、本市において人権侵害の事案が生じている状況を踏まえますと、市の人権施策のみによって解決に至るものではございません。そのため、市民に「他者の人権を尊重すること」を求めるとともに、「人権意識の高揚」や「人権施策に関する理解と関心を深め、人権施策の推進を図ること」につきまして、協力を求めることも必要であると考えております。こうしたことを、市民の責務として規定しようとするもので、決して人権概念を誤って解釈しているものはございません。以上

次に市の条例解説には、国が定めた「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組みの推進に関する法律、部落差別の解消の推進に関する法律が制定され、これらの法に基づいて、地方公共団体においても地域の実情に応じた差別の解消を推進するための更なる取り組みが求められています。」とあります。すでに社会問題としては解決済みの部落問題がこの条例制定の動機になっている点について伺ってまいります。2016年に制定された部落差別の解消の推進に関する法律(以下部落差別解消推進法)は議員立法として提案されています。政府提案となっていないのは、すでに2002年に同和事業を終了させている国としては、この法律の制定理由がなかったと判断していたということです。ですから、部落差別解消推進法の審議の際、同和対策特別措置法も終結し、すでに特別な同和地域に対する施策は一般施策に移行させるとなっているにもかかわらず、今なぜ部落差別なのかということが大議論となっており、結果附帯決議がつけられてこの法が成立しています。

Q⑥お伺いします。部落差別解消推進法に附帯決議がなぜ設けられているのか、市はどのように考えていますか。

答弁

部落差別解消推進法におきましては、現在もなお部落差別が存在していると明記されており、地方自治体は、差別の解消を推進するため、地域の実情に応じた施策を講じるよう努めることとされております。同法に設けられた附帯決議におきましては、「過去の民間運動団体の行き過ぎた言動等、部落差別の解消を阻害していた要因を踏まえ、これに対する対策を講じることも併せて総合的に施策を実施すること」、「教育及び啓発を実施するに当たっては、新たな差別を生むことがないよう留意すること」、「実態に係る調査を実施するに当たっては、新たな差別を生むことがないよう留意すること」といった内容が盛り込まれております。こうした附帯決議は、これまでの取組における課題等を踏まえつつ、部落差別の解消を推進するための施策を行うにあたり、配慮すべき事項として付記されたものと認識しております。(以上)

部落差別解消推進法を審議した国会での議論では、部落差別の定義が定められていないこと、特別措置法のような財政出動がないなど、理念法にとどめられています。やるべき施策は「相談体制の充実、教育及び啓発、部落差別の実態に係る調査」とされており、地方自治体に条例の制定まで求めていません。

市は部落差別をどのように定義しているのですか?尼崎市における部落差別の実態をどのように捉えているのでしょうか?

答弁

部落差別につきましては、法律上の定義はございませんが、一般的に、部落とは日本社会の歴史的過程で形作られた身分差別により、差別待遇を受けてきた方々が集団的に住む地域として解されているところであり、こうした部落の出身であることを理由として差別を受けることであると考えております。本市における部落差別の実態につきましては、先ほど申しましたように、「部落差別の実態に関する調査」において複数の結婚差別事象が報告されており、またインターネットにおける差別書き込みや差別落書きにおいても部落差別事象が生じております。さらに、本市が昨年度実施いたしました市民意識調査におきましても、結婚や住宅選択に関して部落差別の意識が依然として残っていることが判明しており、部落差別が現実に存在し、意識の上でも今なお根強く残っている状況でございます。以上

以上で第1問を終わります。

 

2登壇

部落差別は他の人権にかかわる民族差別や障がい者差別とは、次元が異なる問題です。

女性差別、障害者差別、外国人差別などは、女性、障害、国籍という属性を理由に不利益な取り扱いをすることにあります。その解決のためには異なる属性を認めて尊重し、属性を不利益な取り扱いに結び付けないことが対策として求められます。属性が存在し続ける限り、対策も恒久的なものにならざるを得ません。

一方部落差別は身分階層構造に基づく差別であるが、現代社会には身分階層は存在しません、「部落」、部落民なる属性は存在しません。部落差別の解消は同じであるものを同じように取り扱うことでのみ実現できるという性質のものです。過去の同和対策立法がすべて時限法とされてきたのは、こうした認識を前提としています。

部落問題に対する私個人のかかわりを少し述べさせていただきます。

私が部落問題を初めて知ったのは、50年前でした。鹿児島の高校から尼崎の高校に転校してきた高校2年生16歳の時です。最初の友人が部落問題研究会の活動をしており、そこに誘われたのがきっかけでした。部落問題を知るにつけ、現代社会にこうした問題が残されていることに大きな衝撃を受けました。明治より以前の封建時代の身分制度に由来し、いわれもない部落差別のために進学、就職や結婚の際にはその機会を奪われ、部落差別ゆえに貧困の連鎖に陥っている現状を見るにつけ、不当な差別に我がことのように怒りを覚えたものでした。当時の未開放部落と言われた地域は、その狭い道と家々が立て込んだ密集を見るにつけ、劣悪な環境でした。道は雨が降るとぬかるみと化し、どこが入口だったか出口かわからなくなってしまう迷路でした、向こう側から来た人とすれ違うのに体が当たってしまいそうな細い道がいっぱいありました。しかしこのような環境は、50年も経つと今や一新、見た目で一般の地域との違いは全く判らなくなっています。

1969年の同和対策事業特別措置法が制定・施行されたことによって、大きく変わりました。

2002年まで33年間、全国では16兆円、兵庫県で1兆円を投じた同和対策事業によって、住環境、教育問題、就労や仕事などの格差は解消しました。そして2002年同和対策事業特別措置法は廃止され、一般施策への移行がはかられるようになりました。全国部落解放運動連合会が発展的に解消して全国人権運動総連合(仮称人権連)が結成され、『部落問題が解決された状態についての4つの指標』というものを提唱しています。①部落が生活環境や労働、教育などで周辺地区との格差が是正されること。②部落問題に対する非科学的認識や偏見に基づく言動がその地域社会で受け入れられない状況が作り出されること。③部落問題にかかわって、部落住民の生活態度・習慣にみられる歴史的後進性が克服されること。④地域社会で自由な社会的交流が進展し、連帯・融合が実現すること。私は、この4つの指標を、尼崎市においてはおおむね満たしていると思います。

 

部落差別を生みだす実態は今日的には解消されているとの認識を市は持っているのか?

今回の条例ではことさらに被差別部落出身者という用語を使用していますが、市民に同和地区があるという誤った認識や偏見を植え付けるという事になりませんか?市の見解を求めます。

答弁

同和対策事業特別措置法等に基づくこれまでの取組により、一定程度生活環境の改善や生活の向上が図られましたものの、1問目で申しましたように、部落差別に関する差別事象が生じており、現在もなお部落差別が存在しております。現在、法令等により同和地区として指定されている地域はございませんが、歴史的、社会的に周りから被差別部落として見られている地域は存在しておりますし、その地域とそこで暮らす人、その地域の出身者に対する差別は今もなお存在していることから、本条例案において、市が取り組むべき人権問題の一つとして記載しようとしているものでございます。以上

もう少し私の体験をお聞きください。高校時代、部落問題を歴史的にもしっかり学んで部落に対する正しい理解を得ていこうと、当時大変活発であった全国の研究集会にも出かけて行きました。顧問の先生に連れられて、結婚差別の糾弾会の場にも参加したこともありましたし、水平社宣言を著した西光万吉氏ゆかりの奈良のお寺を訪ねてからは「人の世に熱あれ、人間に光あれ」は私の座右の銘となりました。そして大学に進んでも私は、部落問題研究会の活動を続けました。その1973年に起こったのが部落解放同盟兵庫県連合会が誕生し、窓口一本化を求めて同年9月中旬から西宮市庁舎を約200日間にわたり占拠、市の幹部を監禁暴行した西宮市役所占拠事件をまのあたりにしました。大学では住井すゑさん原作の映画「橋のない川」の上映運動、狭山事件の石川一雄さんの救援活動にも取り組みました。しかしながらこうした活動に、絶えず差別的だと攻撃を加えてきたのが当時の解放同盟と解放研でした。1974年には八鹿高校事件が起こりました。八鹿高校の教員が拉致・監禁され、集団暴行を受け、負傷者が58名、うち13名が重傷者という事件が、兵庫県や教育委員会、警察の庇護のもとに解放同盟によって引き起こされました。その後の刑事裁判で1990年最高裁で有罪が確定、民事裁判で糾弾権なるものは実定法上何ら根拠のないもの、加害者は損害賠償を命じられ、1996年最高裁でも確定しています。部落解放運動の転機ともなった事件でした。ユーチューブで八鹿高校事件と検索をかければ事件の全容を知ることができます。ぜひとも皆さんもご覧いただきたいと思います。過去には同和行政については、不公正乱脈、特定の団体による窓口一本化の問題がありました。2002年、同和対策特別措置法が終結された以降、尼崎の同和行政はどうだったのでしょうか。市議会ではまだ国の施策が終了する以前から同和施策は一般施策へ移行させるべき、それが部落差別解決の近道であると主張して、2000年にも日本共産党の高橋ふじき議員が議会で追及してきていました。国の施策が終了した、2002年以降も同和保育所の保育料が一般の65%に設定されている問題や、総合センターや人権啓発協会のあり方について、また市営住宅の駐車場の管理問題等も党議員団の田村議員や早川議員、松村議員が、特別扱いすることなく、一般施策に移行させるべきと議会で追及を行ってきました。これらの問題についてはここでは深く取り上げませんが、2002年以降も本市では旧同和施策を引きずってきたことが、部落問題の解決に支障を与えたのではないかと私は思うのです。さらに今年に入って兵庫県下の市町には、その過半数を超える自治体に、特定の団体が部落差別解消推進法の具体化に向けた要請行動を行っています。尼崎市も5月にその要請がなされているということです。今回の条例制定で再び特別な施策が行われるのではないか、そうした懸念が持たれています。市は過去の同和行政をどのように捉えているのでしょうか?

市は2002年同和特別措置法が終結以降の、市の同和行政をどう評価しているのか?

答弁

先程ご答弁いたしましたとおり、本市における過去の同和行政につきましては、法に基づく取組の結果、一定程度生活環境の改善や生活の向上が図られたところでございます。法期限の到来に伴い、特別対策としての同和対策事業は終結いたしましたが、差別意識の解消など課題の解決には至っていないことから、一般施策により取組を行ってきたところでございます。なお、条例制定後におきましても、一般施策による取組を行い、特別対策としての取組の実施はいたしません。以上

今回の条例制定の理由として、インターネット上の差別問題が取り上げられています。インターネット上の差別問題等は、一握りの悪質な「意図的な行為」です。国民の「行動や態度」に歪曲して結び付けるのは誤りです。それをなくすのは、国や自治体や法務省関係機関の責任です。定期的なモニタリングの実施とプロバイダ責任制限法で対処することで対応すべきです。プロバイダや管理者へ削除要請する一方、悪質な書き込み等は法務局や警察等との連携を図り書いた人を判明させ事象によっては民事・刑事事件として告発することで解決可能です。

ネットに出ている差別問題は市民の責任なのでしょうか。この問題があるから差別意識が蔓延しているとみなす考え方は改めるべきです、市の見解を求めます?

答弁

インターネットは誰もが容易に情報を得られることから、正しい知識や理解がなければ、誤った情報を鵜呑みにしてしまう危険性がございます。また、情報発信も容易であることから、そうした誤った情報を自ら発信し、差別に加担してしまう恐れがあり、ひいては差別意識の助長・誘発を起こしかねない危険性も有しております。更に、インターネット上の情報は、一度発信されると完全に削除するのが難しく、拡散するという特性がございます。本市においては、インターネット上の差別書込みに対するモニタリング事業を実施し、削除要請を行い拡散防止に努めておりますが、全てを削除することは難しいことから、使う側、見る側である市民一人ひとりが、誤った情報に影響され、行動することのないよう、差別に関して正しい知識と理解を持つことが必要であると考えております。こうしたことから、本条例案においては、差別意識の助長・誘発を防ぐよう、人権意識の高揚に努めることを、市民の責務として規定するものでございます。以上

2018年10月に実施した市民の人権に関する意識の変化等を把握し、「尼崎市人権教育・啓発推進基本計画」の策定のための基礎資料とすること目的とした「人権についての市民意識調査」の項目には、ことさら部落を意識させる設問があります。外国人や性的マイノリティの友人の有無とともに、部落出身の友人の有無が聞かれ、親しくしているか、親しくしている人はいないか、わからないを選ばさせ、さらに身近に感じているかを5段階で聞いています。結婚についての質問で結婚相手が部落出身者、日本で生まれ育った在日韓国・朝鮮人、障害のある人だったら、どうするかとの設問があります。部落差別カッコ同和問題として、差別の有無、それを知ったきっかけは何だったのか。住宅選択で同和地区を避けるか?など多岐にわたって調査されています。

⑪201810月に実施した意識調査の項目には部落差別をことさら市民に意識させる項目が盛り込まれており、実態もない部落を温存させていくことにならないか、今後このような調査を続けていくのか?市の見解を求めます。

答弁

本市が昨年度実施しました「人権についての市民意識調査」におきましては、様々な人権問題に関する項目を設けておりますが、国において、いわゆる人権三法と呼ばれる「障害者差別解消法」、「ヘイトスピーチ解消法」、「部落差別解消推進法」が制定されたことを受け、特に「障害者」「在日韓国・朝鮮人」、「部落出身者」の人権問題について、詳しい設問を設け、市民意識の把握に努めたところでございます。この意識調査の結果においても、依然として結婚をはじめとした部落差別意識が解消されていないことが明らかになっておりますことから、引き続き市民意識の把握に努め、状況に応じた適切な啓発等を講じる必要があると考えております。(以上)

以上で第2問を終わります。

第3登壇

答弁いただきましたが、私たち市議団と市の見解が大きく異なるところです。議論を今後とも大いに尽くしていかなければならないと思います。議員団はこの人権問題について、全戸ビラを用意しています。さらに人権シンポジウムを年明けの1月18日午後2時からハーティ21で開催します。是非とも会派の違い、思想信条の違いをのりこえて大いに議論しようではありませんか。最後は意見、要望にとどめます。

まとめ

本当に「人権文化いきづくまちづくり条例」案、理念条例が必要なのか?様々な懸念があります。新たな「人権文化いきづくまちづくり計画」をつくる必要性があるのか。そのための審議会を設置することが、部落差別を固定化させることにつながるのではないのか。他の人権とは異次元の部落差別を他の人権問題と同列に扱っているのは大問題です。部落問題の解決策は、社会の成長と発展の中で自然に解決をはかるべきものです。取り立てて部落差別がまだ残されているという事を強調することは、新たに旧同和地域の存在をクローズアップさせることにつながるもので、真の部落問題の解決にはならないと考えます。また憲法との関係から市民の責務の条項を入れることは問題です。市民の責務を強調しているのは、その背景には政府の考え方が色濃く反映しています。人権問題が生じているのは、人権尊重の理念についての正しい理解やこれを実践する態度が未だ国民の中に十分に定着していないこととし、人権問題を国民の理解や態度、つまり心がけの問題としています。市民の責務を強調し、挙句の果てには市の人権施策に協力する義務を負うとまでしています。国民に責務があるなどという考え方は行政の側の勝手な解釈です。国民の内心の自由を踏みにじるものです。部落差別の解消は市民の間で自然に解決していく方向にこそ転換するべきです。また、「人権文化いきづくまちづくり条例」案は、人権問題に市がどう向き合うのかが問われています、これまでの延長線上ではなく、憲法問題でもあることをとらえて、様々な人権が守られ保障される、具体的な施策こそ実行する市政にしていかなければならないと思います。以上で、私のすべての質問を終わります。