日本共産党議員団の辻おさむです。週末金曜日・夜の人出でにぎわうフランスのパリ市内で無差別テロが発生し、コンサートが開かれていた中心部の劇場とその周辺や、サッカーの試合が行われていた北部の競技場付近などで死者129人、負傷者352人が犠牲となりました。罪のない市民を無差別で殺害した大量テロを厳しく糾弾するとともに、犠牲者の家族や関係者に心からの哀悼を表するものです。一般市民の生命を奪う無差別テロは、国際社会にとっての重大問題であり、いかなる口実や背景があろうとも許されません。 しかし、戦争でテロはなくせません。2001年のアメリカ同時テロによるアフガニスタン報復戦争以降、世界のテロによる死者は10倍に増えています。テロと戦争の悪循環をやめることこそ、国際社会の急務です。国際社会が一致結束して、①テロ組織への資金供給の遮断など直接の対策、②貧困と差別などテロの土壌をなくす、③シリアとイラクの平和と安定をはかる、④シリアなどの難民への支援を行うことが大切だと考えます。 安保法制=いわゆる戦争法は廃止し、憲法9条を守り、戦争しない国として平和貢献することが、日本の役割だと表明しておきます。それでは、質問に入ります。
TPP=環太平洋連携協定「大筋合意」について、まずTPP=環太平洋連携協定についてです。安倍政権は、10月5日、日本、アメリカなどが参加する環太平洋連携協定(TPP)交渉に「大筋合意」したと発表しました。「合意」までは、何についてどう話し合われているのか、交渉の中身は一切秘密にされてきました。「大筋合意」したと発表された後も、「概要」や各分野への影響が小出しに発表されるだけで、まとまった説明はありません。11月初めには交渉参加の12カ国で協定案が発表になりましたが、安倍政権のTPP対策本部が国内向けに日本語で発表したのは相変わらず「概要」だけです。しかも、安倍政権は、野党が憲法にもとづいて要求した臨時国会の開催にもこたえず、TPPについては衆参両院の予算委員会でそれぞれ1日だけ閉会中審査が行われただけです。協定そのものは各国政府が調印した後、批准のために国会に提出されるとなっており、日本では来年の通常国会になる予定です。そこで伺います。
Q、政府の発表は、まだ、このような状況ですが、TPPの尼崎への影響は、どのように考えているのでしょうか? 市長の考えをお聞かせ下さい。
また、地方自治体に関連しては、「投資家対国家間の紛争解決条項」=いわゆるISD条項があります。 ISD条項は、進出先の国の政策・制度変更などで損害を受けたとする外国企業がその国の政府を相手取って損害賠償などの訴訟を起こせる制度で、国家主権が侵害されるとの批判が強く、日本とオーストラリアの経済連携協定(EPA)では見送られた条項です。すでにアメリカ合衆国とカナダ間をはじめ、いくつかの国で取り入れられており、さまざまな係争事件がおき、その経費も膨大です。カナダの州や、アルゼンチンの州が訴えられた事例、あるいは、メキシコのアカプルコ市と締結した契約など、自治体が訴えられた事例もあります。尼崎市も、PFI事業や、エコリフォーム事業で、市内経済活性化を目的に市内企業優先の措置をとってきました。これらが訴えられないとも限りません。そこでお尋ねします。
Q、ISD条項の詳細はまだ明らかではありませんが、尼崎の公共事業入札への影響をどのように考えておられるでしょうか? お答えください。
TPP条文案のISD条項について、内部告発サイト「ウィキリークス」は今年3月、TPP交渉の投資分野の条文案とする資料を公開しました。TPP反対運動を広げる米消費者団体パブリック・シチズンは、暴露された文書は本物と確認できたと発表、「米国の法律を超える特権を企業に与える条項だ」と撤回を求めました。米国内では今年に入り、有力な労働組合や市民団体が、TPPは雇用や暮らし、食の安全、人権を脅かすとして反対運動を急速に広げ、ニューヨークなど15自治体で反対決議を上げています。ニューヨーク・タイムズは「米国の左派も右派も反発するだろう」と伝え、アメリカ議会の与党議員からも懸念の声が上がっています。米最大の労組全国組織、労働総同盟産別会議は、為替操作対策の欠如やISD条項などをTPPの欠陥と指摘しています。また、人権問題を担当する国連の特別報告者や専門家10人は6月2日、TPPを含む自由貿易協定や投資協定について、健康保護、食品の安全、労働基準に閲する基準を引き下げ、医薬品を独占する権益を企業に与え、知的財産権の保護期間を延長することなどによって、人権の保護と促進に逆徊する影響をもたらしかねないなどの懸念を指摘しています。もともと自民党は2012年の衆院選挙=民主党から政権を取り戻した選挙ですが、その時には、「TPP断固反対。ウソつかない自民党」という公約を掲げました。しかし、政権に復帰したとたん、公然と投げ捨て、安倍政権はTPP交渉への参加を表明しました。その際、「聖域は守る」と胸を張り、衆参の農林水産委員会でも、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、「除外ないし再協議の対象とする」などとする決議をおこないました。今回の「大筋合意」は、自民党の公約からも、国会決議からも、逸脱したものです。しかし、「大筋合意」は最終決定ではありません。各国で批准しなければ発効しません。アメリカでも大統領選挙を控え、難しいとさえいわれています。そこでお尋ねします。
Q,問題が多く、農業や市民の安全を危うくするTPPは、批准しないよう国に求めるべきではありませんか? 市長の見解をお答えください。
「下流老人」について
次に、最近よく耳にする「下流老人」について伺います。市長は、夜のスーパーで、買い物されたことがありますか。見切り品の値引き時間になると、多くの高齢者が列をなすのは、普通に見られる光景となっています。「下流老人」とは、埼玉県で生活困窮者支援を行うNPOで活動してこられた藤田孝典さんが作った言葉で、その著書では「下流老人」を「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義されています。文字通り、普通に暮らすことができない「下流」の老人を意味する言葉です。昨年、NHK番組で「老後破産」の問題が取り上げられましたが、「下流老人」は、それに至る原因と実態にせまったものだと思います。藤田氏は、下流老人の具体的な指標として、3つの「ない」を挙げています。①収入が著しく少「ない」、②十分な貯蓄が「ない」、③頼れる人間がい「ない」=いわゆる「社会的孤立」の3つです。そして、社会的にあたえる悪影響として、①親世代と子ども世代が共倒れする、②価値観の崩壊、③若者世代の消費の低迷、④少子化を加速させる問題を指摘しています。藤田氏によると、40歳代前半のサラリーマン世帯の平均給与は、平成25年度の国税庁・実態統計調査では、年間568万円。一方、総務省の平成26年度家計調査では年間の実支出は492万円。さしひき、手元に年間76万円が残ることになります。しかし、たとえば、親に月5万円の援助をすると年60万円が必要となり、手元には17万円しか残りません。これでは、老後の蓄えができなくなります。つまり、子ども世代が共倒れすることになり、「高齢者はお荷物」「大事にされない」という価値観の崩壊を生み出し、老後に備えるため、若年世代が消費を控えて貯蓄をしたり、教育費等の負担が増えるので結婚や子育てをあきらめる―という推論です。一定、「あたっているかな」と思います。問題は、「下流老人」になる危険は、一部の人だけの問題ではなくて、それなりの収入と仕事をしていた人も例外ではないということです。銀行員や大企業の社員であっても、「下流老人」になる可能性はあります。高齢期の収入の大半は年金であり、生活費の不足分は、働いたり、貯蓄の取り崩しとならざるをえません。厚生労働省の「平成25年国民生活基礎調査の概況」によると、全世帯の1年間の平均所得金額が537万2000円なのに対し、高齢世帯の平均は、309万1000円です。その差は約230万円、高齢者になると所得が現役の頃よりも激減します。ただし、309万円は平均であり、中央値は250万円、月にして21万円です。一方、平成26年総務省「家計調査報告」によれば、高齢期の2人暮らしの場合の1か月の生活費平均は、社会保険料などをすべて込みで約27万円です。つまり65歳になった時点で、仮に年金やその他の収入が月約21万円あったとしても、不足分の6万円を毎月取り崩すと、貯蓄額が300万円では約4年で底をつき、1000万円あったとしても、14年弱しかもたず、最終的に貧困に陥る可能性があります。その上で「想定外の事態」が起これば、たちまち「下流老人」になってしまいます。藤田氏は、高齢者支援の経験から、「下流老人」にいたる経過をパターン化しています。パターン1は、病気や事故による高額な医療費の支払いです。平均寿命が延び、長寿命になればなるほど、病気になる可能性が高くなるのは当然です。パターン2は、高齢者介護施設に入居できないということです。お金がなければまともな介護も受けられません。パターン3は、子どもがワーキングブア(年収200万円以下)や、引きこもりで親に寄りかかる状況になることです。2013年の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、20~64歳で得られる賃金は、正規雇用で約2億2432万円、非正規雇用では約1億2104万円で、差は1億328万円もの大きな賃金格差があります。「ブラック企業」や、非正規雇用の増加は、現在の高齢者世帯に援助できないばかりか、将来の「下流老人」を生み出す原因にもなります。パターン4は、増加する熟年離婚です。二人世帯でなんとか生活できる年金でも、離婚で1人世帯になると受け取る年金もへってしまいます。離婚でなくても、死別や未婚など一人暮らしの高齢者世帯が増えることは、まさに要注意です。パターン5は、認知症でも周りに頼れる家族がいない場合です。先日、私のもとへ相談に来られた方は、70歳を超えたお母さんでした。腰を悪くして仕事を休み、健康保険の相談でこられたのですが、聞いてみると、離婚し、51歳の息子さんと住んでいるけれど、その息子さんは、小学校のときのいじめが原因でひきこもったまま、お母さんがシルバーで働いて月5万円の収入で、3万円の家賃を払って生活をされていました。その上、病気で働けなくなっては、生活が続けられません。すぐに生活保護の手続きをすすめました。こうしてがんばっておられる市民も多いと思いますが、すでに「自己責任」で解決できる枠を超えています。そこで、お尋ねします。
Q、尼崎市内で生活保護に占める高齢世帯の割合は、どれぐらいでしょうか?
Q、また尼崎でも高齢者人口が増えるという予測ですが、将来の生活保護世帯の推移をどのように見ているのでしょうか? また、その対策は、どのように考えているのでしょうか?
Q、さらに、市内の生活保護相当で暮らす高齢世帯数=「下流老人」は、どれぐらい居るのでしょうか? また、将来の推移はどのように見ているのでしょうか? お答えください。
住宅政策について
次に、住宅政策について伺います。住宅政策については、市営住宅の建て替えや、空家対策など、どの自治体でも大きな課題となっています。まずお尋ねします。
Q、先日行われました秋の市営住宅募集の戸数と、応募件数は何件だったでしょうか?お答えください。
さらなる「アウトソーシングの導入方針」について
次に、「更なるアウトソーシングの導入に向けた基本的方向」について伺います。地方公務員のなかで、臨時・非常勤職員=いわゆる「非正規公務員」の数は、総務省調査によると2005年に45万5840人でしたが、2012年には60万3582人と増加の一途をたどっています。 こうしたなかで「官製ワーキングプア」が問題になってきています。非正規職員の比率が関西地方で最も高いのが、和歌山県・太地町の58.7%、市では、滋賀県・草津市の48.5%、兵庫県内では、淡路市の45.1%です。合併をした市は非正規比率が高いと言われています。 尼崎市は、32.8%。一見、他都市より多いとは言えませんが、尼崎市は、他都市に先駆けて、民営化、民間委託をすすめた結果、人数さえ掌握できない公務労働に従事する民間労働者が増えています。経営再建プログラム、行財政構造改革推進プランと、10年以上にわたって「行革」をすすめた結果、現在の尼崎市の正規の公務員は、3161人であり、中核市で比較しても決して多いとは言えません。さて市長は、今年10月に「更なるアウトソーシングの導入に向けた基本的方向」を発表されました。「基本的な考え方」として、「あらためてすべての分野においてアウトソーシングの導入について検討する」、また「各課で行われている事務事業については、原則としてすべての課の業務を対象に業務の分析を行い、効率的な業務執行体制の構築に向けた検討を行うととともに、行政でなければ執行できない業務を除き、基本的にアウトソーシングを導入する方向で検討を行う」としています。そこでお聞きします。
Q,さらなるアウトソーシング=民間委託を検討する目的は何でしょうか?お答えください。
また、「基本的方向性」では、業務を、①専門・非定型業務 ②専門・定型業務 ③単純・非定型業務 ④単純・定型業務の4つに分類し、「専門・非定型業務」については行政が実施しなければならない業務とし、「専門・定型業務」「単純・非定型業務」について、アウトソーシングの是非の「検討を行う」としています。お聞きします。
Q,アウトソーシングの対象となる「専門・定型業務」「単純・非定型業務」とはどのような業務を指すのか、想定しているのか? 例を示していただきたいと思います。
さらに、「単純・定型業務」については、これまでかなりアウトソーシングが進められてきましたが、単純労働業務については、「すべての業務をアウトソーシングの対象として今後検討を行う」としています。お聞きします。
Q,「単純・定型業務」についても、どのような業務を指すのか、例を示してください。
また最後に、「アウトソーシングによって生じる人員については」「事務職等への職種替えだけでなく、他の方法も視野に入れた人事給与制度の改正も含めた検討を行う」としています。お聞きします。
Q,「他の方法」とは、何を想定しているのでしょうか? 退職強要の肩たたきや、生首を切ることは、あってはならないと思いますが、そのようなことは絶対しないと考えていいのでしょうか?お答えください。
次に、災害時の対応はどうなるのかという問題です。 東日本大震災で、東北・関東の自治体が大きな被害をうけました。 とくに農漁村部では、平成の大合併で自治体職員を減らした上に、自治体職員も大きな被災をうけ、避難対策や、救援・復旧活動が十分できず、全国の自治体から応援をもらうことが行われました。南海トラフ地震は、近い将来、必ず来ます。そのときに、どれだけの職員と体制が必要になるのでしょうか。お聞きします。
Q,東日本大震災における東北・関東の自治体での職員数、職員の役割について、市長は、どのような教訓をもっておられるのでしょうか?
Q,南海トラフ巨大地震ふくめ、災害時に対応できる職員の適正人数は何人とみているのでしょうか?
Q,業務委託した民間事業者の大規模災害時の責務は、どのように規定するのでしょうか?
Q,災害時に、民間事業者の労働者は、市職員になり変わって役割を果たすことができるのでしょうか?答弁をお願いします。
第2登壇
ご答弁、ありがとうございます。コメントについては、項目ごとに申し上げます。第2問に入ります。
(住宅政策第2問目)
まず、住宅政策の2問目です。今年の8月、神戸大学の平山洋介教授のお話を聞く機会がありました。これまで貧困問題については、雇用対策・社会保障問題として、議論されてきました。平山教授は、日本の住宅政策を研究され、とくに貧困問題を住宅の観点からアプローチされています。平山教授の指摘は、私も、大いに共感できました。低所得者の住宅問題は、若年世帯、高齢世帯、単身世帯が課題だということでした。かいつまんで紹介します。 住宅がないと、職探しも、生活もできない点では、まさに「住宅は福祉」です。戦後、地方から都市部に若い人たちが集まり、多くは安いアパートなどに住んだのですが、高度成長期には、「若い時に給料が少なくても、やがて家が買えるだろう」「やがて家族を持つだろう」という前提で、「中間層の家族」が「家を買う」。それを助けるのが日本の住宅政策の根幹でした。ところが、低成長、超高齢化になり、その条件がなくなってきているのに、政策的には大きな変化がありません。それどころか、低所得者向けの政策は、どんどん削られる一方です。日本は、国際的に見て、借家に対しての住宅政策が弱いというのが特徴です。公的賃貸住宅の割合は、イギリス21%、フランス17%、オランダ35%、スエーデン18%です。ところが日本は6%~5%です。一方、公的な家賃補助での住宅手当受給世帯は、イギリス16% 、フランス23% 、オランダ14%、スエーデン20%です。日本には、生活保護以外には、ほとんどありません。ヨーロッパでの低所得者むけ住宅政策は、公的賃貸住宅と家賃補助です。日本は、公的賃貸住宅と家賃補助のいずれも極めて低く、低所得者向け・単身者向け政策が、「ない」というのは、OECD諸国の中でも珍しい存在です。それでも、日本の社会が成り立っているのは、家族や企業が大きな役割を果たしているからです。企業の社宅や寮など「給与住宅」は減ったとは言え、2013年では112万戸あり、あるいは住宅手当が支給されるところもあります。家族の役割はどうでしょうか。ホームレスの自立支援などをしているNPO法人ビッグイシュ―基金が首都圏と関西圏に住む、年収200万円未満、20歳~39歳、未婚の1767人にアンケート調査をして、平山教授が結果分析を担当されました。77%が親と同居しています。雇用形態は、パート・アルバイト・臨時・日雇が38%、無職が39.2%です。年収は200万円以下ですが、ゼロと年収50万円以下で半数の49.6%。月収のうち、住居費が占める割合は、60%以上の人が21%もおり、住居費を払うと手元に残らないという人が27.8%もいます。親と同居している人の82%は、ずっと親の家に住んでいますが、18%の人は、いったん独立したけれど、また親の家に戻ってきた。親同居の理由は53.7%が「住居費を負担できない」というものです。その結果、「結婚の予定がある」「結婚できると思う」というのは9.1%で、「結婚できるかわからない」が20.3%、「できないと思う」「したいと思わない」は、52.9%にもなっています。若年者が住居費負担ができないため、親と同居せざるをえず、結婚もできない実態があります。そこでお尋ねします。
Q,少子化対策としても、こうした現状を打開していく上で、若年者にたいする住宅対策が必要であり、少なくとも検討すべきと思いますが、市長の考えをお聞かせ下さい。
次に、高齢者の問題です。今のお年寄りが現役の時は、仕事をし、家を買ってローンを払ったり、家を借りて家賃を払うことができました。最初に言いましたように、戦後日本の住宅政策の根幹は、「中間層の家族」が「家を買う」のを助けることでした。日本の年金制度は、「高齢者が住居費を負担しない」と言う前提で設計されていると思われます。国民年金は、最高でもわずか6万5000円程度です。これで家賃を払うのは大変きつい金額です。アウトライト住宅」という言葉がありますが、ローンを払い終わった住宅のことで、住居費の負担が少なくてすみます。日本の高齢社会が成り立っているのは、この「アウトライト住宅」があるからです。言い換えると高齢期までに家を買って、ローンを払い終わらない限りは、異常に危険な状況になるというのが日本の社会の現実だということです。2005年の国勢調査をもとにした65歳以上の「高齢世帯の住宅所有形態」の資料があります。全体で、持ち家が83.2%、民間借家が9.3%ですが、尼崎の場合、民間借家は、もっともっと多いと思います。持ち家は、2人以上世帯では88.6%ですが、単身世帯だと64.9%になります。民営借家では、2人以上世帯で5.9%と低く、単身世帯では20.6%、中でも未婚の単身世帯は34.4%にもなっています。民営借家の世帯年収は、68.8%が300万円未満で、1か月あたりの住居費は、持ち家世帯の78.9%が3万円未満なのに対し、民営借家で3万円未満は23.1%で、3万から5万円が36.6%、3万円から5万円が20.9%と、年収が低いのに住居費負担が重く、その結果、収入にたいする住居費の負担割合が25%を超える世帯が64.3%も占めています。これだけ見ても、いつでも「下流老人」になる資格は十分です。ヨーロッパでは、「公的住宅」と「家賃補助」が主流です。 さて、尼崎市の住宅マスタープランでは、市営住宅の戸数を9000戸まで減らし、さらに公共施設30%削減の計画に合わせて、さらに削りこむ方針です。しかしこれは、市の財政事情からでた方針で、市民の実態から出たものではありません。そこでお尋ねします。
Q,「下流老人」予備軍の推計など、市民生活からみた必要戸数を、類似都市などの比較ではなく、尼崎市独自の状況からみた必要戸数を検討したのでしょうか? 検討していないのであれば、すべきだと考えますがいかがでしょうか?
第1問の質問に対し、ご答弁は、秋の市営住宅の募集は、(146)戸にたいして応募が(1301)ということでした。つまり(1155)世帯=88.8%の人が、市営住宅への入居を希望しても入れないということです。尼崎には、民間の空き借家がたくさんあります。それなのに、どうして市営住宅に、これほど多くの人が申し込むのでしょうか?先日、市営住宅建替え事業等に伴う民間住宅移転促進策が創設されました。建替え住宅に限っての制度ですが、市営住宅と民間借家との平均家賃の差額の3年分を退去加算移転料として支払うというものです。差額の月額は2万円だということです。市営住宅の募集とは、いったい何なのでしょうか? 住宅が足りないのではありません。家賃の安い住宅に入りたいから申し込む人が多いのではないでしょうか。市営住宅の募集とは、安い住宅に入れる人と、入れない人を、「振り分ける作業」だともいえるものです。入れなかった人は、引き続き、月2万円も高い家賃を払い続けてください、ということです。市営住宅入居基準に合致する世帯に「家賃補助」があってしかるべきではないでしょうか。ここで、大阪府・高槻市の「ひとり暮らし高齢者家賃助成」について紹介します。これは、一定条件を満たす1人暮らし高齢者に家賃補助をするものです。条件は、①住民基本台帳に記録されており、市内に引き続き3年以上居住している、②満65歳以上で、ひとり暮らし ③家賃の月額が17,000円以上~50,000円以下 ④前年の収入総額が158万円以下、⑤他の公的家賃助成を受けていない、⑥自ら住宅を借り、家賃を支払っている、⑦現に生活保護を受けていない という条件です。補助の支給額は、家賃が月額17,000円以上~22,000円未満は月額5,000円の補助、家賃の月額22,000円以上~50,000円以下は、月額10,000円の補助となっています。お尋ねします。
Q,高槻市を参考に、「家賃補助制度」をつくるべきだと考えますが、いかがでしょうか?
お答えください。もちろん、財源がいりますし、尼崎だけで解決するには荷が重すぎます。
Q,国は生活保護になれば、住宅費をふくめ面倒をみてくれますが、生活保護や「下流老人」になることを避けるための制度がありません。せめて国にも「家賃補助制度」を求めるべきだと考えますが、市長の見解をお答えください。
神戸大学の平山教授によれば、ヨーロッパの住宅家賃補助は、福祉制度と言うだけではなくて、空家をなくして、家主さんが、借家を補修するインセンティブになることを狙っているとのことでした。ヨーロッパでは100年を超える住宅が今でも使われています。先日、建設企業委員会で、豊橋市の「空家バンク」を視察してきました。豊橋市では、現に居住していない、もしくは近く居住しなくなる予定の住宅の「空家データベース」を庁内で作成し、貸したい・売りたい人と、借りたい・買いたい人をコ―ディネイとした上で、「空家バンク」の補修費補助金制度を設けています。1年以上空家であることや、新たな借家人や購入者が3年以上住むこと、賃貸契約が成立していることなどを条件に、改修費補助金として50万円を限度に経費の2分の1を補助する制度です。お尋ねします。
Q,豊橋市の「空家バンク」を参考に、空家の活用を目的とした「空家リフォーム助成制度」をつくってはいかがでしょうか。見解をお答えください。
(アウトソーシング第2問目)
次に、「さらなるアウトソーシング」についてです。アウトソーシング=民間委託を検討する目的は( )ということでした。そして、「専門・定型業務」については、( )(中間報告―戸籍・住民基本台帳事務、会計・出納、窓口業務など)「単純・非定型業務」については、( )(中間報告―庁舎案内、物品調達、庶務事務、ホームページの作成・運営など)「単純・定型業務」については、( )ということでした。(中間報告―清掃、給食調理、庁有車運転など )かなり、多岐にわたる業務が対象となります。「アウトソーシングの基本的方向」では、これまで民間委託した「単純労務業務」の例として、一般家庭ごみの収集業務、市立小学校給食調理業務が挙げられていました。しかし、これらは「ゴミを集めればいい」「給食を調理すればいい」という単純なものでしょうか。学校給食は教育の一環に位置づけられるものです。ゴミ収集を通じて、高齢者の安否確認などに協力してもらっている自治体もあります。「単純労務」だという見方は、これらの教育資源、福祉資源を切り捨てるものだと指摘しておきます。さて、さらなる民間委託化の目的は、歳出改革・効率化が大きいと思います。もちろん改革は進めなくてはなりません。しかし、財政効果、経費削減を期待してのことであれば、民間委託化によって、低賃金の労働者を生み出すことが心配されます。そこでお尋ねします。
Q,民間委託化は、官製ワークングプアの製造、「下流老人」予備軍の醸成にならないでしょうか?
Q,ならないとしたら、その歯止め、対策はどのように考えているのでしょうか?
Q,また、事務事業全体を見直すのであれば、民間委託の在り方、とくに公契約の在り方、場合によっては、公契約条例もふくめて、同時に検討すべきではないのでしょうか?市長の見解をお答えください。
第3登壇
第3問は要望です。(TPP )TPP大筋合意について、1回目登壇でのご答弁は( )ということでありました。尼崎の農業への影響は小さいかもしれませんが、日本の農業全体が壊滅的な影響を受けることが懸念されています。また、TPPの影響は農業分野だけではありません。関税が撤廃され、輸入食品が増加すると、食の安全への懸念が高まります。TPP交渉のなかの日米協議では、日本で認められていない食品添加物の承認について、日本が取り組むことが「合意」文書に明記されています。アメリカの巨大農産物企業が、遺伝子組み換え食品の表示義務の規制緩和を要求しており、「食の安全が脅かされる」ことになります。とくに子どもたちへの影響が心配されます。卸売市場で卸売業者が突然廃業した時に、正月に市内農業者にお願いをしまくって、その協力で乗り切ってきました。尼崎の農業をつぶしてはなりません。充分に注意をしていただきたいと思います。
(アウトソーシング)
次に、「さらなるアウトソーシングの基本的方向」についてです。各業務を4分類にするのは「日本公共サービス研究会」の中間報告にもとづいたものです。同研究会は、「外部化推進を取り巻く諸課題に対処するため」として、2012(平成24)年7月に自治体の任意研究会として設立され、全国150の自治体が参加しているとのことです。「中間報告」は、幹事団体の東京足立区が2013年(平成25)年6月にまとめたものです。その「中間報告」から半年後の、昨年1月に足立区は、全国に例のない戸籍業務の5割もの大規模な外部委託を実施しました。「待ち時間半減」「コスト削減」とのうたい文句です。ところが、実施して見ると、「5分でできていた手続きに3時間待ち」「受理されていた申請が受け付けてもらえない」などのトラブルが相次ぎました。実施から半年後の6月、足立区長は、「区民を混乱させた」と謝罪し、コストも1100万円増加したことも明らかにしました。そして、戸籍受付窓口の大半を「区の直営に戻す」として、戸籍業務の包括的委託を事実上撤回しました。その間に、東京法務局は、公務員しかできない判断業務=受理決定などを民間事業者が行っていると戸籍法違反を指摘。また、東京労働局は、民間事業者が区の指示で業務を行っている現状は「偽装請負」だと是正指導を行いました。幹事団体の足立区ですら、この状態ですから、しっかりリスクも見据えて「アウトソーシングしない」という選択も大切だと指摘しておきます
(下流老人)「住宅政策」
さて、今回は「下流老人」「低所得者に焦点をあてた住宅政策」を取り上げました。かつて、高度成長期には、「1億総中流」社会と言われました。バブル経済が崩壊し、日本経済は低迷。失われた20年と言われます。自己責任、競争社会、規制緩和を特徴とする新自由主義的な改革は、富める者はより裕福に、貧しいものは、より貧困に拍車をかけ、貧富の格差を拡大し「ワークングプア」と「下流老人」を生み出してきました。そして、いまや「1億総下流老人予備軍」となっています。ご答弁では、「下流老人」について( )ということでした。高槻市で実施されている高齢者むけ家賃補助についても( )でした。無理もありません。財政が厳しいのですから。しかし、だからといって「下流老人」に目をつぶっていいのか、「さらなるアウトソーシング」で「官製ワークングプア」を増やすことになってもいいのか、ということもしっかり考えていただきたいのです。尼崎だけで、できるとは言いません。国の政治そのものも問われているからです。神戸大学の平山教授は、「ジャパン・シンドローム」という特集を、イギリスのエコノミー紙が一昨年ぐらいに行い、国際的に大きな注目を集めたことを述べられました。「人口が減少する」「高齢化率が高くなる」「労働力が減る」「低成長だ」というのは、日本は先進国の中でも「大変だ」と言う特集であり、その中での、もう一つのメッセージとして、「低成長・高齢化の中で、日本がどんな社会を作るのか」を注目しているということでした。少なくとも「日本のような国になるな」という評価にならないように、対症療法だけでなく、市民の暮らしの実態をしっかり見据え、将来に希望が持てる施策を推進されるよう希望して、私のすべての質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。