2014年6月議会一般質問 徳田稔:県立塚口病院跡地の活用ほか4項目

2014年6月13日 徳田稔

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2014年6月議会 徳田稔の一般質問と答弁

6月市議会で6月13日(金)午前に一般質問をしました。
一般質問と答弁の全文を掲載します。

  1. 県立塚口病院跡地の市有地の活用
  2. 国民健康保険の広域化・都道府県単位化について
  3. 市税、国保料などの滞納整理のための差し押さえ
  4. 住宅リフォーム助成制度の創設について

県立塚口病院跡地活用

 現在、県立尼崎病院と塚口病院を統合して、(仮称)県立尼崎総合医療センターが2015年5月開院めざし、旧市立産業高校跡地に建設が進んでいます。そして救命救急医療や周産期医療などの充実に期待されています。

 兵庫県は、市民からの強い要望と「統合再編基本計画」に基づいて、今年3月24日に県立尼崎病院・塚口病院跡に「医療・福祉を展開する事業者の募集」を発表しました。

 尼崎病院は現存の土地・建物を、新病院からの患者受け入れに対応できる170床程度の内科を主な診療機能の病院事業者に売却する。病院以外の施設については、介護老人保健施設などの介護・福祉施設を含む「健康・福祉・医療の向上」につなげる提案を含めるとしています。

 また、塚口病院は建物を解体して土地のみ、内科を主な診療機能とする病院事業者に売却もしくは賃借する。病院以外の施設については、介護老人保健施設などの介護・福祉施設を含む「健康・福祉・医療の向上」につなげる提案を含めるとしています。

 兵庫県は、県立尼崎病院、塚口病院跡地への提案申し込みを5月30日に締め切りました。そして提案書類の受付が6月26日までに行われ、提案審査の事業予定者の決定を7月中旬に行い、10月下旬に契約締結となっています。

 県立塚口病院の敷地の3分の1、約5060平方メートルは市有地です。昨年9議会の一般質問で私は、県立塚口病院の跡に、老朽化している医療センター休日夜間急病診療所の移転に活用を提案しました。

(質問)

 そこでお尋ねします。兵庫県は、県立塚口病院跡地を医療機関などへの活用をすすめています。県立塚口病院の敷地の3分の1、約5060平方メートルの市有地部分を活用して、老朽化している医療センター休日夜間急病診療所への建て替えをすすめてはと思いますが、市長の見解を求めます。

(答弁)

 県立塚口病院の市有地部分につきましては、市としましても、県有地の決定に合わせ、方針決定を急ぐ必要があると認識しており、県の跡地活用の内容を踏まえ、それと整合性のとれた、活用方法を念頭に置き、最終的に決定してまいります。

 なお、当該用地を休日夜間急病診療所の移転先とすることも候補の一つとして、検討しているところです。

国民健康保険制度の広域化

 昨年8月に、国の社会保障制度改革国民会議が報告書を出しました。それを受けて国民健康保険の制度の広域化・都道府県単位化について国と地方三団体、全国知事会、市町会、町村会は、1月から「国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議」を開きました。財政上の構造問題の分析と解決方策、都道府県と市町村の役割分担について協議し、7月をめどに中間まとめを行うとなっています。社会保障制度改革のプログラム法では2017年を目途に広域化へ移行となっています。

 昨年9月議会で、会派議員の国民健康保険の広域化・都道府県単位化への質問に、市民協働局長は、「国民皆保険制度を維持するためには、国保の都道府県単位の広域化は避けて通れないものと考えますが、国保財政基盤の安定化や保険料に係る国民負担に関する公平の確保など、議論すべき事項も多いと考えております」と答弁されています。

(質問)

 そこでお尋ねします。国民健康保険制度は市民に身近な運用で、市民の健康状態が手のひらにのる事業などができるように努めることが必要であると考えます。広域化、都道府県単位化では、市民に身近な運用や、これまで保険料の軽減や独自の施策のための国保への一般会計からの繰り入れもできなくなります。そのため国保広域化は避けるべきであると考えますが、あらためて市長の見解をお聞かせください。

(答弁)

 国保運営主体の都道府県単位化について、国保財政基盤の安定化が優先課題となっており、具体的には、市町村国保が抱えている構造的問題として、①低所得者が加入が多い、②年齢構成が高い、③所得に占める保険料負担が重い、などの課題がございます。

 こういった課題解決にむけ、現在、政府、地方代表による国保基盤強化協議会で指摘の点も含め具体的な協議がなされており、7月を目途に中間的とりまとめがされる予定となっております。

 将来にわたり、国民皆保険制度を維持するためには、保険の一元化が本来望ましいと考えますが、その第一歩として、国保の都道府県単位化は、避けては取組であると考えており、このことにより、国保財政基盤の安定化をめざすものでございます。

 県国民健康保険連合会が運営主体となる「高額医療費共同事業」と「保険財政共同安定化事業」があります。これらの事業は県下の保険者の再保険制度となっています。

 「高額医療費共同事業」はレセプト1件あたり80万円を超える医療費を、国保、国庫負担、都道府県負担を拠出し、プールして運用します。

 「保険財政共同安定化事業」はレセプト1件あたり30万円以上80万円未満の医療費を国保から拠出し、そして給付を受けます。

 国民健康保険の広域化・都道府県単位化への第1歩として、2015年来年4月から、この「保険財政共同安定化事業」をレセプト1件当たり30万円以上であったものを1円以上に、つまり対象がすべての医療費に拡大されます。これは事実上の「給付の広域化」であります。

 国保から「保険財政共同安定化事業」への拠出金と医療交付金の差が、国保財政に大きく影響を及ぼすことになります。今回、兵庫県は拠出金を被保険者割り50%、医療費割50%で試算しています。大阪府、京都府、滋賀県では所得割を加味して試算されています。所得割が加味され、その割合が高いほど、低所得者の多い市町村は拠出金が少なくなります。

(質問)

 お尋ねします。2015年4月から保険財政共同安定化事業をすべての医療費に拡大するにあたり、拠出金の計算に所得割を加味するよう、求めるべきと思いますがいかがでしょうか。

(回答)

 国が定める保険財政共同安定化事業の拠出方法については、対象事業費に医療費実績割50%及び被保険者割50%の割合での拠出となっておりますが、県が広域化等支援方針(兵庫県:財政安定化支援方針)で特別の方法で定めた場合、ご指摘の所得割による拠出もできるものとなっております。兵庫県の場合は、現在、国の基準に沿った拠出方法をとっております。

 本市といたしましては、24年度に兵庫県が支援方法を見直しする際に、低所得者が多いという本市の状況を踏まえ、拠出金負担を緩和すべく、所得割の導入を県に意見具申しましたが、県内市町の意見の一致をみていないことから、採用には至っておりません。引続き、機会をとらえ所得割の導入を県に働きかけてまいります。

 今年度の国民健康保険料の決定通知書が6月11日から各家庭に送付されました。高い国保料に対し、悲鳴を上げている市民が国保課窓口へたくさん納付相談に訪れています。これまでも会派議員が繰り返し質問し、国民健康保険が社会保障制度であることを明確にしてきました。

 払いたくても払えない高い保険料に対して、尼崎市は厳しい財政だと言いつつも、一般会計から4億円繰り入れし、保険料が基準総所得の2割を超える場合の特別減免制度を設け、さらに2億円の繰り入れを行ってきました。

(質問)

 お尋ねします。国民健康保険の広域化・都道府県単位化で、これまで保険料軽減のために国保財政に繰り入れていた6億円を、引き続き保険料軽減のために使ってほしいと思いますが、いかがでしょうか。

(答弁)

 先ほどもご答弁申し上げましたとおり、現在、政府、地方代表による国保基盤強化協議会で、国保の都道府県単位化にむけての課題整理など、具体化に向けた協議がなされております。ご指摘の本市繰入金につきましては、協議会における保険料算定方法等の結果を踏まえ、検討を行ってまいります。

市税、国保料などの滞納整理のための差し押さえ

 市税や国民健康保険料などの納税、納付は誠実に行わなければなりません。そして市税や国保料を滞納し、納付をしない場合には滞納処分ができます。しかし、生活や事業の状況によって納税・納付が困難な場合もありますから、「納税緩和措置」の徴収の猶予、換価の猶予、滞納処分の執行停止などを活用し、滞納者の生活状況を把握したうえで滞納整理を進め、法律のルールに従って行わなければなりません。

 年金、児童手当、一定額の給料など、生活保障などのために社会政策的な配慮から差し押さえが禁止されている債権があります。

 2008年6月、鳥取市の自営業者の銀行口座に振り込まれた「児童手当金」13万円を、振り込み直後に、鳥取県東部県税局が自動車税・個人事業税、29万円の滞納処分として、それまでの口座残金73円とともに、13万73円を差し押さえました。

 児童手当が入金された預金に対して差し押さえ処分を行ったことに対し、昨年3月、鳥取地方裁判所は「児童手当も預金になったら差し押さえ禁止財産ではなくなるが、本件差し押さえ処分については権限を濫用した違法なものである」と預金の全額の返還を鳥取県に命じました。

 昨年11月、控訴審の広島高等裁判所は、さらに踏み込んで、「児童手当が預金になった後も、児童手当としての属性を失っていないので差し押さえ禁止の趣旨に反するもので違法である」とこの差し押さえを違法と認定しました。鳥取県は上告を行わず判決は確定しました。

 総務省は今年1月25日付けで、「平成26年度地方税制改正・地方税務行政の運営に当たっての留意事項等について」事務連絡を文書で都道府県税務担当課などに行いました。この連絡文書では「滞納処分をすることによって生活を著しく窮迫される恐れがあるときなどは、滞納処分の執行を停止することができると定めている。この規定を踏まえ、滞納者の個別・具体的な実情を十分に把握した上で、適切な執行に努めていただきたい」と指示しています。

 尼崎市の市税の滞納整理による差し押さえは、2009年から2013年の5年間合計で3462件、そのうち預金差し押さえは、1813件にのぼっています。

(質問)

 そこでお尋ねします。尼崎市が市税や国民健康保険料などの預金の差し押さえを執行するにあたって、確定した広島高裁判決をふまえ、過去にさかのぼって差し押さえ禁止財産が入金されていないか預金履歴を確認すべきと思いますが、ご答弁をお願いします。

(答弁)

 市税の滞納による差押えの執行にあたりましては、催告や警告文を送付した後、納付、連絡がない場合に実施しており、段階を踏んで行っております。

 また、金融機関へ預金口座の財産調査を実施する際には、直近3ヶ月の入出金状況が分かる資料も含めて回答を依頼しており、この調査結果に基づいて、可能な範囲で預金履歴を確認し、最も効果的と考えられる財産の差押えを執行しております。

 なお,差押え後に滞納者から申出があった場合は、その方の個別、具体的な状況を確認し、生活の維持を困難にすると考えられる時は、差押えを解除する場合もございます。

 国民健康保険料の徴収にあたりましては,減免等を適用しても、なお生活に支障が生じるといった方に対して、分納相談を行うことで個別事情に配慮しておりますが、一定の滞納額が発生した場合は、国税徴収法に基づく預金調査を実施しております。

 調査の結果、保険料を納付できる資力があると思われる時は、まず、面談にて、自主的な一括納付を求めておりますが、ご理解いただけない場合などは、やむを得ず差押事前通知などの文書を送付した上で、差押処分を行っているものでございます。

 なお,差押えにあたりましては、法で規定されている差押禁止財産に該当していないか、預金調査による入出金履歴の詳細を十分確認した上で実施しているところでございます。

 今回の広島高裁での裁判の主な争点は,「差し押さえ禁止債権であっても預金に入った後は差し押さえが可能かどうか」でした。これまで各自治体は、1998年の最高裁判決を根拠に、預金口座に入金されたら差し押さえ禁止債権も、通常の預金と同様に差し押さえが可能であるとしてきました。この最高裁判決は差し押さえの事案ではありませんでした。

 今回の広島高裁の判決は、最高裁判決を前提に考えたとしても、児童手当が預金になった後も「児童手当としての属性を失っていない」、したがって差し押さえ禁止の趣旨に反するもので違法であると明言し、鳥取県に返還を命じました。

 そして、鳥取県は滞納整理マニュアルを次のように「1、生活口座の認定は、月3.5回以上の入出金を繰り返す口座とする、3.5回未満の場合は、年金や児童手当の特定口座として差し押さえ対象外とする、2、預金の差し押さえを執行するときに預金履歴を原則3カ月間、確認する、3、差し押さえ禁止財産を含む場合は、その金額を控除して差し押さえる、4、差し押さえ後に納税者側からの申し出によって、自治体が差し押さえたものが、差し押さえ禁止財産であると特定が可能な場合や確認できた場合は、差し押さえを解除あるいは取り消す」と改訂しました。

(質問)

 そこでお尋ねします。預金の差し押さえを執行する場合に、鳥取県のように滞納整理のマニュアルを改訂することが必要と思いますが、市長の見解を求めます。

(答弁)

 預金の差押えに限らず、滞納整理を行うにあたりましては、滞納者の個別、具体的な状況をできる限り確認するよう努めております。

 また、先ほどもご答弁申し上げましたように、差押え後に滞納者から申出があった場合におきましても、生活を窮迫させることばないように、個別に対応を行っております。

 今回の広島高裁判決は、鳥取県が児童手当の振込先口座であると確認の上で、振込み直後に差押えを執行したことなど、いくつかの事実を積み重ねた結果、実質的には児童手当を受ける権利自体を差押えたと判断されたものであり、こういった特殊な事実関係に基づく判決をもって、一律に取り扱うものではないと考えております。しかしながら、本判決は、違法な差押えを示す事例として、実務の参考になるものと考えております。

 先ほども、ご答弁申し上げましたとおり、本市国保において差押えを執行する場合は、国税徴収法に規定された差押禁止財産の該当の有無について、入出金履歴の詳細を十分に確認しているところでございます。

 滞納者の事情は様々であることから、鳥取県のような対応を一律にマニュアル化するのではなく、これまでと同様、滞納者個人の生活実態等を把握するなかで対応してまいりたいと考えております。

住宅リフォーム助成制度

 今年度から、住宅エコリフォーム助成制度が創設されました。持ち家を対象として省エネ改修工事を実施し、また工事とあわせて創エネルギー機器を設置した場合に補助を行うものです。市長は2014年度の施政方針で「市内の事業者が施工した場合は、補助額を1.5倍として、市内業者への発注機会の確保などに努め、地域経済の活性化を図る」と述べられました。

 これまで会派議員が、繰り返し実施を求めてきた一般住宅に対する「住宅リフォーム助成制度」は、市内の事業者を利用して、自宅の改修や補修工事を行う場合にその一部を助成するものです。地域経済の振興と住環境整備を目的で実施するこの住宅リフォーム助成制度は、市内事業者への発注が条件のため、市内事業者の収入や雇用を増やし、それが市内で消費され、税収も確保されることにつながっていきます。つまり市長が重視されています地域循環型経済の構築につながっていきます。

 2012年9月の会派議員の一般質問に対し、経済環境局長は、「住宅リフォーム助成制度は,助成の対象工事業者を市内業者に限定することにより、受注機会を拡大することで一時的に経済波及効果は発生しますが、助成することが住宅リフォームの総需要をふやすきっかけとなるのか、そのための施策として最も適しているのか、また、一方消費者保護の観点から住宅リフォーム事業者の質の向上を図るなど多くの課題がある」と回答されています。要するに、住宅リフォーム助成制度では「総需要額は変わらず、住宅リフォームによる誘発効果は期待できないので地域経済に資することはできない」との見解であると思います。

(質問)

 そこでお尋ねします。今年度から実施の住宅エコリフォーム助成で、市内の事業者が施工した場合には、補助額を1.5倍にすることで、どうして地域経済の活性化に寄与すると言えるのか、その理由をお答えください。

(答弁)

 住宅エコリフォーム助成制度は、住宅を改修する単なるリフォームではなく、省エネ基準に適合する窓、屋根、外壁等の断熱改修工事や、その工事とあわせて、省エネに資する機器を設置する住宅に対する助成制度であります。

 この制度は、環境と産業の共生を目指す、尼崎版グリーンニューディール関連事業の一つとして位置づけ、市内事業者の場合には、補助額を1.5倍にするインセンティブを設けており、受注機会を拡大することで、地域経済の活性化につながるものと考えております。

 2014年度予算案に対する会派議員の代表質疑で、産業連関表の作成と活用を提案しました。市長は「今回、兵庫県と神戸大学が作成している「産業連関表」は、広く阪神間を対象としておりますが、本市の経済活動の実態の分析に,準用することが可能であるとも考えられます。このため、現在、尼崎地域産業活性化機構と、各種施策の効果を測る手法の一つとして、共同研究を行っている」と述べられています。まさに産業連関表は地域経済の波及効果を予測する有効な手法であると述べられました。

(質問)

 そこでお尋ねします。すでに明石市などで活用され、どの施策をやれば、どれだけ地域内経済に資するかがわかり、政策判断に役立つのが産業連関表です。この住宅リフォーム助成制度の実施に伴う地域経済の波及効果をはかるために、この産業連関表を活用してはどうか、市長の見解を求めます。

(答弁)

 産業連関表につきましては、これまでも答弁しておりますとおり、各種施策の効果を測る手法の一つであると認識しております。

 兵庫県と神戸大学が作成した阪神間の産業連関表を、本市施策の効果測定に準用することは、可能とも考えていますことから、本市経済活動の実態に則したものとするため、現在、この連関表の精度を高めていく検討を、尼崎地域活性化機構と共同で、行っているところでございます。

 全国商工団体連合会の2013年度における住宅リフォーム助成制度実施状況の調査では、全国で628自治体が実施し、県下では西宮市、宝塚市、明石市、加古川市、三木市、相生市、赤穂市など17自治体で実施されて地域経済の活性化の起爆剤となっています。

 全国商工新聞の報道では、秋田県がまとめた2010年から13年の4年間の県住宅リフォーム助成制度の活用件数は5万1千件、補助金額は68億6200万円、工事総額は1032億5千万円にのぼりました。産業連関表を使って試算した経済波及効果は1626億円で投資した補助金の24倍に相当します。県担当者は、住宅リフォームは公共土木と比べても経済波及効果は大きく、影響のすそ野が広がっていると語っています。

 西宮市は、住宅リフォーム助成制度を2年間、試行実施を行ってきました。そして今年から本格実施を開始し、第1次募集が行われ、定員の60人を超えて、5月26日に終了しました。第2次募集は8月頃の予定となっています。西宮市の住宅リフォーム助成制度の2012年、13年2年間の試行期間の結果は,助成が157人で、助成額は1256万1千円、工事金額は2億500万円にのぼっています。

 西宮市議会の昨年9月一般質問で、当局は「住宅リフォームによって、市内の小売店でのカーテンや家具、電化製品などが購入されるなど波及効果があり、市内施工業者の仕事起こしに一定の効果があった」と答弁され、今年度からの本格実施に至っています。

 これまでも繰り返し住宅リフォーム助成制度の創設を求めてきましたが、西宮市で本格的に実施される中で、尼崎市でも実施することをあらためて強く求めます。

2012年9月議会一般質問 松村ヤス子:住宅リフォーム助成制度で地域内経済の活性化を

2012年9月議会 一般質問

2012年9月12日 日本共産党議員団 松村ヤス子

住宅リフォーム助成制度で地域内経済の活性化を

日本共産党議員団の松村ヤス子です。

2001年9月議会から、繰り返し、実施を求めてき住宅リフォーム助成制度について質問します。

市民が、自宅のリフォームを市内業者に発注する場合、10万円~20万円程度を限度として、工事費の5%~10%程度を市が助成する制度です。現金で助成する場合が多いようですが、市内商店で通用する商品券で助成する場合もあります。

全国商工団体連合会の調査によれば、2012年7月には533の自治体で実施。2004年12月時点では、87自治体、その6年後の2010年10月には2倍の175自治体に、その後、半年間で1.9倍の330自治体に、そして、今年の7月までの2年間では、3倍以上の533自治体と急激に増加しています。この8年間では、6倍以上に増え、全自治体の3割にのぼっています。

533自治体のなかには、西宮市も入っています。

西宮市では、2012年度当初予算に「環境などに配慮した住宅リフォーム助成モデル事業」を予算計上し、制度が固まってすぐに、7月26日~8月25日の1ヶ月で申し込みを完了させました。募集を上回る応募があったとのことです。担当課長さんは、まず、モデル事業として実施、その後、さまざまに検証し、恒久的な事業にするかどうか判断したいとのことでした。

西宮市当局の答弁も議事録で読みました。だんだん答弁内容が悪くなる尼崎市とは正反対に、徐々に前向きな答弁へと変化しているのがとても印象的でした。

西宮市も尼崎市と同じく、明石市の実態を調査しています。尼崎市は、助成のあるなしにかかわらず、工事せざるを得ないような事例を取り上げ、「経済対策として効果がない」と答弁し、西宮市は、「波及効果がある」と答弁しています。明石市は、私たちにも、尼崎市が答弁に引用したようなケースもあるが、西宮市の答弁にある内容どおり、大変肯定的に説明されました。明石市は、私たちにも、尼崎市にも、西宮市にも同じ内容で説明していると思います。そして、説明の中心は、「地域経済対策として波及効果の高い事業」と位置づけていることにあります。

尼崎市と西宮市の答弁の違いは、中小零細事業者の要求である仕事づくりに応え、地域内経済の活性化に前向きかどうかの政治姿勢の違いによると受け止めざるを得ません。

2011年3月議会で、西宮市当局は次のように答弁しています。

「市内の中小零細企業及び個人事業主への訪問活動をおこなっており、経営状況や各業界の動向等を聞き取り、融資等各制度の説明をしている。その際、景気が良くならない、社会全体の景気をあげるような施策を考えてほしい、市の関連工事、物品購入等において、市内事業者に発注、調達してほしいなどの意見を聞いており、組織内で課題共有に努めている。産業実態調査の結果も踏まえ、建設関連事業者を含む中小零細企業及び、個人事業主への支援策について広く検討していく」との内容です。

建設関連事業者を含む中小零細企業及び、個人事業主の営業情況が厳しいという実態をしっかり把握していることから、支援策が必要との認識を持ち、支援策の一つとして、明石市などに学び、今年度から、住宅リフォーム助成モデル事業を実施することになったわけです。

西宮市の住宅リフォーム助成モデル制度は、「市内産業の活性化と市民の生活環境の向上を図ることを目的とする」と明記されています。

住宅リフォームのみの場合は、工事経費の10%で最高10万円を助成します。

尼崎市も実施していますが、雨水タンクや浸透桝を設置する際には、工事費の50%を補助する国の制度があります。この制度は、工事完了期日が来年2月末日までですが、これと合わせて、住宅リフォームを行う場合は、リフォーム助成は、少し上乗せして、工事経費の12%で、最高12万円を助成するとしています。雨水タンクや浸透枡設置に対する助成と通常のリフォームより上乗せのあるリフォーム助成の両方をうけられる制度です。

このような別の助成制度と合わせて、住宅リフォーム助成を行なうのは、全国初とのことです。

西宮市は中小零細事業者及び個人事業主への訪問調査などで実態把握につとめ、要望を聞き取り、それに応えるために、施策化に努めているわけです。

私の近所に何人かの職人さんを抱えている個人の塗装業者がおられます。年を追うごとに仕事が減り、月のうちの大半は仕事がないとのことです。

先日、私宅を含めて、近所一体の給水鉛菅の取替え工事が行われましたが、その水道業者からも、仕事が激減しているとお聞きしました。

中小事業者対策としては、これまでから、融資制度が中心でしたが、業者は、仕事があってはじめて役に立つのが融資だといっています。

質問

建設関係などの中小零細事業者・1人親方の仕事確保に対する支援が問われていますが、その必要性はないとの認識でしょうか。

答弁

建設関係などの中小零細事業者に対する支援については、ご指摘のとおり、融資制度が中心であったものであるが、その支援の必要性については、否定するものではない。

 

市内の零細な工務店の社長さんが、「最近は、市外の大手住宅建設会社が新築だけでなく、リフォームにも進出しており、市内工務店のリフォームの仕事を奪っている」と嘆いていました。そして、「大手の下請に入った業者は請け負い単価をたたかれ、仕事があっても大変厳しい情況にある」と語ってくれました。
これでは、地域内循環型の経済を目指すとする市長の思いとも相容れないのではないでしょうか。
市内の工務店とともに仕事をする水道工事、電気工事、ガス工事、屋根葺き、内装工事、ガラス、畳など関連事業者はほとんどが市内事業者とのことです。

住宅リフォーム助成制度は、長引く不況で困っている零細事業者への仕事づくり支援策として、期待されている事業です。だからこそ全国でも増えているのです。以前、リフォーム助成をしても総需要は増えない、と答弁しています。本当にそうでしょうか。なかには、助成のあるなしにかかわらず、せざるを得ない工事もあるでしよう。しかし、明石市の職員さんは、助成制度があることで、思い切って、リフォームすることにしたとの市民の声や助成制度があることで、リフォームの範囲を広げることにしたとの市民の声も聞いていると話してくれました。

質問

住宅リフォーム助成事業は、大手の市外の住宅会社に回る仕事を市内の工務店及び、関連の市内零細事業へ発注することを促す、つまり、市内事業者の仕事おこしになり、市内循環型経済を目指す尼崎市の方針に沿った事業だと思いますが、いかがですか。

答弁

住宅リフォーム助成制度は、助成の対象工事業者を市内事業者に限定することにより、受注機会を拡大することで、一時的に経済波及効果は発生するが、助成することが住宅リフォームの総需要を増やす「きっかけ」となるのか、そのための施策として最も適しているのか、また、一方で、消費者保護の観点から住宅リフォーム事業者の質の向上を図るなど多くの課題がある。

そうしたことから、住宅リフォームにとどまらず、限られた財源の有効活用などを勘案しながら、本市の地域経済の特徴を踏まえ、持需要続的な波及効果が発生する施策を検討していきたいと考えている。

質問

住宅リフォーム助成制度以上に、市内の工務店及び、関連の市内零細事業者への仕事おこしになる施策が考えられるのであればどんな施策があるのか、教えてほしい。

答弁

現在、本市においては、環境と産業の共生を目指す尼崎版グリーンニューディール関連事業のなかで、市内事業者へのインセンティブを設けている。

たとえば、私立保育所・幼稚園を対象にした『太陽光発電システム設置費補助制度』において、設置工事を市内事業者に限定しているほか、『太陽熱温水器』、『エコウィル』、『エネファーム』などの設置においても、市内事業者が機器の設置工事を行う場合は、助成額の割り増しを実施している。

これらの事業のように、今後も引き続き、本市にとって相応しい需要喚起手法について、施策の重点化方向に基づき、検討していきたいと考えている。

質問

活力ある尼崎市を取り戻すためには、財政が大変だからこそ、底辺の底上げが必要です。住宅リフォーム助成制度を実施することを強く求めますが、答弁願います。

答弁

地域内で経済が循環し、持続的な発展を遂げていくためには、効果的で適切な取り組みによる底上げが必要であると認識している。

そうしたことから、先ほど答弁させていただいたように、限られた財源の有効活用などを勘案する中で、住宅リフォーム助成制度にとらわれず、検討していきたいと考えている。

 一般質問「生活保護制度は、命を守る最後の砦」に続く