日本共産党議員団の川崎敏美です。今回は、保育士の配置基準と小中学校の給食費の無償化をテーマに取り上げます。早速質問に入ります。はじめは保育士の配置基準についてです。
- 保育士の配置基準について
国の保育士配置基準は、70年以上「4・5歳児30人に対し保育士1人」という基準のままでした。長年にわたり保育者と保護者が、一人ひとりの子供に寄り添う保育を求めて配置基準の見直しを求めてきました。近年は、一つの保育園で1名以上の増員を求める声が、全国から上がっていました。
2024年度、国は保育士の人件費を10.7%引き上げ、保育士の処遇改善を求める声に応えました。また、3・4・5歳児の配置基準に続いて、新たに1歳児の配置基準が6:1から5:1へと見直されました。しかし、国は3つの加算条件を設定し、これをクリアーしないと配置基準の見直しが実行できない、新たな壁を設けています。これを満たして加算対象となる園は、尼崎ではかなり少なくなってしまい、これでは全体の底上げにはなりません。国への要望を強めるとともに、市独自の取り組みがますます必要になってきています。
質問1:国の新しい基準に基づいて、今年度どこまで尼崎市の保育士の配置基準は引き上げられているのでしょうか?また3つの加算条件があるということですが、具体的にどのような条件が設定されているのでしょうか。それをクリアーして配置基準が引き上がっている園の割合はどの程度となっているのでしょうか?
答弁要旨
令和7年度より、国の公定価格において、「1歳児配置改善加算」が新設されており、1歳児の保育士の配置について、現行基準である6対1から5対1以上に改善した場合に適用されるもので、本市においても、国に準拠した対応を行っているところです。
また、この加算の適用を受けるためには、保育士の配置を5対1以上に改善することに加えて①職員の賃金改善を行う「処遇改善等加算」の取得、②業務におけるICT活用 ③職員一人あたりの平均経験年数が10年以上といった3つの要件を満たす必要があります。
現時点においては、各法人保育施設における「1歳児配置改善加算」の適用状況は把握できておりませんが、参考に3つの要件の1つである「職員1人あたりの平均経験年数が10年以上であること」に着目した場合、令和6年度の実績でこの基準を満たす施設は、法人保育園及び認定こども園で約6割、小規模保育事業所で約3割となっているため、仮に保育士の配置の改善が図られたとしても、すべての法人保育施設等が「1歳児配置改善加算」の適用を受ける状況にはないものと認識しているところです。以上
自治体による保育政策の違いから、保育労働のあり方が大きく差が出ています。尼崎市の保育基準は充分な基準とはいえない国基準そのものを採用しています。国基準に上乗せして保育基準を定めている自治体と比較して、実際の保育現場ではどのような影響を及ぼしているのでしょうか。市は現場の状況をどこまでつかんでいるのでしょうか。
尼崎市のある保育園の実態について、5つの事象についてお聞きしました。他市と比較しても保育士の労働環境が低位に置かれていることで、園長や主任が現場に応援に入ることが恒常的となっており、様々な点で保育園の運営に支障をきたしていることが明らかとなりました。
- 保育士配置の実態(クラス保育士・フリー保育士の配置)
特定のクラスを担当しているクラス保育士とは別にフリー保育士の働きが重要になっています。
フリー保育士の配置は、国が定める保育士の最低配置基準を維持するため、また担任保育士の休職時や行事の準備などで一時的に保育士が不足する場面を補うために行われます。フリー保育士はクラス担任を持たず、その都度配置されるクラスや業務内容が異なり、臨機応変に保育園の運営全般を支える役割を担います。例えば、担任保育士の急な病欠、研修、有給休暇、または行事準備などで一時的に人手が必要になった場合に、その補填、人手不足の対応を行います。特定のクラスだけでなく、保育教材の準備、事務作業、来客・電話対応など、園運営に関わる幅広い業務をサポートします。
この保育園では、フリー保育士が配置されていないため、恒常的にクラス保育士の代替え体制ができていないといった問題を抱えています。
- 会議の開催と開催時間帯
平日昼間の勤務時間内で会議が行われていない、できない実態となっています。結果、勤務時間外となる夜や土曜日に会議が設定されており、会議だけのための土曜出勤があります。
- 勤務時間内での事務時間の確保状況
あらかじめ勤務時間内に年間・月間計画として、事務時間が盛り込まれるべきなのですが、その日の保育士の出勤状況や、子どもの人数に応じて主任が事務時間の指示をしており、平日だけでは処理できず、結果、通園する子どもが少ない土曜日の午後が事務時間となっています。
- 合同保育の実施時間が長すぎる
年齢別のクラスで人員が確保できないことから、開所時間の半分にも及んで6時間が合同保育となっています。クラス別保育により得られる良質で安全な保育活動を維持することが難しくなっています。
ちょっと説明しますが、本来合同保育は異年齢保育ともいわれており、その主なねらいは、年齢の異なる子ども同士の関わりを通して社会性、協調性、思いやりを育むことです。具体的には、年上の子どもが年下の子を助けることでリーダーシップや責任感が生まれ、年下の子どもは年上の姿を真似ることで学び、憧れの気持ちから意欲が高まります。このように、子どもたちは互いに刺激し合い、自分とは異なる価値観を受け入れ、社会で生きていくための大切な力を身につけることができます。年上の子どもと年下の子ども、それぞれが良い影響を与え合う相互作用によって成長が期待できる、クラスの状態が安定しやすくなるなどのメリットがあります。
一方で、デメリットとして年上の子ども、年下の子ども双方にストレスがかかる可能性があります。異年齢でおこなう活動は、力関係の差によってトラブルが生じたり、体力や発達過程の違いから全員一緒に楽しむことができないということもあります。年上の子が年下の子のお世話をする場面も多くなるため、安全面への配慮もより注意深く行わなければなりません。また年上の子は、年下の子のお世話が中心になったり、年下の子の遊びに合わせることで自分のしたいことやしたい遊びができないといったストレスを抱えるといった問題もあります。反対に年下の子どもは、年上の子どもに萎縮したり、うまく関われないことにストレスを感じる可能性があります。
- 有給休暇の取得率
正規保育士の年次有給休暇及び生理休暇の取得状況は、年間20日が保証されているにも関わらず、平均で9日、最も多い人でも15日、少ない人で5日という実態です。この園の平均的な取得率は35%です。全国の平均は、約65〜67%とされており、極めて低い有給休暇取得率となっています。
質問2:以上5つの実態について、当局の見解をお示しください。またこうした実態をあるべき姿にしていくために、どのような方策が望ましいのかご所見をお伺いします。
答弁要旨
保育施設等におきましては、児童福祉法や労働基準法等の関係法令を遵守する中で、保育士等の労働環境の改善を含め、様々な創意・工夫を図りながら、日々の運営を行っていただけていると認識しております。
そうした中、議員ご指摘の状況につきましては、主に保育士不足が要因であると考えており、こうした課題に対応するためにも、保育士の確保・定着につながる施策が重要であると考えております。
こうした考えのもと、本市では、これまでから「就職一時金の支給」や「宿舎借り上げ支援事業」などの保育士確保策に加え、保育士の業務負担の軽減を目的とする、「保育補助者雇上げ強化事業」などを実施するとともに、保育士・保育所支援センター「あまのかけはし」を設置し、保育士の就労支援や保育所の雇用支援を行っているところです。
加えて、令和6年11月に公表した「あまがさき子ども・子育てアクションプラン」では、特別な支援を必要とする子どもの受入れ体制の充実を図ることとしており、加配職員を配置する場合の人件費補助の拡充などについて、現在検討を進めているところです。
保育士は、日々の子どもの成長に寄り添い、未来を担う子どもをサポートする魅力的かつ重要な仕事であることから、引き続き、より多くの保育士が市内の保育施設等で勤務していただけるよう、様々な取り組みを進めて参ります。以上
保育の質を支える体制として、園長や主任の役割がもっと重視されなければなりません。本来主任は、保育士の子どもに対する不適切な対応の注意や、保護者との関係で抱えるトラブル対応、職員間の人間関係の調整等を主として担っています。主任や園長が管理業務や各年齢別のクラスの保育を質の面から保障、機能することによって保育園全体の質を支えることができます。しかし、園長や主任が恒常的に保育に入る事態が発生していると、保育園全体の質を守ることが困難となってしまいます。
23年の代表質疑で、より保育士が不足するから配置基準を増やさないといった考えを改めるべきと質問しました。市は、「配置基準を見直すことは、保育士の勤務条件の緩和や業務負担の軽減に寄与すると考えますが、待機児童を多く抱える本市においては、国基準を上回る市独自の保育士の配置基準を設定した場合、一層の保育士不足を招きこれまで以上に保育ニーズに応えられなくなるといった課題が、現実として生じることから、現時点において、市独自の配置基準の見直しや補助金制度の創設は困難であると考えています。」と答弁されています。
保育士の配置基準の引き上げが保育士不足を起こし、より保育士不足を過熱させるからできないとの論は容認することはできません。今日の保育士不足の解消を行なっていく努力を否定するものでありませんか?保育士が集まらない根本原因は、週休2日制が補償されていないことと、有給休暇が絵に描いた餅になっている、全産業従事者の給料と比較しても80%程度の給与で長時間労働ということが、原因だと現場から指摘されています。
質問3:配置基準の引きあげと、処遇改善、労働条件の改善を同時にすすめない限り、保育の質を維持・改善、高めていくことはできないのではないでしょうか、市の見解は?
答弁要旨
議員ご指摘のとおり、保育の質の向上には「保育士の配置基準」「処遇の改善」「労働条件の改善」のいずれもが大切であると認識していますが、その実現にあたっては、保育士の確保・定着が欠かせないものであり、まずは、保育士の労働環境や処遇の改善が重要になるものと考えております。
こうした考えのもと、労働環境の改善に向けて、これまでから、保育士の業務負担の軽減を目的に「保育補助者雇上強化事業」を実施するほか、「保育士・保育所支援センター」を設置し、雇用支援を行うなど様々な取り組みを進めてきたところでございます。
また、処遇改善に関しましても、昨年度の公定価格において、保育士・幼稚園教諭等の人件費が約10.7%と大幅に引き上げられており、今後においても、更なる処遇改善を進める方針が国から示されているところです。
一方、配置基準の引き上げについては、保育士が十分に確保される場合にあっては、保育の質の向上に資すると考えられますが、全国的に保育士確保が困難な中、配置基準の引き上げにより、待機児童数の増加が懸念されます。
こうしたなか、本市の待機児童数については、これまでからの様々な対策により大幅に減少しているものの、未入所児童数は、未だ400人いる状況であり、こうした状況を踏まえますと、現時点において、本市独自の配置基準を設ける考えはございませんが、国においては、1歳児の配置基準の見直しについて検討されていることから、国の動向を注視し、国が見直しを行った際は適切に対応してまいります。
いずれにしましても、現段階においては、保育の質の更なる向上に向けては、引き続き、保育士の確保および定着を優先した取組を進めてまいりたいと考えています。以上
第2登壇
ご答弁ありがとうございました。尼崎市における保育の実態について、充分な改善策を進めていただき、調査を行っていただきたい。
- 小中学校の給食費の無償化について
昨年の文科省調査(24年6月12日公表)では、公立小中学校等で何らかの方法で学校給食費の「無償化を実施中」と答えたのは、722自治体で4割に達しました。無償化の目的については、「保護者の経済的負担の軽減、子育て支援」との回答が最も多く(652自治体)、ついで「少子化対策」(66自治体)などが続きます。東京で今年1月から全自治体が無償化となるなど、この調査の後も各地で無償化が広がっています。
石破首相は2月の国会で、「2026年度以降できるだけ早期の制度化を目指したい」と言明しました。25年度予算成立の為に結んだ自民・公明・維新の三党合意文書(2月25日)には、「まずは小学校を念頭に地方の実情等を踏まえ2026年度に実現する。その上で、中学校への拡大についても、できる限り速やかに実現する」とされ、6月の「骨太の方針2025」において給食無償化は「2026年度予算の編成過程において成案を得て、実現する」とされました。
兵庫県においても、地域住民が力を合わせて学校給食費無償化を求める署名運動や議会論戦で、実施がこれまで求められてきました。今年5月の県の発表では、昨年と比較して小中とも無償化が3自治体、中学校のみが3自治体が増えています。この一年で5市町から8市町に増加、中学のみも3自治体増加となっています。小中とも無償化は加西市、加東市、相生市、たつの市、朝来市、淡路市、香美町、新温泉町。中学のみ無償化は伊丹市、三田市、明石市、丹波市、市川町、福崎町となっています
2020年度から小中学校の給食費を無償化した淡路市では23年6月議会で無償化を求める請願が否決されたものの、3000名を超える署名提出が後押しして、本年度から予算化されています。財源は国の臨時交付金を活用しており、淡路市の共産党市議団は恒常的な政策とするよう求めています。また党県議団は県の一般会計の0. 6%で県下小中学校の給食費を無償にできると示し、県の制度として実施するよう求めています。
深刻な物価高騰が続くもとで教育費における保護者の負担軽減の観点からも学校給食費の無償化が求められています。尼崎市での、給食費の保護者負担は小学校が年間に約47,000円 中学校が約57,000円と大変重くなっています。兄弟がいる家庭では負担が倍増しており、より家計を圧迫しています。
質問4:物価高騰の下で暮らしが大変な子育て世帯にとって、給食無償化の早期実現が必要です。政府によって、給食無償化の流れが示されていますが、実施はまだ先です。国の対策が実施される前から先取りする、また県に要望をしていくことも必要です。市の考えはいかがですか?
答弁要旨
学校給食費の無償化には、子育て世帯の経済的負担軽減を図る観点からも検討していくべき施策であると考えておりますが、多額の財政負担が必要になりますことから、その実現については各自治体の財政力の格差により左右されるのではなく、国の財政負担により全国一律に実施することが望ましいと考えております。
国において、本年2月に「小学校の給食無償化を令和8年度に制度化を目指し、中学校への拡大は可能な限り速やかに実現したい」と明言されております。
兵庫県に対し県の制度として無償化の要望はしておりませんが、全国の自治体の長や教育長で構成される各種市長会及び教育長会などを通じて、国の直接補助による財政支援を早期に実現し、国がその責任を果たすことを要望するとともに、各自治体の実態が異なる中で、給食の質の確保も重要なことから、自治体の裁量が確保された制度になるよう要望しております。以上。
2022年12月議会で、市長就任直後に給食の無償化等についてお聞きしています。
市長の答弁全部を紹介します。「日本国憲法第26条第2項で「義務教育は、これを無償とする。」とされており、その具体的な無償の内容については、教育基本法において「授業料を徴収しない」と定めることにより具体化されています。ただ、現行制度においては、授業料に加え、教科書無償措置法等により教科書も無償となっていますが、これは、日本国憲法で保障する「無償」から直接的に導かれるものではなく、立法措置による無償と解されるのが通例と理解をしています。私としても、これからの尼崎市の成長を考えたとき、可能な限り、子育て負担の軽減を図ることは望ましいものとは考えておりますが、このように、義務教育の無償の範囲は、財政状況も踏まえて現実的に定めざるを得ないものでもあり、まずは、公立学校に通っていない子どもも対象となる、こども医療費の無償化の推進に向けた具体的な検討を進めていきたいと考えています。いずれにしましても、庁内で指示をした子育て支援の充実に向けた総合的な検討の中では、給食の費用負担の在り方も排除することなく議論をしていきたいと思います。」と述べられています。
今こそ、小中学校の給食費の無償化を子育て支援策の重要な柱として位置付けることによって、ファミリー世帯の転出超過を改善していく取り組みにつながっていくのではないでしょうか。
質問5:さらなる子育て支援を充実、市独自で予算の優先順位を変えていくことも視野に入れるべきではないでしょうか?例えば明石市が実行しているように、子育ての予算を最優先にしていく取り組みを尼崎でも実行できないのでしょうか。
答弁要旨
仮に本市において給食費を無償化にした場合、小学校で約8億円、中学校で約4億円の財源ねん出が必要と試算しておりますことから、本市の財政状況や、国における給食費無償化に関する議論の状況などを勘案し、責任ある検討が必要であると考えております。以上
以上で、私の全ての質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。