保育士の配置基準見直し急げ!

しんぶん赤旗より「主張」

保育所の安全

保育士の配置基準見直し急げ

 安全であるべき保育所で昨年、子どもへの虐待や不適切な保育が各地で発覚し、保護者や保育士など関係者に衝撃を与えました。通園バスに置き去りにされた子どもが亡くなる事故も起きました。それぞれのケースで原因究明と責任の明確化、再発防止策を徹底することは言うまでもありません。

同時に、背景として慢性的な保育士不足による現場の疲弊を指摘し、その打開を求める声が相次いでいます。保育士の配置基準の改善に背を向け、現場に矛盾を押し付けてきた歴代政府の姿勢が改めて問われます。低すぎる配置基準の見直しに踏み切ることが急務です。

改善を求める意見書次々

 国は保育士1人がみる子どもの人数を配置基準として定めています。

0歳児3人、1~2歳児6人、3歳児20人、4~5歳児30人です。

抜本的改善はされず、特に4~5歳児は基準ができた75年前から一度も変わっていません。イギリスは3~4歳児8人、ドイツ・ベルリン市は3歳児以上10人が保育士1人でみる基準とされます。

 日本の配置基準では子どもに寄り添う保育ができず、安全も守れないと、ほとんどの園は独自に基準を上乗せし職員を増やして対応しています。しかし、園の収入は入所する子どもの人数で決まるため、上回る分の職員の給与などは園の負担増になります。余裕のない園は職員の処遇改善ができません。手厚い保育をしようとすればするほど現場にしわ寄せがいく仕組み自体が大きな問題です。

 1人の保育士がみる子どもの人数が多くなるほど目や手が行き届きにくく、安全が脅かされます。施設内で骨折を含む重大事故が近年、急増していることも、配置基準の低さと無関係とはいえません。人手が足りなくなる一方、コロナ禍などで業務が増え、疲弊に拍車がかかる園も少なくありません。

保育の質にかかわる深刻な事態となっています。

 愛知県の保育士や保護者でつくる「子どもたちにもう1人保育士を!実行委員会」が昨年実施した保育施設職員へのアンケート(2648人回答)では84%が、災害時に「子どもの命と安全を守れない」と答えました。「火事や地震が起きた時に、0歳児3人を、1人で抱えて避難できるだろうか」。災害が多発する日本では、保育士が抱える不安は共通しています。

 配置基準の改善を求める意見書は地方議会で次々と可決されています。昨年の12月議会では、京都市、千葉県柏市などで可決されました。国会への請願でも、紹介議員は与野党を超えて大きく広がっています。

子ども予算 増やせの声を

 岸田文雄政権は2023年度予算案で、4歳児以上を預かる保育所のうち、保育士1人がみる子どもの人数が25人以上の施設を対象に、追加で保育士を雇える補助を拡充するとしました。対象を定員121人以上の大規模園に限る不十分さはあるものの、変化を作り出しつつあります。切実な現場の実態を示し改善を求め、粘り強く地方議会や国会への署名や請願運動を続けてきた運動の力です。

 どの子どもにも安心・安全な保育環境を保障できるよう、今こそ政治は配置基準の見直しに踏み出すべきです。大軍拡には巨費を投じるのに、子どもには冷たい政治の転換が必要です。

尼崎では…

 現場の保育士さんや保護者の皆さんで構成する尼崎保育運動連絡会が保育所(園)幼児副食費の無償化の実施と保育士の配置基準の見直しについて、5万筆の署名と共に提出された陳情が、1回の審議で未了となり打ち切られました。

保育時間の長時間化、複雑な家庭環境の子、発達障がい児の対応等、保育に求められる役割が重要であるにも関わらず、それに見合った保育士の配置改善がなされていません。コロナ禍で保育士の人員不足、過重労働が一層明らかになりました。

日本共産党市会議員はバス置き去りや保育士による虐待事件等を受け、保育士不足やストレスが社会問題になっていること、配置基準の見直しは保育士や保護者の願いであることを示し、宝塚市は独自の保育士配置基準の見直し「一園に一人の保育士の補充があれば配置基準の見直しが出来る」と紹介しました。「保育支援課は財源ありきで出来ない一点張りではなく、実施都市の調査検証し本市で出来る改善策を考えるべき」と指摘しました。