2018.9月議会・決算特別委員会総括質疑の松沢ちづる議員の発言と答弁要旨です

松澤千鶴です。

まず、介護予防・日常生活支援総合事業についてお聞きします。

尼崎市では、2017年4月から要支援1・2を介護保険サービスから外し、市の地域支援事業で対応する「総合事業」が始まりました。今後さらに高齢化が進み介護支援のニーズが高まって行くことが予想される中、一方では介護労働者不足と国の財政負担の増大が大きな課題となっています。

国は、持続可能な介護保険制度のためには、介護の有資格者は要介護3以上の重度者に集中させ、軽度者のケアは地域の共助・自助に委ねる方向を示しました。こうした国の方向を忠実に実行するのが、いわゆる「総合事業」です。

支援を必要としている市民にとっては、どんな影響が出ているのでしょうか。資料をご覧ください。要支援者の状況は2014年頃からそんなに変わらないのに、サービス利用状況は「特徴」にまとめたように、①総合事業開始後、サービス利用率が減少している②標準型と専門型の比率は、総合事業が始まる前の当局予測では半々ぐらいと言っていたのが、「標準型」が80%を占めていることがはっきり見て取れます。

 

Q1総合事業が始まる以前20171月、始まってからの20186月のサービス利用率に大きな差異が出てきています。また、予測に反して標準型が圧倒的に多数となっていることについて、どのように分析していますか。

答弁

総合事業における訪問型サービスの利用者数につきましては、総合事業実施前の介護予防訪問介護利用者数と比較しますと議員ご指摘のとおり減少しております。

しかしながら、その一方で、総合事業における通所型サービスのほか、介護予防訪問看護などの総合事業以外の介護予防サービスの利用者数は増加しており、要支援1、2のサービス利用者数の総数としては、総合事業前から増加してる状況です。このような利用サービス種類の変化は、総合事業の実施以降、これまで以上に利用者の心身の状況に応じたケアマネジメントが実施され、適切なサービス利用に結びついた結果ではないかと考えております。

次に、標準型サービスの割合につきましては、要介護認定基準と深く関連する日常生活における自立度の状況により判断する必要があると考え、平成28年3月時点の介護予防訪問介護の利用者3,333人のうち、「認知症高齢者自立度」や「障害高齢者自立度」からみて、1,535人が専門的な支援が必要な状態にあると考え、50%と想定しておりました。

しかしながら議員ご指摘のとおり、現状では想定より標準型サービスの割合が高くなっておます。その理由といたしましては、従来の介護予防訪問介護では身体介護や生活援助などの区分けがございませんでしたが、総合事業の訪問型サービスでは、標準型サービスと専門型サービスのいずれかを選択する必要があり、そのため、利用者の心身の状態像の把握やアセスメントなど、これまでと異なる視点でケアマネジメントが行なわれるようになりました。

こうしたことにより、先ほどこ答弁申し上げた、利用サービス種類の変化と同様、利用者にとって、より適切なサービス利用に結びついた結果ではないかと考えております。以上

 

(松沢)

私は2017年9月議会で「介護予防ケアマネジメントマニュアル」によってケアマネに「安易に介護保険サービスを使うな」とプレッシャーをかけていると指摘しましたが、まさにそれが事実として数字に出ているのではないですか。

昨日の公明党へのケアマネジメントに関する答弁でも、気づきの支援を強調されました。

要は、介護サービスに頼らず高齢者に自身の残存能力に気づかせろということですね。

だれでも自立し尊厳のある生き方を手探りしています。年を重ねたり病気の影響などで誰かの支援が必要になり、それを求めたときにまだがんばれるでしょうと聞き入れない。非常に冷酷です。

 

次に、生活支援サポーターについて伺います。

 

決算分科会質疑で生活支援サポーター養成講座の修了者は、2017年度315人、今年度に入って105人、しかし肝心のサポーターとして働いている人は約30人しかいないことがはっきりしました。

当局の当初の計画は、総合事業が開始される2017年から3年間で900人のサポーターを作り、それによって要支援者の「標準型」サービスの受け皿が用意できるということでした。生活支援サポーターの養成講座をはじめて1年あまり、計画の達成率はわずか3.3%です。

 

Q2あと1年半で受け皿はできるのですか。お答えください。

答弁

議員ご指摘の通り、サポーターの養成研修につきましては、8月末時点で420人の方が修了されましたが、このうち就労に結びついた方は約30人となっております。

就労者の拡大に向け、今年の3月と7月の2回、ハローワークと連携し、市内事業所と研修修了者をマッチングさせるミニ面接会を実施いたしました。その結果、32名の参加者のうち9名が就労に結び付いており、効果があったことから今後、開催数増や面接会の規模の拡大等に取り組んでいきたいと考えております。

また、実際にサポーターとして就労している方からは、非常にやりがいがあるというお声も伺っており、研修修了者のみなさんには、こうしたサポーターとして働く魅力をしっかりと伝えていく事も重要であると考えております。こうしたことから、今年の1月及び9月に就労に至っていない研修修了者の意欲向上を目的とした交流会を実施いたしましたが、今後も定期的に開催し、その中で、サポーターとして働く方の生の声を研修修了者のみなさんにお伝えする等、意欲喚起に努めてまいります。

いずれにいたしましても、生活支援サポーターの増員は、どこの自治体でも苦労していますが、総合事業の円滑な実施とともに、介護人材のすそ野を広げていくためには必要な取組みである事から、他都市の取組みを参考にしながら、様々な方法を検討し、サポーターの確保に取り組んでまいります。以上

 

 

(松沢)

計画はすでに破たんしたと言えます。

結局、要支援者への生活支援サービスはこれまでと同じように有資格のヘルパーさんが担い、報酬単価だけが削減されただけではないですか。

要支援2の認定を受けた方から「腰が痛くて家事がやりにくいので、掃除や買い物のサービスを頼みたいが、引き受けてくれる事業所が見つからない」と苦情をお聞きしています。

事業者からは、「すでに全国展開している大きな事業所は総合事業から撤退した。うちも来年報酬単価が2割削減になれば手を引かざるを得ない」と聞きます。

地域包括支援センターからは、「生活支援の時間単位が60分から45分に短縮され、掃除と買物の支援が1回でできなくなった。多くの方ができない分をシルバー人材センターなどの有料の支援で補っており、自己負担が増えている」と聞きます。こんな介護でいいのでしょうか。

40歳以上の国民は全て介護保険料を払っています。65歳以上の方は年々保険料が引き上げられ、悲鳴をあげています。それなのに必要な介護サービスは受けたくても受けられない。まさしく国家的詐欺です。持続可能な制度構築のためと言いますが、要支援者のくらしが壊され、介護事業所に経済的負担を増大させ、なにが持続可能な制度構築でしょうか。国に介護の制度そのもの見直しを求めるべきです。

市としては、要支援者のくらしを守るために生活支援の報酬単価の削減は止めて、介護事業者がこれまで通り介護にあたれる体制を作るべきです。また、生活支援サポーター養成講座は中止して、その事業に予算配分されている800~900万円は、高齢者ふれあいサロンやいきいき百歳体操に活用することを求めます。

 

次に地域振興体制の再構築についてお聞きします。

地域振興体制の再構築については、文教、経環市民それぞれで審議をされました。

文教では「今公民館で実施している社会教育に関する事業は、生涯学習プラザでも実施していくことが前提で市長部局に投げかけている」と教育委員会が答弁。市民協働では6月議会で可決された「設置管理条例に教育基本法の精神に則った事業をする、自治のまちづくりの拠点にすると(書き込むことで)一つ担保した」プラザの事業が、今後きっちりそういう方向でできているかを「チェックしていく審議会で、社会教育施設でなくなる中でも、生涯学習、社会教育を進めていきたい」と答弁されています。

 

Q3これは、市民協働局が教育委員会の投げかけたものをしっかりと受け止めたと理解していいのでしょうか。

答弁

生涯学習プラザの設置に当たりましては、議員ご指摘のような教育委員会との協議を踏まえた上で、その設置及び管理に関する条例において。プラザが社会教育を含む生涯学習の拠点として設置する施設であることや、公民館が実施することとされている事業を実施することについて明記したところでございます。また、市長と教育委員会.両者の付属機関を新たに設置し、生涯学習プラザの事業を評価することができる仕組みを検討しているところでございます。以上

 

Q4地区会館と支所の複合施設も同様の施設になる訳なので、こちらでも公民館で実施している社会教育に関する事業は当然実施するのでしょうか。つまり、各行政区ごとに2プラザで拡充するということでしょうか。

答弁

生涯学習プラザにつきましては、生涯学習及び自治のまちづくりを支える拠点として、地域における学びと活動の場をより充実していくために、条例上、現在の地区会館と公民館を、原則、同じ機能を持つ施設と位置づけており、これまで公民館が行ってきた事業についても、継承し、バランスも考慮の上、両館において実施していくこととしております。以上

(松沢)

そのうえでお聞きします。来年4月から立花北生涯学習プラザに看板を変える立花公民館です。

教育基本法の精神に則った事業をこれまでと同じように行い、自治のまちづくりの拠点とする大事な公共施設なのに、公共施設マネジメント計画の「方針1」で「機能移転」という表現で施設自体は解体される予定になっています。昨日の公明党への答弁では、今年度中に削減の計画を市民に提示するといいます。「機能移転」とは一体なんなのか。公民館で行っている事業が、また利用している市民のみなさんが支障なく公民館に替わる施設に引っ越しできてこそ「機能移転」ではないですか。

Q5お尋ねします。立花公民館がそっくり引っ越しできる施設が近辺にあるのですか。

無いのなら、当局がいう生涯学習プラザと公共施設マネジメント計画には矛盾があるのではないですか。 

答弁

公共施設マネジメントの取組は、地域振興体制の再構築のみならず各行政計画等と整合性を図ることとしており、他地区も含め、立花地区につきましても、生涯学習や自治のまちづくりを支える拠点として、生涯学習プラザを2か所確保することとしております。ご指摘の立花公民館につきましては、旧耐震基準で、老朽化が進行している施設であります。そのため、既存施設の改修については、耐用年数を考えた場合、投資に見合あう効果が見込めないことに加えまして、現地建替えについては、高さ制限に係る法規制があることから、相当小規模の施設とならざるを得ず、現行の事業や活動を継続することが、難しくなると考えております。こうしたことから、立花公民館の機能移転を進めたいと考えているところであり、その候補地として例えば近隣の地域総合センター塚口や福祉会館等がございますが、いずれの場所におきましても、現行の事業や活動が継続できるよう検討を行っているところでございます。以上

 

(松沢)

「地域振興体制の再構築」は、市の主要取組項目の目玉のひとつです。

立花地域だけ拠点となる生涯学習プラザが1施設しかないといようなことは、とうてい市民には受け入れられません。そっくり引っ越しできる施設か、ないのなら建て替えをして用意すべきです。

 

次に子どもの医療費助成についてです。

中学卒業まで入院も通院も窓口負担は「0にしてほしい」は、多くの保護者の切実な声です。

日本共産党議員団は、市民から幾度となく議会に陳情として挙げられたこの願い実現のために、これまでも安心の子育てできる街づくりの一環として必要だと求めてきました。

ファミリー世帯の転出の理由の一つが他市に比べ医療費助成が遅れていることだと指摘もしてきましたが、市長はなかなかそれを認めようとしてこなかった経過があります。しかし、うれしいことに、今回の健福の決算分科会では「ファミリー世帯の定住・転入は市の最重要課題。そういう意味も含めて子ども医療は課題だ」と答弁されています。

昨日の公明党の質疑の中で、市長は「近隣市の取組みなど社会情勢に合わせて必要だと認識している」というようにおっしゃっていました。良い認識の変化です。しかし、一方、分科会では「費用対効果を考えて慎重に」や「一旦やりはじめたら後戻りができない」などの躊躇する当局答弁も目立ちます。当局の「検討中」という答弁も聞き飽きました。市民はいつまで待ったら実現できるのでしょうか。すでに県下で8割超える自治体が中学卒業まで無料化を実施しています。

 

6市長は一刻も早く中学卒業まで子どもの医療費は所得制限なしで無料にと決断をすべきだと思います。いかがですか。

答弁

お尋ねの、中学3年生まで所得制限を撤廃して完全無料化を実施しているのは、兵庫県下41市町中16市町となっております。

本市では、乳幼児等医療とこども医療を合わせますと、既に事業費全体で約7億円を市が負担しており、こうした中で、中学3年生までの完全無料化の実施となりますと、制度拡充による医科・歯科における受診増を見込まない場合においても、新たに約5億円の財源が恒久的に必要となります。こうしたことから、より効果的で持続可能な制度構築に向けて、引き続き検討を進めて参ります。以上

 

(松沢)

次に子どもの医療費助成についてです。

 

2017年10月から事業の見直しが行われました。

ポイントは、1点は報酬単価の見直しです。これは市の独自事業で、国・県からの補助金がふえない中では市の負担が増大する一方なので「適正化」という表現での単価引き下げです。もう1点はより多くの障害者児が利用できるようにするものです。

Q7事業を見直してまだ1年経っていませんが、現時点でどのように評価していますか。

答弁

本市の移動支援事業につきましては、65歳以上の高齢障害者や比較的軽度の身体障害者も利用できるなど、他市と比較すると利用対象者の範囲は広くなっておりますが、他都市と比べて給付費が非常に多額であったことから、サービス提供を維持していくためには止むを得ないものと判断し、今回の報酬単価の見直しを行ったところです。

今般の見直しにあたっては、障害のある当事者やサービスを提供する事業者も参加する自立支援協議会にガイドライン検討部会を設置して、検討を行いました。その結果、「対象者の範囲」を狭めることなく、また、「支給量」にも上限を設けないことなど、現行の運用を継続することで、サービスの利用機会の確保を図ったところです。

また、その一方で、サービスの利用は、自宅から出発して自宅まで戻らなければならないという、いわゆる「ドァtoドア」の原則を廃止して、外出先からのサービス開始や外出先までのサービス利用を可能にするなど、サービスの利便性についての向上を図ったところです。事業見直し後の評価としましては、引き続き、障害者の社会参加に大きく寄与しているものと考えております。以上

 

(松沢)

分科会では予算上の削減が27.6%でき、ほぼ想定した通りの見直しができてきているような答弁がありました。担当課では毎月のレセプトをチェックする中で、見直し後の変化を見える化する努力をされています。それを見ると、マイナスの影響はほぼすべて身体障がい者の部分で出ていると思います。特に、身体介護を伴う重度障害で報酬単価が4,239円から2,978円に1,261円も下がったことが大きな原因でしょう。身体障がい者支援を行っている事業所では、報酬単価の引き下げによって「ヘルパー確保が以前より困難になってきた」「事業所運営が困難になってきたので、報酬削減幅の大きい重度障がい者の支援はこれ以上増やせない」といった声があがっています。本人や家族からは、「昨年10月以降慣れていたヘルパーから代わり、たいへんだ」と聞きます。

Q8重度の身体障がい者やそこに係わる事業所には、特別に手立てを打つべきではないですか。

答弁

今般の見直しにより、事業所の運営に一定程度、影響があることは認識しています。

移動支援事業の重度障害者の報酬単価の設定に際しては、ヘルパーに対して24時間の特別な研修の受講を義務付けて重度障害者の外出を支援している「行動援護」サービスを参考にしています。移動支援事業のヘルパーに対してはこの研修を義務付けていないため、「行動援護」サービスにおいて、この研修の未受講者がサービス提供した場合の報酬単価に準じた設定としているものです。

このほか、厚生労働省が実施している経営実態調査におけるヘルパーの給与費がサービス報酬に占める割合も考慮しており、この調査をもとに直接ヘルパーに支払われる想定時給単価の2倍程度の報酬となるよう、設定したところです。

なお、事業見直し後において、利用者数やサービス提供事業所数に大きな変化がない状況からも、現時点においては、重度の身体障害者やそのサービス提供事業所に対し、特段の手立てを講じる考えはありません。今後、個々の事業所やサービス利用の状況の変化などがあれば、必要に応じて、自立支援協議会において、必要な対応を考えてまいります。以上

(松沢)

次に、生活困窮者学習支援事業についてお聞きします。

 

事務事業シートで、「保護家庭の子どもは、保護以外の世帯に比べ課題をかかえていることが多く、それは学習環境などにも影響し、進学率が低い。高校などへの進学ができないことで、将来、就労による経済的な基盤を確立することが難しくなる恐れがあり、早い段階で子どもに対する支援が必要」と、事業の重要性をうたっています。

子どもたちが、家庭の事情で自分の将来の夢を諦めない支援が正に必要です。

事務事業シートによれば、2017年度は3カ所の学習支援教室で小学生を含めて59人が登録、そして今年度はもう1ヵ所教室が増えている訳ですね。

 

Q9分科会の答弁で、事業を実施しているNPO法人と協議体のようなものを起ち上げるための検討ができればとおっしゃっていますが、その必要性と具体化について考えをお聞かせください。

答弁

生活困窮者学習支援事業につきましては、生活保護世帯及び生活困窮世帯の小学4年生から中学3年生を対象とし、子どもの居場所の確保とともに、家庭学習を習慣付ける学習支援や学習の動機付け、また、高校進学後の中退防止に係る支援などを行い、社会性や他者との関係性を育むことを目的に市内4ヶ所で実施しています。

こうした取り組み以外に、地域で自主的に学習支援活動を実施しているNPO法人や市民活動グループなどとの連携・情報共有等によって、ニーズに応じた幅広い子どもの居場所や学習支援の確保につながるのではないかと期待しているところでございます。

そのため、今年度は子どもの学習支援を行う団体の把握に努めるとともに、意見交換会等を開催する中で、その活動目的や内容、対象者などの実態を調査し、どのような連携・情報共有等を行うことができるか検討してまいります。以上

(松沢)

事業自体は委託されたNPO法人が実施していますが、子どもや保護者にこの事業を紹介し、夢の実現に向かって励まし後押しするのが当局の役割かと思います。

大阪府堺市では生活保護課の若手CW4人が、1年かかって生活保護世帯の中高生向け冊子を作り、今年5月末からCWが家庭訪問する時に配布しています。内容は、子どもたちが生活保護を理由に夢をあきらめて後悔しないよう、「大学に進学したい」「アルバイトをはじめたら」「就職したい」などのケースに応じ、必要な手続きや奨学金、利用できる制度などを紹介しています。子どもや保護者との話し合いの材料に活用されているようです。市は、学習支援事業について今後も「拡充」の方針です。堺市の取り組みなども参考にし、さらに前に進めていただくことを要望します。これで、日本共産党議員団の総括質疑を終わります。各分科会での質疑も加え、10日2017年度決算について意見表明を行います。ご清聴ありがとうございました。