日本共産党議員団の松沢ちづるです。わたしは、所得税法第56条の廃止についての陳情を「不採択」とすることに対して、反対討論を行います。所得税法第56条では、個人事業者と生計をともにする配偶者や家族が、事業から受け取る報酬を事業の必要経費と認めず、配偶者や家族の働き分は、事業者の所得に合算すると規定しています。これは、明治時代に制定された所得税法にさかのぼり、家父長に絶対的な権力を持たせた「家制度」に基づいています。戦後税制の民主化が進められ、1949年のシャウプ勧告も、家族の働き分の合算課税制度を廃止し、個人別に課税するように指摘していました。ところが、個人事業者については民主的家族制度が十分に定着していないことを理由に、取得税法第56条の規定は残され今に至っているのです。私は、2つの点で反対意見を述べます。一つは、家族の働き分を認めない所得税法第56条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定されている憲法第13条に違反しているという点です。総務消防委員会の論議で、所得税法第57条に青色申告の制度があり、ここで家族分の給料は必要経費として認められているから陳情の願意は達成されており、採択する必要がないと言われました。しかし、個人事業者の確定申告の基本は白色申告です。あくまで青色申告は例外的な規定です。さらに、2014年1月からはすべての事業者に帳簿への記帳が義務付けられたことにより、白色申告と青色申告に格差を設けて白色申告者に家族の働き分を認めないという理由は、現実的になくなっています。問題は、女性が働き手として自営業で果たしている役割が、法の下適切に評価されているのかどうかです。戦前の家制度による女性差別を残す所得税法第56条は、憲法第13条に照らして廃止すべきです。二つ目に、2009年12月同様の陳情が出され「不採択」となった時と状況は変わっていない、だから今回も「不採択」だという論議が総務消防委員会でされましたが、これが状況を正しくとらえているとは言えないという点です。2009年11月参議院財政金融委員会で、当時の藤井裕久財務大臣は「家族従業員の勤労に対する扱いについては、しっかりと検討していきたい」と答弁しました。翌2010年3月衆議院経済産業委員会では、当時の直嶋正行経済産業大臣も「所得税法56条の問題について、全般的に見直してみる意義がある」と答弁しています。また、今現在国税庁ホームページには「親族が事業から受ける対価の取り扱いについて」という税務大学校研究部教育官・斎藤信雄氏の論文が掲載されています。内容は、まず所得税法第56条の規定の合理性に疑問をなげかけ、結論として所得税法第56条の規定を廃止し、親族間の取引であっても第3者間取引と同様に扱うべきだとしています。さらに、男女共同参画社会基本法にもとづく第4次計画が、昨年12月に閣議決定されていますが、ここでも家族従業者の実態を踏まえ、所得税法第56条の改善を求めています。こうした動きに呼応して、所得税法第56条の廃止を求める意見書を採択した地方議会は、昨年12月25日現在で432自治体にのぼっています。みなさん、このように過去6年間の状況は、「変わっていない」のではなく、所得税法第56条の見直しの方向で動き出しているのです。以上、2点にわたって意見を述べました。所得税法第56条の廃止につての陳情は採択すべきものであり、「不採択」に反対いたします。みなさんのご賛同をいただきますようお願いして、私の反対討論を終わります。