9月議会 松沢ちづる議員の一般質問と当局の答弁です

松沢議員の一般質問と答弁

(松沢質問)

 ひとり親家庭の福祉医療について質問します。兵庫県が、今年度から第3次行政改革で、母子家庭等福祉医療の対象を児童扶養手当全部支給の世帯のみにしました。それは、昨年まで所得が192万円未満を対象にしていたのを、80万円以下に大幅に狭めるものでした。日本共産党は県議会でも市議会でも低所得の市民を切り捨てるものだと反対しましたが、市は、県同様に対象者を削減しました。その結果、尼崎市では今年7月,1,824世帯が不認定となり、乳幼児・こども医療でも救済できない市民は2,607人、これは6月まで福祉医療を受けていた人の実に26.8%にあたる大幅削減です。6月までは通院の窓口負担が1日600円2回まで払えばそれ以上は無料になり、入院については1割負担で限度額月2,400円でよかったのに、不認定になったことで今年7月から通院も入院も3割負担となりました。

 資料①「平成26年度母子家庭等医療受給資格の不認定者における所得分布」をご覧ください。これは、こちらから資料要求して福祉医療課が作成したものです。不認定になった1,824世帯の所得分布は、230万円未満が1569世帯、全体の86%です。180万円未満は1,188世帯、全体の65%になります。次に資料②をご覧ください。昨年度の国民生活基礎調査の概況から抜粋したものです。貧困ラインは122万円で、ひとり親世帯の貧困率が54.6%と示されています。つまり、ひとり親世帯は100軒に54~55軒が貧困ライン以下の生活をしているということです。122万円は等価可処分所得なので、そのまま資料①の所得分布に照らし合わせることはできません。それでも可処分所得に税金と社会保険料を足したものが所得ですから、資料①の~180万円未満の階層が貧困ラインの周辺の人たちだと推測できます。 

 そこで、質問します。市長は、不認定となった世帯がこんなに低い所得階層だという認識はありましたか。お答えください。

(健康福祉局長答弁)

 母子家庭等医療費助成事業につきましては、県はひとり親世帯と同程度の所得水準である他の子育て世帯を比較した場合に、医療費助成の対象範囲や負担額において不均衡が生じており、より公乎な制度として維持するために、見直しを実施したものです。本市におきまして、今回の見直しを検討するにあたり、母子家庭等医療と乳幼児等医療受給者のそれぞれの所得分布を調査し、いずれも所得の低い層の方が多いことは、認識しておりました。

(松沢質問)

 市は本事業について「ひとり親家庭の医療費における経済的負担を軽減し、ひとり親家庭の世帯員が疾病等になった場合でも安心して暮らせる環境をつくるため実施している」と事務事業評価で事業趣旨を説明しています。しかし、本年行った削減で不認定となった世帯は、多くが貧困ラインの周辺あるいはそれ以下ではないですか。

 質問します。市が行った対象者削減は、事業趣旨に反していると思われませんか。市長お答えください。

(健康福祉局長答弁)

 ひとり親家庭の医療費における経済的負担を軽減していくことが大切であると認識している中で、兵庫県から行革案が示された際になされた各自治体への意向調査におきまして、本市は見直し前の制度継続を希望する旨の意見を提出しております。なお、本市の母子家庭等医療費助成事業にかかる26年度予算におきましては、約2億円の事業費を計上し、実施しているところですが、市単独で見直し前の制度を維持していくには、更に約1億円の事業費が必要となり、本市の厳しい財政状況を考えますと、見直しはやむを得なかったと考えております。

(松沢質問)

 来年度から国が改定しようとしている介護保険制度について質問していきます。「医療・介護総合法」は、6月18日通常国会会期末ギリギリに参議院で可決成立しました。案の根拠となるデーターに誤りが見つかる前代未聞の事態がおきました。公聴会では反対意見が続出するし、また、全国で多数の国民が反対をする中、自公与党が押し切る暴挙によっての成立でした。これには、介護保険第6期2015年から2017年において、要支援者を介護保険から外して市町村の地域支援事業(総合事業)に移行させる、特別養護老人ホームの入所は要介護3以上に限るなどの内容が盛り込まれています。まず、要支援者を介護保険から外す問題について質問します。厚労省は、要支援者について「専門職による対応が必要でない人が多い」と国会で繰り返し答弁しています。しかし、参議院の公聴会では、専門職の対応がなくなれば「日常生活ができなくなり介護度が上がる」「認知症の人の感情が不安定になる」「サービスの地域間格差が拡大する」など反対する声が続出しました。

 そこで質問します。市は、専門職の関わりの必要性についてどのように考えていますか。

(健康福祉局長答弁)

 国は、要支援であることをもって一律に専門職対応を排除しているものではなく、認知機能の低下した人や、退院直後で状態が不安定な人などについては、専門的なサービスが必要であるとして、国が例示をしております。本市としてもそのような方々に対しては、専門職による専門的なサービスの確保が必要であると考えております。

(松沢質問)

 次に、私は12月議会で、要支援者の介護が市町村事業に丸投げされた場合「介護の質も量も落とさずに尼崎市でカバーできるのか」と質問しましたが、それに対して、市は「現在の地域支援事業の制度設計におきましては、・・・サービスの実施内容や利用回数等に影響が出ることが危惧されます」と応えています。

 そこで質問します。「危惧されるという」懸念を国に表明されましたか。また、現時点で、市はカバーできるかどうかについて、どのような認識ですか。

(健康福祉局長答弁)

 本年6月、国に対して全国市長会を通じて、「地域支援事業への移行に当たっては、早期に国民や事業所への周知徹底を図るとともに、円滑な導入と効率的な事業実施のため、自治体の意見を十分反映すること。」との提言を行っております。・また、国が本年7月に示した総合事業のガイドライン案では、専門的な支援が必要な要支援認定者に対しては、これまでどおりのサービスを提供できるしくみが示されましたので、支援が必要な人へのサービス提供について、一定確保できるものと考えております。なお、サービスの質と量の確保については、総合事業への移行後も、引き続き既存事業者によるサービスの確保に努めるとともに、シルバー人材センターやNPO、ボランティア、地域団体等多様な主体によるサービス提供体制の構築に取り組むことで、影響が出ないよう努めてまいります。

(松沢質問)

 次に、特別養護老人ホームの入所対象者を要介護3以上に限定する問題についてお聞きします。事前に当局からいただいたデーターによれば、昨年度調査分の「入所の必要性が高い」と判定された待機者は469人です。このうち、要介護1・2は43人いらっしゃいます。判定の要件は、介護度以外に、●認知症による不適応行動があるかどうか ●在宅サービス利用度はどれくらいか ●独居か否か ●介護者の状況はどうか などが点数化されます。これらは厚労省令で定められた基準です。この基準で「入所の必要性が高い」と判定された要介護1・2が43人いらっしゃる訳です。また、現在 特養に入所されている要介護1・2の方も165人おられます。

 国は、自ら決めた入所基準に当てはまる要介護1・2の方が現にいるのに、特養の入所対象者を原則要介護3以上に限定するなんて、自己矛盾極まりないものです。 今年市が65歳以上の市民に行った「高齢者利用意向調査」では、高齢者対策として力を入れてほしいことの2番目3番目に、特養などの入所施設の充実があげられています。また、市当局も、12月議会の私の質問に対する答弁で「要介護1・2であっても・・・特養への入所が必要な要介護者がおられますので、要介護3以上に完全に限定することは好ましくない」と言っておられました。

 そこで質問です。特養入所対象者は原則要介護3以上と、国は決めました。要介護1・2で特養入所できるのは、極めてまれなケースだけになるでしょう。市は、要介護高齢者の住まいについて、今後どのように対応しようと考えていますか。

(健康福祉局長答弁)

 特別養護老人ホームの重点化において国が示している改正案では、要介護1・2であっても、やむを得ない事情により、特別養護老人ホーム以外での生活が著しく困難であると認められる場合には特例的に入所が認められることとなっております。現在、策定作業を行っております、第6期介護保険事業計画においても、引き続き、待機者の現状を踏まえた特別養護老人ホーム等の施設整備の計画数を計上することとしております。また、こうした施設整備のほか、高齢者が要介護状態になっても、住みなれた地域で安心して生活し続けられるよう、サービス付き高齢者住宅や有料老人ホーム等の住まいの整備等につきましても、高齢者保健福祉専門分科会で協議してまいります。

(松沢質問)

 不認定となったある母子家庭の母親は「不認定の通知が来て、市から切り捨てられたと思った」と話しています。この家庭は就学前の女の子と母親の2人暮らしで、母親は非正規雇用です。2013年度の所得が95万9千円で、制限額80万円を超えるので不認定になりました。2014年4月分の手取り収入は10万5千円、5月分は7万8千円ほどです。5月は子どもさんがインフルエンザにかかり、何日も仕事を休んだため10万円を割ったとのことでした。ここから家賃や食費が出ていきます。母親は精神科で薬をもらっていますが、医療費が3割負担になったら「私の受診するお金は捻出できなくなる。受診しなかったら体調が悪くなり仕事ができなくなる。悪循環だ。」と訴えています。こんなひとり親家庭をバッサリ切り捨てる冷たい市政でいいのでしょうか。市は、子育て世代の定住促進を図っているのではありませんか。尼崎では今、ひとり親世帯が19,600世帯強あり、ゆるやかに増加しています。県が対象者を削減する中でも福祉医療の充実を行い、ひとり親家庭が安心して住み続けられるよう支援する市政が求められていると思います。

 3月議会予算委員会の質疑で、「県に対して2度、文書で意見をあげました。現行制度の継続を希望する。市単独で実施する財源がないため、県の見直しどおりにせざるを得ないといった内容でした。」との当局答弁がありました。尼崎市も一定努力はしてみたけれど、結局は県が継続しないので、市も財政が厳しいという理由で、1,842世帯を切り捨てたことになります。今年度予算を組む際、県に母子家庭等の福祉医療継続を求めたということは、市には削減しないための市が負担すべき財源支出の力があったことを示しています。それをしなかったというのは、まさに政治姿勢が問われる問題です。県が継続しなかったからといっても、せめて市の負担分である二分の一は財源として残し、対象外となった市民への救済策にあてるべきではなかったでしょうか。宝塚市は、県が対象外とした世帯に対して、市単独での事業を行っています。

 そこで質問します。県に対してこの事業を元に戻せと、再び要求すべきだと考えますがいかがですか。また、県が改めない間は、宝塚市のように、尼崎市も県が対象外とした世帯に対し、市単独でカバーする事業を行うべきだと考えますがいかがですか。お答えください。

(健康福祉局長答弁)

 福祉医療費助成制度は県との共同事業であるため、必要な人に必要な支援ができるような福祉医療制度となるよう、機会をとらえて県に対して働きかけてまいりたいと考えております。また、市単独での実施につきましては、先ほども申し上げましたとおり、見直し前の制度を実施するためには、新たに約1億円の財源が必要となりますことから、宝塚市のように実施することは困難であると考えております。

(松沢質問)

 次に、高齢者の住まいですが、厚労省は、特養待機者対策としてサービス付高齢者向け住宅の増設を推奨し、企業参入が著しく増えています。サービス付高齢者向け住宅は市内に現在26か所839戸あり、昨年12月から見ても5か所177戸も増えています。価格帯は様々で、特養とほぼ同じぐらいの所もあれば月20万円をゆうに越す所もあります。特養と大きく違うのは、負担軽減の対応策が何もないことです、特養ならば、低所得者が利用できるように補足給付と言って部屋代と食費の軽減措置がありますが、サービス付高齢者向け住宅にはありません。ですから、年金の少ない低所得の高齢者は、サービス付高齢者向け住宅にはなかなか入れません。また、生活保護受給者でも入居できる、もっと安価な高齢者の専用賃貸住宅が民間でありますが、介護の質や住宅環境、防災設備などについて、市の指導がどこまで入るかは不定で、行政的にはそこに頼るわけにはいかないでしょう。市は、第5期介護保険事業計画で、「施設の整備が需要の増加に追いつかず、現在、多数の人が自宅などで待機されている状況」だとして、「補助金や公有地の活用等により、介護老人福祉施設(特養)を中心として整備を進めていきます」としています。この方向で第6期も特養の整備を更に積極的に進めるべきです。市有地の活用や小規模特養の増設を行い、要介護1・2でも入所の必要性が高い人については、しっかりと特養で受け止める施設整備を求めます。次に、要支援者の地域支援ですが、専門的関わりが必要だと厚労省が示しているイメージは、①日常生活に支障があるような病状・行動を伴う認知症の場合 ②退院直後で集中的に自立に向けた取り組みが必要な場合 ③自らの生活管理が困難・地域社会との関係・構築ができない場合です。これではうつや統合失調など精神疾患を抱えた人、がんのターミナル期の人、リウマチや筋委縮性側索硬化症、パーキンソン病のように進行性の難病を抱えた人、いつ急変するかわからない循環器・呼吸器疾患を抱えている人、守秘義務のあいまいなボランテイアの受け入れに抵抗感の強い人、家族から虐待を受けている恐れのある人などが対象外になるのではないでしょうか。こうした方々にも介護の専門職によるサービス提供が必要です。市は、厚労省のイメージにこだわらず、専門的なサービスを必要とする人全てがそれを受けられる体制作りを求めます。

 次に、現在要支援の人たちに訪問介護や通所介護のサービスを提供している現場事業所のみなさんは、いわゆる「要支援外し」についてどう考えておられるのでしょうか。今、日本共産党議員団は事業所の方々にアンケート調査を行っています。まだ、途中なので集計はこれからですが、特徴的な事業者の声を紹介します。「要支援の人のほとんどは専門的ケアを必要としない」という国の見解に対して、回答を寄せたほとんどのところが「そうは思わない」と応えています。

・要介護レべルの人が要支援に認定されていることが多々ある。

・サービスを外せば、結果として要介護化をはやめることになる。

・しっかりしてそうでも、一つ何かあれば命に係わる病気を持っている人もおり、細心の注意を払ってケアしている。などの声が多数です。

「そう思う」と答えた事業所も、線引きが難しいと言っています。多くの事業所が利用者減少による経営への影響を心配しています。利用者・家族にとっての影響については、介護度が増す・家族が困る・利用者の生活が成り立たなくなる・介護事故や事件が起こってくる等々訴えています。介護労働者のますますの待遇悪化につながると危惧する声もあります。コストダウンは事業所経営に大きな痛手としながらも、一番困るのは利用者本人と家族だから援助せざるを得ない、どうなるかわからないなど悩んでいると答える事業所が多く、こうした悩みを相談する行政窓口もないという意見もあります。また、実情を見ない国の制度改定に怒りをあらわにされている事業所も多数あります。要支援の人への支援で、専門的なサービスを担う介護事業所の協力は、今後もなくてはならないものです。市は6月に地域包括支援センターと居宅介護支援事業所のケアマネージャーにアンケート調査を行っていますが、介護事業所に対してはどうするのでしょうか。

 質問します。要支援者への訪問介護・通所介護事業を行っている事業所に対して、地域支援事業に移行することについての要望や意見などを聞くべきだと考えますがいかがですか。

(健康福祉局長答弁)

 先ほどもこ答弁申し上げましたように、要支援認定者には、専門的サービスに加えまして、生活支援サービスについても、引き続き事業者からのサービス提供が必要であると考えており、総合事業への移行にあたっては、事業者の協力を得ることが不可欠であると考えております。そのため、総合事業に移行するまでの間に、事業者への意向調査を実施したいと考えております。

(松沢質問)

 基本チェックリストについて伺います。厚労省は、市民が介護の相談に来た時、窓担当者は、明らかに要介護認定が必要な場合や本人が介護サービスを希望しているときは要介護認定の申請手続きにつなぎ、そうでない場合は要介護認定を省略して基本チェックリストを行って総合事業につなぐというガイドラインを示しています。窓口対応は必ずしも専門職でなくてもよいとされており、厚労省のガイドライン通りに窓口業務を行えば、市民がはっきりと「介護認定を受けたい」と言わないかぎり、入り口段階で介護保険サービス利用の道が閉ざされる危険性があります。市民の介護保険についての理解は様々で、とにかく援助を求めて相談に来て、市職員から説明を受けてはじめて必要な手続きやサービスの受け方などがわかるという場合も多々あるでしょう。窓口で安易に基本チェックリストで振り分けず、これまでのようにまず、認定申請の手続きを行うことが必要だと考えます。

 質問します。市は、基本チェックリストを安易に使わず、これまでのように介護認定を希望する希望者すべてに、認定申請の手続きを行うべきだと考えますがいかがですか。お答えください。

(健康福祉局長答弁)

 総合事業移行後の基本チエックリストは、必ずしも要介護認定を受けなくても、簡便な手続きにより必要なサービス事業を利用できるよう、相談窓ロにおいて本人の状況を確認するためのツールとして用いるものです。相談受付時に、まず相談の目的や希望するサービスを聴いて、総合事業内容や手続き等を説明した上で、認定を希望される方には、従前どおり要介護認定の申請の手続きを行ってまいります。

(松沢質問)

 国が今回の介護保険制度「改定」でめざしているのは、様々な困難をかかえる利用者や介護現場に視点をあてたものではなく、増え続ける国負担を減らしたいという保険財政の事情を何よりも優先させた「持続可能性」の追求です。弊害は、利用者市民、介護現場に現れてきます。市民のく。らし・いのち守る防波堤の役割をもつ自治体として、専門的なサービスが必要、あるいは求める要支援者に、しっかり受け皿を用意する体制を作っていくことが求められています。そのためにも、ぜひ、現場の声、様々なケースを肌で感じて考えるべきだということを、強調しておきます。基本チェックリストを安易に使わず、介護認定申請の手続きを従来どおり行うことを求めます。

 ひとり親家庭の福祉医療については、2月に市は「平成26年度主要取組項目(案)」で、対象者削減により「効果額は3916万円」になるといいました。貧困と闘いながら必死にがんばっている市民を切り捨てて、なにが「効果額だ」と怒りを感じます。当局の答弁で、県に再び元に戻すよう言うということですので、ぜひ強くいってください。日本共産党議員団は県議員団とも連携して、母子家庭等医療費助成制度をもとに戻すため更にがんばることを表明して、私の一般質問を終わります。