辻おさむ市政レポートNo.180 今なぜ「日の丸」を押しつけるのか

辻おさむ市政レポートNo.180(2012.3.4.)

日本共産党尼崎市会議員 辻 おさむ

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今なぜ「日の丸」を押しつけるのか
2月議会 新政会が「日の丸」義務化条例を提案

2月議会に、新政会の10人が突然、「国旗掲揚に関する条例案」を提案しました。
条例案は、国旗国歌法、学習指導要領の趣旨を踏まえ、
①尼崎市の212か所すべての公共施設で、執務時間中に、国旗を掲揚する
②市が主催する式典・行事で、国旗を掲げる
③議場では、国旗を議長席の背面に市旗と並べて掲げる――というものです。

条例案は、2月13日の会運営委員会で内容が示され、17日の議運で正式に受理されました。

2月20日の本会議では、日本共産党議員団と緑のかけはしが、提案者である議員に質疑をおこないました。

「継続」審議に

2月27日の総務消防委員会では、「市民合意もなく、拙速だ」「内容が不明確」などの意見が相次ぎました。 日本共産党は「不備な条例は取り下げを」と要求しましたが、他会派が「議論が不十分」だとして継続審議となりました。

市民から「反対」の声と運動おこる

2月11日の新聞報道で条例案提出の動きを知った尼崎市教職員組合、尼崎市平和委員会、新婦人尼崎支部から条例反対の陳情がだされ、尼崎市職労、高教組尼崎支部などから各会派への要請がだされました。 また「ストップ日の丸緊急行動」が取り組まれ、26日に市民集会、市役所前座り込み行動がおこなわれました。

 

今回、新政会の議員は、「市長が条例を制定しないのなら、私たちが」と議員提案。条例審議の特徴を紹介します。

歴史認識 アジア侵略を「自衛の戦争」

 「日の丸」には、先の戦争で「占領したところに真っ先に立てる」と侵略のシンボルにされてきた歴史があります。 日本の戦争責任を認めた「村山談話」、中国侵略について、議案提出議員からは「両論ある。戦後生まれの私たちに判断しろといっても」と明言を避けたり、「個人的には、自衛の戦争だと思っている。村山談話は違う」など、日本がアジア諸国に侵略していった歴史の真実を見ず、侵略戦争への反省もない発言が相次ぎました。

日中友好 中国鞍山市との友好都市提携30周年に影

 今年30年となる中国鞍山市との姉妹提携友好関係が懸念されます。名古屋では河村市長が「南京大虐殺はなかった」との発言で交流が途絶えています。河村発言について提出議員は「肯定も、否定もしない」との発言です。

国旗・国歌は「強制しない」が大原則

政府
 1999年に、国旗国歌法を強行した当時の小渕恵三首相でも「法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し、義務付けを行うことは考えていない」と繰り返し答弁。

天皇
2004年秋の園遊会で、天皇は、「やはり強制になるという考え方でないことが望ましいですね」と発言。

稲村市長
 稲村市長は、国旗について、「それぞれが愛着を持ち、自然に対応することが大切ではないかと思っております。そういったことから、条例化までの必要性は感じていない」と答弁(昨年6月議会)。

教育長
 教育長も「学習指導要領に基づき、適切に行われている。また、入学式、卒業式においても問題となるような報告は受けていないので、条例化の必要はないと考えている」(昨年6月議会)。

強制 職務命令違反は処分の対象

「職員が条例に違反した場合、行政処分の対象になるかどうか」の問題について、提出議員は「強制はしない」「処分は求めない」と答弁。ところが、市当局は「掲揚業務は行政事務となり、職務命令となる」「(職務命令違反は)処分(訓戒など)の対象となる」との見解です。提出者がどう言おうと条例化で事実上、強制になることが明らかになりました。

市民合意 拙速、市民意見きかず

陳情締め切り日に条例提案を公表し、市民の意見表明権を奪うやり方に猛烈な批判が起こっています。議運委員でもある提出議員は「陳情締め切り日を知らなかった」と答弁(本会議)。「事前に広く市民の意志は確認したのか」との質問には「一般のパブコメまではいってないが、我々の回りでは…」「拙速かもしれないが、議会ルールにのっとっている」など強弁。広く市民の声を聞く意思がないことが明らかになりました。

手続きも内容も欠陥だらけ拙速、市民意見きかず

審議で明らかになったのは、①住民に広く知らせることなく進められていること
②国際通念や政府見解を否定した提案者の特殊な歴史観に基づく提案であること
③条例条文があいまいで恣意的に解釈されかねないこと
④議会の慣行を守ることのない提出のやり方であることです。

条例制定の必要性もなければ、手続きも内容も欠陥だらけの提案であることです。
日本共産党は継続せず「審議未了」を求めました。

議員提出議案第1号 尼崎市国旗の掲揚に関する条例

(この条例の目的)
 第1条 この条例は、国旗及び国歌に関する法律(平成11年法律第127号)、教育基本法(平成18年法律第120号)及び学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)の規定による学習指導要領の趣旨を踏まえ、本市の施設、本市が主催する式典及び行事並びに尼崎市議会の議場(以下「議場」という。)における国旗の褐揚等について定めることにより、市民、とりわけ次代を担う子どもが伝統と文化を尊重し、それらを育んできたわが国と郷土を愛する意識の高揚に資するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことを目的とする。

(用語の定義)
 第2条 この条例において「本市の施設」とは、尼崎市教育委員会の所管に属する学校及び本市の事務又は事業の用に供されている施設(本市以外の者が所有する施設及び本市職員が勤務する公署でない施設を除く。)をいう。

(国旗の掲揚)
 第3条 本市の施設においては、その執務時間(地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条第1項に規定する公の施設にあっては、その利用に供する時間)中では、国旗掲揚台その他の掲揚のための施設(以下「掲揚施設」という。)がある場合は当該掲揚施設に、掲揚施設がない場合は来所者又は利用者の見やすい場所に国旗を掲げるものとする。

 第4条 本市が主催する式典及び行事においては、舞台等がある場合はその正面に、舞台等がない場合は参加者の見やすい場所に国旗を掲げるものとする。

 第5条 議場においては、国旗は、議長席の背面に市旗と並べて掲げるものとする。

 付則 この条例は、平成24年4月1日から施行する。

 

第17回議会定例会(2月議会)の主な議案と採決態様(略 PDFファイルをごらんください)