外国人が土地を買っているって本当?──その話、ちょっと立ち止まって考えてみませんか
「外国人が土地を買いあさっている」という不安の声
最近、「中国の人たちが日本の土地をどんどん買っている」「外国人の投資がマンション価格を上げてしまった」という話を、テレビやSNSで見聞きすることが増えました。
選挙でも「外国人の土地購入を規制すべきだ」と訴える政党が目立ちます。
でも本当に、今の住宅価格の高騰は、外国人だけのせいなのでしょうか?
不動産価格の高騰、実は“政策”の影響も大きいんです
土地やマンションの価格がぐんと上がった背景には、2013年以降の政府の政策が大きく関わっています。
たとえば2013年にできた「国家戦略特別区域法」では、都市開発のルールが大幅に緩和されました。
本来なら必要な自治体の都市計画の手続きもスキップでき、大手不動産会社には税金面でも優遇がありました。
その結果、臨海副都心や都心部を中心に、タワーマンションや「億ション」(1億円以上のマンション)が次々と建設されたのです。
投資マネーが集まり、住宅価格はうなぎ登りに
この流れの中で、不動産は“住むためのもの”から、“もうけるための投資商品”として扱われるようになりました。
不動産ファンド(投資家が出資して不動産を売買する仕組み)などによる高額取引が急増し、2013年から2024年までの間に、10億円以上の不動産取引の合計額はなんと約47兆円にものぼっています。
そのうち、外国人投資家が関わっているのは約4分の1。つまり、約75%は日本国内の投資家や企業によるものなのです。
「外国人が買っている」より、「誰のために上がったのか?」
また、マンションの購入者の内訳を見ても、外国人の割合は意外と少ないのが現実です。
たとえば三井不動産が販売した首都圏の新築マンションでは、外国人購入者は全体の約1割。
残りの9割は日本人です。
そして、不動産価格の高騰によって本当に得をしたのは誰でしょうか?
実は、大手不動産会社です。三井不動産、住友不動産、三菱地所、東急不動産、野村不動産――この大手5社は、2024年3月期決算でそろって過去最高益を更新しました。
問題は「外国人」ではなく「投機目的」
「外国人による土地購入が不安だ」という声があるのは分かります。でも、外国人だからダメ、という議論には注意が必要です。
日本共産党の田村智子委員長は、ある討論番組でこう話していました。
「外国人という枠をはめるのはおかしい。
問題なのは、“投機目的”でマンションなどを買い占めることです。」
つまり、「誰が買うか」ではなく、「何のために買うか」が大切なのではないでしょうか。
私たちの暮らしを守るために、本当に見るべきところは…
家賃が上がってしまったり、家をかいたくても手が出ない。
そんなとき、不安や怒りの矛先を「外国人」に向けたくなる気持ちは、分かります。
でも、実際に価格をつり上げてきたのは、外国人だけではなく、日本の中の大きな企業や投資の仕組みなのです。
「投機のための不動産売買」にきちんとルールを設けること。
それこそが、私たちの暮らしを守る本当の近道なのかもしれません。