北図書館および中央図書館再整備計画
文化政策の主体性・住民参加・行政責任について
こんにちは、日本共産党市議団の川崎敏美です。今日は図書館政策についてお尋ねします。
尼崎市は現在、北図書館を大井戸公園に移転・新築し、DO方式(設計・運営一括民間委託)によって整備する計画を進めています。2030年度の供用開始に向け、今年度中に事業者選定が行われる予定です。
今回の整備計画を見ると、三つの重大な問題があります。第一に、整備計画の主導が市長部局(資産統括・財務系)にあり、教育委員会の文化・教育政策としての位置づけが不明確であること。第二に、住民が図書館の運営方針や施設設計に制度的に関与する仕組みが存在しないこと。第三に、DO方式・指定管理者制度の導入により、完成後の運営における行政の公的責任の所在が曖昧になるおそれがあること。
北図書館計画に関することは委員会で質問します。
ここでは、尼崎市の図書館政策全般について3つの観点から質問します。
- 文化政策における図書館の位置づけについて
「文化芸術基本法」において、図書館は単なる教育機関にとどまらず、「文化芸術活動の基盤となる施設」として明示的に位置づけられています。同法第26条では「美術館、博物館、図書館等の充実」について国や地方公共団体が必要な施策を講ずることが規定されており、図書館は法律上でも文化施設として明確に定義されているため、市の文化政策から切り離すことはできません。
現在、尼崎市の文化施策の指針である「尼崎市文化ビジョン(第2次)」には、図書館が担う「知る権利の保障」や「地域の知的記憶の蓄積」といった機能が明文化されていません。また、文化ビジョンを所管する市長部局(文化振興課)と、図書館を所管する教育委員会との間で組織的な分断が生じているのではないでしょうか。
質問1
本市の文化ビジョンに図書館が積極的に明示されていない理由は何でしょうか。また今後、図書館を文化政策の核として文化ビジョンに位置づける考えはあるのでしょうか、お答えください。
新北図書館の整備計画は、市のホームページを見ると、「市の改善取り組み>公共施設」として市長部局が主導するかたちで進められています。また現在中央図書館もリニューアルにむけた取り組みが進められています。
答弁要旨
本市の文化ビジョンは、芸術・文化財といった「狭義の文化」だけでなく、地域コミュニティや学びなどを含む「広義の文化」を池沼とし、本市の文化施策全体の大きな方向性を示すものです。
文化ビジョンでは、図書館のほかにも総合文化センターや歴史博物館、生涯学習プラザなども文化施設と位置づけ、それらを連携、活用していく大きな枠組みを示しておりますが、個々の施設の機能や役割については、各施設の運営方針等に委ねております。
そうしたことから、文化ビジョンにおいて、図書館単体を核と位置付けることは考えておりませんが、引き続き、図書館を含む様々な主体との連携により文化施策を推進してまいります。
質問2
図書館政策において収集方針・レファレンスサービスの水準・弱者アクセスの保障・専門司書の配置基準など「図書館サービスの質」に関しては、教育委員会がきちんと主導権をもって決めているのでしょうか。
答弁要旨
図書館は社会教育施設として市民の学習活動や読書環境を支える重要な公共施設です。所管である教育委員会は、図書館サービスの維持に向け、運営方針の策定、選書の方針、必要な予算や人員の確保、司書等の専門職員の配置、利用状況や事業効果の点検・評価を通じて、図書館サービスの質が担保できるよう取り組んでおります。
また、新図書館の整備においても、図書館サービスの質の維持に関しては、教育委員会が主導となり決めている所です。 以上
2021年(令和3年)3月に策定され、2025年(令和7年)3月に中間改訂の、尼崎市立図書館基本的運営方針(以下方針と呼びます)が、図書館の現状と課題をあげています。
まず、阪神間の各市と比べると、市民一人当たりの年間貸出冊数は、他の市の平均が7.10冊であるのに対し、尼崎市はわずか3.11冊です。他の市の半分以下にとどまっています。
さらに、国が示す「望ましい基準」と比べてみます。この基準は、尼崎市と同じ人口30万人以上の市を対象に、図書館行政の上位10%の平均値として示されたものです。
貸出冊数は、先に述べたように、基準が9.79冊であるのに対し、尼崎市は3.11冊です。基準の3分の1程度しか達していません。
蔵書冊数は、基準が市民一人当たり3.04冊であるのに対し、尼崎市は1.61冊と、ほぼ半分です。図書費は基準が市民一人当たり141円であるのに対し、尼崎市は65円と、これも半分以下です。
図書館の数は、基準では5館が目安とされているのに対し、尼崎市は中央図書館と北図書館の2館しかありません。
次に、図書館をどれだけの市民が使っているかを示す利用者数比率を見てみます。これは市の人口に対してどれだけの人が図書館を訪れているかを示す指標です。
伊丹市が272.9%、宝塚市が277.1%、三田市が284.1%であるのに対し、尼崎市は78.2%にとどまっています。他の市では人口を上回る延べ人数が図書館を訪れているのに、尼崎市では市民の8割にも届いていないということです。
最後に、職員体制について見てみます。職員一人当たりが担当する市民の数を見ると、望ましい基準では5,528人とされています。ところが尼崎市は7,207人と、基準を大幅に上回っています。つまり、一人の職員がより多くの市民を担当しなければならない、手薄な体制になっているということです。伊丹市の2,933人、宝塚市の3,815人、西宮市の3,623人と比べても、尼崎市の職員一人ひとりにかかる負担がいかに大きいかがわかります。
つまり、量的な水準でも、利用される頻度でも、支える職員体制でも、いずれの指標をとっても、尼崎市は目標基準を大きく下回っており、この現実を直視しなければなりません。
質問3
北図書館や中央図書館の整備にあたり、蔵書の量的充実について定量目標を定める考えはあるのでしょうか。
答弁要旨
蔵書数については、利用者のニーズに応えるためにも量的な充実を図る必要があると認識しております。
一方で、施設の床面積には物理的な制約があり、単純に蔵書数を増やすためにスペースを過大に確保することは難しいと考えております。
今後、北図書館の建替えや中央図書館のリニューアルにより、蔵書数は80万冊に増やしたいとかんがえておりますが、将来的な目指すべき蔵書数については、近隣自治体や中核市の状況も参考に検討してまいります。以上
方針には、他市では示されている重要な項目が明示されていません。具体的には、①文化芸術基本法・図書館の自由への言及②プライバシー保護規定③多文化共生・外国語史料収集への方針、④司書の専門性・雇用保障に対する具体的対策⑤教育委員会の政策的主導性の明示等がないことです。
たとえば、①文化芸術基本法・図書館の自由への言及については、方針で参照されている法令は図書館法・社会教育法・子どもの読書活動推進法にとどまり、2017年改正の文化芸術基本法(第26条:図書館等の充実)への言及がありません。先進自治体の方針(たとえば三田市・宝塚市・川崎市等)では、「図書館の自由に関する宣言」(日本図書館協会)への準拠を明記し、知的自由・資料提供の自由を方針の根幹に位置づけています。
②プライバシー保護規定については、図書館における読書記録・貸出履歴は思想・信条に直結する最も保護されるべき個人情報です。伊丹市「ことば蔵」をはじめ多くの先進図書館は、利用者がマイページで貸出履歴を自ら削除できる仕組みと、図書館員が貸出履歴を参照しない旨の規定を利用案内に明示しています。伊丹市立図書館「ことば蔵」では、貸出履歴について「利用者ご本人のみが使用できる機能のため、図書館側では過去の貸出記録を見ることはできない」と明示しています。
質問4
方針に他市が積極的に取り組んでいる項目が明示されなかった理由と、今後の政策の見直しはどのように行なっていくのでしょうか、お答えください。
答弁要旨
本方針の位置づけは「尼崎市総合計画」及び「尼崎市教育振興計画」の施策目標を達成することを目的として今後の尼崎市立図書館の方向性を定めたものとしており、議員がお示しの項目は明記はしておりませんが、当然、関係法令に沿った運用を前提としております。
図書館内における日々の実務におきましても、先進自治体と同様に知的自由・資料提供の自由に加えまして、個人情報の保護の徹底にも万全を期しているところです。
例えば、個人の貸し出し履歴については、図書館システム上で職員の閲覧が不可能な仕様にするなど、他市と同等の適切な運営を実施しております。
今後は、社会情勢やニーズの変化などを踏まえながら、必要な政策について検討してまいります。以上
第2登壇
文化芸術基本法や図書館法の精神に基づき、教育委員会が主体となって「文化政策における図書館の役割」を明確に定義し、市の文化ビジョンに図書館を明示的に位置づけることが求められていると思います。
2、住民参加の制度的保障について
図書館法第14条は公立図書館に図書館協議会を置くことができると規定しています。図書館協議会は、館長への諮問・意見具申を通じて市民・専門家が図書館運営に恒常的に関与する法定機関です。
図書館協議会の設置は、一時的なアンケートや行政主導の説明会(タウンミーティングなど)とは異なり、「恒常的かつ制度的な市民参加の場」を保障するものであり、市民のための図書館づくりに多くのメリットをもたらすのではないでしょうか。
現在、尼崎市には図書館協議会が設置されていません、市民が運営方針に制度的に関与する場が空白となっています。協議会を設置することは、図書館を「行政や民間事業者が管理・提供する施設」から、「市民が主体的に運営を評価し、共に守り育てていく地域の知的インフラ」へと転換させるための、最も重要な制度的基盤となると考えます。
神戸市の事例を見ると、図書館協議会が「市民の声を反映した図書館運営」を進めるための重要な役割を担っています。神戸市では、図書館が作成した毎年の「事業評価(自己評価)」をそのまま通すのではなく、図書館協議会が協議・修正・承認を行ったうえで公表する仕組みが構築されています。これにより、図書館運営の透明性と質が向上します。
宝塚市立図書館協議会は、学校教育の関係者3人・社会教育の関係者1人・家庭教育の向上に資する活動を行う者1人・知識経験を有する者3人・公募による市民1人の計9人で構成され、図書館方針について館長の諮問に応じるとともに意見を述べる機能を果たしています。
質問5
新図書館や中央図書館の整備を機に図書館協議会を設置し、その構成・権限・開催頻度・議事録公開のルールを条例で定める考えはありませんか。またその協議会が、指定管理者の選定や評価に実質的に関与できる仕組みにする考えはありませんか。
答弁要旨
現在は、尼崎市社会教育委員会議において、本市図書館に関する協議や報告を行うことにより、社会教育委員からのご意見等を参考にしながら図書館サービスの向上を図っているところでございます。図書館の建替えやリニューアルを契機に、図書館協議会の設置につきましては、その必要性を検証した上で、検討してまいります。
なお、指定管理者の選定・評価につきましては、本市の統一された基準に基づき実施しているところではございますが、他市の状況等を参考に、実現の可能性などを研究してまいります。 以上
3、指定管理者制度の運営における行政責任について
指定管理者制度のメリットとして、民間のノウハウを活用しながら、効率的かつ効果的に施設の整備や運営を進めることができる点や、コスト効率の観点から意味があるとされています。
デメリットとしては、図書館の核心である「選書方針」「レファレンス機能」「弱者へのアクセス保障」といった公共図書館固有の役割が商業的論理によって発揮できないおそれがあります。また、これらの「知的自由の保障」や「地域文化への貢献」といった数値化しにくい公共的価値が評価されにくいという問題があります。
質問6
指定管理期間中、教育委員会はどのような体制で事業者を監督し、図書館サービスの質を担保してきたのでしょうか。具体的に、年次の履行評価の実施主体・評価基準の公開・評価結果の教育委員会への報告・議会への報告のあり方についてお答えください。
答弁要旨
北図書館を運営しております指定管理者からは例月の定例会議で事業や貸し出し冊数・来館者数等の実績などの報告を受けるとともに、適宜、教育委員会から運営に対し、助言・指導を行っております。
また、システムに関する会議や、司書による実務の意見交換会、ボランティアを交えた意見交換会を定期的に実施し、図書サービスの質の向上に努めております。
また、年度毎に全市的に定められている指定管理者制度のモニタリング評価基準に従い、指定管理者の管理状況等を確認し、今後の業務改善などに活かすとともに、市ホームページ上で履行評価の実施主体や評価基準などの評価結果について公開を行っているところでございます。以上
指定管理者制度のもとでは、司書の非正規化・低賃金化が全国的な課題となっています。北図書館は平成23年の指定管理者制度導入以来、図書館流通センターが運営してきました。
質問7
現在の北図書館の司書の雇用形態・資格保有者数・平均賃金の水準について明らかにしてください。また専門司書の配置基準と雇用条件の最低基準を募集する際に明記し、教育委員会がその履行を監督する体制を整える必要があると思いますが、その考えはあるのか、お答えください。
答弁要旨
現在の北図書館の指定管理者の雇用形態は正規社員19人及び、非正規社員3人の計22人で、そのうちの司書資格保有者数は20人でございます。平均賃金の水準につきましては、指定管理者側で非公表の扱いとされているところでございます。
また、指定管理事業者につきましては、尼崎市公共調達基本条例の遵守が必須となっており、最低賃金の遵守などについては、労働関係法令遵守状況報告書の提出により確認しております。以上
指定管理者制度の導入が長期化すると、市が自力で図書館を直営運営できる職員体制・専門知識が失われるリスクがあります。
質問8
指定管理期間終了後に、直営に戻す選択肢を制度的に確保しておく考えはありますか。また万一、事業者が撤退・倒産した場合に図書館サービスを継続するための危機管理計画はどうなっているか、お答えください。
答弁要旨
本市の図書館運営では、中央図書館を直営とし、選書やリファレンスなどの基幹業務を担っていることから、直営に戻す選択肢は一定確保できているものと認識しております。また、指定管理者が指定管理期間中に撤退した場合は、一時的に人員確保等の面で図書サービスの一部には影響が生じる可能性がありますが、中央図書館の直営体制を活かしながら、速やかに市の直営に戻した上で、窓口業務など一部業務を優先的に采井し、段階的にそのサービスの復旧を行うなど、影響を最小限に抑えながら、図書サービスの継続に努めてまいります。以上
第3登壇
最後に、図書館政策について、要望を述べさせていただきます。
第一 貸出冊数・蔵書冊数・図書費・職員体制・館数のすべてで阪神間最低水準かつ望ましい基準以下となっています。これを改善するための具体的数値目標・期限・予算措置を方針に明示することを求めます。
第二 文化芸術基本法・知的自由・選書方針の公表・図書館協議会・プライバシー保護・多文化共生・司書雇用保障・教育委員会の政策的主体性——これらは先進自治体の図書館方針では当然に盛り込まれている事項です。これらを方針化すること。
最後に、施設を新築しDO方式で運営しても、図書館の公共的価値を守る思想・制度的枠組みが方針に書かれていなければ、ハコだけ新しくなった施設に変質するリスクがあります。
図書館は市民の知る権利を保障する公共インフラであり、地域の文化的記憶を担う施設です。指定管理者への委託は、コスト効率の観点からは意味があるとしても、「何のための図書館か」「誰がその公共的価値を守るのか」という問いへの答えは、市場原理や民間事業者の判断に委ねることはできません。
教育委員会が文化政策の主体として図書館に責任を持ち、市民が制度的に運営に関与し、行政が長期にわたって公共性を監督する体制を、構築することを強く求めるものです。
以上で私のすべての質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
